最終更新日:2025/12/17
取締役とは?取締役の報酬と責任について解説!取締役会のルールも徹底解説!

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
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この記事でわかること
- 取締役とは何か
- 取締役と従業員の違い
- 取締役に関する会社法のルール
株式会社を経営していくうえで欠かせない存在が「取締役」です。取締役は会社法で規定されている役員であり、株式会社には必ず取締役が置かれます。会社の業務執行を担う重要な役職です。
「取締役」という言葉だけ聞いたことがある人は多いでしょう。この記事では、取締役が具体的にどのような役割を持ち、どのような責任や義務を負っているのかを解説します。
取締役の基本的な定義や役割、代表取締役や社外取締役といった種類の違い、任期や解任、責任の範囲など、取締役の基本を網羅的に整理しました。これから会社を設立する起業家はもちろん、管理部門の担当者などにとっても役立つ情報をお届けします。


取締役とは?
取締役とは、委任契約に基づき会社の経営判断などを行う役員のことです。その役割について会社法は「株式会社の業務を執行する」と定義しています。
取締役というと、一般には「会社の幹部」「偉い人」というイメージがあるでしょう。確かに会社の上層部であり、大きな権限を持っているためこのイメージは間違いではありません。
取締役は、会社の方向性を決定し、株主の利益を守る役割を担っています。日常的な意思決定から長期的な経営戦略まで幅広く責任を負い、いわば会社の舵取りをする存在です。
取締役の役割
取締役の役割は多岐にわたり、会社ごと、そして取締役ごとに役割が異なります。
一般に、取締役は、経営方針の策定、予算の承認、重要な取引の決定など、会社の運営に関する主要な判断を行います。
対外的には「会社の顔」として振る舞う立場でもあり、取引先や金融機関との交渉を行うこともあります。取締役の行動が社会的な信用やイメージにつながることも多いです。
とりわけ上場企業では、取締役の判断が株価や投資家の評価にも直結するため、その責任の大きさは計り知れません。中小企業であっても、代表者や数名の取締役による判断が会社の将来を左右することになるため、取締役は極めて重要な役割です。
会社の経営判断
取締役は、日常的な契約締結や資金調達の判断から、数年先を見据えた事業戦略まで、幅広い意思決定を行います。
これらの意思決定は株主や従業員に大きな影響を及ぼすため、常に慎重さや責任感、時代の流れを読む判断能力が求められます。
会社の顔としての立場
取締役は外部に対して会社を代表する存在でもあります。
取締役は会社の法的な代表者として契約締結の権限を持ち、登記簿にも情報が記載されます。取締役は社内だけでなく社外的にも大きな影響力を持っているのです。
取締役は株式会社の役員の役職
取締役は会社法上の「役員」と呼ばれる立場です。
役員には取締役のほか、監査役、会計参与なども含まれますが、会社の経営に直接関与しているのは取締役です。その他の従業員や管理職(部長や課長)とは異なる立場です。
株主から会社の経営を任せられた人
取締役は株主総会で選任され、株主から経営を委任されているという立場です。
株主が「会社の所有者」であるのに対し、取締役は「経営判断を行う会社の上層部」関係にあります。
株主は必ずしも経営のプロではないため、取締役に会社の経営を委ねているのです。特に、複数の株主がいる上場企業や大規模会社では所有と経営の分離が明確になります。
つまり、株主はお金を出す人、取締役は株主から委任されて会社の利益のためにさまざまな判断をする人ということです。
株主と取締役が同一というケースもある
株式会社の特徴の1つに、株主と取締役の存在により所有と経営が分離されているという点があります。ただ、株主と取締役が同一というケースもあります。
特に中小企業や同族会社では「株主=経営者=取締役」という構造は一般的です。中小企業においては、株主と取締役が同一であることで、経営の安定や経営判断のスピードを高められるというメリットがあります。
また、大企業であっても取締役が自社の株を購入して所有することには何の問題もありません。
取締役に選任されたら登記される
取締役が選任されると、必ず法務局での登記が必要になります。これは会社法で定められた義務であり、2週間以内に登記を行わなければ過料の対象となるため要注意です。
登記によって、「誰が取締役か」を第三者が確認できるようになります。
取締役になるということは、登記されて情報が公開されるということでもあるのです。
取締役の人数について
会社法では、株式会社には必ず取締役を1人以上置かなければならないと規定されています。
また、設立後も必要な取締役の人数を必ず満たしている必要があるため、取締役の任期満了や辞任があった場合は、必要に応じて取締役を選任しなければなりません。
非公開会社の場合は、取締役が1人いればよいため代表取締役のみで会社を運営できます。
一方、公開会社や取締役会設置会社の場合は、取締役が3人以上必要です。これは経営判断を複数人で行い、透明性と公平性を確保するための規定です。
取締役の種類
取締役にはいくつかの種類があります。それぞれの役割や法的地位は異なりますが、いずれも会社の経営に関与する重要な存在です。
代表取締役や社外取締役といった会社法の規定に基づくものもあれば、実務的な慣習によって「役員」という呼称が使われているものもあります。
| 種類 | 権限・役割 | 登記の要否 | 法的根拠 |
|---|---|---|---|
| 代表取締役 | 会社を代表して契約を行う権限を持つ | 必要 | 会社法349条 |
| 取締役 | 経営判断に参加する役員 | 必要 | 会社法348条 |
| 設立時取締役 | 会社設立時に選任される取締役 | 必要 | 会社法38条 |
| 社外取締役 | 外部から招かれた取締役 | 必要 | 会社法2条15号 |
| 専務・常務取締役 | 社内で役割分担された取締役 | 必要 | 法的には取締役と同一 |
| 執行役員 | 社内で任命される役職 | 不要 | 法的地位なし |
代表取締役
代表取締役は、会社を代表する権限を持つ取締役です。
会社の代表権があるのは代表取締役のみであるため、会社にとって最も重要な立場といえます。もちろん、契約や取引の相手方にとっても極めて重要な役職です。
代表取締役は、株主総会や取締役会、取締役の互選で選定され、登記によってその情報が公にされます。
取締役
取締役は、代表取締役ではない取締役のことで、株主から会社の経営判断を任されている重要なポジションです。
代表取締役と異なり対外的に会社を代表することはできませんが、取締役という役職は極めて大きな権限を持ちます。
会社法上の役員であるため、取締役の情報は登記されます。
設立時取締役
会社設立時に必ず選任されるのが設立時取締役です。発起人によって選任され、設立後には取締役になるのが一般的です。
発起人は、出資をしたら遅滞なく設立時取締役を選任しなければなりません。設立時取締役は会社法で規定された役員であるため、登記が必要です。
社外取締役
社外取締役とは、文字通り「会社の外」から招かれた取締役です。社内で昇進した取締役とは担当業務が異なりますが、会社法上の役員である点は同様です。
社外取締役には、内部のしがらみにとらわれず、客観的な視点から経営に助言を行う役割があります。会社法上の役員なので、登記も必要です。
執行役員は会社法上の役員ではない
執行役員は、登記が必要な取締役とは異なる役職であり、会社法上の役員ではありません。
執行役員は社内規程で任命される役職であるため、法的な責任も限定的です。従業員が昇進して執行役員に任命されるというケースも多く、取締役とは全く違うポジションとなります。
実務的には、取締役が策定した方針を現場で実行する際の橋渡し役を担うケースが多いです。
何より、執行役員と取締役の最大の違いは、法的な地位の有無だといえます。
取締役と従業員の違い
会社で働く人には「従業員」と「取締役」という2つの大きな立場があります。両者は混同されがちですが、法的な位置づけや責任の範囲は大きく異なります。
従業員は会社と雇用契約を結び、労働の対価として給与を受け取ります。一方、取締役は会社と委任契約や業務委託契約を結び、経営の意思決定や業務執行に携わります。
そのため、負っている責任の範囲も異なります。取締役は会社法上の責任を負っていますが、従業員は基本的に業務上の義務のみを負うにとどまります。
取締役は従業員ではない
取締役は会社の意思決定を担う立場であり、「労働者」や「従業員」ではありません。そのため、労働基準法や労働契約法は適用外となります。
取締役は、残業代が発生せず、労働時間の規制も受けないため、働き方の自由度が高くなります。その代わり、労働時間に制限がなく、自らの裁量について責任を負います。
雇用契約を結んでいる労働者ではない
従業員は雇用契約に基づく労働の義務を負いますが、取締役は雇用契約ではなく委任契約を結ぶのが一般的です。そのため、委任契約に基づく経営責任を負っています。
従業員と同様のルールは原則として取締役には適用されず、株主総会の決議などにより解任・退任するしくみとなっています。
また、取締役は「会社のために最善を尽くす義務(善管注意義務)」を負っており、労働義務を果たせば給与を受け取れるという労働者とは異なります。
雇用保険の対象外となる
取締役は労働者ではないため、雇用保険や労災保険の対象外となります。突然解任された場合でも、雇用保険の失業給付を受け取ることはできません。
また、労働災害に遭った場合も労災保険の給付は受けられず、個人で傷害保険に加入するなどの対策が必要です。
取締役になる場合は、リスクを見据えた資金設計や保険加入を検討することが重要になります。取締役という立場は、高額な報酬をもらっているというイメージがあるかもしれませんが、生活資金や退職後の備えについては早い段階からの計画が必要です。
取締役の任期についてのルール
取締役の任期は会社法で定められており、原則2年です。ただし、非公開会社では最大10年まで延長できます。
任期は原則2年
取締役の任期は原則2年です。会社法では「選任後2年以内」となっているので、2年より短い任期であっても法的には問題ありません。
また、任期満了後に再任して取締役の地位にとどまることもできます。
非公開会社の場合は最長10年
一方、非公開会社では最長10年まで任期を延ばすことが可能です。家族経営や中小企業では、経営の安定性を重視するために任期を長く設定するケースが多くなります。

代表税理士
森 健太郎
非公開会社で取締役の任期を長く設定することにはメリットとデメリットがあります。任期を長くすると登記の手間や印紙代を削減できる一方、経営陣の人間関係が悪化しても解任がしづらいという難点もあります。
取締役の任期の管理には、注意が必要です。複数の取締役で任期の満了日が異なる場合、社内でしっかり管理しなければ登記変更を忘れて過料を科される可能性があります。
取締役以外の役員にも任期がある
取締役以外の役員にも任期はあります。
- 監査役:原則4年
- 会計参与:原則2年
- 社外取締役:一般に4年程度
監査役の任期は4年が原則です。取締役よりも長いのは、独立性を保ちつつ継続的に監査を行うためです。非公開会社の場合は定款で定めることで10年まで延長できます。
会計参与は、取締役と協力して計算書類を作成する役員です。税理士または公認会計士が就任し、任期は取締役と同じく原則2年とされています。
社外取締役の任期は会社法で明確に規定されていませんが、一般には4年程度が目安とされ、最長でも8年程度と考えられています。
取締役の解任
取締役には任期が定められていますが、任期の途中であっても「辞任」または「解任」によってその職を退くことがあります。
辞任とは、取締役が自らの意思でその職を辞することです。解任は、取締役本人の意思ではなく、株主総会の決議で取締役の地位を降りることになる制度です。
一般に、取締役が辞任する場合は、辞任届を提出して意思表示を行います。
株主総会の普通決議
取締役の解任は、株主総会での「普通決議」によって行われます。普通決議とは、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で可決されるものです。
本人の意思とは関係なく取締役を解任できる点が特徴ですが、正当な理由なく解任した場合、会社が取締役に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
取締役は任期の途中で解任されることもある
先述のとおり、取締役の解任に本人の意思は関係ありません。これは任期の途中で解任されることもあるということです。
ただし、株主総会の決議があっても解任の正当な理由がない場合、会社は取締役に損害を賠償することになります。
この「正当な理由」に関して、裁判所は以下の3点をあげています。
- 職務執行上の法令・定款違反行為
- 心身の故障
- 職務への著しい不適任(経営能力の著しい欠如)
参考:会社法339条2項の「正当な理由」に関する主張の整理|裁判所(PDF)
取締役の解任は会社にとっても本人にとっても大きな影響を及ぼします。実務では、株主・取締役双方の権利義務を慎重に考慮した対応が不可欠です。
取締役の責任範囲と義務
取締役は、会社や株主に対して会社法上の責任を負っています。
会社法には「善管注意義務」や「忠実義務」という義務が明記されており、取締役は常に会社の利益を最優先に行動することが求められます。
取締役は企業経営の方向性を決定する責任者であるため、自らの意思決定や判断が会社の存続や発展に直結する点を理解して意思決定をしなければなりません。
会社に対する責任
取締役は「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」を負います。これは、一般の経営者として通常期待される程度の注意と誠実さで職務を遂行しなければならないという義務です。
たとえば、企業に損害を与えるような経営判断、利益相反取引、社内規程を無視した経営行為などは、善管注意義務違反として責任追及の対象となります。
さらに、取締役には「忠実義務」も課されています。これは会社の利益を最優先に考え、自己や第三者の利益を優先させてはならないという義務です。具体的には、取締役が自らの関係会社に便宜を図るような契約をすることなどが忠実義務違反に該当します。
このような義務違反が認められた場合、取締役は会社に対して損害賠償責任を負うことになります。会社が取締役を訴えるケースだけでなく、株主代表訴訟によって責任追及がなされることもあります。
第三者に対する責任
取締役の責任は会社に対してだけでなく、株主や取引先など第三者にも及ぶ場合があります。
たとえば、意図的に粉飾決算をして投資家に誤解を与えた場合や、法令違反行為によって取引先に損害を与えた場合には、取締役個人が法的責任を問われる可能性があります。
こうしたケースでは、単に会社内部の問題にとどまらず、取締役個人の資産にまで影響が及ぶこともあるため、経営判断は慎重かつ合理的に行わなければなりません。
取締役は、日頃から適切な情報収集と合理的な意思決定プロセスを意識し、説明責任を果たせるよう行動することが重要です。
取締役会について
取締役会は、経営に関する最も重要な意思決定機関の1つです。株主総会が会社の基本方針や役員の選任・解任、定款変更などを決定するのに対し、取締役会は日常的な経営戦略や業務執行に関わる具体的な判断を行います。
取締役会の設置はすべての会社の義務ではありませんが、組織の成長や事業の多様化に伴って取締役会を設置することがあります。
下表は、取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違いです。
| 比較項目 | 取締役会非設置会社 | 取締役会設置会社 |
|---|---|---|
| 取締役の人数 | 1名以上 | 3名以上 |
| 取締役の業務執行権限 | ある | 代表取締役のみ |
| 監査役の設置 | なくてもよい | 必要 |
| 業務執行の決定 | 取締役の過半数の賛成 | 取締役会の決議 |
| 株主総会の権限 | 会社に関する一切の事項を決定する | 会社法および定款に規定されている事項のみを決定する |
取締役会とは?
取締役会の役割は、大きく分けて 「会社の基本方針を決定すること」 と 「その方針に基づく業務を監督すること」 の2つに整理できます。
会社経営では、日々多くの意思決定が求められます。新規事業の開拓、主要取引先の選定、大型設備の導入といった判断は、いずれも会社の将来に大きな影響を及ぼす重要事項です。これらの経営上の重大な判断について、最終的な意思決定を行うのが取締役会です。
さらに、取締役会は「監督機能」も担っています。進行中の事業や業務が、定款や会社法、取締役会自身が定めた方針に適合しているかを点検し、問題があれば改善を促します。このチェック機能により、会社の徹底的な法令遵守や持続的な成長が支えられるのです。
上場するかどうかの判断基準
取締役会は任意で設置することも可能ですが、企業の成長段階によっては「上場するかどうか」という大きな分岐点と密接に関わります。
上場は資金調達や信用力の向上といったメリットがある一方で、情報公開や経営の透明性といった厳しい要件も伴います。そのため、上場の判断には慎重さが求められます。
以下のフローチャートは、上場を検討する際の参考となるシンプルな基準を示したものです。
資金需要が少ない
大型資金が必要
数億円程度
必要

代表税理士
森 健太郎
上場については、会社ごとに事情が異なり、決め手もさまざまです。たとえば、家族経営からの脱却を社内外に示すために、取締役会を設置して上場したというケースもあります。
取締役は株式会社の経営判断を委任された役員
取締役は、会社の経営判断を株主から委任された、会社法上の重要な役割と責任を担うポジションです。取締役会は会社の方針を決め、業務執行を監督する重要な機関であり、上場や組織体制の判断にも直結します。
取締役や取締役会の判断は、会社の規模や成長段階を問わず経営に大きな影響を及ぼします。そしてこれらの機関には「会社を持続的に成長させる」という目的があります。
取締役に関するルールやしくみを理解し、適切に活用することが、会社を健全に成長させる第一歩となるでしょう。



















