最終更新日:2025/10/15
合同会社の払込証明書は領収書でOK?領収書に記載する宛名についても解説!

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 合同会社設立時に必要な「払込証明書」について
- 払込証明書に関する注意点
- 領収書の宛名について
合同会社を設立する際に必要な書類のひとつに「払込証明書」があります。これは出資金(資本金)を実際に払い込んだという事実を証明するもので、会社の設立登記の際に必要です。
合同会社の設立時には「払込証明書は領収書で代用して問題ないのか」「どのように宛名を書けばいいのか」といった疑問が生じることもあります。
この記事では、合同会社設立時の払込証明書の基本的な役割や、領収書での代用について解説し、払込証明書のテンプレートを紹介します。また、合同会社の領収書の宛名の書き方についても触れています。ぜひ、参考にしてください。


目次
払込証明書は領収書でOK
合同会社の設立登記で必要な「払込証明書」は、会社の資本金を払い込んだことを証明する書類です。
株式会社では、出資者(株主)が金融機関の口座に振り込む形式が定められています。合同会社の場合はより柔軟な対応が認められており、領収書で代用することも可能です。
ここでは、払込証明書の役割や提出が必要な場面を想定して実務上の取扱いを確認します。
払込証明書は資本金を支払った証明
払込証明書は、会社設立時の資本金が実際に会社に振り込まれたことを証明する書類です。 会社設立時の定款に記載されている資本金(出資金)が実際に銀行口座に振り込まれていることを証明しなければなりません。
このとき、資本金と同額以上の金額が振り込まれていれば問題ありません。資本金額より多く振り込まれたとしても、金額が多い分には問題ありません。ただし、不足している場合は認められないため注意しましょう。
会社の資本金額は取引先などからの信用にも関わる重要な情報となるため、誤記や偽りがないことを確認すべく払込証明書が求められます。
払込証明書が必要な場面
払込証明書はどのような場面で必要になるのでしょうか。払込証明書の提出が求められる場面を解説します。
会社設立のときの登記手続き
合同会社の設立登記をする際に、出資金の払込みが実際に行われていることを証明するために、払込証明書(または領収書)を法務局へ提出します。払込証明書がなければ資本金を確認できないため、会社の設立登記が受理されません。
ただし、合同会社は、出資者と経営者が同一であるため、出資金の払込みは設立者が開設した個人口座に行います。また、現金でやりとりした場合は、領収書をもって払込証明書の書類とすることができます。
増資
会社設立後に事業拡大などを目的として資本金を増やすことを「増資」といいます。増資を行う際にも、実際にお金が払い込まれたことを証明するために払込証明書を提出します。
合同会社で増資をするためには、現在の社員が追加で増資を行うか、社員を追加する手続きが必要です。社員を追加する場合は、現在の社員全員の同意が必要です。そして、出資金の払込みだけでなく原則として変更登記をしなければなりません。
資本金の振込みは発起人が行う
会社設立時の資本金は、出資者が代表社員に対して払い込むことで成立します。合同会社では、発起人と代表社員が同一人物であるケースも多いため、自己の口座から事業用の口座へ振り込む形でも問題ありません。
重要なのは「定款に記載されている金額の出資金が確かに払い込まれた事実を証明すること」です。そのため、領収書や払込証明書を正確に作成する必要があります。
会社法のルールは?
出資に関するルールは、会社法34条に定められています。出資金に関するルールは株式会社と合同会社で異なり、以下ではこの点について解説します。
合同会社の場合は現金のやりとりで問題ない
株式会社の場合、株式を引き受けた者(出資した人・株主)は、銀行口座に資本金の振込みをしなければなりません。そしてその通帳の写しで払込みを証明する必要があります。
これに対して、合同会社は株式の制度がないため、現金でのやりとりでも出資金の払込みができます。株式会社のような、金融機関への払込みは義務として定められていません。
ただし、現金取引の場合でも「誰が・いつ・どのように・いくら払ったか」が客観的に確認できる書面を残しておくことが重要です。登記申請時には、領収書や払込証明書の提出が求められるため、形式には注意しましょう。
払込証明書の作り方
払込証明書の作り方ですが、合同会社では、現金で出資した場合は通帳の写しを添付する必要がなく、領収書で代用することが認められています。
払込証明書の作成にあたっては、法務局に提出するときに必要とされる内容と形式を押さえておかなければなりません。ここでは、払込証明書のテンプレートを使いつつ、作成時の注意点を押さえて正しい証明書の作成方法を解説します。
払込証明書のテンプレート
払込証明書の内容は比較的シンプルですが、必要な要素を網羅していることが重要です。以下のような項目を含めて作成するとよいでしょう。
- 払込日(資本金を受け取った日)
- 払込金額(出資額)
- 払込者の氏名
- 払込みを受けた者(通常は代表社員)の氏名
- 発行日
- 書類タイトル(例:払込証明書)
- 署名・押印
法務局の公式ページに払込証明書のテンプレートがあるので、こちらを利用することもできます。
銀行口座に振込みをした場合、払込証明書には通帳のコピーまたは口座画面のキャプチャーを添付します。全体の作業の流れは次のとおりです。
- 出資金を払い込む
- 通帳のコピーを用意する
- 払込証明書を作る
- 法務局に提出する
紙の通帳がある場合は、払込完了後に以下のページをコピーします。
- 表紙
- 見開きページ
- 資本金が入金されたページ
まず、通帳の表紙を口座の名義人がわかるようにコピーします。続いて、見開きページもコピーしましょう。このとき銀行印の印影が確認できるようにしてください。
そして、入金の年月日と金額が明確に読めるように調整して、資本金が入金されたことがわかる記帳ページをコピーします。
この3枚のコピーを払込証明書に添付します。
なお、ネットバンキングに振込みをした場合は通帳がないため、以下の項目がわかる部分のキャプチャーを印刷して提出します。
- 銀行名
- 支店名(支店番号)
- 口座番号名義人資本金の入金履歴
このキャプチャーは通帳の代わりになります。銀行のロゴや口座の名義人、振込金額がわかる画像を用意しましょう。
キャプチャーを用意したら、必ず紙に印刷して必要事項が読み取れることを確認してください。
領収書で代用できる
合同会社の設立では、払込証明書を領収書で代用することも可能です。株式会社のように必ず銀行口座に支払いを行う必要がないため、領収書でもよいとされています。
資本金の支払いは必ず必要
合同会社でも株式会社でも、資本金の払込みは必ず行う必要があります。たとえ出資額が1円だったとしても「払ったことを証明する書類」がなければ会社の設立登記は認められません。
また、資本金の金額は、将来的には融資や取引上の与信調査の際に重要な項目となるため、実際に会社に対して用意されたお金がいくらなのかは非常に重要です。
言うまでもなく、出資金を支払っていないのに払ったことにする行為は許されません。合同会社では、定款で定めることで「業務執行権のない社員」となることはできますが、出資せずに経営者になることはできません。
合同会社の領収書の宛名は?
領収書は、会社の経費処理や税務調査の際に重要となります。
業務上の支出が発生したときには、可能な限り正しい宛名で領収書を発行・受領することが求められます。
ここでは、合同会社の宛名表記の注意点や略称、個人名での処理について整理します。
合同会社の略称
日常の書類作成の場面では、合同会社を略称で表記することがあります。
合同会社の略称は「(同)」が一般的です。領収書の宛名に記載する社名でもよく使用されています。
また、金融機関などでは「(ド)」と略されることもあります。略称を使用しても税務上は問題ありません。
領収書は正式な会社名を記載する
領収書には、原則として「正式な会社名」を記載するのが適切です。登記された名称と一致させておくことで、後々のトラブルを防ぐことにつながります。
とはいえ、実務ではよく略称が使用されます。また、税務でも略称の使用に大きな問題はないとされています。
代表税理士
森 健太郎
合同会社はあまり耳なじみがないため、領収書を発行してもらうときに「どんな字ですか?」と聞かれることもあります。実は、領収書の宛名は「合同会社」という法人形態の表記がなくても問題ありません(もちろん、できるだけ正確に書くほうがよいです)。なお、「上様」は社名ではないため、宛名として望ましくありません。
個人名でも経費にできる
領収書の宛名が仮に個人名であったとしても、その支出が会社の事業のために使われたのであれば経費として処理できます。支出の内容が明らかに会社の業務に関係していれば、経費として計上できるのです。
例えば「合同会社〇〇の社員の出張先での宿泊費」であれば、領収書の宛名が宿泊した社員の氏名でも問題ないということです。
重要なのは「宛名が誰か」ではなく「何のために使ったお金なのか」という事実です。
宛名がない領収書はどうなる?
領収書は、支出の証拠書類として会計・税務処理のうえで重要な書類です。では、宛名の記載がない場合はどうなるのでしょうか。
社内での精算に関しては問題ない
社内での立替経費の精算などにおいては、領収書の宛名が空欄でも、支出の事実や業務との関連性がはっきりとわかるものであれば、大きな問題になることは少ないでしょう。
たとえば、社員が出張中に現金で支払った交通費や宿泊費について、宛名なしの領収書が提出されたとしても、経費の目的や使途が明らかであれば精算が認められます。
税務上は宛名が必要
税務上では、領収書の宛名はできる限り正確に記載することが必要です。ただし「正式名称の一部が省略されていても、会社を識別できれば問題ない」という側面もあります。
たとえば、「合同会社〇〇カンパニー」を「〇〇カンパニー」と記載しても、識別ができれば問題がないということです。
一方で、「上様」という表記や完全な空欄は、税務調査時に否認されるリスクがあるため注意が必要です。高額かつ継続的な支出の場合は、会社名を省略せずに記載してもらうよう心がけましょう。
宛名なしはだめ
消費税の仕入税額控除を適用する場合は、帳簿や請求書などの記載事項の条件があります。まず「買い手の氏名または名称」が明記されていなければなりません。
税務上は、宛名なしの領収書は認められていません。略称の使用は構いませんが、空欄の領収書は認められないため、必ず社名を記入した領収書を発行してもらいましょう。
合同会社でも領収書は大切な書類です
合同会社の設立や運営において、払込証明書や領収書はどちらも重要な書類です。
払込証明書とは、会社に資本金を支払ったことを証明する書類です。設立登記や増資の際には、資本金の払込みを証明するための書類が必要になります。合同会社の場合は、領収書で代用することも可能です。
また、会社を運営する中で発生する日々の経費の処理において、領収書の宛名の有無が税務上の判断に影響を与える場合もあります。そのため、宛名はできるだけ正確に記入することが大切です。会社名が判別できるように記載し、個人名であっても業務上の支出であることが明確であれば、経費として処理できます。
払込証明書も領収書もどちらも重要な書類なので、発行する際には正確に記入するようにしましょう。