最終更新日:2026/9/7
夫婦でマイクロ法人を作るメリットは?ケース別に解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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- 夫婦でマイクロ法人を作る具体的なメリット
- 夫婦で役員報酬や給与を受け取る際の注意点
夫婦で事業をしている場合や、どちらか一方が個人事業主として働いている場合に夫婦でマイクロ法人の設立を検討することがあります。
夫婦でマイクロ法人を運営することで、役員報酬や給与を一方に支払い、世帯全体の税金や社会保険料を調整できる可能性があります。
ただし、マイクロ法人を設立すれば必ず有利になるわけではなく注意点もあります。
夫婦でマイクロ法人を作る場合は、個人の税負担や収入だけでなく、夫婦の税金・社会保険料・手取りを合計した世帯全体の負担での判断が必要です。また、法人の運営に関しても注意点があります。
この記事では、夫婦でマイクロ法人を作るメリットや注意点をわかりやすく解説します。


目次
マイクロ法人とは?夫婦での設立を検討する前に知っておきたい基本
夫婦での法人設立を検討する前に、マイクロ法人の基本を確認しておきましょう。マイクロ法人には、個人事業主や会社員とは異なる点が多くあります。
マイクロ法人とは小規模な法人のこと
マイクロ法人とは、代表者1人や夫婦、家族などの少人数で運営する小規模な法人を指す俗称です。法律用語ではなく、会社法に「マイクロ法人」という形態が規定されているわけではありません。
とはいえ、マイクロ法人と呼ばれる会社も、実際には、株式会社や合同会社として法人を設立して小規模な事業を行います。
マイクロ法人は規模が小さくても法人であるため、法人税申告や会計処理、社会保険の手続きが必要になります。
個人事業主とマイクロ法人の違い
個人事業主とマイクロ法人はまったく違うものです。
個人事業主は、個人が自分の名義で事業を行います。事業で得た所得は自分の所得となり、所得税や住民税などがかかります。
マイクロ法人の場合は、個人ではなく法人として事業を行います。法人の利益には法人税などがかかり、法人から個人へ役員報酬を支払った場合は、受け取った人に所得税や住民税がかかります。
1人で運営しているマイクロ法人であっても、会社と個人は別の主体となります。
夫婦でマイクロ法人を作る具体的なメリット
夫婦でマイクロ法人を作ると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、夫婦でマイクロ法人を作る具体的なメリットを解説します。
社会保険料を抑えられる可能性がある
夫婦でマイクロ法人を作るメリットの1つに、社会保険料の負担を軽減できるというものがあります。
個人事業主が加入する国民健康保険の保険料は、所得や世帯の状況、自治体などによって変わります。一方で、マイクロ法人を設立して役員報酬を受け取る場合は、健康保険・厚生年金保険の対象になります。
個人事業の所得や役員報酬の設定によっては、マイクロ法人を設立する前よりも社会保険料を抑えられるケースがあります。
もちろん、マイクロ法人を設立すれば必ず節約できるというわけではありません。
役員報酬を夫婦で分散できる
夫婦2人で法人の経営や業務に関わる場合は、夫婦それぞれに役員報酬を支払うことも可能です。
代表者1人に役員報酬を集中させるのではなく、夫婦に分けて支払うことで、所得を分散できます。
ただし、夫婦それぞれの担当業務を明確にし、報酬額を仕事内容や法人の利益に見合った金額にする必要があります。
配偶者に給与や役員報酬を支払える
配偶者が法人の業務を行っている場合は、給与や役員報酬を支払えます。
配偶者が経理、請求書作成、顧客対応、広報、事務作業などを担当する場合は、従業員として給与を支払う方法があります。経営上の意思決定にも関わる場合は、役員にして役員報酬を支払う方法もあります。
給与や役員報酬を支払うことで、配偶者の業務への対価を明確にできます。法人側から見ても、給与や役員報酬を損金として扱うことができます。
ただし、配偶者であるというだけで自由にいくらでも報酬を支払えるわけではありません。実際に業務を行なっており、報酬額が仕事内容や勤務時間に見合っていなければなりません。
また、配偶者を役員にするか従業員にするかによって、報酬の決め方や税務上の扱いも変わります。役員にする場合は、従業員の給与とは異なり、事業年度の途中で自由に報酬を変更できない点にも注意しましょう。
また、配偶者の収入が増えると、配偶者控除や配偶者特別控除、社会保険上の扶養に影響する可能性があります。
配偶者へ給与や役員報酬を支払う際は、法人だけでなく、夫婦の税金・社会保険料・手取りをまとめて試算しましょう。
夫婦でマイクロ法人を作るデメリット・注意点
夫婦でマイクロ法人を作る場合は、メリットだけでなくデメリットも確認する必要があります。ここでは、夫婦でマイクロ法人を作るデメリットと注意点を解説します。
法人住民税などの維持費がかかる
法人を設立すると、法人を維持するための費用がかかります。小規模なマイクロ法人だからといって維持費がかからないわけではありません。
代表的な維持費は、法人住民税の均等割、社会保険料などです。法人住民税の均等割は、法人が赤字の場合でも売上がなくても発生します。
また、事務的な負担も大きくなります。たとえば、夫婦2人に役員報酬や給与を支払う場合は、源泉所得税や年末調整、社会保険に関する手続きが必要になることがあります。
夫婦でマイクロ法人を作る際は、年間維持費や事務作業の負担も考慮しましょう。
会計・申告が複雑になる
法人を設立すると、法人の会計処理や税申告が必要になります。
マイクロ法人を設立すると、決算書を作成し、法人税や法人住民税などを申告しなければなりません。これらは、個人事業主の確定申告より複雑な作業です。
もし、夫婦に役員報酬や給与を支払う場合は、源泉所得税の納付、年末調整、法定調書の作成などの手続きも発生することがあります。
夫婦で運営するなら、2人でこの事務作業ができるか、税理士に依頼する場合に費用を負担できるかも考えておくべきです。
夫婦間で報酬や責任のトラブルが起きる可能性がある
夫婦でマイクロ法人を運営する場合、「家計が1つ(同一家計)」であれば、報酬がどちらにいくら支払われても世帯全体の資産は変わらないため、揉める原因にはなりにくいです。
一方、「別家計(共働きでお金を別々に管理しているなど)」の場合や、事前のアグリメント(合意)がない場合は、夫婦間のトラブルが起きやすくなります。
別家計の場合や業務分担を明確にしたい場合は、法人設立(登記)の段階で、互いの役職・具体的な役割・それに応じた報酬体系をしっかりと決めておくことが重要です。

代表税理士
森 健太郎
同一家計の夫婦であれば過度に心配する必要はないものの、将来的な行き違いを防ぐためにも、設立時に「代表と役員」の責任範囲とリターンについては話し合っておくのが望ましいです。
夫婦で株を均等に持つとデメリットになる
株式会社を夫婦で設立する場合、株式を50%ずつ持つことを検討するケースがあります。
確かに夫婦が同じ割合の株式を持てば、対等に経営に参加できて公平かのように思えます。しかし、経営方針について意見が分かれた場合は、過半数の賛成が成立せず、株主総会の決議ができないというデメリットがあります。
たとえば、役員の選任、役員報酬の設定、利益の使い方、新規事業への投資などについて意見が割れると、会社の意思決定が止まってしまうのです。
夫婦で株式を持つ割合は、現在の関係だけでなく、事業拡大、相続、離婚など環境や関係の変化を想定しておく必要があります。

代表税理士
森 健太郎
事業拡大の局面では、1つのマイクロ法人の株式を夫婦で均等に持つよりも、新たに会社を設立して事業を分ける方法も選択肢の1つです。
ケース別!夫婦でのマイクロ法人設立で注意したいポイント
夫婦でマイクロ法人を作るメリットは、現在の働き方によって異なります。ここでは、夫婦の働き方ごとに、マイクロ法人が向いているか判断するポイントを解説します。
個人事業主・会社員の夫婦の場合
夫婦の一方が個人事業主で、もう一方が会社員の場合は、まず会社で加入している社会保険や勤務先のルールを確認しましょう。
たとえば、会社員である配偶者の社会保険上の扶養に個人事業主である一方が入っている場合、マイクロ法人から役員報酬を受け取ることで扶養から外れる可能性があります。扶養から外れると、世帯全体の社会保険料が増えることがあるため注意が必要です。
会社員として雇用されている人を法人の役員や従業員にする場合は、勤務先の副業・兼業規定にも注意が必要です。法人での業務が勤務先の利益と競合しないか、役員への就任が認められているかを確認しましょう。
個人事業主と会社員の夫婦は、現在の扶養状況、勤務先の社会保険・副業規定の確認が必須です。
夫婦とも個人事業主の場合
夫婦とも個人事業主の場合は、どちらか一方がマイクロ法人を作る方法と、夫婦2人で法人を運営する方法があります。
まずは、それぞれの事業内容、売上、利益、経費、国民健康保険料を確認しましょう。所得が高い側の事業を法人化する方法もありますが、事業内容や取引先との契約によって対応は異なります。
また、個人事業を残しながら法人も運営する場合は、個人と法人の事業を明確に分けなければならないため、ここも注意したいポイントです。
夫婦とも個人事業主の場合は、夫婦それぞれの税負担と、法人の維持費と社会保険料、事業内容、取引先との関係も含めた広い視野でマイクロ法人を設立すべきか判断しましょう。
片方が個人事業主・片方が青色事業専従者の場合
夫婦の一方が個人事業主で、もう一方が青色事業専従者の場合は、法人化によって専従者給与の要件に影響が出る可能性があります。
青色事業専従者がマイクロ法人で継続的に働く場合、個人事業に専ら従事していると認められるかがポイントになります。
また、青色事業専従者として給与を受け取る配偶者は、配偶者控除や配偶者特別控除の対象にならないためここにも注意が必要です。
夫婦でマイクロ法人を作るときの最重要論点は「扶養」
夫婦でマイクロ法人を作る場合、扶養についての確認が最重要です。特に、配偶者に役員報酬や給与を支払う場合は、両方の収入を確認しなければなりません。
税法上の扶養と社会保険上の扶養は別物
まず、前提として、税法上の扶養と社会保険上の扶養は別のものです。
税法では、配偶者は扶養控除ではなく配偶者控除・配偶者特別控除の対象です。控除額は夫婦それぞれの所得に応じて変わります。
一方、社会保険(健康保険・厚生年金)上の扶養は、被扶養者・国民年金第3号被保険者となることで、自分で健康保険料や年金保険料を負担せず、配偶者などの被保険者に扶養されるしくみです。一般的には年収130万円未満が収入要件の1つです。
※2026年以降、認定ルールや年収の壁に制度変更が進行中のため、最新の運用は公的機関のサイトなどで確認しましょう。
このように、税法上の控除と、社会保険上の扶養に入れることは同じではありません。
夫婦でマイクロ法人を作る際は、税金については税理士、社会保険については年金事務所や社会保険労務士へ確認しましょう。
配偶者控除・配偶者特別控除に注意する
配偶者に役員報酬や給与を支払う場合は、配偶者控除・配偶者特別控除への影響を確認しましょう。
配偶者控除を受けられるかどうかは、所得を合算した合計所得金額が基準になります。
また、控除を受ける側の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除・配偶者特別控除を受けられません。
マイクロ法人を夫婦で設立する人は、配偶者控除だけで有利・不利を判断せず、夫婦の税金・社会保険料と法人の負担を総合的に考慮しましょう。
夫婦でマイクロ法人を作る前に試算すべき項目
夫婦でマイクロ法人を作る前には、複数の項目について試算が必要です。1つの項目だけでは法人化のメリットやデメリットを正確に判断できません。
事前に試算すべき項目リスト
夫婦でマイクロ法人を作る前に、以下の項目について確認して試算しましょう。
- 夫婦それぞれの収入(給与、事業所得、不動産収入、投資の収入など)
- マイクロ法人に移す事業の売上と利益の見込み
- 夫婦それぞれに支払う役員報酬や給与
- マイクロ法人を設立した場合に個人にかかる所得税と住民税
- 法人にかかる法人税や法人住民税
- 夫婦それぞれの社会保険料
- 法人が負担する社会保険料
- 配偶者控除・配偶者特別控除への影響
- 社会保険上の扶養から外れる可能性
- 法人の設立費用と維持費
- 法人化前後の世帯全体の手取り
- 将来受け取る年金への影響
また、法人化のシミュレーションをする場合は、次のような複数のパターンを比較するとよいです。
- 夫婦の一方だけが役員報酬を受け取る場合
- 夫婦2人が役員報酬を受け取る場合
- 一方を役員、もう一方を従業員にする場合
- 配偶者を社会保険の扶養に入れる場合
- 夫婦2人がそれぞれ社会保険へ加入する場合
- 個人事業を残しながら法人を運営する場合
夫婦でマイクロ法人を作る際は、個々人の税負担だけでなく世帯全体の視点で検討することが重要です。
税金と社会保険では判断基準が異なるため、設立前に税理士や社会保険労務士に相談し、複数のパターンを試算してもらうと安心です。
夫婦でマイクロ法人に関するよくある質問
夫婦でマイクロ法人を設立する場合は複数の項目を確認しましょう
夫婦でマイクロ法人を作ると、さまざまなメリットがある一方でデメリットや注意点もあります。
それぞれの収入や役員報酬が、配偶者控除・配偶者特別控除や社会保険上の扶養に影響する可能性もあるため、法人化すれば必ず有利になるわけではありません。
夫婦でマイクロ法人を作る際は、夫婦それぞれの税負担や収入、法人税、社会保険料、法人の維持費を含めた世帯全体の収支で比較・判断することが重要です。
役員報酬や株式の割合、夫婦の役割分担も事前に話し合い、税理士や社会保険労務士に相談しながら慎重に検討しましょう。
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