最終更新日:2026/5/21
役員とは?会社法上の定義や役員に必要な能力とリスク・手続きについて解説します

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
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- 会社法での役員の定義と責任
- 役職と役員の違い
- 役員の保険や労働基準法の適用
会社を経営していくうえで欠かせない存在が「役員」です。日常的に耳にすることが多い言葉ですが、会社法上の役員には明確な定義と責任があります。
役員は単なる「偉い人」ではなく、会社の経営判断や監督を担い、法的責任も負う重要な立場です。
この記事では、役員の定義や種類、社員や役職との違い、役員に求められる能力、リスク、選任や変更の手続きなど、役員に関する基本をわかりやすく解説します。


目次
役員とは?
役員とは、会社法でルールが規定されている役職です。
会社法では、役員の種類や選任方法、任期、責任などが細かく定められており、役員は経営の中心的な存在として位置づけられています。
会社法では「役員=取締役、会計参与、監査役」とされており、選任や任期についてもルールがあります。
会社法上の役員とは
会社法上の役員は、取締役・監査役・会計参与です。それぞれの役割は異なり、取締役は経営の意思決定、監査役は業務監査、会計参与は財務管理を担当します。
役員は会社の内部組織の上層部であると同時に、会社法上の責任を負う立場でもあります。
そのため、役員になることは単に出世して社内での地位が上がるというだけでなく、重い責任を引き受けることでもあります。
なぜ役員が必要なのか
株式会社には、必ず1名以上の役員が必要と会社法で規定されています。
役員は、会社の方向性を決め、リスクの程度を判断し、自らが責任を負う存在です。会社は、多くの人やお金が関わるビジネスをしています。誰かが責任を持って意思決定しなければ、組織はうまく回らなくなってしまうのです。
役員の種類
役員には取締役・監査役・会計参与があります。役員はそれぞれ異なる立場から会社を支えており、会社の規模が大きいほど、役員の役割分担が詳細に分けられる傾向があります。
| 名称 | 会社法上の役員か | 主な役割 | 任期の原則 |
|---|---|---|---|
| 取締役 | ◯ | 経営方針の決定、業務執行の最終責任者 | 原則2年(非公開会社は定款で最長10年まで延長可能) |
| 代表取締役 | ◯ | 会社を代表し、対外的な契約や意思表示を行う | |
| 監査役 | ◯ | 取締役の業務執行・会計の監査 | 原則4年(非公開会社は定款で最長10年まで延長可能) |
| 会計参与 | ◯ | 取締役と共同で計算書類を作成、会計面の監督 | 原則2年(非公開会社は定款で最長10年まで延長可能) |
| 執行役員 | ✕ | 会社の業務執行を担当する社内の役職 | 任期の定めなし(会社の内部規程による) |
| 専務・常務 | ✕ | 経営補佐や部門統括など社内の役職 | |
| CEO | ✕ | 経営戦略の策定・意思決定のトップ企業 | 任期の定めなし(肩書きであり法律上の任期の規定はない) |
| COO | ✕ | 経営方針を現場に落とし込み業務を統括 | 任期の定めなし |
| CFO | ✕ | 財務戦略、資金調達、財務管理 | |
| CTO | ✕ | 技術戦略、開発方針の統括 |
取締役
取締役は、会社の経営方針を決定し、利益を出して成長するための経営判断を行う役職です。
株式会社では、取締役が1名以上必要になります(非公開会社の場合)。公開会社の場合は、3名以上の取締役で構成される「取締役会」が設置されます。
取締役のなかでも代表取締役は会社の代表権を持っており、対外的にも会社の代表者としての立場にあります。代表取締役は会社の顔であり、契約締結や対外発表の窓口になりやすいため、社内外の信頼を積み上げる姿勢が重要です。
監査役
監査役は、取締役の業務執行が法律に従って正しく行われているかを監督する役割を担っています。
原則として監査役は「会計監査権」と「業務監査権」を持っており、特に大企業では独立性の高い監査体制が求められます。取締役の不正行為を発見した場合、株主総会への報告を行います。
監査役は会社の健全性を守るための役員です。
会計参与
会計参与は、会社の会計処理を専門的に監督する役員で、財務諸表が正しく作られているかを監督します。会計参与には、公認会計士や税理士が就任します。
会計参与は、決算書の信頼性を高める役割です。
社内の役職としての役員
役職とは、社内における役割と順位を示すものです。部長や課長、主任などは役職であり役員ではありません。また、取締役ではない専務や常務、執行役員などは役職です。
役職と役員の最大の違いは、会社法上の責任が発生するかどうかです。肩書きよりも「会社法上の役員かどうか」が重要になります。
執行役員
執行役員は、名称に「役員」が入っていますが、会社法上の役員ではありません。
執行役員は、会社の業務執行を担う重要な役職の1つではありますが、会社の内部規定で設置される役職です。
執行役員については、以下の記事で詳しく解説しています。
肩書きと会社法上の役員は一致しないことが多い
会社では、CEOなどの肩書きが用いられることがあります。
ただし、これらは会社法上の役員区分とは別に使用されている呼称です。社外向けの呼称として定着していますが、登記簿に記載されるのは取締役、代表取締役、監査役などの会社法上の役員のみです。
そのため、名刺やWebサイトの肩書きだけで法的地位を判断することはできません。実務では「登記上の役員かどうか」を確認することが重要です。
CEO(最高経営責任者)
CEOは「Chief Executive Officer」の略で、日本語に訳すと最高経営責任者です。
CEOは、会社の方向性や経営戦略の策定・決定を行います。会社法上の役員ではないので登記簿にCEOと記載されるわけではありませんが、代表取締役がCEOと名乗るケースは多く見られます。
特に、外資系の企業やIT企業においてCEOという呼称が使用されることが多い印象です。
COO(最高執行責任者)
COOは「Chief Operating Officer」の略で、日本語に訳すと最高執行責任者です。
COOは、CEOが策定した戦略を実際の業務に落とし込み、会社内の作業を監督する立場です。営業や生産、人事など、各部門の業務をスムーズに進めるための業務を行います。
CFO(最高財務責任者)
CFOは「Chief Financial Officer」の略で、日本語に訳すと最高財務責任者です。
CFOは、会社の資金調達や財務管理などを行います。財務データをもとに経営戦略を作成するポジションでもあります。
CTO(最高技術責任者)
CTOは「Chief Technology Officer」の略で、日本語に訳すと最高技術責任者です。
CTOは、社内の技術戦略に関する最高責任者として技術面での戦略立案や意思決定を行い、技術チームのリーダーを務めます。また、技術に関する情報を収集・共有し、それを会社の戦略に反映させる役割も担っています。
役員と社員の違い
役員と社員は、法律上の立場が異なります。役員は会社の意思決定や監督を担う立場で、雇用されている従業員ではありません。
ここでは役員と社員の契約形態、保険、労働基準法、登記、選任プロセスの違いを整理します。
契約形態
役員と社員の最も大きな違いは、会社との契約です。役員は「社員の中の偉い人」という印象がありますが、役員は会社と雇用関係にある従業員ではありません。
役員は雇用契約ではなく、会社と委任契約を結んで業務にあたります。労働者ではないため労働基準法は適用されず、就業時間がなく、残業手当や失業保険なども対象外です。
場合によっては深夜や休日でも業務にあたる必要があり、社員とは働き方が異なります。役員は裁量が大きい反面、成果責任と説明責任を伴う立場です。
雇用保険の対象外
役員は、会社から雇用される立場ではないため、雇用保険の対象ではありません。そのため、役員は原則として雇用保険に加入できません。
そのため、役員を退任しても、社員のように失業給付で生活をつなぐことができないため、退任後の生活設計も考えておく必要があります。
労働基準法が原則適用されない
役員は労働者ではないため、労働基準法の対象ではありません。役員は会社と委任契約を結んでおり、労働時間に法律の規定はなく、就業規則も役員には適用されません。
時間外手当なども支払われないため、社員とは違う働き方になります。役員は「働いた時間」ではなく「意思決定と結果」で評価されるため、勤務管理で働きぶりを測りにくい立場です。
役員は登記が必要
役員は、株主総会の決議で選任され、会社の登記簿に氏名などの情報が記載されます。役員の変更登記は決定から2週間以内に行う必要があり、登記情報は誰でも閲覧できます。
取引先や金融機関が登記簿で役員を確認することもあるため、役員変更の際は期限を守って対応する必要があります。
選任プロセスの違い
役員は株主総会の決議で選任されます。役員は株主から会社の経営や監督を委任されているのです。
一方で、社員は会社から雇用されて業務時間内に労働をします。その対価として給与をもらい、労働基準法の範囲で働きます。
この違いは、責任の所在にも影響しています。社員に職務上のミスがあっても、原則として会社が対外的責任を負います。しかし、役員は一定の場面で個人の責任が問われるケースもあるため、責任の重みが異なります。
役員の役割とは?役員と役職の違い
役員とは別に、会社にはさまざまな役職があります。会社法上の役員と役職の違いについて解説します。
役員は経営判断と業務執行の監督を行う
企業には「役員」と「役職」があります。どちらも会社の中で重要な役割を担いますが、法的な意味や責任の有無に違いがあります。
会社法上の責任が発生する
役員は、会社法に基づく責任を負っています。
取締役には「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」があり、善管注意義務を怠って経営判断を誤った場合には「株主代表訴訟」で責任を追及される可能性があります。
また、役員は会社の業績や不祥事に対しても一定の責任を負うため、第三者から責任を追及される可能性もあります。そのため、経営判断には慎重さが求められます。
ここで重要なのは、結果が悪かったことだけで直ちに責任を負うわけではないという点です。判断時点で合理的な情報を集め、選択肢を比較し、リスクを評価したうえで意思決定したかどうかが問われます。
役職は社内のみの地位
役職は社内の運用ルールによって決められる地位です。
たとえば、よく耳にする部長や課長といった役職は組織運営の要ですが、会社法上の役員ではありません。役職は会社の判断で新設・変更できるため、極めて柔軟性があります。
一方、役員は法律上の制度であり、株主総会や登記などの一定の手続きを伴います。対外的な会社の説明責任を負うため、役職とは別物です。
会社設立時に選任される役員
会社設立時に発起人によって選任される役員「設立時取締役」について解説します。
設立時取締役とは
設立時取締役とは、会社の設立前に発起人によって選任される役員のことです。
設立時取締役については、会社法で「発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない」と規定されています。
設立時取締役は、会社設立後そのまま取締役になるケースがほとんどです。
役員の人数と任期に関するルール
役員の数については、会社法でルールが定められています。ここでは、役員の人数に関する基本的な考え方を見ていきましょう。
非公開会社なら役員1人でも可能
株式会社の役員の人数については、会社法で「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない」と規定されています。
そして、会社形態によって必要な役員の数には違いがあります。
すべての株式に譲渡制限がある会社(非公開会社)であれば、取締役1名で設立・運営することが可能です。
一方、譲渡制限のない株式がある公開会社は、取締役会設置会社として3名以上の取締役を選任しなければなりません。さらに原則として監査役を置く必要もあるため、役員の総数は最低でも4名となります。
役員の任期は原則2年
会社法では、取締役の任期は原則として2年、監査役は4年と定められています。
非公開会社の場合は10年まで
取締役の任期は原則2年ですが、すべての株式に譲渡制限がある非公開会社では、定款によって取締役の任期を最長10年まで延長可能です。
これは、少人数で運営している中小企業や家族経営の会社など、頻繁な役員選任の手続きを避けたい企業にとってメリットがあります。
一方で、任期を長くすると、人間関係が悪化した場合に対応しづらいといったデメリットもあります。
【Q&A】役員に関するよくある質問
会社法上の役員と役職は別!役員は会社法上の責任を負う立場
役員は取締役・監査役・会計参与を指し、会社の意思決定や監督を担う立場です。役員は株主総会で選任され、任期なども会社法で定められています。
会社と役員の関係は雇用ではなく委任であるため、役員に労働基準法は原則適用されず、雇用保険も対象外になります。また、役員は登記が必要で、任期満了や変更の際は期限内に手続きを進める必要があります。
社内での役職と会社法上の役員は基本的に別であり、必ずしも一致するとは限りません。会社法上の役員か従業員かは大きな違いであるため、整理しておきましょう。



















