最終更新日:2026/9/9
有限責任とは?無限責任との違いや株式会社・合同会社の責任範囲をわかりやすく解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
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1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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会社を設立して自分が社長になる場合、「会社が借金を返せなくなったら、自分の預貯金や自宅まで返済にあてなければならないのか」と不安に感じる方もいるでしょう。
株式会社や合同会社では、出資者は「有限責任」を負います。この有限責任によって、個人の資産はその多くの部分が守られる構造になっています。
ただし、有限責任と聞いても、どこまで責任が限定されるのか、社長個人の責任とはどう違うのかは分かりにくい部分です。
この記事では、有限責任のしくみを基礎から説明したうえで、無限責任との違いや、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社で責任の範囲がどう異なるのかを解説します。


目次
有限責任とは
有限責任とは、会社が債務を返せなくなっても、出資者として負う責任が出資額を超えないしくみです。
有限責任を理解するためには、まず「会社」と「会社を経営している個人」は同じものではないことを押さえておきましょう。
会社を設立すると、会社(法人)と経営者個人は法律上、別の存在として扱われます。
そのため、株式会社や合同会社が金融機関などからお金を借りた場合、その借金を返す責任を負うのは原則として「会社」です。
たとえ会社を設立した人と社長と出資者がすべて同じ人であっても、会社の借金がそのまま社長個人の借金になるわけではありません。

たとえば、Aさんが100万円を出資して株式会社を設立し、自分が社長になったものの、会社の経営が悪化して、会社に500万円の借金が残ったまま倒産してしまったとします。
このケースでは、Aさんは会社に出資した100万円を回収できません。
しかし、Aさんが株主や社長であるという理由だけで、会社に残った500万円を自分の預貯金などから返済する必要は原則としてありません。
このように、会社の経営がうまくいかなかった場合でも、出資者が会社の借金を無制限に背負わないように責任の範囲を限定するのが有限責任です。
会社法という法律でも、「株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。」として明確に責任範囲が定められています。
有限責任制度がある理由
有限責任には、出資する人があらかじめ負担するリスクの範囲を把握しやすくし、会社が資金を集めやすくする役割があります。
仮に、株式会社へ数万円を出資しただけでも、その会社が倒産した際に数千万円、数億円の債務を負担しなければならない可能性があれば、会社へ出資すること自体に非常に大きなリスクが伴います。
有限責任であれば、出資者は会社の事業が失敗したときに、自分がどこまで損失を負う可能性があるのかを把握したうえで出資できます。
無限責任とは
無限責任とは、会社の債務について社員が負う責任に、出資額などによる上限がないしくみです。
会社の財産だけでは借金を返済できない場合、無限責任を負う社員は、残った債務について自分の財産から弁済しなければいけません。

先ほどの例で言えば、Aさんが100万円を出資して株式会社ではなく、無限責任となる合名会社などを設立したとします。
この会社が500万円の借金を抱えて倒産し、会社の財産をすべて返済にあてても債務が残った場合、Aさんは無限責任社員として、残った会社債務を弁済する責任を負います。
無限責任社員が複数いる場合は、社員同士で連帯して会社債務を弁済します。

代表税理士
森 健太郎
なお、個人事業主には会社のような法人格がないため、事業で負った借金は事業主本人の借金です。
株式会社や合同会社を設立した場合とは、この点が異なります。
無限責任については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
有限責任と無限責任の違い
有限責任と無限責任の大きな違いは、会社の財産だけでは借金を返済できなくなったときに、出資した人が個人でどこまで責任を負うかという点です。
| 比較 | 有限責任 | 無限責任 |
|---|---|---|
| 責任の範囲 | 出資額を超えて会社債務を負わない | 出資額による上限がない |
| 会社財産だけで借金を返せない場合 | 出資者として残った会社債務を個人で負担しない | 社員が残った会社債務を弁済する責任を負う |
| 個人財産への影響 | 出資者としては原則、会社債務の弁済責任は個人財産に及ばない | 預貯金などの個人財産から会社債務を弁済する必要がある |
| 主な例 | 株式会社の株主、合同会社の社員 | 合名会社の社員、合資会社の無限責任社員 |
こうした責任の違いは、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社のどれを選ぶかによって異なります。
次の章では、それぞれの会社で誰が有限責任・無限責任を負うのかを整理します。
株式会社・合同会社・合名会社・合資会社では誰がどの責任を負う?
日本で設立できる会社は、主に株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4種類があり、会社の形態によって出資者が負う責任が異なります。
株式会社に出資する人は「株主」といいます。
一方、合同会社・合名会社・合資会社では、会社に出資してその会社を構成する人や法人を「社員」といいます。
4つの会社形態と出資者の責任を整理すると、次のとおりです。
| 会社形態 | 出資する人 | 責任 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 株主 | 有限責任 |
| 合同会社 | 社員 | 有限責任 |
| 合名会社 | 社員 | 無限責任 |
| 合資会社 | 有限責任社員・無限責任社員 | 社員によって異なる |
株式会社や合同会社を設立する場合、出資者は有限責任です。
一方、合名会社では社員全員が無限責任を負います。
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員の両方で構成される会社です。
そのため、設立するには、少なくとも無限責任社員と有限責任社員がそれぞれ1人以上必要になります。
有限会社も株主は有限責任
「有限責任」とよく混同される言葉に「有限会社」があります。
有限会社はかつて日本にあった会社形態の1つです。
以前は株式会社を設立するには、資本金を原則1,000万円以上、取締役3名以上と監査役1名以上をそろえなければならないなど、高いハードルがありました。
そこで、小規模でも事業を始められるように、資本金のハードルを300万円にまで引き下げたものが有限会社です。
有限会社は、株式会社よりも小規模な事業者が利用しやすい会社形態として設けられており、社員は出資額を限度とする有限責任を負っていました。
2006年5月1日の会社法施行によって有限会社という会社類型は廃止され、現在は新しく設立できません。
施行前から存在する有限会社は「特例有限会社」として株式会社の一種として存続しています。
有限責任社員と無限責任社員の違い
有限責任社員と無限責任社員の違いは、会社が借金を返せなくなったときに、社員個人がどこまで支払いを求められるかです。
ただし、「有限責任社員」であればすべて同じ扱いになるわけではありません。
合同会社の有限責任社員と、合資会社の有限責任社員では責任のしくみが異なります。
| 社員の種類 | 会社が借金を返せないときの責任 |
|---|---|
| 合同会社の有限責任社員 | 会社の借金を社員個人が負う必要は原則としてない |
| 合資会社の有限責任社員 | 未履行の出資額を上限として会社債務を弁済する責任を負う |
| 無限責任社員 | 出資額による上限なく、他の社員と連帯して会社債務を弁済する責任を負う |

合同会社と合資会社では、有限責任社員が出資を履行するタイミングに違いがあります。
合同会社では、会社を設立するまでに社員が出資額の全額を払い込まなければなりません。
100万円を出資して合同会社を設立する場合、社員は設立までに100万円をすべて払い込みます。
そのため、設立後に会社が借金を返せなくなっても、合同会社の社員であるという理由だけで、会社債務を個人で追加負担する必要はありません。
一方、合資会社の有限責任社員は、設立時点ですべての出資を履行していない場合があります。
たとえば、100万円を出資することになっている有限責任社員が40万円までしか出資しておらず、60万円が未履行だとします。
会社の財産だけでは債務を完済できない場合、この社員は、未履行となっている60万円を上限として会社債務を弁済する責任を負います。
無限責任社員はさらに責任が重く、会社の財産だけでは借金を返せない場合に、出資額にかかわらず、社員個人の財産から残った借金を支払わなければいけません。
こうした違いには法律上それぞれ名称があり、合同会社の社員や株式会社の株主のように、会社の債権者へ直接支払いをする責任を原則として負わないしくみを「間接有限責任」といいます。
一方、合資会社の有限責任社員のように、未払いの出資額の範囲で会社の債権者から直接支払いを求められるしくみを「直接有限責任」といいます。
参考:会社法第五百七十八条|e-Gov法令検索
参考:会社法第五百八十条|e-Gov法令検索
有限責任でも経営者個人に返済・損害賠償義務が生じるケースがある
株式会社の株主や合同会社の社員が有限責任であっても、経営者が別の立場で負った責任まで有限になるわけではありません。
特に会社を経営するうえで確認しておきたいのが、会社の借入れに対する「個人保証」と、取締役や業務執行社員として負う「損害賠償責任」です。
これらは、会社への出資者として負う有限責任とは別のしくみのため、しっかり把握しておきましょう。
会社の借入れで個人保証をしている場合
会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が会社の連帯保証人になることを「経営者保証」といいます。
経営者保証をしている場合、会社が融資を返済できなくなれば、経営者個人が会社に代わって保証した債務を返済する義務を負います。
参考:経営者保証|中小企業庁
たとえば、株式会社が金融機関から融資を受けるため、その会社の社長が経営者保障をつけたとします。
会社が融資を返済できなくなった場合、社長には株主としてではなく、会社の借金を保証した連帯保証人として返済義務が発生します。
中小企業などが金融機関からの融資を受ける場合は、会社としてではなく経営者個人の保証がないと、審査を通過できないケースも少なくありません。
そのため、株式会社など本来は有限責任のはずの会社の社長が、経営者保証によって実質的に無限責任と同等の状態になっていることもよくあります。
こうした事態を受け、金融庁や中小企業庁では、経営者保証に依存しない融資慣行を広げるための取り組みを進めています。
参考:経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について|金融庁
役員として損害賠償責任を負う場合
会社を経営する人は、出資者であるだけでなく、株式会社では取締役、合同会社では業務執行社員などになります。
そのため、出資者としては有限責任でも、経営を行う立場で法律上の義務に違反すれば、別に損害賠償責任を負います。
株式会社や合同会社では、取締役や業務執行社員などが自分の任務を怠り、それによって会社に損害を与えた場合、会社に対してその損害を賠償する責任を負います。
参考:会社法第四百二十三条|e-Gov法令検索
参考:会社法第五百九十六条|e-Gov法令検索
また、職務を行う際に悪意または重大な過失があり、それによって取引先などの第三者に損害を与えた場合には、その第三者に対しても損害賠償責任を負います。
参考:会社法第四百二十九条|e-Gov法令検索
参考:会社法第五百九十七条|e-Gov法令検索
この記事のまとめ:有限責任は出資者の責任範囲を限定するしくみ
有限責任とは、会社に出資した人が、会社の借金について無制限に責任を負わないためのしくみです。
株式会社の株主と合同会社の社員は有限責任であるため、自分で会社を設立して経営者になった場合でも、会社の借金がそのまま経営者個人の借金になるわけではありません。
一方、合名会社の社員や合資会社の無限責任社員は無限責任を負うため、会社の財産だけでは債務を返済できない場合には、社員個人も会社債務を弁済する責任を負います。
また、株式会社や合同会社を選んだとしても、経営者保証を付けた融資や、経営者としての損害賠償責任まで有限になるわけではありません。
会社を設立するときは、設立費用や税金だけでなく、その会社形態を選ぶことで自分がどこまで責任を負うのか、自分の望む会社経営はどのような組織が良いのかなども確認したうえで選択しましょう。
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