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最終更新日:2025/11/13

取締役の義務を徹底解説!善管注意義務や忠実義務って何?登記についても解説します

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

この記事でわかること

  • 善管注意義務や忠実義務などの取締役の責任
  • 会社や第三者に対する義務
  • 責任が発生する場面

株式会社の取締役は、会社の経営判断を行います。そして取締役には会社法に基づいた一定の義務が課されています。

なかでも「善管注意義務」や「忠実義務」は、取締役にとって非常に重要な義務です。これらの義務に違反した場合は、会社や株主、第三者に対して損害賠償責任を負う可能性もあります。取締役本人はもちろん、選任する側も取締役の義務をしっかり理解しておくべきです。

この記事では、会社法で定められた取締役の義務や登記に関するルール、取締役会の設置義務まで幅広く解説します。取締役に就任する予定の人や会社経営を行う人にとって押さえておきたい基本知識を、丁寧にまとめました。

個人事業と法人の違い、会社設立の流れ、必要書類、費用など会社設立の全体像をわかりやすく解説!

取締役の義務とは

取締役には、経営判断を行い会社の利益を追求するという職務だけでなく、自らの義務を守り、会社や株主、第三者に損害を与えないように行動する義務があります。

これらは会社法で定められており、違反すると法的な責任を問われる可能性があります。ここでは、取締役に課される義務を確認していきます。

会社法で規定されている義務

会社法では、取締役が負っている義務が複数定められています。なかでも重要なのが「善管注意義務」「忠実義務」「報告義務」です。

これらは取締役としての責任や行動基準ともいえるもので、どのような経営判断や意思決定をするかだけでなく、必要な注意を怠っていないかについても責任が問われます。

善管注意義務

善管注意義務とは「善良な管理者の注意義務」です。会社法では、取締役の責任は民法上の委任契約に準じるとされています。よって、取締役は民法で定められた善良な管理者としての注意義務を負うことになります。

取締役は必要な注意を怠らずに職務を遂行することが求められるということです。

たとえば、取締役が通常行うべき情報収集をせずに重要な取引を承認し、大きな損失を会社に与えた場合、情報収集をしなかったことが善管注意義務違反と判断されれば損害賠償請求の対象となる可能性があります。

会社法 第三百三十条

株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

引用元 e-Gov 法令検索

民法 第六百四十四条

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

引用元 e-Gov 法令検索

忠実義務

忠実義務とは、会社のために誠実に職務を遂行しなければならないというものです。この忠実義務に関しても会社法に規定があります。

取締役が、自分の利益を優先させる契約をしたり、会社の情報や資産を業務以外の目的で利用したりすると、忠実義務に反する行為となります。

たとえば、取締役が競合会社の設立に関与し、会社の情報やノウハウを漏洩させた場合などは忠実義務違反とされる可能性があります。

会社法 第三百五十五条

取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

引用元 e-Gov 法令検索

報告義務

報告義務とは、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは株主に報告しなければならないというものです。

この義務は、会社の重要な情報共有や経営の透明性を確保するために不可欠なものです。報告を怠った場合、他の取締役が正確な判断を行えず、会社に損害が生じる可能性があります。

会社法 第三百五十七条

取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならない。

引用元 e-Gov 法令検索

会社に対する義務

取締役は、株主総会で選任され、会社との委任契約に基づいて経営を任されています。そのため会社に損害を与えるような行為を行った場合、損害賠償義務を負うことになります。

善管注意義務違反の事例

実務上よく問題になるのが、善管注意義務違反です。

過去の事例として、株式会社アパマンショップホールディングスの株主代表訴訟をご紹介します。

この事件では、会社が持株比率を上げるために一部の株主に対して株式の買取りを打診したというものです。その際に、当時は1万円程度であった株式を1株5万円で買い取ったのです。その際に、他の株主が時価との差額が大きいという理由で株主代表訴訟を提起しました。

1株5万円での買取りを判断したのは取締役であり、会社の持ち主である株主はこの買取金額は会社の損害になるという判断をして取締役の「善管注意義務違反」を理由に裁判をしたのです。

このケースは最高裁まで争われましたが、最高裁は「株主の主張を認めない」という判断をしました。つまり、裁判所は、持株比率を上げるメリットを優先させたという取締役の経営判断は善管注意義務違反ではないと判断したのです。

参考:平成21(受)183 損害賠償請求事件|裁判所

競業禁止

競業禁止とは、会社の利益を害する行為を禁止するものです。取締役が独立する際や同業他社にヘッドハンティングされた場合などに問題となります。

取締役は、以下のような行為を会社の承認なく行うことを禁止されています。

会社の承認がないとできない行為

  • 会社と同種の事業を自己または第三者の名義で行うこと(競業行為)
  • 会社の事業機会を自己または第三者のために利用すること
  • 会社と取引を行うこと(自己取引)

こうした行為は「競業禁止義務違反」となる可能性があるため、事前に株主総会や取締役会の承認が必要です。

承認を得ずに競合会社の経営に関与したり、会社の顧客を利用するといった行為があれば、損害賠償の対象となることがあります。

参考:会社法 第三百五十六条|e-Gov 法令検索

利益相反

取締役が会社との間で利害が対立するような取引を行うと「利益相反」とされる可能性があります。

たとえば、取締役が自己の所有する不動産を会社に高額で売却した場合、会社にとって不利な取引となるため利益相反とみなされます。

取締役は、自身の利益と会社の利益が衝突する場面においても、常に会社の利益を優先する義務があります。

第三者に対しての義務

取締役の義務は、会社に対するものだけではありません。取締役の行為によって第三者に損害が生じた場合、その責任を問われるケースがあります。

損害賠償

取締役の義務違反で第三者に損害が発生した場合は、賠償責任を負うことになります。取締役の賠償責任を認めた知的財産に関する事例をご紹介します。

この事例は、日本たばこ産業株式会社から委託を受けた会社が、広告で使用する写真の利用許可についての確認を怠った結果、会社に損害を与えたという事例です。

確認を怠った結果、7年にわたって違法な状態で写真を掲載し続けることとなり、著作権が侵害されたのです。この事例では、裁判所は取締役の責任を認め、取締役は第三者(著作権者)への責任を負うこととなりました。

参考:令和3年(ワ)第20472号 損害賠償請求事件|裁判所

取締役の義務の範囲は?

取締役が第三者に対して負う責任は、「間接損害」と「直接損害」の2種類です。ここでは、間接損害と直接損害について解説します。

間接損害と直接損害の両方

間接損害とは、取締役が義務違反によって会社に損害を与えた結果、第三者にも損害が及んだ場合です。この第三者には、取引相手や株主が含まれます。

直接損害とは、会社に損害がなく第三者に対してのみ損害を与えた場合です。取締役に義務違反や過失がある場合は、第三者が受けた損害に対して賠償責任を負います。

どんな場合に責任が発生するのか

前述したとおり、取締役の責任の範囲は、会社に対するものだけでなく社外の関係者にも及びます。ここでは、具体的にどのような場面で責任を問われるのかを解説します。

会社に対する責任

取締役が競業禁止義務や忠実義務に違反した場合、会社に与えた損害について賠償する責任が発生します。

たとえば、取締役が会社の承認なく同業種の事業を始めた場合や、会社に自分の財産を高額で売却した場合などがこれに該当する可能性があります。

このような行為は、株主代表訴訟などを通じて、会社から取締役個人に対して損害賠償請求が行われることがあります。

第三者に対する責任

取締役が会社外の第三者に対して損害を与えた場合、損害を受けた人や会社が取締役個人に対して損害賠償請求するケースがあります。

たとえば、会社の決算情報を偽って提供して投資や銀行を誤認させた場合や、取引先への確認を怠った結果、損害を与えた場合などがこれに該当します。

経営判断に対する責任

取締役が、明らかに不適切な意思決定や、情報収集をせずに経営判断をして損害が生じた場合は、法的責任が発生することがあります。

ただし、ここに関しては経営判断をミスしただけでただちに「責任が発生する」というものではありません。

取締役の経営判断によって会社に損害が出たとしても、情報収集を行い、しっかりと検討を行ったうえで判断した結果であれば、損害が生じても責任は問われません。

わかりやすく言えば「ちゃんと考えて判断したのか」がポイントになるということです。結果として会社が損害を被ったとしても、判断のプロセスや方法が誠実であれば責任を負う必要はないのです。客観的に適切な対応をしていたのかが争点となります。

会社が倒産した場合は?

株式会社が倒産しても、取締役個人が会社の負債を返済する義務はありません。これは、会社が法人であり、法人と取締役個人は法的に別人格とされているためです。

ただし、例外として法令違反や重大な注意義務違反がある場合は、株主代表訴訟や第三者からの損害賠償などによって取締役個人の責任を問われる可能性があります。とはいえ、これは会社の負債を返済しているのではなく、取締役個人の責任を追及されているというものです。

倒産は、取締役の責任が発生する要因にはなりません。ただし、その過程に取締役の違法行為や重大な過失が含まれていた場合は責任が生じる可能性があります。

取締役の登記に関する義務

取締役をはじめとする役員は、登記する必要があります。登記を行うことで、会社の信用の担保や取引先とのトラブルの回避につながります。ここでは、登記の義務について解説します。

参考:会社法 第九百十一条 第3項 第十三号|e-Gov 法令検索
参考:会社法 第九百十五条|e-Gov 法令検索

取締役の登記は会社の義務

取締役の登記は会社法で定められた義務です。法人である会社は、国が管理している登記簿で情報が管理されています。

登記情報は公にされる内容であり、会社の取締役が誰なのかは第三者でも閲覧できます。取締役の登記をする義務は、取締役本人に対する義務ではなく会社に課される義務です。

取締役に関する情報が変更された場合は、必ず登記が必要です。ここで注意したいのが再任や重任のケースです。

取締役の任期満了で、同じ人物が再任・重任する場合でも、変更登記が必要です。引き続き同一人物が職にとどまるため変更が不要に思えますが、任期満了の場合は必ず変更登記が必要となります。

取締役は必ず登記される

株式会社の取締役は、必ず登記されます。取締役に就任した場合、会社はその旨を登記する義務があり、その登記を怠ると、取締役としての地位を第三者に証明できず、不利益が生じる可能性があります。

登記情報は、会社の意思決定を誰が行うのかを明確にするためのものであり、取締役の情報が第三者に対しても明示される仕組みです。

取締役会の設置義務

3人以上の取締役が集まって設置される「取締役会」という意思決定機関があります。すべての株式会社に置かれるものではありませんが、会社の形態によっては取締役会の設置が義務というケースもあります。

取締役会を設置する義務があるケース

取締役会を必ず設置しなければならないのは、以下のような会社です。

取締役会が必須の会社

  • 公開会社
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

取締役会を設置するためには3人以上の取締役が必要です。また、非公開会社(すべての株式に譲渡制限がある会社)の場合は、取締役会を設置する必要はありません。

取締役は会社や第三者に対して義務を負っている

取締役には、会社や第三者に対する多くの義務が課されています。善管注意義務や忠実義務、競業禁止義務、登記義務など、取締役として果たすべき責任は非常に重いものだといえるでしょう。

万が一、これらの義務を怠った場合、会社に対する損害賠償責任や、第三者への個人責任が生じる可能性があります。特に、善管注意義務違反や利益相反に関わる行動は、あとから法的責任を問われる場面も少なくありません。

そのため、会社を設立して取締役に就任する予定がある人や、すでに取締役として活動している人は、会社法の基本的なルールや自らに課されている義務を正確に理解しておくことが重要です。

登記手続きや義務違反のリスクに不安がある場合は、会社法に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。

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