最終更新日:2025/12/4
合同会社の設立完全ガイド|費用6万円!最短2週間!書類の綴じ順・オンライン申請まで

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

合同会社の設立を検討する際、「費用はいくらかかるのか」「手続きは自分1人でも可能なのか」「期間はどれくらい見込んでおくべきか」といった疑問や不安が生じるかもしれません。
この記事では、それらの疑問をすべて解消し、誰でも迷わず合同会社を設立できるよう、具体的な手順や費用、必要書類などを網羅的に解説します。
結論、合同会社の設立は、電子定款を利用すれば登録免許税6万円から、準備期間を含めて約2週間で完了させることが可能です。株式会社の設立では最低でも20万円ほどの費用がかかるのに比べ、合同会社の設立では初期費用を大幅に抑えられます。
以下では、合同会社設立の6つのステップを図解付きで解説するのみならず、合同会社と株式会社の違いから、設立後に必須の社会保険・税務関係の手続きまで専門家の視点で詳しくまとめます。
最後まで読めば、合同会社設立に関する疑問がすべて解消され、自信を持って一歩を踏み出すことができるでしょう。


目次
【結論】合同会社の設立は「6万円~」「約2週間」でできる
合同会社の設立は、ポイントを押さえれば費用と時間を大幅に削減できます。その鍵になるのが電子定款の活用です。
そもそも定款(ていかん)とは、会社名や事業目的などの会社の基本ルールを定めた書類を指し、「会社の憲法」とも呼ばれます。電子定款は、この定款を紙ではなく電子データ(PDF)として作成・管理するものです。
電子定款を利用することで、合同会社の設立費用を6万円程度に抑え、約2週間で手続きを終わらせることが可能になります。
設立に必ずかかる費用を「法定費用」と呼びますが、法定費用には、定款を紙で作成するか電子データで作成するかで4万円の差額が生じます。
| 法定費用 | 電子定款の場合 | 紙の定款の場合 |
|---|---|---|
| 定款の印紙代※1 | 0円 | 4万円 |
| 登録免許税※2 | (最低)6万円 | (最低)6万円 |
| 合計 | (最低)6万円 | (最低)10万円 |
※1.印紙(収入印紙):印紙税を納付するための切手のような紙片
※2.登録免許税:法務局に会社情報を登録するための費用
定款の印紙代4万円は印紙税法に基づく税金で、電子データには適用されません。そのため、電子定款にすると印紙代をカットできます。登録免許税は、資本金の額に0.7%を乗じた金額(この金額が6万円に満たない場合は6万円)です。

代表税理士
森 健太郎
記事タイトルに提示した「6万円」は、あくまで合同会社設立の最低限の法定費用です。印鑑作成費(約1万円)や、必要書類の発行手数料(数千円)なども考慮すると、電子定款の場合で約7万円、紙の定款の場合で約11万円が現実的な費用になります。
設立までの約2週間の内訳は、事前準備に約1週間、法務局への登記申請から登記完了までに約1週間というのが目安です。
合同会社設立の手続きをする方法は、主に以下の4パターンになります。手数料や手間、失敗のリスクはそれぞれ異なるため、状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
| 設立方法 | 追加でかかる 手数料の目安 |
手間 | 失敗のリスク |
|---|---|---|---|
| ゼロから自分で設立 | 0円 | かかる | 高い |
| 民間の設立支援ツール(freeeやマネーフォワードなど) | 0~5,000円 | 少ない | 中程度 |
| 国のシステム(登記ねっとやOSSなど) | 0円 | かかる | 高い |
| 司法書士や税理士などの専門家に依頼 | 5万円~ ※実質0円の場合も |
ほぼない | ほぼない |
この記事では、まず自分で合同会社設立を完了させる具体的な手順を解説します。そして弊社独自の「設立でつまずいた理由トップ5」などを紹介しつつ、最後に「専門家に依頼するメリット」についてもまとめます。
【図解】合同会社設立の全手順6ステップ|差し戻しを防ぐチェックリスト付き
ここからは、最終ゴールである法務局への登記申請に向けた、合同会社設立の具体的な手順を6つのステップに分けて解説します。
結論、下図の順番に沿って手続きを進めることが、合同会社を設立する最短ルートです。
合同会社設立の流れ
-
- 会社の基本事項を決める
- 特に重要な決定事項は、商号(会社名)、本店所在地(会社の住所)、事業目的、資本金、社員構成、事業年度。
-
- 法人実印を作成する
- 代表者印(法人実印)、銀行印、角印の3本セットを業者に作成してもらうのが一般的。法定費用とは別に1万円ほどの費用がかかる。
-
- 定款を作成する【最安ルートの鍵】
- 会社の基本ルールを定款にまとめる。紙の定款ではなく電子定款を選択すると、印紙代4万円を節約できる。
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- 資本金を払い込む
- 資本金は代表社員の個人口座に払い込む。ステップ6で提出する払込証明書に添付するため、通帳のコピーなども用意しておく
-
- 登記申請書類を作成して正しく綴じる
- 登記申請に必要な8つの書類を作成してまとめる。印鑑証明書の有効期限、登記すべき事項の形式、書類の綴じ方などに注意が必要。
-
- 法務局へ登記申請を行う
- 本店所在地を管轄する法務局に登記申請をする。申請方法は、窓口・郵送・オンラインの3種類。申請から完了までは1週間ほどかかる。
なお、各ステップの最後には、登記申請で不備を指摘されやすいポイントをまとめた「差し戻しを防ぐチェックリスト」を設けています。チェックリストだけをまとめた資料も用意したので、よかったらご活用ください(この章の最後でも再掲します)。
登記手続きに不備があると、法務局から「補正」の連絡が来ることがあります。補正とは、申請書類の誤記や添付書類の不足など、軽微な不備があった場合に当局から求められる修正対応のことです。
幸い、補正の場合でも、適切に対応すれば当初から適正な申請があったものとみなされるため、正式な会社設立日が遅れる心配はありません。
それでも、補正があると平日の日中に法務局へ出向く手間などが発生し、貴重な時間をロスすることになります。差し戻しを防ぐチェックリストは、補正のリスクが最小限になるよう作成しました。
以下では、差し戻しを回避するポイントとあわせて、合同会社設立の各ステップを見ていきましょう。
ステップ1:会社の基本事項を決める
合同会社設立の第一歩は、今後の事業運営の根幹となる6つの基本事項を決めることです。
- 商号(会社名)
- 本店所在地(会社の住所)
- 事業目的
- 資本金
- 社員構成
- 事業年度
これらは、「会社の憲法」である定款の作成にも関わるため、1つずつ慎重に検討しましょう。
1.商号(会社名)
まず、会社の「顔」となる商号を決めます。商号には、会社法や商業登記法などで定められたいくつかのポイントがあります。
特に重要な商号決定のポイントは、下表のとおりです。
| 商号決定の ポイント |
具体的な内容 | 参考リンク |
|---|---|---|
| 会社の種類の明記 | 商号の前か後に必ず「合同会社」を含める | 会社法 第六条 第2項|e-Gov 法令検索 |
| 使用可能な文字 | 漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビヤ数字、一部の記号が使用可能 | 商号にローマ字等を用いることについて|法務省 |
| 住所・商号の重複 | すでに登記されている他の会社と同じ商号、かつその会社と同じ住所だと登記できない | 商業登記法 第二十七条|e-Gov 法令検索 |

代表税理士
森 健太郎
商号を決める際には、他社の商号だけでなく商品・サービス名(登録商標)にも注意しましょう。これらとかぶると会社のサイトが検索でヒットしないという問題も起こり得ます。既存の商号や商標は公開されているので、事前に要チェックです。
参考:法人番号公表サイト|国税庁
参考:商標検索|特許情報プラットフォーム
上記のポイントを押さえた会社名の具体的な決め方は、以下の記事でも詳しく解説しています。
2.本店所在地(会社の住所)
次に、事業の拠点となる本店所在地を決定します。本店所在地は、自宅や賃貸オフィス、バーチャルオフィスなど、さまざまな選択肢の中から自由に設定可能です。

代表税理士
森 健太郎
自宅を本店にする場合、「居住用以外の目的での利用が禁止されていないか」は事前に確認が必要です。賃貸マンションや公営住宅では利用目的が制限されていることもあるので、前もって管理人に聞いたり契約書を確認したりしましょう。
本店所在地は、あとから変更することもできます。ただし、本店移転では、各所への届出や取引先への連絡、変更登記など、多くの手間が発生します。自由度が高いとはいえ、安易に決めるのは禁物です。
ちなみに、将来の移転コスト、特に定款変更にかかるコストは「本店所在地を定款にどう書くか」で軽減することができます。定款の本店所在地の書き方は、下表の2パターンです。
| 定款の記載方法 | 記載例 | メリット・ デメリット |
|---|---|---|
| 最小行政区画まで※ | 東京都中央区 | 同区内での移転なら定款変更が不要で、手続きのコストを削減できる |
| 地番まで | 東京都中央区銀座3丁目7番3号 | 住所が明確になるが、同区内での移転でも定款変更が必要になる |
※最小行政区画:東京23区とその他の市町村
特別な理由がなければ、定款変更のコスト削減の余地を残せる「最小行政区画まで」の記載がおすすめです。
3.事業目的
次に、会社の事業目的を定めます。事業目的とは、定款にも記載する、会社が取り組む事業の内容を言語化したものです。
事業目的は、以下の原則を守って具体的に表現する必要があります。
| 事業目的の原則 | 意味 | NG例 |
|---|---|---|
| 適法性 | 法律に違反していない事業である | たばこ製造業 → ✕ 不適法 |
| 営利性 | 利益を追求する事業である | 慈善事業 → ✕ 非営利 |
| 明確性 | 誰が読んでも事業内容を理解できる | サービス業 → ✕ 不明確 |
たとえば「たばこ製造業」は、法律で日本たばこ産業株式会社(JT)にしか認められておらず、新設する合同会社の事業目的として不適法です。「慈善事業」のような非営利の活動も合同会社設立には向きません。
また「サービス業」のように事業目的がざっくりしすぎていると、内容が不明確なため補正対象になります。「飲食店の経営」のように、活動内容がわかる具体的な記載が必要です。

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森 健太郎
建設業許可や飲食店の営業許可といった国や自治体からの許認可(事業実施のお許し)が必要な事業もあります。そのような事業を行うには特定の文言を定款に記載しなければならないため、始めたい事業に許認可が必要かどうかは要チェックです。
なお、定款に事業目的をまとめる際には、最後に「前(各)号に附帯関連する一切の業務」という一文を加えておくと、あとで細々と事業目的を追加する手間が省けます。
4.資本金
次は、事業の元手となる資本金の額の決定です。法律上は、合同会社だろうと株式会社だろうと資本金額は1円から認められます。
法務省の登記統計によると、例年、合同会社の約半数は資本金「100万円未満」で事業を開始しています。株式会社のボリューム層は「100万以上300万円未満(約4割)」なので、多くの合同会社が比較的小さな資本で設立されているようです。
資本金の額は、会社の信用度を示す指標でもあります。最低額が1円とはいえ、あまりに少額だと金融機関からの融資や取引先との契約で不利になることもあるため、慎重な検討が必要です。
弊社では、合同会社の資本金は「初期費用(6万円~)+運転資金3~6カ月分」を目安に設定することをおすすめしています。
なお、許認可が必要な事業では、建設業許可の500万円のように、最低限の資本金額が定められている場合もあります。事業目的と同様、許認可の要件にも注意しましょう。
5.社員構成
社員構成とは「誰が経営を行うのか」や「誰が会社を代表するのか」といった社員の役割分担のことです。ここでの「社員」は出資者・経営者を指し、一般的な従業員という意味ではありません。
出資者であり経営者でもある社員ですが、経営面において適性の低い社員がいるケースもあるでしょう。そのような場合、業務執行(取引先との交渉や契約の締結、経営戦略の立案など)を、定款で特定の社員に限定することも可能です。
合同会社(持分会社)の代表者は「代表社員」と呼ばれ、代表社員は、行政手続きや訴訟行為などを含む一切の業務を行えます。特に規定がなければ、業務を執行する社員が会社を代表します。
- 社員:出資者であり経営者。原則、代表者でもある
- 業務執行社員:定款の定めにより会社の業務執行を担う社員。株式会社の取締役と同様の立ち位置だが、原則、代表者でもある
- 代表社員:会社の代表者。定款の定めにより特定の者を選定(業務執行社員を定めた場合はその中から選定)することができる
(持分会社の代表)
第五百九十九条 業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
社員構成は「定款で業務執行社員を規定するか」と「代表社員を選定するか」で大きく4パターンに分けられます。下表は、それぞれどのような役割の社員で構成されるかをまとめたものです。
| 社員構成のパターン | 各社員の役割 |
|---|---|
| パターン1 業務執行社員の規定なし =全社員が業務を執行 |
全社員 → 出資+業務執行+代表 |
| パターン2 業務執行社員の規定なし =全社員が業務を執行 +代表社員を選定 |
代表社員 → 出資+業務執行+代表 その他の社員 → 出資+業務執行 |
| パターン3 業務執行社員の規定あり =一部社員が業務を執行 |
業務執行社員 → 出資+業務執行+代表 その他の社員 → 出資※ |
| パターン4 業務執行社員の規定あり =一部社員が業務を執行 +代表社員を選定 |
代表社員 → 出資+業務執行+代表 その他の業務執行社員 → 出資+業務執行 その他の社員 → 出資※ |
※出資(や通常業務)のほか、業務執行社員を監視する役割を担う
合同会社は1人で設立することもできます。この場合、その1人が「社員」と「代表社員」を兼ねる形(表のパターン1)になります。
6.事業年度
最後に、会社の会計期間である事業年度を決定します。事業年度は消費税の納税義務に影響するため、税務上、重要な決定事項です。
一部の例外を除いて、資本金が1,000万円未満の新設法人の場合、1期目と2期目は消費税が免除されます。
参考:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
もちろん、インボイス制度の影響で1期目から消費税の課税事業者となる会社が増えているのも事実です。
とはいえ、設立後の慌ただしい時期に決算業務を行うのは得策ではありません。設立月の前月を決算月と設定し、第1期の事業年度はできるだけ長くするのが王道になります。
- 商号:「合同会社」は含まれているか?使用できない文字を使用していないか?商号・住所ともに同一の会社はないか?
- 本店所在地:自宅(賃貸)の場合、事業用としての利用が禁止されていないか?
- 事業目的:適法性・営利性・明確性の3原則を満たしているか?許認可が必要な事業ではないか?
- 資本金:最低資本金額の要件がある許認可事業の場合、その要件を満たしているか?
- 社員構成:代表社員や業務執行社員の役割分担を明確に決定したか?
- 事業年度:設立予定の月と決算月が近すぎていないか?
ステップ2:法人実印を作成する
会社の基本事項(特に商号)を決めた後にやるべきなのが、法人実印の作成です。法人実印とは、法務局に登録する会社の正式な印鑑のことで、登記申請の際に必要になります。
会社の印鑑は、役割の異なる以下の3種類をまとめて作るのが一般的です。印鑑を使い分けると、法人実印の紛失・盗難・偽造による不正出金などのリスクを分散でき、セキュリティー対策にもなります。
| 印鑑の種類 | 主な用途 | 特徴・役割 |
|---|---|---|
| 代表者印 =法人実印 |
設立登記申請、不動産取引、重要な契約 | 法務局に登録する、会社の実印にあたる印鑑。一般に印面は二重の円で構成され、外側に会社名、内側に「代表社員之印」の文字が刻印される。直径1~3cmという法令上のサイズ規定(下記)もある |
| 銀行印 | 銀行口座の開設、手形・小切手の発行 | 会社の資産を管理する財務専用の印鑑。代表者印と分けて管理するのが一般的 |
| 角印 | 請求書、見積書、領収書の発行 | 日常業務で使う認印にあたる印鑑。法的な効力はなく、会社が書類を確認・発行したことを示す |
商業登記規則 第九条 第3項
3 印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。
引用元 e-Gov 法令検索
これらの印鑑は、街の印鑑専門店やインターネット通販で購入できます。作成には数日から1週間程度かかるため、スケジュールに余裕を持って注文しましょう。
価格は材質によってさまざまですが、安価な素材であれば3本セットで1万円程度から作成可能です。
また、法令上、法務局に登録する印鑑は「照合に適するもの」であることが必要です。ゴム印のように、経年によって印面が変形してしまう印鑑は実印登録できません。
商業登記規則 第九条 第4項
4 印鑑は、照合に適するものでなければならない。
引用元 e-Gov 法令検索
最近ではオンライン申請も増え、申請自体は電子署名(PDFなどの電子文書に押す、実印のデジタル版のような技術)でも行えます。ただ、設立後の口座開設や契約締結などの実務面では、実物の法人実印が不可欠です。
一般には、法定費用とは別に、印鑑作成費用(約1万円)も準備することになります。
会社の印鑑は業者に作成してもらうため、何らかの不備で手続きに支障が出ることはまれです。一応、法令上の規定については事前にチェックしておきましょう。
- 法人実印のサイズ:印面は直径1~3cmの範囲内に収まっているか?
- 印面の材質:変形しやすい素材(ゴム印など)ではないか?
ステップ3:定款を作成する【最安ルートの鍵】
ステップ1で決定した基本事項をベースにしつつ定款を作成します。この定款の作成方法こそが、設立費用を最も安く抑える「鍵」です。
定款には、PCで作成したデータを印刷する「紙の定款」と、PDFデータに電子署名を付与する「電子定款」の2通りがあります。
下表は、2種類の定款のメリット・デメリットです。
| 定款の種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 紙の定款 | 特殊なPCスキルや専用機器が不要で、誰でも直感的に作成できる | 収入印紙代4万円のコストが発生する |
| 電子定款 | 印紙代4万円が不要になるため、設立費用を最小限に抑えられる | マイナンバーカードやICカードリーダーの準備、PDFへの電子署名の作業などに時間と手間がかかる |
PDFのような電子データ(電磁的記録)は、印紙税の課税対象である「文書」にはあたらないとされています。紙の定款に課される4万円の印紙税が電子定款では不要になるため、紙か電子かで4万円の差額が生じるわけです。
取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い
印紙税の課税対象となるのは、課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。
引用元 国税庁
電子定款を作成するには、電子文書が「本人によって作成され、改ざんされていないこと」を証明する電子署名という処理が必要です。マイナンバーカードやICカードリーダーといった特殊な機器の準備に手間がかかるので、その点はご注意ください。
定款には、会社法で定められた記載事項があります。これらは「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」と呼ばれ、特に絶対的記載事項は、書かなければ定款自体が無効になる最重要項目です。
| 定款の記載事項 | ポイント | 具体例 |
|---|---|---|
| 絶対的記載事項 | 1つでも欠けると定款自体が無効になる、最も重要な項目 | 商号、本店所在地、事業目的、社員の氏名・住所、全社員が有限責任である旨※、社員の出資金額 |
| 相対的記載事項 | 定款に記載して初めて法的な効力を持つ項目。記載がなくても定款自体は無効にならない | 業務執行社員の選任方法、代表社員の選定方法、社員の加入・退社、利益の配当など |
| 任意的記載事項 | 法律に違反しない範囲で自由に定めることができる項目。定款以外で定めても有効 | 業務執行社員の員数、業務執行社員の報酬、事業年度など |
※有限責任:会社の債務について出資額の範囲内で責任を負うこと
紙の定款か電子定款かを問わず、初めて会社を作る人にとって定款をゼロから作成するのは大変な作業です。
以下の記事で無料公開している「定款自動作成システム」では、必要事項を入力するだけで、体裁の整った定款のWordファイルをダウンロードできます。合同会社にも対応しているので、定款作成の第一歩としてぜひご活用ください。
- 記載事項:絶対的記載事項(商号、本店所在地、事業目的など)に漏れはないか?
- 事業目的:ステップ1で決定した内容が、正確に定款に記載・反映されているか?
- 電子定款:作成したPDFファイルに、正しく電子署名が付与されているか?
ステップ4:資本金を払い込む
定款の作成が完了したら、次は資本金の払込みです。登記申請の際には、資本金の払込みはもちろん、実際に資本金が準備できたことの証明も必要になります。
払込みにおける重要ポイントは、以下の3点です。払込先や払込日に不備があると補正対象になるため、よく確認しましょう。
| 払込みのポイント | 注意点 |
|---|---|
| 払込先 → 代表社員の個人口座 |
代表社員ではない、他の(業務執行)社員の口座は認められない。残高が資本金額以上でも入金した履歴を残すことが必須 |
| 払込日 → 定款作成日以降の日付 |
定款作成日より前の日に払い込むと会社法の規定(下記)に反するため、資本金の払込みとして認められなくなる |
| 払込方法 → 振込み、または現金手渡し |
どちらの方法でも払込証明書と客観的な証拠(通帳のコピーや領収書)が必要 |
(合同会社の設立時の出資の履行)
第五百七十八条 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。
払込みを証明する最も一般的な方法は、各社員が代表社員の口座に自身の出資額を振り込む方法です。これにより、通帳に「いつ」「誰が」「いくら」出資したのか客観的な記録が残ります。
最終ステップの登記申請では、払込みの証明として下図のような払込証明書を法務局に提出します。

振込みの形式をとった場合、払込証明書には通帳のコピーを添付します。コピーする箇所は「紙の通帳」と「ネットバンク」で変わるため、以下の図表を参考に添付書類の準備を進めましょう。
| 紙の通帳 | ネットバンク |
|---|---|
| 払込先 → 代表社員の個人口座 |
代表社員ではない、他の(業務執行)社員の口座は認められない。残高が資本金額以上でも入金した履歴を残すことが必須 |
| 下記3カ所をコピーして添付 ・表紙 ・表紙の裏の見開きページ ・資本金の入金が記帳されたページ ※該当箇所にマーカーや下線を引く |
以下の事項がわかるキャプチャー画像を添付 ・銀行名 ・支店名 ・口座番号 ・名義人 ・資本金の入金履歴 ・複数枚にわたる場合、同一の口座であることがわかる記載(口座番号や氏名など) |


なお、合同会社では、代表社員が出資金を現金で受け取り、領収書を作成して添付書類とする方法も認められています。領収書の作成に抵抗がない人はご検討ください。
- 振込人と払込先:定款記載の社員が代表社員に対して払込みを行なっているか?
- 払込みのタイミング:資本金の払込日や領収書の日付は、定款作成日以降になっているか?
- 払込みの証明書類:必要情報がわかる箇所を適切に添付しているか?
ステップ5:登記申請書類を作成して正しく綴じる
いよいよ準備も終盤です。ステップ5では、これまでに作成した定款や払込証明書などを登記申請書類としてまとめます。
綴じ方の不備や書類の不足は、法務局から確認の連絡や補正の要求を受けることが多いミスの1つです。慎重に作業を進めましょう。
まず、合同会社の設立登記(と法人実印の印鑑登録)に必要な書類を確認します。具体的な書類は以下の8種類です。これらの書類は、法務局のWebサイトからひな形をダウンロードして作成できます。
| 必要書類 | 書類の概要 |
|---|---|
| 1.合同会社設立登記申請書 | 会社の基本情報を記載する登記申請書の本体(表紙)。法務局「第3 持分会社(合同会社)|商業・法人登記の申請書様式」からひな形のダウンロードが可能 |
| 2.収入印紙貼付台紙 | A4の白紙に、登録免許税(最低)6万円分の収入印紙を貼付したもの。上記の登記申請書のひな形に見本がある。印紙は郵便局や法務局内の販売所で購入できる |
| 3.登記すべき事項(別紙 or CD-R) | 商号、本店、目的、資本金、代表社員の氏名・住所などの登記情報をまとめた資料。法務省「登記事項の作成例一覧」をもとにテキスト形式で作成する |
| 4.定款 | ステップ3で作成した、会社の基本ルールを定めた書類。電子定款の場合はPDFを印刷したものを提出する |
| 5.払込証明書 | ステップ4で作成した、資本金の払込みを証明する書類(通帳のコピーなどを含む)。代表社員が作成し、法人実印を押印する |
| 6.代表社員の印鑑証明書 | 市区町村役場で取得する、個人実印の証明書。発行から3カ月以内の原本の提出が必要 |
| 7.印鑑届書 ※必須ではないが実務上は必要 |
ステップ2で作成した法人実印を法務局に登録するための書類。法務局「第8 印鑑届書|商業・法人登記の申請書様式」からひな形のダウンロードが可能 |
| 8.印鑑カード交付申請書 ※必須ではないが実務上は必要 |
登録した法人実印の印鑑証明書を発行するときに必要な「印鑑カード」の申請書 |
上記の書類がそろったら、次にそれらを綴じます。
綴じ方は以下のとおりで、ホチキスで留める書類(A)と、その他の書類(B)をクリップでまとめれば、申請書類一式の完成です。
| 書類のグループ | 綴じ方 | 順番 |
|---|---|---|
| A:ホチキスで留める書類 | 左側2カ所をホチキスで留め、綴じ目に契印(ページの差替えがないことを証明する印)を押す | 1.合同会社設立登記申請書 2.収入印紙貼付台紙 3.登記すべき事項(別紙※) 4.定款 5.払込証明書とその添付書類(払込証明書一式には契印不要) |
| B:ホチキスで留めない書類 | - | 6.代表社員の印鑑証明書 7.印鑑届書 8.印鑑カード交付申請書 |
※登記すべき事項をCD-Rで提出する場合はグループBの最後へ


なお、複数の社員の中から代表社員を選定した場合や、現物出資(金銭以外のモノでの出資)がある場合など、追加で他の書類が必要になるケースもあります。そのような場合の必要書類については、以下の記事をご参照ください。
- 書類の網羅性:登記申請書や定款、払込証明書など、必要な書類はそろっているか?
- 収入印紙:登録免許税(最低)6万円分の収入印紙は貼付したか?
- 登記すべき事項:記載事項に漏れや誤りはないか?法務省指定の形式で作成したか?
- 印鑑証明書の期限:代表社員の印鑑証明書は発行から3カ月以内のものか?
- 綴じ方と押印:申請書や定款の束は、順番を守ってホチキス留めしたか?ページの綴じ目に契印は押されているか(払込証明書以外)?
ステップ6:法務局へ登記申請を行う
最後に、ステップ5で作成した書類一式を法務局に提出します。申請手続き自体は株式会社の場合と同様で、書類提出が終われば、合同会社の手続きはほぼ完了です。
ここで最も重要なのは、申請先の法務局です。申請書類は、ステップ1で決めた本店所在地を管轄する法務局に提出する必要があります。法務局の管轄は、必ず当局のWebサイトで確認しましょう。
下表に、管轄法務局の例を3つ示します。同じ都道府県内でも市区町村によって管轄が異なることがある点には注意が必要です。
| 本店所在地 | 管轄法務局 |
|---|---|
| 東京都 新宿区 | 東京法務局 新宿出張所 |
| 東京都 渋谷区 | 東京法務局 渋谷出張所 |
| 大阪府 大阪市 中央区 | 大阪法務局(本局) |
参考:管轄のご案内|法務局
登記申請においては、申請日にも注意が必要です。会社設立日は、法務局に書類を提出した日になります。管轄違いの法務局に提出してしまうと、申請の取下げを求められ、正しい法務局へ再申請した日に設立日がずれ込んでしまいます。
また、法務局は土日祝日は開いていません。特定の日を設立日にしたい場合は、その日が平日であることを確認し、その日に合わせて申請を行うことになります。

代表税理士
森 健太郎
最新の法令改正情報によると、2026年2月から、法務局の休日でも設立日にできる特例が商業登記規則で定められる見込みです。この改正案が確定したら、特定の日を設立日にする選択肢は大きく広がります。
参考:「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集|e-Govパブリック・コメント
申請の方法は、窓口持参・郵送・オンライン申請の3通りです。それぞれにメリットとデメリットがあるため、状況に合わせて選択しましょう。
| 申請方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 窓口持参 | 不備があればその場で軽微な補正(押印ミスなど)に対応できる。設立日を確実にねらえる | 法務局の開庁時間(平日の日中)に出向く手間がかかる |
| 郵送 | 法務局へ出向く手間が省ける | 申請書類が法務局に到着した日が設立日となるため、設立日のコントロールが難しい。不備があった場合の補正に時間がかかる |
| オンライン申請 | 24時間申請が可能(設立日は法務局で申請が受理された日)。自宅やオフィスで申請を完結できる | 事前にICカードリーダーや専用ソフトの準備が必要。初めての場合、操作に慣れるのに時間がかかる |
書類を提出したら、登記の完了を待ちます。申請から登記完了までは1週間~10日ほどかかるのが通例です(法務局の繁忙期や地域によっても異なります)。
法務局の繁忙期は3~4月、12月あたりですが、この時期に限らず、申請から完了までには1カ月程度かかることも珍しくありません。各々、法務局のWebサイトに掲示されている「登記完了予定日」を事前に確認するとよいです。

代表税理士
森 健太郎
登記が完了したら、設立した会社の登記簿謄本(登記事項証明書)と印鑑証明書が取れるようになります。これらは設立後に行う口座開設や税務署への届出などの必要書類で、それぞれ3通ほど取っておくのが一般的です。
- 管轄法務局:提出先の法務局は、本店所在地を管轄する法務局で間違いないか?
- 申請日:設立日に希望がある場合、申請日(窓口持参日や郵送到着日)を調整できるか?
以上で、合同会社設立の6ステップが完了しました。この手順に沿って慎重に手続きを進めれば、ゼロから自分で設立することも十分可能です。これまでに提示したチェックリストのまとめは下記リンクからダウンロードできます。
なお、ここで解説した合同会社の設立方法は、あくまで一般的なものです。実際に準備を進めていると「自分の会社の場合はどうなるだろう」「これで本当に合っているのか」と疑問や不安が出てくるかもしれません。

代表税理士
森 健太郎
そのような場合は、会社設立実績日本一の「ベンチャーサポート税理士法人」の無料相談をぜひご活用ください。作成した書類を専門家がチェックしたり、設立後の税務や資金繰りについてアドバイスしたり、万全の体制で会社設立をサポートいたします。
書面?オンライン?あなたに合った合同会社設立の申請方法
合同会社設立のための登記申請には、大きく分けて「書面」でする方法と「オンライン」でする方法の2つがあります。どちらを選ぶかで費用や手間が大きく変わるため、準備できる環境やPCスキルに合わせて最適な方法を選びましょう。
法人登記のオンライン申請の手段には、以下の2つのシステムがあります。どちらも国が運営しており、自宅やオフィスから申請できる点は共通です。
- 登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)
- 法人設立ワンストップサービス(OSS)
以下では、書面申請とオンライン申請の比較、上記2つのシステムの特徴、それらを踏まえた最適な申請方法の選び方をまとめます。
書面申請とオンライン申請の比較
書面申請の最大のメリットは、オンライン申請に必要な特別な機器(ICカードリーダーなど)やPCスキルが不要で、多くの人にとって馴染みのあるやり方で直感的に手続きを進められる点です。
一方、紙の定款の作成に印紙代4万円がかかる点は、書面申請のデメリットだといえます。また、法務局へ出向く手間(窓口申請の場合)や、設立日のコントロールが難しい点(郵送申請の場合)も難点の1つです。
登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)とは?
「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」は、法務省が提供する、登記申請に特化したシステムです。利用するにはマイナンバーカードやICカードリーダーを準備し、専用の「申請用総合ソフト」をPCにインストールする必要があります。
「申請用総合ソフト」は、申請後の処理状況(受付完了、補正指示の有無など)をソフト上で簡単に確認できるという点で便利です。書面申請の場合と比較して、法務局に電話などで確認する手間が省けます。
ただし、次の「法人設立ワンストップサービス」とは異なり、設立後に必要な届出の機能はありません。
参考:登記・供託オンライン申請システムとは|登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと
法人設立ワンストップサービス(OSS)とは?
「法人設立ワンストップサービス(OSS)」は、デジタル庁が運営するマイナポータルを通じて、会社設立に関する多様な手続きを一度に行えるシステムです。
設立登記申請だけでなく、設立後に必要となる税務署や年金事務所への各種届出もまとめてオンラインで行えるのが最大のメリットになります。
利用するには、マイナンバーカードと、それを読み取るためのICカードリーダーも必要です。申請はマイナポータルを通じて進めますが、初めて利用する場合は操作に慣れるまで時間がかかるかもしれません。
結論:どの方法を選ぶべきか?ケース別おすすめガイド
ここまで解説した3つの申請方法(書面、登記ねっと、OSS)について、それぞれの特徴を比較し、どのような人におすすめかをまとめました。
現在の状況や、どこに手間や費用をかけたいかを考え、最適な申請方法を選択しましょう。
| 申請方法 | こんな人に おすすめ |
メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 書面 | ・PC操作が苦手 ・設立費用を抑えることを重視しない |
・特別な機器の準備が不要 ・不備があれば窓口で教えてもらえることもある ・窓口持参の場合、特定の設立日をねらいやすい |
・紙の定款に印紙代4万円がかかる ・窓口持参の場合、法務局へ行く手間がかかる ・郵送の場合、設立日のコントロールが難しい |
| 登記ねっと(登記・供託オンライン申請システム) | ・マイナンバーカードを持っている ・費用や手間を最小限に抑えたい ・登記申請だけをオンラインで行いたい |
・印紙代4万円が不要 ・法務局へ出向く手間を省ける ・申請状況をオンラインで確認可能 |
・ICカードリーダーなどが必要 ・専用ソフトのインストールが必要 ・操作に慣れが必要 |
| OSS(法人設立ワンストップサービス) | ・マイナンバーカードを持っている ・費用や手間を最小限に抑えたい ・設立後の手続きもまとめてオンラインで行いたい |
・印紙代4万円が不要 ・法務局へ出向く手間を省ける ・申請状況をオンラインで確認可能 ・設立後の届出も一括申請可能 |
・ICカードリーダーなどが必要 ・操作に慣れが必要 |
株式会社と合同会社、どっちを選ぶべき?違いを5項目で比較
会社設立を考える際、多くの人にとって「株式会社」と「合同会社」のどちらを選ぶべきかは悩みの種です。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが適しているかは事業規模や将来展望によって異なります。
ここでは、設立にかかる法定費用、意思決定、利益の配分、社会的信用度、資金調達の方法という5つの項目で両者を比較し、どちらを選ぶべきかの判断材料を提供します。
| 比較ポイント | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 1.法定費用(最低額) | 安い(6万円~) ・登録免許税 6万円~ ・定款の印紙代 0円 ※電子定款の場合 ・定款認証手数料 0円(認証不要) |
高い(約16万5,000円~) ・登録免許税 15万円~ ・定款の印紙代 0円 ※電子定款の場合 ・定款認証手数料 1万5,000~5万円 |
| 2.意思決定 | 迅速 → 原則として社員全員の同意で決定。定款で別段の定めも可能 |
時間がかかる → 多くの場合、株主総会での決議が必要 |
| 3.利益の配分 | 自由 → 定款で定めれば、出資額に関係なく自由に配分可能 |
原則、出資比率に応じる → 保有する株式数に応じて配当 |
| 4.社会的信用度 | 比較的低い → 歴史が浅く知名度が低い。代表取締役と名乗れず、取引先や顧客からの信用に悩むこともある |
高い → 誰もが知る最も一般的な会社形態で、知名度・信頼性が高い |
| 5.資金調達の方法 | 限定的 → 金融機関からの融資や社員からの追加出資がメイン |
多様 → 外部からの出資(増資)による資金調達も可能。株式上場を目指せる |
法定費用の安さと意思決定の迅速さ、利益配分の自由度は合同会社の大きなメリットです。特に個人事業主からの法人成りや、少人数でスピーディーに事業を進めたい場合に適しています。
一方、株式会社は社会的信用度が高く、株式発行による多様な資金調達が可能です。「将来的に事業規模を拡大したい」「多くの投資家から資金を集めたい」という場合は、株式会社を選ぶほうが有利といえます。
事業計画や将来像に合わせて、どちらの会社形態が最適か慎重に検討しましょう。
設立後に必須!社会保険・税務関係の手続き期限カレンダー
法務局での登記が完了し、無事に合同会社が設立されても、まだ手続きは終わりではありません。設立後は、年金事務所や税務署など、複数の役所に届出を行う必要があります。
各種の届出には期限があり、手続きを怠ると、青色申告のような税制上の優遇措置を受けられなかったり、社会保険への加入が遅れたりする不利益が生じます。
下図は、設立後の忙しい時期でも期限を確実に守れるよう、主な届出の期限・提出先・必要書類をまとめた「設立後の手続き期限カレンダー」です。

以下では、このカレンダーに合わせて、設立後の主要な手続きを解説します。
社会保険の手続き(期限:設立後5日以内)
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きには、設立後5日以内という非常に短い期限が設定されています。提出先は、本店所在地を管轄する年金事務所です。
たとえ社長1人の会社であっても、役員報酬を受け取る場合には社会保険への加入が法律で義務付けられています。個人事業主の場合と異なり、法人になると強制加入となる点には注意が必要です。
| 主な提出書類 | 提出期限 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 会社設立から5日以内 |
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 被保険者となった日から5日以内 |
| 健康保険 被扶養者(異動)届 | 扶養に該当した日(または扶養から外れた日)から5日以内 |
参考:1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構
新規適用届は会社自体が社会保険に加入するための書類、被保険者資格取得届は社長や従業員が加入者になるための書類です。新規加入者に扶養家族がいる場合は、被扶養者(異動)届も同時に提出します。

代表税理士
森 健太郎
社会保険の届出には登記事項証明書などの添付書類も必要です。現実的には「設立後5日以内」にすべての準備を終えるのは難しい面もありますが、手続き期限カレンダーを活用して可能な限りスピーディーに動くようにしましょう。
税務関係の手続き(期限:設立後1カ月以内など)
次に、法人税や消費税、源泉所得税といった税金の計算・申告に関わる手続きです。税務関係の届出もすべての会社で必要となります。主な提出書類は下表のとおりで、提出先は管轄の税務署です。
| 主な提出書類 | 提出期限 |
|---|---|
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 給与の支払開始日から1カ月以内 |
| 法人設立届出書 | 設立日から2カ月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立日から3カ月を経過した日、または第1期事業年度終了日のいずれか早い日の前日まで |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 特例を受けたい月の前月末まで |
青色申告の承認申請書は、欠損金の繰越控除(赤字を最大10年間繰り越せる制度)や減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入などの特典を受けるために提出するものです。
なお、法人設立届出書は、都道府県税事務所や市町村役場にも提出します。提出期限は自治体によって異なり、たとえば東京都では、会社設立から15日以内に管轄の都税事務所に届出を行います(東京23区内での設立なら、区役所への提出は不要)。
法人事業税・法人都民税|仕事と税金
事業を開始した日から15日以内に、法人設立・設置届出書を所管の都税事務所(都税支所)・支庁に提出してください。
引用元 東京都主税局
法人設立届出書については、こちらの記事で詳しく解説しています。
労働保険の手続き(期限:雇用から10日以内など)
最後に、パート・アルバイトを含む従業員を1名でも雇用する際に必要となる、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きです。提出先は労働基準監督署とハローワークになります。
| 主な提出書類 | 提出期限 |
|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 従業員を雇用した日の翌日から10日以内に労働基準監督署に提出 |
| 雇用保険 適用事業所設置届 | 事業所を設置した日の翌日から10日以内にハローワークに提出 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | 従業員を雇用した月の翌月10日までにハローワークに提出。適用事業所設置届と同時に提出するのが一般的 |
| 労働保険 概算保険料申告書 | 保険関係が成立した日の翌日から50日以内に労働基準監督署に提出。保険関係成立届と同時に提出するのが一般的 |
従業員を雇った場合、まず労働基準監督署に保険関係成立届を提出します(雇用した日の翌日から10日以内)。次に、その控えとあわせてハローワークに適用事業所設置届を提出します(こちらも同様に10日以内)。
特に注意すべきは「労働基準監督署→ハローワーク」の順番で手続きを進める点です。労働基準監督署に受理された保険関係成立届の控えが、続く適用事業所設置届の提出で必要になります。期限だけでなく、提出する順序にも気をつけましょう。
労働保険に限らず、設立後の届出先は多岐にわたり、書類の数も多くて大変です。先述の「法人設立ワンストップサービス(OSS)」を利用すると、法人設立届出書をはじめとする複数の届出を一度の手続きで済ませることもできます。
法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました
これまで法人を設立する際には、設立届出書の提出のような複数の各種手続を行政機関毎にそれぞれ個別に行う必要がありました。
「法人設立ワンストップサービス」では、マイナポータルという一つのオンラインサービスを利用して、これらの一連の手続を一度で行うことができるようになります。引用元 国税庁

代表税理士
森 健太郎
合同会社の設立を自分で行う場合、OSSのような便利なシステムも強い味方です。より正確を期して手続きを進めたい人は、起業支援に特化した税理士への相談もぜひご検討ください。
【ベンチャーサポート独自】設立でつまずいた理由トップ5
これまで解説してきた内容をもとに進めれば、合同会社の設立手続きは自分の力だけでも完了できます。しかし、実際に手続きを進めるなかで思わぬ落とし穴にはまってしまう人も多いです。
ここでは、設立実績3万7,000社を超える弊社「ベンチャーサポート税理士法人」が、合同会社設立でありがちな失敗例を「設立でつまずいた理由トップ5」と題してご紹介します。
- 定款の事業目的に不備があった
- 払込証明書の作成ミス
- 書類の綴じ順・押印ミス
- 登録免許税(収入印紙)の金額間違い
- オンライン申請時のミス
先輩たちがつまずいた理由を事前に知っておけば、法務局で補正を行う手間などを極力回避でき、スムーズな設立を実現できます。それでは第1位から詳しく見ていきましょう。
第1位:定款の事業目的に不備があった
設立手続きで多くの人がつまずくのが、定款に記載する事業目的の不備です。ステップ1でも解説したとおり、事業目的は「適法性」「営利性」「明確性」の3つの原則を満たす必要があります。
なかでも「明確性(誰が読んでも事業内容を理解できるか)」については問題があるケースが多く、たとえば下表の左列のような抽象的で不明確な表現は補正対象となる可能性が高いです。
| 不明確な目的の例 | 明確な目的の例 |
|---|---|
| サービス業 | ・飲食店の経営 ・学習塾の運営 |
| コンサルティング業 | ・経営及びマーケティングに関するコンサルティング業務 ・コンピュータシステム及びソフトウェアの企画、制作、開発、販売、賃貸借、保守及びコンサルティング業務 |
| IT関連業 | ・ソフトウェアの企画、開発、設計、販売、及びそれらの請負 ・ウェブサイト、ウェブコンテンツ、その他インターネットを利用した各種サービス等の企画、制作、販売、配信、運営及び管理 |
「どのような分野のサービス業なのか」「何のコンサルティングを行うのか」といった具体的な内容が不明確だと、登記官から補正を求められます。
修正すること自体はそこまで難しくないですが、平日に法務局へ出向く手間などが発生するため、登記完了までの期間が予定より遅れてしまう原因にはなり得ます。
これを防ぐためには、競合他社のWebサイトなどを参考に具体的な事業内容を記載し、最後に「前号に附帯又は関連する一切の業務」という柔軟性のある一文を添えておきましょう。弊社の「事業目的一覧」もぜひご活用ください。
第2位:払込証明書の作成ミス
資本金が正しく払い込まれたことを証明する「払込証明書」に関するミスも、設立手続きでよくあるつまずきポイントです。形式的な不備だけでなく、払込みのプロセス自体に誤りがあるケースも少なくありません。
ステップ4でも解説したとおり、払込証明書は登記申請における重要な証拠書類です。登記官は、提出された書類を見て「いつ」「誰が」「いくら」資本金を払い込んだか、そしてその払込みが代表社員の口座になされているかを確認します。
特に注意したいよくあるミスは、払込証明書の添付書類に関する下記3点です(もちろん添付書類そのものを忘れるミスもありますが、ここでは一歩踏み込んだ失敗例をまとめています)。
| 払込証明の よくあるミス |
詳細 |
|---|---|
| 代表社員以外の口座に振り込んでいる | 払込先は代表社員の個人口座(新しく個人口座を作る必要はない)。他の社員の口座への振込みはNG |
| 振込履歴ではなく残高を証明している | 証明すべきは「口座にいくら入っているか」ではなく「いつ誰からいくら振り込まれたか」という取引の事実。残高証明書や、単なる残高画面のコピーでは証明にならない |
| 紙の通帳とネットバンクの画面が混在 | 添付書類は1つの口座の記録で統一する必要がある。紙の通帳のコピーとネットバンクのキャプチャー画像を混ぜて提出するのはNG |
これらの不備があると、払込みの事実を客観的に証明できないと判断され、補正が入る可能性があります。証明書類を作成する際は、表のポイントを再度確認し、不備のないように準備を進めましょう。

代表税理士
森 健太郎
ネットバンクに資本金を振り込む場合、パソコン画面のキャプチャーとスマホ画面のスクリーンショットを混ぜた添付書類もNGになる恐れがあります。どちらかに統一するのが無難です。
第3位:書類の綴じ順・押印ミス
書類の内容自体は完璧でも、綴じ方や押印でミスをしてしまうケースはあります。特に、複数ページにわたる書類が一体であることを証明する「契印」の押し忘れは、見落としやすいポイントです。
ステップ5で解説したとおり、登記書類は大きく2つのグループ(A:ホチキス留めをする書類、B:ホチキス留めしない書類)に分けられます。
書類の綴じ順や契印の要否を間違えると、登記官は書類の正確性や完全性を確認できません。
| 綴じ方・押印の よくあるミス |
詳細 |
|---|---|
| 書類の綴じ順が違う | 所定の順番(登記申請書→収入印紙貼付台紙→登記すべき事項→定款→払込証明書)に沿って綴じられていないと登記官の確認に支障が出る。綴じ順が違うだけで即補正とはならないが、確認の連絡が来ることはある |
| 契印の押し忘れ | 申請書・収入印紙貼付台紙・登記すべき事項・定款の束には契印が必要。契印がないとページの差替えがないことを証明できない |
| 綴じなくていい書類を綴じてしまう | 印鑑証明書、印鑑届書、印鑑カード交付申請書は、それぞれペライチの状態で提出する。他の束と一緒にホチキス留めはしない |
上記のようなミスがあると、法務局の登記官に「登記手続きの形式的な要件が満たされていない」と判断される可能性があります。
結果、法務局から連絡があり、綴じ順の確認や補正の対応などに時間をとられ、最悪の場合、印鑑を押し直すために平日の日中に法務局へ出向く手間も発生し得るわけです。
登記書類が完成したら、ステップ5のチェックリストも活用し、書類の網羅性や綴じる順番、契印などについて、指差し確認するくらいの慎重さで必ずチェックしましょう。
第4位:登録免許税(収入印紙)の金額間違い
登記申請時に納める登録免許税の金額間違いも、補正につながるよくあるミスです。
合同会社の場合、登録免許税は「資本金の額 × 0.7%」で計算されます。この計算結果が6万円に満たないなら、一律で6万円を納付する決まりです。
たとえば資本金が100万円の場合、計算が必要だと思い込んで「100万円 × 0.7%=7,000円」の印紙を貼ってしまうミスが起こり得ます。正しくは、登録免許税の最低額6万円の収入印紙を貼付しなくてはなりません。
合同会社の資本金の額と、実際に納める登録免許税額の関係は下表のとおりです。このほか、株式会社の登録免許税の最低額(15万円)とも混同しないよう注意しましょう。
| 合同会社の 資本金額の目安 |
登録免許税額 | 補足 |
|---|---|---|
| 857万円以下 | 一律6万円 | 計算結果が6万円未満になるため、最低額6万円を納付する |
| 858万円以上 | 資本金額 × 0.7% | 計算結果が6万円を超えるため、その金額を納付する |
まとめると「資本金が約857万円を超えるまでは、登録免許税は一律6万円」と考えておくとよいでしょう(実際の合同会社の設立では、ほとんどのケースで6万円となります)。
不足分の印紙を追加購入したり再度法務局へ出向いたりといった手間を省くためにも、ステップ5で準備した台紙には、正しい金額の収入印紙を貼付してください。
第5位:オンライン申請時のミス
国のシステム(登記ねっと・OSS)や民間の設立支援ツールを利用したものの、途中でつまずいてしまったというケースはよく聞きます。
「合同会社設立の申請方法」で解説したとおり、オンライン申請は、印紙代4万円を節約でき、法務局へ出向く手間も省ける強力な手段です。しかし同時に、技術的な問題や操作上のつまずきポイントも存在します。
| オンライン申請の つまずきポイント |
詳細 |
|---|---|
| PCや接続機器の環境エラー | 登記ねっとやOSSは、推奨環境(特定のOS/ブラウザ)が厳格。ICカードリーダーのドライバが認識されない、ポップアップがブロックされるといった技術的な問題でつまずきやすい |
| ツールの操作・連携エラー | 民間の設立支援ツールで手続きをすべて済ませようとしたが、途中で挫折したという相談事例もある。最終段階の電子署名で「マイナポータル」との連携がうまくいかず、時間を取られることもある |
| 入力内容の確認漏れ | 設立支援ツールは、必要事項を入力するだけで「それらしい形」に整えてくれる。その完成度や利便性ゆえに入力内容の確認がおろそかになり、そのまま申請してしまい、補正のリスクが上がる |
オンライン申請をする場合は、必ず各種サービスが推奨する動作環境をチェックしましょう。
自分のPC環境が要件を満たしているか、ICカードリーダーが正しく接続・認識されているかを事前に確認しておけば、申請の直前でつまずくもどかしい事態を回避できます。

代表税理士
森 健太郎
会社設立をサポートする便利なツールは多くありますが、設定や操作でつまずいた結果、オンライン申請を断念して相談に来られる方もいらっしゃいます。正確さとスピードの両立を求めるなら、なるべく早い段階で専門家への依頼もご検討ください。
合同会社設立に関するよくある質問(FAQ)
最後に、合同会社の設立に関して多くの人が疑問に思う点とその回答をまとめます。これまでのステップで解決しなかった細かな疑問や不安も、ここで解消しましょう。
資本金は1円でも大丈夫?
法律上は、資本金1円でも合同会社の設立は可能です。2006年の会社法施行により、以前までの最低資本金制度(有限会社で最低300万円など)は撤廃されました。
しかし、実務上は社会的信用の面で大きなデメリットがあるため、1円での設立はおすすめできません。資本金は会社の「体力」を示す指標であり、この金額があまりに少ないと会社としての信用力を内外に示せないからです。
具体的には、下表の2つの場面で問題が生じます。
| 影響が出る場面 | 具体的なデメリット |
|---|---|
| 取引先の与信調査 | 新規取引の際、与信調査(経営状態の調査)で資本金1円だと判明すると、経営基盤が弱いと判断され、取引を敬遠される可能性がある |
| 金融機関の融資審査 | 金融機関(日本政策金融公庫など)の融資審査において「自己資金ゼロ」とみなされ、融資を受けるのが困難になる |
このほか、建設業(500万円)や人材派遣事業(2,000万円)など、事業によっては許認可の要件として一定の資産基準が定められているものもあります。このような場合、そもそも資本金1円では事業を開始できません。

代表税理士
森 健太郎
資本金が1円でも、設立手続きにかかる実費(約6万円~)は当然に発生します。この費用は資本金に含めることができるので、資本金の額を設立費用より安い金額にすることにメリットはほとんどありません。
役員(社員)が複数いる場合の注意点は?
合同会社を複数名で設立することは、事業の幅が広がる一方、将来のトラブルの種を多く含むことにもなります。

代表税理士
森 健太郎
設立当初は社員同士の関係が良好でも、経営方針で対立したり、最悪の場合、仲間割れや離婚によって経営が停滞したりといったケースは弊社でもありました。ステップ1で検討する「社員構成」は、現在の関係性だけで安易に決めるのはリスキーです。
1名での設立と異なり、複数名での設立では「誰が」「どう決めるか」「利益をどう分けるか」などのルールを明確にしないと、小さな意見の対立が経営の停滞に直結します。
特に会社法上の合同会社の初期設定は、株式会社の常識とは異なる部分もあり、創業者の意図と合わないことが多いため注意が必要です。
下表は、複数名で設立する場合に、初期設定と創業者の意図がずれがちな2つのルールをまとめたものです。弊社が実際に目撃したトラブル事例とあわせて、ご確認ください。
| 注意すべきルール | 会社法上の初期設定(定款に定めない場合) | 発生しうる問題(実例) |
|---|---|---|
| 重要な意思決定 | 出資額に関係なく、社員の過半数で決定される(会社法590条2項) | 2名での設立で出資割合が9:1でも、それぞれ議決権は50%が原則。双方の意見が合わないと、主要な契約の締結や融資の申込みなどの重要事項に関わる意思決定が停滞する |
| 利益の配分 | 原則、出資額の割合に応じて分配される(会社法622条) | 専門スキルやアイデアで貢献した社員(出資額は少ない)に利益を多く分配することができず、社員の不公平感につながる |
合同会社は「お金」よりも「人」のつながりを重視する会社形態だといえます。よって、複数名で設立する際の最大の注意点は「定款のひな形をそのまま使わないこと」です。
議決権の割合を出資割合としたり、出資額に関係のない利益配分を規定したり、意思決定や利益の配分については社員同士で事前に話し合ったうえで独自のルールを定款に反映しましょう。
また、上記のほか、退社した社員は持分の払戻しを請求できるという点も覚えておくとよいです。「役員が辞任するときに出資金相当の支払いが発生するとは思わなかった」と後悔するケースもあります。
合同会社の場合、定款で議決権について規定しても、社員離脱時の「持分払戻し」という財産上のリスクが株式会社より高く残ります。資金の圧迫などのトラブルも避け、より安定した経営を望むなら、初めから株式会社を設立するのもありです。
外国籍でも合同会社は設立できますか?
外国籍の人でも日本で合同会社を設立し、社員(役員)になることはできます。たとえ代表社員の全員が海外に居住していても、合同会社の設立登記は可能です。
ただし、登記申請の必要書類は日本人と異なります。日本に住民票があれば印鑑証明書を使えますが、海外に居住している場合、本国の公証役場で発行したサイン証明書と宣誓供述書、その日本語訳文で代用することになります。
また、外国人が日本で経営活動を行う場合、在留資格「経営・管理」(通称:経営・管理ビザ)も必要です。法務局で行う「設立登記」と、出入国在留管理庁で行う「経営・管理ビザの審査」は、まったく別の手続きである点に注意しましょう。
経営・管理ビザには、資本金の額や日本語能力などに関する要件もあります。「会社を作ったのにビザの審査が通らず、日本でビジネスができない」といった事態を避けるためにも、要件を事前に確認し、必要であれば専門家に相談するとよいです。

代表税理士
森 健太郎
経営・管理ビザの要件は2025年10月から大幅に厳しくなりました。最新の改正内容を踏まえた外国人の会社設立については、以下の記事をご参照ください。
設立後に商号や目的を変更できますか?
会社設立後でも、商号(会社名)や事業目的を変更することは可能です。
ただし、これらは「登記すべき事項」にあたる会社の公式情報であるため、変更するには法務局への「変更登記」の手続きが必要になります。そして設立登記と同様、変更登記にも登録免許税が発生します。
登録免許税の金額は変更内容によって異なり、主な変更事項とその登録免許税額は下表のとおりです。
| 変更内容 | 登録免許税 | 備考 |
|---|---|---|
| 商号(会社名)の変更 | 3万円 | 新しい法人実印の作成費用や、銀行・税務署への届出も別途必要 |
| 事業目的の変更・追加 | 3万円 | 将来行う可能性のある事業は設立時の定款に含めておくとコストを抑えられる |
| 本店所在地の変更 | 法務局の管轄内 3万円 |
管轄外移転(渋谷区から新宿区への移転など)の場合は費用が6万円になる |
| 法務局の管轄内 6万円 |
特に事業目的については、将来行う可能性がある事業を設立時の定款にできるだけ含めておくと、後の追加費用3万円を節約できます。
なお、商号変更と目的変更は、同時に申請することで登録免許税を合計3万円に抑えることも可能です。
とはいえ、数万円のコストと書類作成の手間が生じることには変わりありません。将来的な変更を最小限にするためにも、ステップ1の基本事項は慎重に決めましょう。
専門家に依頼するメリットは何ですか?
専門家(司法書士や税理士)に依頼する最大のメリットは「設立手続きの時間を大幅に節約できること」と「設立後の税務戦略まで見据えたサポートを受けられること」です。

代表税理士
森 健太郎
登記申請は司法書士の独占業務ですが、起業支援に特化した税理士事務所は司法書士と提携していることも多いです。弊社を含むそのような事務所では、ワンストップ(1つの窓口)で設立手続きから設立後の税務までサポートを受けることができます。
合同会社を自分で設立する場合、この記事で解説した6つのステップをすべて細かく調べながら準備する必要があり、かかる時間と労力は膨大です。
一方、専門家に依頼した場合、定款の作成や法務局への登記申請といった専門的な手続きはすべて代行してもらえます。自分で行うのは、会社の基本事項の決定や印鑑証明書の取得、資本金の払込みなどの簡単な準備作業のみで、負担が大幅に軽くなります。
自分で設立する場合と専門家に依頼する場合の違いは、下表のとおりです。
| 比較ポイント | 自分で設立 | 専門家に依頼 |
|---|---|---|
| 設立手続きの手間 | すべて自分で調べながら行う。法務局へ出向く手間や、補正のリスクもある | 手続きの負担は大幅に軽減。専門的な書類作成や申請はすべて代行してもらえる。自分で行うのは簡単な準備作業のみ |
| 設立手続きの費用 | 紙の定款を選んだ場合は4万円のコストがかかる。もちろん登録免許税6万円などの実費はマスト | 電子定款で作成するため印紙代は0円。一般に専門家の代行手数料がかかるが、設立後の税務顧問契約を前提に手数料0円になる事務所もある |
| 設立後の節税戦略など | 役員報酬の決定や税務署への届出、融資の準備など、設立後の専門的な手続きも自分で管理・実行する必要がある | 設立時の段階から、節税に直結する役員報酬額の設定や日本政策金融公庫の融資の相談も可能。期限の短い設立後の届出も代行してもらえる |
創業者が本来集中すべきなのは、書類作成ではなく、売上を上げるための営業活動です。
多くの税理士事務所では、税務顧問契約を前提とすることで、設立手続きの費用が実質0円になる体制が整えられています。設立後に税理士をつける予定なら、最初から専門家に依頼したほうが全体の出費も少なく、貴重な時間も節約できるケースが多いです。
合同会社を自分で設立する人も安心!専門家の無料相談で最終チェックを
ここまで、合同会社を設立するための具体的な手順を解説してきました。6つのステップに沿って進めれば、誰でも設立登記を完了させることができます。
しかし、実際に書類を作成していると「自分の事業目的に不備はないか」や「この定款で将来トラブルにならないか」など、それぞれ独自の不安要素も出てくるかもしれません。
そのようなときは、ぜひ弊社の無料相談をご活用ください。登記申請前であれば、作成した書類を専門家が最終チェックし、法務局から補正が入るリスクを極限まで小さくするアドバイスを提供いたします。
| 無料相談でできること | 具体的なメリット |
|---|---|
| 書類の最終チェック | 自分で作成した定款や申請書類に法的な不備がないかを専門家に確認してもらえる |
| 節税・資金調達のアドバイス | 最適な役員報酬額の設定、日本政策金融公庫の融資審査のポイントなど、節税や資金調達に関する事項について税理士からアドバイスを受けられる |
| 将来的なリスクの回避 | 複数名で設立する場合の定款(議決権や持分払戻しのルール)が、代表者の意図に沿ったものになっているかを専門家に確認してもらえる |
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立に関する無料相談を実施しています。税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているためワンストップで相談が可能です。レスポンスの速さにも定評があるため、初めての方もお気軽にご相談ください。















