最終更新日:2025/12/2
合同会社の電子定款の作り方と記載事項は?設立時の手続きから定款変更まで解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
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この記事でわかること
- 電子定款の基本的な仕組みと紙定款との違い
- 電子定款の作成手順と注意点
- 電子署名の方法と必要な手続き
合同会社を設立する際に必ず作成する定款には、紙定款と電子定款の2種類があります。近年では、コスト面や利便性の高さから電子定款を選ぶ人が増えています。
電子定款はPDFなどのデジタル形式で作成・保存するもので、法的効力は紙定款と同じです。ただし、電子定款の作成には手続きが必要で、電子署名などの準備もしなければなりません。
この記事では、合同会社における電子定款の基本知識や作成方法、必要な記載事項、変更手続き、登記のルールを解説します。会社の設立を考えている人が、スムーズに電子定款を導入できるようにわかりやすく紹介します。


目次
電子定款とは?
合同会社を設立する際に必要となる定款には、紙で作成・保存する「紙定款」と、データで作成・保存する「電子定款」があります。近年では電子定款の利用が増えています。
電子定款は紙ではなくデジタルデータで保存する
電子定款は、紙に印刷せず、PDFなどの電子データの形式で作成・保存するタイプの定款です。紙より保管が楽になるなどのメリットがあるため、電子定款を選ぶケースが多くなっています。
すべての会社で必ず定款が必要
定款は、会社の基本的なルールを定めた重要書類です。会社の憲法やルールブックとも言われます。
株式会社はもちろん、合同会社でも定款の作成と保管は法律で義務づけられています。定款には記載事項などのルールが定められており、内容に不備があると設立登記に支障が出るため、慎重に作成する必要があります。
電子定款と紙定款は法的な意味は同じ
電子定款と紙定款は、法的な効力はまったく同じです。
重要なのは、定款が会社法に定められた要件を満たしているかと定款の内容であって、形式の違いで効力に差が出ることはありません。
電子定款の利用率が高い
定款と言えば、紙の定款をイメージするかもしれません。しかし、近年では会社設立時には電子定款を選択する人の割合が9割を超えています。
費用面でのメリット
電子定款が選ばれる理由のひとつに「費用面でのメリット」があげられます。
合同会社設立の際には定款を法務局に提出するのですが、紙定款の場合は収入印紙を貼らなければなりません。一方、電子定款の場合は印紙が不要です。
そのため電子定款を選ぶだけで4万円のコストカットになります。
電子定款の作り方とひな形
電子定款は、WordやGoogleドキュメントなどの文書作成ソフトで作成し、電子署名を添付してPDF化します。
その後、法務局へ提出して設立登記を行います。ここでは、電子定款の作り方の流れを確認します。
文章を作成してデジタルデータとして保管する
まずは、会社名や所在地、事業目的などの必要事項を記載した定款の原案を作成します。このとき、日本公証人連合会のひな形を参考にすると安心です。
自分の会社に合わせた内容をひな型に反映させ、後述する電子署名を付けた上でPDF形式で保存します。
法務局への提出方法
法務局への提出方法は、オンラインでの提出と、CD-Rなどの現物での提出があります。
オンライン提出では、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。
法務局に出向いて手続きをする場合は、CD-Rなどに保存したデータを持参します。
自分で定款を作成・提出する場合は、提出方法や必要書類、保存形式など、わからないことは事前に法務局に問い合わせしましょう。
電子署名について
電子定款は、作成後に「電子署名」をしなければなりません。これは紙定款に印鑑を押す作業と同様です。
電子定款には物理的に印鑑を押すことができないため、電子署名を添付します。
電子署名の方法
電子証明書は、公的個人認証サービス(マイナンバーカード)や法務省の商業登記電子認証制度などを利用できます。
マイナンバーカードを利用する場合は、市区町村の窓口などでマイナンバーカードに電子証明書を付与してもらいます。その上でICカードリーダと専用ソフト(登記・供託オンライン申請システムのPDF署名ソフトと公的個人認証サービスのソフト)を使用して電子署名を行います。
電子署名は、電子定款の手続きのハードルになることがあるため、自分で行う場合は事前に調べて準備しましょう。
参考:電磁的記録の認証(定款を含む私署証書の認証)の嘱託|法務省
PDFに変換するだけでは足りない
電子定款は、単に作成した定款のWordファイルをPDFに変換するだけでは不十分です。電子定款は、電子署名が付与されていなければ法的に有効とはみなされません。
電子署名の要件を満たしていない場合、定款は無効とされる可能性もあります。パソコンなどのデジタルスキルに自信がない人や、申請が初めての人は、行政書士や司法書士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
合同会社で電子定款を利用する場合
合同会社でももちろん電子定款を利用することができます。
電子定款を利用すれば設立コストを抑えることができ、会社設立の手続きを効率化することができます。
作成方法や定款の意味合いは株式会社と同じ
定款の役割やルールは、合同会社でも株式会社でも同じです。ただ、手続きについては大きな違いがあります。株式会社では設立時に定款認証が必要であるのに対し、合同会社では定款認証は不要です。
つまり、合同会社の設立は、電子定款を作成し、登記の際に法務局にPDFデータと必要書類を提出するだけで完了します。設立費用や時間を節約したい場合には、電子定款の活用が非常に有効です。
電子定款はWordなどで作成してもいい
電子定款は、Wordなどの普段使用している文書作成ソフトを使って作成可能です。特定のフォーマットや形式、使用する文書作成のソフトに制限はありません。
重要なのは、定款の内容です。必要な記載事項が正しく盛り込まれていれば、どんな文書作成ソフトを利用しても問題ありません。
定款を作成したらPDF形式に変換し、電子署名を付与して法務局に提出します。記載ミスがあると登記手続きに支障が出るため、記載内容には十分注意しましょう。
電子定款の定款変更
会社を運営していく中で、事業の拡大や内容変更に伴い、定款変更が必要になることがあります。電子定款であっても、変更手続きと保管のルールは紙定款と同じように扱われます。
合同会社の場合は総社員の同意
合同会社で定款変更をする場合は、原則としてすべての社員(出資者)の同意が必要とされています。
合同会社には取締役会や株主総会が存在しないため、定款はすべての出資者の合意がなければ変更できません。ただ、定款であらかじめ定めることで一部の社員の同意で変更可能とすることはできます。
社員が複数いる場合は、同意書を事前に準備しておくといいでしょう。社員が1人の場合は、本人の意思のみで定款変更が可能です。
原始定款は変更しない
定款を変更しても、設立時に作成した「原始定款」はそのまま保管します。変更するからといって原始定款を編集するということはしません。電子定款の場合でもこれは同様で、変更箇所を明記した新しい定款と議事録や同意書を一緒に保管します。
原始定款は会社の定款の原点を証明する文書として重要です。定款を変更する場合は、変更内容に関する議事録や同意書を追加で作成して、定款変更の履歴を残すのが原則です。
議事録を原始定款と一緒に保管する
定款を変更したら、定款変更の事実と内容を示す議事録(または同意書)を作成して、原始定款とあわせて保管します。
作成する議事録には、以下のような項目を記載します。
- 開催日
- 出席社員の氏名
- 変更する定款の内容
- 全社員の同意書
電子定款の場合、変更後の議事録もデータで保管して問題ありません。
定款には会社法で定められた記載事項がある
定款には、会社法で定められた記載事項があります。この記載事項のルールは会社の形態や定款の形式に関わらず適用されるルールです。
絶対的記載事項
絶対的記載事項は、定款に必ず書く項目です。絶対的記載事項のない定款は成立しません。
絶対的記載事項は以下の項目です。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 社員の氏名(名称)と住所
- 社員が有限責任社員である旨
- 社員の出資の目的とその価額(評価の標準)
株式会社とは内容が一部異なるため注意しましょう。
相対的記載事項
相対的記載事項は、書かなければ定款が成立しないというものではありません。ただし定款に記載しなければ効力が生じない項目です。
会社設立後のスムーズな運営のために会社設立時に決めておく方が望ましいです。
代表的な相対的記載事項としては以下のようなものがあります。
- 代表社員の選定方法
- 社員の加入・退社
- 利益の配当
任意的記載事項
任意的記載事項は、絶対的記載事項でも相対的記載事項でもない項目です。相対的記載事項のように書かなければ効力がないということもありません。
できるだけはっきりさせておきたいことがあれば、任意的記載事項として記載できます。
相対的記載事項の一例としては以下のものがあげられます。
- 業務執行社員の員数
- 業務執行社員の報酬
- 事業年度
定款変更をしたら登記が必要になるケースがある
定款変更では、法務局での変更登記が必要なケースがあります。変更登記が必要になる条件は電子定款でも紙定款でも同様です。
定款変更と変更登記について
定款変更は、総社員の同意を経て定款を変更する手続きです。電子定款の場合は、定款変更を承認した議事録や同意書を原始定款と一緒に保管します。
一方、変更登記は絶対的記載事項や役員の変更など、登記事項に該当する箇所を変更した場合に法務局で行う手続きです。
法務局に出向いて手続きすることもできますし、オンラインでの手続きも可能です。
登記事項に変更がある場合は変更登記が必要
定款の形式に関係なく、登記事項についての変更がある場合は必ず法務局で変更登記を行います。
ただし、定款変更をしたら必ず変更登記が必要というわけではないため注意しましょう。
登記懈怠について
変更登記が必要であるにもかかわらず、登記を行わずに2週間の期限が過ぎてしまった状態を登記懈怠(けたい)といいます。
場合によっては過料に処せられる可能性もあるため、注意が必要です。
合同会社でも電子定款の利用が進んでいる
電子定款は、定款を紙でなく電子データで保管するというものです。法的な効力は紙定款と同様です。電子定款を活用することで、設立時のコスト削減や手続きの効率化を図ることができます。
ただし、電子定款の作成にはPDF変換や電子署名など、パソコンスキルが必要な工程が多くあります。また、定款変更の際には議事録や同意書の保管も重要です。必要に応じた登記申請などでは法律の知識も求められます。
これらの作業はすべて自分で行うことも可能ですが、確実にスムーズに手続きを進めたい場合は、司法書士や行政書士といった専門家に相談するのがおすすめです。会社設立を失敗のないものにするために、必要に応じて専門家のサポートを受けながら進めましょう。












