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最終更新日:2026/9/8

法人設立ワンストップサービスの使い方と注意点を税理士が解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

ベンチャーサポート司法書士法人代表司法書士。
東京司法書士会所属(登録番号:第7627号)
1987年生まれ、香川県出身。
青山学院大学卒業後、都内の司法書士法人に補助者として勤務しながら、2014年司法書士試験に合格。合格後から今日に至るまで、多岐にわたる知識、経験を培う。
2018年ベンチャーサポート司法書士法人の代表社員に就任。

PROFILE:https://vs-group.jp/startup/profile_writing/#p-tana

法人設立ワンストップサービスの使い方と注意点を税理士が解説

会社を設立するときは、法務局への設立登記に加え、税務署・年金事務所・地方公共団体など、複数の行政機関にそれぞれ届出を行う必要があります。
法人設立ワンストップサービスを利用すれば、これらの届出をオンラインでまとめて申請できます。

ただし、「オンラインで完結するなら便利そうだ」と考えて利用を始める方は多いものの、いざやってみると添付書類や電子署名の準備でつまずくケースが珍しくありません。
最初に行うかんたん問診でも、税務や登記の専門知識がないと「はい/いいえ」を選べない項目がいくつも含まれており、名称から想像するほど簡単ではないのが実情です。

この記事では、法人設立ワンストップサービスの利用手順と、つまずきやすいポイントの回避方法を解説します。
合同会社の申請手順や、かんたん問診で迷いやすい項目の判断基準にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

法人設立ワンストップサービスとは?できること・できないこと

法人設立ワンストップサービスは、マイナポータル上で提供されている、法人設立に必要な届出をまとめて行えるオンライン申請サービスです。
設立登記の申請だけでなく、税務署・地方公共団体への届出、社会保険・労働保険の一部手続きなどにも対応しています。

参考:サービストップ|法人設立ワンストップサービス

使用する際に料金などは発生せず、またログインしなくても、かんたん問診や申請情報の入力まで進めることができます。
「まず試しに画面を見てみたい」という場合は、ログイン不要の状態で操作感を確認するとよいでしょう。

【一覧表】法人設立ワンストップサービスで申請できる主な手続き

法人設立ワンストップサービスで申請できる手続きは数多くありますが、代表的なものは以下のとおりです。

分野 主な手続き
登記 定款認証、法人設立登記
国税 法人設立届、青色申告承認申請、給与支払事務所等の開設届、インボイス登録
地方税 都道府県・市町村への法人設立届
社会保険 健康保険・厚生年金保険新規適用届
労働・雇用保険 保険関係成立届、雇用保険関係届
その他 GビズIDプライム

このようにさまざま手続きを、窓口ごとに出向くことなくオンラインでまとめて申請できるのがこのサービスの特徴です。

参考:法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました|国税庁

法人設立ワンストップサービスでできないこと

一方で、法人設立ワンストップサービスの対象外となっている手続きもあります。

法人設立ワンストップサービスはあくまで申請窓口をまとめるためのサービスであり、会社設立に必要な準備や、その後の事業開始手続きまで自動で行ってくれるわけではありません。

ワンストップサービスでできない手続き 求められる対処
定款そのものの作成 定款は自分で作成するか、専門家に依頼して事前に用意する
商号・本店所在地の事前確認 同一商号・同一本店に該当しないか、申請前に確認する
法人口座の開設 金融機関への申し込みが必要
創業融資の申し込み 日本政策金融公庫などへ別途申請する
補助金・助成金の申請 各制度の所管機関・自治体などへ個別に申請する
許認可の申請 飲食業の営業許可、建設業許可など、業種に応じて管轄機関へ申請する

特に、定款の作成と商号調査はサービスを利用する前の段階で済ませておく必要があります。
ここが抜けたまま申請に進むと、設立登記の段階で補正(修正の指示)を受ける原因になります。

会社設立の全体的な流れについては、以下の記事で解説しています。

利用前に知っておきたいメリットと注意点

法人設立ワンストップサービスの主なメリットと、利用前に把握しておきたい注意点を整理すると以下のとおりです。

法人設立ワンストップサービスの
主なメリット

  • 複数の行政機関への手続きをまとめて申請できる
  • メンテナンス期間を除き、24時間365日オンラインで申請できる
  • かんたん問診に回答することで、自分に必要な手続きを洗い出せる
  • オンライン申請の場合、就任承諾書の印鑑についての印鑑証明書や、設立時取締役の本人確認証明書(住民票の写しなど)の添付が不要になる

法人設立ワンストップサービスの
主な注意点

  • 代表者本人のマイナンバーカードと有効な電子証明書が必須
  • 添付書面・電子署名の準備に手間がかかる
  • 株式会社の場合、定款認証は公証役場との事前調整が別途必要

法人設立ワンストップサービスの利用に必要なもの

申請を始めてから電子署名や添付書類の準備で止まらないよう、先に必要なものをそろえておきましょう。

法人設立ワンストップサービスの利用に必要なもの

  • 申請者本人のマイナンバーカード、または対応するスマートフォンのマイナンバーカード
  • マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン、またはPC+ICカードリーダライタなどの対応環境
  • PCを利用する場合はマイナポータルアプリと拡張機能、iPhone・Androidを利用する場合はマイナアプリ
  • 定款(電子定款の場合はPDFファイル。自分で作成するか、専門家に依頼しておく)
  • 商号、本店所在地、資本金額、事業目的、事業年度、役員構成など、申請前に決めておく情報

iPhoneのスマートフォンのマイナンバーカードを利用する場合は、公式案内上、スマートフォンのマイナンバーカードに加えて実物のマイナンバーカードも必要です。
利用する端末に応じて、事前に動作環境を確認してください。

設立登記を申請する場合は、登記申請書類を作成するための「申請用総合ソフト」も準備します。
電子署名の方法によっては、Adobe Acrobat、PDF署名プラグイン、JPKI利用者ソフトなども必要です。

また、発起人や役員が複数いて、添付書面に複数人の電子署名が必要になる場合は、各署名者の電子証明書とカード読取環境も必要です。
申請を始める前に、誰がどの書類へ署名するのかまで整理しておきましょう。

参考:一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!|法務省

法人設立ワンストップサービスの使い方

法人設立ワンストップサービスでの申請は、以下の7つのステップで進みます。

法人設立ワンストップサービスの利用ステップ

  • STEP1「かんたん問診」で必要な手続きを洗い出す
  • STEP2申請・届出を行う手続きを選択する
  • STEP3マイナンバーカード等で申請者情報を読み取り、本人確認を行う
  • STEP4各手続きの申請情報を入力する
  • STEP5必要な添付書類を登録し、必要な箇所へ電子署名を付与する
  • STEP6申請内容を確認して一括送信する
  • STEP7登録免許税等の納付が必要な手続きは納付し、「申請状況の確認」で処理状況を確認する

申請情報の入力では、マイナンバーカード等から読み取った氏名や住所などが申請者情報として反映されます。
一方、本店所在地など会社側の情報は自分で入力する項目があるため、正式な表記を確認したうえで入力してください。

また、入力途中の内容は保存して後から再開できます。
一度にすべて入力する必要はありませんので、確認が必要な項目が出てきた場合は保存して中断するとよいでしょう。

設立登記など費用が必要な手続きでは、申請後に届く納付情報を確認し、インターネットバンキングやATMから納付します。
送信しただけで手続きが完了するわけではない点に注意してください。

操作手順の詳細や、端末ごとの設定方法は以下の公式資料で確認できます。

参考:ウェブマニュアル(法人設立ワンストップサービスの使い方)|法人設立ワンストップサービス
参考:インターネットバンキングを利用した納付方法|法人設立ワンストップサービス

操作に関する疑問はこれらの公式資料で解決できるケースがほとんどです。

一方で、「そもそも何を届け出ればよいか分からない」「入力する内容の判断がつかない」といった問題は操作マニュアルでは解決できません。

その場合は、税理士や司法書士への相談を検討してください。

「かんたん問診」で迷いやすい項目の判断早見表

「かんたん問診」で迷いやすい項目の判断早見表

引用:サービストップ|法人設立ワンストップサービス

法人設立ワンストップサービスの最初のステップは、かんたん問診です。

質問に「はい」「いいえ」「わからない」で回答していくと、自分に必要な手続きが自動で洗い出されるしくみですが、問診の中には税務や登記の知識がないと判断できない項目が含まれています。

たとえば「商業登記電子証明書の発行を同時に申請しますか」「棚卸資産の評価方法の届出を行いますか」といった質問は、あるていど専門的な知識がないと回答が難しいものです。

以下の早見表で、判断に迷いやすい項目の考え方を整理します。

【早見表】判断に迷いやすい項目と考え方

以下は、かんたん問診で最初に表示される質問を出題順に並べたものです。
回答内容によって追加の質問が表示される場合がありますが、ここでは最初に表示される質問に絞って解説します。

問診項目 「はい」「いいえ」の判断
商業登記電子証明書の発行を同時申請するか 法人の電子申告・電子申請に使う証明書ですが、商号・本店・代表者に変更が生じると失効するといったデメリットもあります。e-Taxやe-LTAXでの電子申告は代表者個人のマイナンバーカードでも対応できるので「いいえ」で問題ないケースが多いです。
青色申告の承認申請 法人税の各種優遇措置(欠損金の繰越控除など)を受けるために必要です。特別な事情がない限り「はい」を選ぶのが一般的です。
棚卸資産の評価方法の届出 在庫を持つ業種(小売業・製造業など)に関係します。在庫を持たない業種であれば「いいえ」で問題ありません。
減価償却資産の償却方法の届出 減価償却資産の償却方法を選択する場合に行う届出です。届出をしなかった場合は、資産の種類ごとに定められた法定償却方法が適用されます。なお、いったん選択した償却方法を変更する場合は、原則として税務署長への変更承認申請が必要です。
有価証券の帳簿価額の算出方法の届出 法人として有価証券を保有・売買する予定がなければ「いいえ」で問題ありません。投資業やファンド運営など有価証券を扱う業種の場合は税理士に確認してください。
法人税の申告期限の延長 決算日から2カ月以内に申告が間に合わない事情(会計監査人の設置など)がある場合に届け出る制度です。設立直後の法人では該当しないケースがほとんどです。
法人住民税・法人事業税の申告期限の延長 上記の法人税の延長と同じ判断です。法人税側で延長しない場合はこちらも「いいえ」が基本です。
消費税課税事業者選択届出 免税事業者が自ら課税事業者になるための届出です。主な目的は、設備投資が大きいときに消費税の還付を受けることです。インボイス対応が目的であれば「適格請求書発行事業者」の登録で自動的に課税事業者になるため、この届出は不要です。
消費税簡易課税制度の届出 課税売上高が5,000万円以下の場合に選択できる制度です。免税事業者のままであれば関係ありません。
消費税の課税期間特例の届出 消費税の計算期間を3カ月または1カ月に短縮する制度です。還付を早期に受けたい場合以外は該当しないケースがほとんどです。
消費税の確定申告期限延長 法人税の申告期限延長と同様、設立直後に必要になることはほとんどありません。
源泉所得税の納期の特例 給与を支払う従業員等が常時10人未満であれば、源泉所得税の納付を年2回にまとめられます。一人会社や少人数の法人で該当する場合は「はい」が選択肢になります。
e-Taxの利用者識別番号を保有しているか 新規設立法人はまだ利用者識別番号を持っていないため「いいえ」を選びます。
役員へ賞与等を支給する予定があるか 役員賞与を支給する可能性がある場合は、税務上の取扱いと届出期限を確認してから回答しましょう。設立時から支給を予定する場合は、事前確定届出給与の届出が必要となるケースがあり、届出期限は設立の日以後2カ月を経過する日です。
適格請求書発行事業者になるか インボイス(適格請求書)を発行できるようにする登録です。取引先が法人中心で、仕入税額控除のためにインボイスを求められる場合は検討が必要です。登録すると自動的に課税事業者になるため、消費税課税事業者選択届出の届出を別途出す必要はありません。
法人設立の所在地は東京都23区か 本店所在地が東京都23区内かどうかをそのまま回答します。
対象となる地方公共団体に事業所を新設するか 本店所在地の都道府県・市区町村に届出が必要かを問う質問です。該当する場合は「はい」を選びます。
法人成りに該当するか 個人事業主から法人に切り替える場合は「はい」、初めて事業を始める場合は「いいえ」を選びます。

この早見表は一般的な判断基準を示したものです。
事業内容や資本金額などの条件によって最適な選択が変わる場合があるため、不安がある場合は税理士にご相談ください。

また、設立登記の申請区分にも注意が必要です。
法人設立ワンストップサービスでは、設立登記の申請が以下の4種類に分かれています。

申請区分 選ぶ場面
定款認証同時申請用 株式会社で、定款認証と設立登記を同時に申請する場合
定款認証同時申請以外用 株式会社で定款認証を済ませてから登記を申請する場合、または合同会社の場合
商業登記電子証明書の発行同時申請用 設立登記と商業登記電子証明書の発行を同時に申請する場合
定款認証と商業登記電子証明書の発行同時申請用 上記2つを同時に行う場合

株式会社では、定款認証を設立登記と同時に行うか、商業登記電子証明書も同時に申請するかによって申請区分が変わります。
すでに定款認証を済ませている株式会社は、「合名・合資・合同会社用及び株式会社の定款認証同時申請以外用」を選択します。

添付書類と電子署名の準備方法

法人設立ワンストップサービスで設立登記まで行う場合は、定款や払込証明書などの添付書類を所定の形式で用意し、電子署名が必要な書面には事前に署名を付与します。

「何の書類が必要で、誰が署名するのか」を事前に整理しておくことで、準備段階でのつまずきを減らせます。

必要な添付書類と提出が不要になる書類

以下は、取締役会を設置せず、発起人2名が設立時取締役となり、そのうち1名が設立時代表取締役となる株式会社を発起設立する場合の、添付書類と電子署名を行う人の一覧です。

定款の記載内容や会社の機関設計によって必要書類は異なります。

添付書類 電子署名を行う人
定款(公証人の認証を受けたもの) 認証済みの電子定款を添付する場合、作成者の電子署名を再度行う必要はない
発起人の同意書 発起人
設立時取締役選任及び本店所在場所決議書 発起人
設立時代表取締役を選定したことを証する書面 発起人
設立時取締役の就任承諾書 設立時取締役
設立時代表取締役の就任承諾書 設立時代表取締役
払込みがあったことを証する書面(払込証明書) 設立時代表取締役

参考:株式会社の設立の登記申請(オンライン申請)に必要な添付書面情報|法務局

発起人が複数いる場合は、発起人の同意書や決議書に全員分の電子署名が必要になるケースがあります。

一方、オンライン申請では電子署名を利用することで、株式会社の就任承諾書の印鑑に関する印鑑証明書や設立時取締役等の本人確認証明書、合同会社の印鑑届書に添付する代表社員の印鑑証明書など、一部書類の提出を省略できます。

添付書類をPDF化するときの注意点

設立登記で電子署名が必要な添付書面は、PDF等の所定の形式で準備する必要があります。
紙の書類をスキャンする場合も、電子ファイルをPDFに変換する場合も、以下の点に注意してください。

  • 文字が読み取れる解像度でスキャンする。法務局の担当者が内容を確認できない場合、再提出を求められる。公式FAQではPDFは白黒200dpiが推奨されている
  • パスワードを設定したPDFは使用しない
  • 複数ページの書類は1つのPDFにまとめる。ページごとにファイルを分けると添付漏れや順序の間違いが起きやすい
  • PDF結合後に電子署名が無効になっていないか確認する。ツールによっては、結合の過程で既存の電子署名が破損することがある

払込証明書はネット銀行の表示内容に注意する

払込証明書を添付する場合は、預金通帳の写しや取引明細票と、設立時代表取締役が作成した証明書をまとめ、払い込みの日付・金額など必要な情報が確認できる状態にします。

紙の通帳では必要な情報をそろえやすい一方、ネット銀行では取引履歴の印刷画面だけでは情報が不足することがあります。

ネット銀行の取引履歴をPDF化するときに確認したい点

  • 銀行の正式名称が確認できるか
  • 入金・出金の区別がつくか
  • 口座名義が画面上に表示されているか

使用する明細から、払い込みを証明するために必要な情報を読み取れるか、PDF化する前に確認しておきましょう。

マイナンバーカードで電子署名する方法

2021年2月15日の商業登記規則改正により、代表取締役(代表社員)自身がマイナンバーカードの署名用電子証明書を使って設立登記を申請できるようになりました。

参考:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)|法務局

電子署名の具体的な操作手順は、端末の組み合わせ(PC+ICカードリーダ、PC+スマートフォンなど)によって異なります。
公式ウェブマニュアルの該当ページを参照しながら進めてください。

参考:ウェブマニュアル(法人設立ワンストップサービスの使い方)|法人設立ワンストップサービス

署名の際に押さえておくべきポイントは以下の3点です。

マイナンバーカードで電子署名する際のポイント

  • 署名用電子証明書の暗証番号(英数字6〜16桁)を事前に確認しておく。5回連続で間違えるとロックがかかり、市区町村窓口での解除が必要になる
  • どの書類に誰が署名するかを先に整理してから作業する
  • 複数人の電子署名が必要な書類は、署名の順番とファイルの受け渡し方法を決めておく

もしエラーが出た場合は、以下を順番に確認してください。

マイナンバーカードによる電子署名でエラーが出た際の確認事項

  • マイナンバーカード側:署名用電子証明書の有効期限(発行から5年)が切れていないか、暗証番号がロックされていないか、転居届の提出により電子証明書が失効していないか
  • 機器・環境側:ICカードリーダがPCに認識されているか、マイナポータルアプリが最新版か、スマートフォンのNFC(近距離無線通信)が有効か
  • ファイル側:署名対象のPDFが破損していないか、結合ツールでの加工後にファイル形式が変わっていないか

電子定款にマイナンバーカードで電子署名を付与する具体的な手順は、以下の記事で詳しく解説しています。

実務でよくあるオンライン申請の補正・手戻り3パターン

法人設立ワンストップサービスは、入力した内容の法的な正しさまで事前審査してくれるサービスではありません。
申請内容や添付書類に不備があれば、申請先機関から補正や再申請を求められることがあります。

原因1:同一商号・同一本店の禁止に触れてしまう

商業登記法上、同一の本店所在地に同一の商号(会社名)を持つ法人を登記することはできません。
しかし、法人設立ワンストップサービスのかんたん問診にも申請フローにも、商号調査の工程は用意されていません。

同一商号・同一本店に該当していても、申請画面上で事前に判定されるわけではないため、そのまま送信してしまう可能性があります。
申請後の審査で不備が分かれば、補正や再申請などの対応が必要になります。

バーチャルオフィスやレンタルオフィスなど、多数の法人が同じ住所を本店所在地として利用している場合は特に注意が必要です。
申請前に法務局で確認したり、登記情報提供サービスで同一住所の法人を確認するなど、事前に調査しておきましょう。

原因2:本店所在地の住居表示を誤記する

本店所在地や代表者住所の住居表示を誤って入力し、手戻りになるケースもあります。
たとえば「一丁目1番1号」と「1-1-1」のように、普段使っている表記と正式な表記が異なることがあります。

こうしたミスを防ぐには、申請前に正しい住居表示を確認しておくことが重要です。
本店が代表者の自宅の場合は、代表者の印鑑証明書に記載された住所から、正確な住所が確認できます。

それ以外の場合は、本店所在地の市区町村に住居表示を問い合わせるなどして、申請前に正確な表記を確認してください。

司法書士 田中 千尋

司法書士
田中 千尋

ただし、極稀にではありますが市区町村に問い合わせた際の住所と、実際の表記が一致しないケースもあります。

より確実を期す場合は、市区町村への確認に加えて、賃貸借契約書の住所表記なども確認しておくとよいでしょう。

原因3:資本金の払込証明書の情報が不足している

払込証明書は、払い込みの日付・金額・口座名義など、設立登記に必要な情報を確認できる状態で提出する必要があります。

資本金の払込証明書の要件

  • 預金通帳の写しや取引明細票をPDF化する
  • 設立時代表取締役が作成した証明書と1つのPDFに結合する
  • 入金または振込に関する部分にマーカーまたは下線を付し、払い込まれた日と金額が分かるようにする
  • 設立時代表取締役の電子署名を付す

参考:株式会社の設立の登記申請(オンライン申請)に必要な添付書面情報

紙の通帳がある場合は、表紙・見開き・入金ページをコピーすれば必要な情報が揃います。しかし、ネット銀行を利用している場合は画面上に必要情報がすべて表示されないことがあるため注意してください。

払込証明書の準備方法については、「添付書類をPDF化するときの注意点」で詳しく解説しています。

合同会社を設立する場合の手順と注意点

合同会社は株式会社と比べて、法人設立ワンストップサービスを利用したオンライン設立の工程をシンプルに進めやすい法人形態です。

株式会社を設立する場合は、公証人による定款認証が必要ですが、合同会社では定款認証が必要ありません。
そのため、公証役場での定款認証に関する手続きを省略して、設立登記へ進むことができます。

ただし、完全オンラインで申請するには、必要な添付書面を電子データで用意し、必要な電子署名を付与しなければなりません。
添付したい書類がサービス上で登録できない場合には、法務局へ別送するケースもあります。

【比較表】株式会社と合同会社の申請手順の違い

法人設立ワンストップサービスを利用して設立する場合の、株式会社と合同会社の主な違いは以下のとおりです。

株式会社 合同会社
定款認証 必要 不要
登録免許税 資本金×0.7%・最低15万円 資本金×0.7%・最低6万円
電子署名 電子定款や添付書面について、作成者等の電子署名が必要 電子定款や添付書面について、作成者等の電子署名が必要
オンライン申請時の印鑑関係 電子署名により一部の印鑑証明書等を省略できる 電子署名により代表社員の印鑑証明書等を省略できる
法人設立ワンストップサービスの設立登記区分 定款認証同時申請用または定款認証同時申請以外用 合名・合資・合同会社用及び株式会社の定款認証同時申請以外用

提出期限のある届出と登記完了までの期間

法人設立ワンストップサービスでまとめて申請できる届出の中には、提出期限が定められているものがあります。
登記完了までにかかる期間と合わせて把握しておくことで、スケジュールに余裕を持った手続きが可能になります。

【一覧表】会社設立後に必要となる主な届出と提出期限

会社設立後に必要となる主な届出と提出期限は以下のとおりです。

期限の目安 届出・手続き 提出先
登記完了後すぐ 印鑑カード・登記事項証明書・印鑑証明書の取得 法務局
できるだけ早く(開設に時間がかかるため) 法人口座の開設 金融機関
事実発生から5日以内 健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
年金事務所
設立日から5日以内(加入する本人に扶養家族がいる場合) 健康保険被扶養者(異動)届 年金事務所
事業開始日から15日以内(東京23区のみ) 法人設立届出書 都税事務所
設立日から1カ月以内 給与支払事務所等の開設届出書 税務署
設立日から2カ月以内 法人設立届出書 税務署
設立日から約1~2カ月以内(自治体により異なる) 法人設立届出書 都道府県税事務所・市町村役場
設立の日以後3カ月を経過した日と、当該事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで 青色申告の承認申請書 税務署
随時 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 税務署
必要に応じて 適格請求書発行事業者の登録申請書(インボイス登録) 税務署

さらに従業員を雇用する場合は、労働基準監督署やハローワークに労働保険・雇用保険関係の手続きを行う必要があります。

届出の詳細な一覧や必要書類については、以下の記事で解説しています。

送信した日時がそのまま提出日時になるとは限らない

法人設立ワンストップサービスで一括送信しても、すべての手続きが同じタイミングで申請先機関へ送られ、同時に完了するとは限りません。
手続きによっては、別の手続きで払い出される情報がそろうまで、申請先機関への送信が保留される場合があります。

また、ワンストップサービス自体は原則24時間365日利用できますが、連携先となる行政機関のシステムの運転状況などによりサービスを利用できない場合があります。
特に国税関係の手続きは、e-Taxの受付時間外に送信すると翌稼働日に提出された扱いになります。
提出期限当日の夜間に送信すると期限後提出になるおそれがあるため、期限には余裕を持って手続きしましょう。

条件を満たす完全オンライン申請は原則24時間以内処理の対象

株式会社・合同会社の設立登記は、一定の条件を満たして完全オンライン申請を行った場合、原則として申請の受付から24時間以内に登記を完了する「24時間以内処理」の対象になります。

24時間以内処理の対象となるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

24時間以内処理の条件

  • 役員等が5人以内である(株式会社は設立時役員等、合同会社は業務執行社員が5人以内)
  • 定款や就任承諾書などの添付書面をすべて電子データで作成し、申請書と一緒にオンラインで送信する
  • 必要な添付書面に作成者等の電子署名を付す
  • 登録免許税を収入印紙ではなく電子納付する
  • 申請内容に補正がない

オンラインで申請していても、一部の添付書面を法務局へ郵送または持参する場合は「完全オンライン申請」にならないため、24時間以内処理の対象外です。

また、申請内容に不備があり補正が必要になった場合も対象外となるため注意してください。

参考:完全オンライン申請による法人設立登記の「24時間以内処理」について|法務省

自分で手続きするか、専門家に依頼するかの判断基準

法人設立ワンストップサービスを使えば、自分で設立手続きを進めることは可能です。ただし、サービスが申請内容の法的・税務的な妥当性まで判断してくれるわけではありません。

法人設立ワンストップサービスを使えば、専門家に依頼しなくても自分で法人設立の手続きを進められます。

自分で進めるか専門家へ相談するかは、手続きの複雑さと、補正・再申請が生じた場合の影響を基準に考えると判断しやすくなります。

自分で手続きするのが向いているケース

次の条件に多く当てはまる場合は、自分で手続きを進めやすいといえます。

自分で手続きを進めるのが向いているケース

  • 一人合同会社を設立する:定款認証が不要で、かつ定款や払込証明書などに必要な電子署名を本人だけで行いやすい
  • 代表者のマイナンバーカードの署名用電子証明書が有効:有効期限や暗証番号に問題がない
  • 本店が代表者の自宅:住居表示の確認が印鑑証明書で容易にできる
  • 設立日に余裕がある:補正になった場合でも、スケジュールへの影響が小さい
  • 出資構成や役員構成がシンプル:現物出資がなく、出資者・役員が本人のみ

専門家に依頼したほうが早いケース

次の条件に当てはまる場合は、司法書士や税理士への相談を検討する価値があります。

専門家への依頼を検討したいケース

  • 株式会社を設立する:定款認証と公証役場との事前調整が発生し、手続きが複雑になる
  • 発起人・役員・社員が複数いる:複数人の電子署名が必要になる書類があり、書類作成や署名の準備が複雑になりやすい
  • 現物出資がある:調査報告書の作成など追加の手続きが発生する
  • 設立日や許認可の期限が決まっている:補正による遅延が法人口座の開設や許認可申請、取引開始日に影響する
  • 本店所在地や事業目的の決め方に迷っている:登記後の変更には費用と手間がかかるため、設立前に判断を固めておく必要がある
  • 資本金・役員報酬・決算月など税務面の設計も含めて相談したい:設立手続きだけでなく、設立後の経営を見据えた判断が必要
  • かんたん問診で判断できない項目がある:税務・登記の判断に専門知識が必要な状態

設立後の事業開始スケジュールが決まっている場合ほど、事前に相談しておくメリットは大きくなります。
法人設立の手続きだけでなく、設立後の届出や経理体制の構築まで含めて相談したい場合は、税理士への相談もご検討ください。

法人設立ワンストップサービスについてよくある質問

法人設立ワンストップサービスを利用する際は、費用や印鑑届出の必要性、e-Taxとの違いなど、事前に確認しておきたい点があります。

ここでは、法人設立ワンストップサービスについてよくある質問をまとめて解説します。

その1:サービスを利用する上でどのようなコストが発生するのか

法人設立ワンストップサービス自体の利用料は無料です。
ただし、法人設立に必要な費用は別途かかります。

株式会社の場合は、登録免許税が最低15万円、定款認証手数料が原則3万円〜5万円です。

資本金100万円未満で一定の条件(発起人が自然人3人以下・発起設立・取締役会非設置)を満たす株式会社では、定款認証手数料が1万5,000円になります。
合同会社の場合は登録免許税が最低6万円で、定款認証は不要です。

会社の実印を作成したり、印鑑証明書を取得したりする場合は、その費用も発生します。
より具体的な、会社を設立する際の費用については、以下の記事で詳しく解説しています。

その2:印鑑届出は必要なのか

オンラインで設立登記を申請する場合、会社の印鑑届出は任意です。
ただし、印鑑を届け出ていなければ、法務局で会社の印鑑証明書を発行してもらうことはできません。
印鑑証明書は銀行・取引先との手続きなどで必要になることも多いので、オンライン申請の場合も基本的には届け出を行っておきましょう。

オンラインで印鑑届出を行う場合は設立登記と同時に提出し、後から届け出る場合は印鑑届書を法務局へ提出します。

参考:商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)|法務省
参考:オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)|法務省

その3:e-Taxとの違い・使い分けはどうなっているのか

法人設立ワンストップサービスは、設立登記や国税・地方税、社会保険など、複数の行政機関にまたがる法人設立関連手続きをまとめてオンライン申請できるサービスです。

e-Taxは国税に関する手続きに特化したシステムですが、法人設立ワンストップサービスでは国税だけでなく、設立登記(法務局)、地方税(eLTAX)、社会保険(e-Gov)に関する届出もまとめて申請できます。
法人設立時にはさまざまな届出が同時に必要になるため、個別のシステムにそれぞれアクセスするよりも、一括して手続きするほうが効率的です。

設立後の通常の確定申告や届出は、e-Taxやe-LTAXで直接行います。

その4:法務局への来庁は必要なのか

法人設立ワンストップサービスを利用した完全オンライン申請であれば、法務局への来庁は不要です。
ただし、添付したい書類を法人設立ワンストップサービス上で登録できず「別送」とする場合は、書面を法務局へ郵送または持参する必要があります。

その5:司法書士に依頼した場合もワンストップサービスは使えるのか

デジタル庁が提供するWeb版の法人設立ワンストップサービスでは、代理申請はできず、申請者本人が手続きを行う必要があります。

司法書士に設立登記を依頼する場合は、司法書士が「登記・供託オンライン申請システム」などを利用して代理申請する方法があります。
税務や社会保険関係の届出についても専門家に依頼する場合は、それぞれの手続きを担当する専門家と提出方法を確認しましょう。

その6:設立登記の完了はどうやって確認するのか

設立登記の処理状況は、法人設立ワンストップサービスの「申請状況の確認」から確認できます。
各手続きの処理が終了すると、ステータスが「終了」と表示されます。

申請内容に不備がある場合は「要再申請」、納付が必要な場合は「納付待ち」などのステータスが表示されます。
申請先機関からのお知らせも同じ画面から確認できます。

参考:E. 申請状況・お知らせの確認【2.申請一覧を表示する】~法人設立ワンストップサービス

登記完了後の各種手続きで登記事項証明書の提出を求められる場合があるため、必要に応じて法務局の窓口またはオンラインで取得しましょう。

その7:申請後に入力ミスが見つかった場合はどうするのか

申請後に誤りに気づいた場合は、まず「申請状況の確認」でステータスと申請先機関からのお知らせを確認してください。
処理中・終了後の修正方法は手続きによって異なるため、必要に応じて各申請先機関へ問い合わせます。

入力内容の誤りや不足によって「要再申請」となった場合は、不受理のお知らせを確認し、案内に従って再申請します。
手続きによっては、前回の申請内容を引き継いで再申請できる場合があります。

参考:F. 不受理申請の再申請|法人設立ワンストップサービス

この記事のまとめ

法人設立ワンストップサービスは、設立登記・税務届出・社会保険手続きなどの法人設立関連手続きをオンラインでまとめて申請できるサービスです。
一方で、定款の作成や商号調査は自分で行う必要があり、添付書類の準備や電子署名には一定の手間がかかります。

補正になると登記完了が遅れ、法人口座の開設や許認可申請など設立後のスケジュール全体に影響します。
自力での手続きに不安がある場合は、申請前に専門家に相談することで手戻りを防げます。

特に、設立日や許認可の期限が決まっている場合、発起人・役員が複数いる場合、資本金や役員報酬など設立後の税務設計にも迷っている場合は、申請前に専門家へ相談することで手戻りを減らせます。

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会社設立の手続き

会社設立の手続きは、設立内容の決定から始まり、事業目的のチェック、定款認証、出資金の払い込み、法務局への登記申請を行います。株式会社の設立、合同会社の設立手続きの基本的な流れを知り、スムーズに手続を行えるようにしましょう。

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会社設立内容の決定

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