最終更新日:2025/12/19
起業の成功例7選:起業家へのインタビューから学ぶ失敗と成功の秘訣

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

これから起業を目指す人は必読! 各業界で活躍する先輩起業家7人に、起業時と起業後のさまざまな意見をうかがいました。
成功例はもちろんのこと、普段は話しにくい失敗例まで、貴重な体験談の数々を参考にして、ぜひとも自身の起業に生かしてみてください。


目次
この記事の読み方と前提
本記事は、起業家7人へのインタビューと、匿名の起業家100人へのアンケート結果を整理し、税理士としての視点を加えて構成したものです。
インタビューでは、それぞれの起業家に11の質問を投げかけ、その回答をもとに起業の実態や考え方を掘り下げています。
100人アンケートでも同じ設問を用い、数値としての傾向を把握できるようにしています。
起業家7人と起業家100人に聞いた11の質問
起業の成功に絶対的な正解はありませんが、実績を出している経営者が共通して持っている「思考の型」や「判断基準」は存在します。
それを解明するため、7名の起業家へのインタビューと、100名の起業家へのアンケート調査を実施しました。
起業家7人のプロフィール
今回インタビューを行った起業家の方々の、お名前と会社名、営んでいる業種は以下の表のとおりです。
| 起業家 | 会社名 | 業種・事業内容 |
|---|---|---|
| 土屋 勇樹さん | 株式会社リベロ | 建設業 |
| 入江 政好さん | 株式会社スカイ・プロジェクト | ITサービス業 |
| 越前 厚平さん | 株式会社COLABO | 建設業 |
| 角前 壽一さん | 株式会社Colors | Web事業 |
| 田村 清志さん | Four Style株式会社 | ITサービス業 |
| 中川 高一さん | ルーキーワークス株式会社 | 人材サービス業 |
| 関根 拓郎さん | 株式会社シー・アイ・エル | 経営コンサルタント業 |
Q1・複数人ではなく1人で起業した?

「自分1人でやるという覚悟があったから」 (中川:人材サービス業)
「資金もなかったし、最初は『個人でそこそこ稼げたらいいな』という気持ちではじめた」 (越前:建設業)
「1名で起業するよりも複数で起業するほうが失敗のリスクを大幅に減らせると思ったから、前同業職で独立志向のある4人で起業した。4人とも特徴や長所が異なるので、シナジー効果は抜群」 (田村:ITサービス業)
「もともと起業1カ月後に1人入ってくる予定があったので、それを見越したうえで動いていた」 (入江:ITサービス業)
起業の動機やビジョンによって、起業時の人数はさまざまなようです。
1人起業の場合は意思決定がスムーズである反面、重圧や責任が大きくなります。
インタビューでは1人での起業はおよそ半数ほどでしたが、100人の起業家に実施したアンケートではおよそ7割が自分1人で起業したと回答しています。

一方で、2024年に日本政策金融公庫総合研究所が行った調査では、開業時の従業者数(経営者本人を含む)が1人の割合は約4割となっています。
これは公庫のデータが「融資を受けた企業」を対象としているため、規模の大きい事業が含まれやすく、複数人での起業の割合が高くなりやすいためと分析できます。
参考:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(PDF) を加工して作成
つまり、起業の実態としては、アンケート結果に近い「まずは身軽に、自分1人から始める」スタイルが多数であると言えるでしょう。
Q2・顧客ゼロの状態で起業した?

「顧客は必ず枯渇する。保険をかけてスタートするような意識で起業したくなかったから、個人事業時代の顧客もリセットして法人化した」 (関根:経営コンサルタント業)
「起業前の口約束はあてにならない。クライアントが新会社へそのまま引継ぎするという約束ありきで起業したが、実現せずに痛い目に遭った」 (田村:ITサービス業)
「交流会に積極的に参加して顧客開拓を進めた」 (角前:Web事業)
「同業界での起業なので、起業前から知人などに営業活動をしていた」 (入江:ITサービス業)
「前職の商社で発注していた先の下請けとして仕事をいただいたり、前職の商社から直接仕事をもらうことができた」 (越前:建設業)
顧客の数は、売上に直接関わる非常に重要な数値です。
同じ業界で起業する場合、前職時代の付き合いを生かすことができれば、負担の少ないスタートを切れる可能性が高そうです。
ただし、田村社長のように「口約束だけで結局は仕事につながらなかった」ケースもあるので注意が必要です。
100人へのアンケートでは、4割の起業家が顧客ゼロから事業をスタートしていました。

以上から、必ずしも顧客のあてがなくても起業は可能ということが見て取れます。
しかし、「顧客は必ず枯渇する」という関根社長の言葉どおり、顧客を獲得するための営業努力は常に必要になります。
Q3・「人」「金」「事業計画」のうち最も大切なのは?

「会社を立ち上げたときには何も経営についてわからなかったが、起業時のメンバーで助け合ったほか、多くの人が救ってくれたからこそ続けられている」 (田村:ITサービス業)
「起業の動機が『好きな人と、好きな仕事を、好きなお客さんのためにやる』であり、事業の軸が『人』にあるから」 (角前:Web事業)
「いまの仕事はお金もパソコンもないなか、知人の家に泊まり込んでパソコンを借りながらスタートした。どれも大事だが、振り返れば人が一番大きかった」 (越前:建設業)
「起業当初の事業計画はたいしたものではなく、お金も少ないなりにやってきた。それでも経営を続けられたのは、一緒に戦う仲間がいたからだと思う」 (入江:ITサービス業)
「自分が想像していた以上に出て行くお金が多かった。どれも大事だが、自分の業種ではお金がないとはじめられないことが多く苦労した」 (土屋:建設業)
「長く経営を続けるならば『何がしたいのか、自分がすべきことは何か、社会的に需要があるか』などを明確にしておくことが大事だと思う」 (関根:経営コンサルタント業)
「『何のためにその仕事をしているのか』が明確になって、初めて人やお金がついてくると思う」 (中川:人材サービス業)
いずれの起業家も「どれも大事」と悩んだ末に、「人4、金1、事業計画2」という結果になりました。
多数派だった人派の意見では、起業時に周囲の助けがあったからという理由をあげる人が目立ちました。
物理的な助力だけでなく、精神的にも助けられる部分があるため、1人起業・複数人起業にかかわらず、協力者の存在は欠かせないようです。
一方の事業計画派では、明確な計画があるからこそ、人や金がついてくるという経験者ならではの見解が見られました。
また、唯一の金派である土屋社長は、建設業を営む関係上、資金繰りに苦労することが多かったようです。
こうした事業内容や業種の違いも、「人」「金」「事業計画」の優先順位に影響する結果になりました。
100人アンケートでも、過半数を人派が占める結果となりました。

家族や友人、従業員や取引先など「人」の中身はさまざまですが、いずれにせよ人との関わりは、起業においても非常に重要ということが見て取れます。
Q4・起業後、事業が1年以内に軌道に乗った?

「ひと言で軌道に乗ったというのは難しいが、マイナスではなかった。個人でスタートした分、支出が少なかったのが良かったのかも」 (越前:建設業)
「顧客がいなかったため、売上が上がらずに苦労した」 (中川:人材サービス業)
「落ち着いたのは5年目に入ってから。さまざまなことに取り組んできたが、いま振り返れば勝てる領域の仕事に一点集中するべきだったと思う」 (関根:経営コンサルタント業)
「起業して感じたのは『軌道に乗る』が自分ではわからないということ。今も軌道に乗っているかわからないが、いつまでも軌道に乗っていると思わない方が自分には合っていると思う」 (土屋:建設業)
「黒字基調」などの明確な指標ではなく「軌道に乗る」という主観に委ねられる質問に対し、越前社長以外の6人が✕と回答しました。
その判断基準は、中川社長のように業況面をあげる意見が目立ちましたが、土屋社長は自戒の意味で「今も軌道に乗ってないと考える」と答えたのが印象的です。
唯一〇と回答した越前社長も、「Q2.複数人ではなく1人で起業した?」にて、前職の人脈から仕事を得ていたと回答しています。
こうした人脈がないのであれば、起業してから少なくとも1年はさまざまな経営努力をする必要がありそうです。
しかし、100人アンケートでは過半数が「1年以内に軌道に乗った」と回答しています。

軌道に乗るという言葉の意味を「黒字基調になる」と解釈した場合、開業後1年以内の企業の7割弱が黒字というデータがあります。

参考:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(PDF) を加工して作成
もっとも、黒字であることと経営が安定していることは、必ずしもイコールではありません。
最初は自分への役員報酬をギリギリまで削っている起業家も多いというのが実情でしょう。
Q5・資金ショートを起こしかけたことがある?

「中国法人を設立した際、一度に5人の現地スタッフを抱えてしまい、中国法人設立1カ月目は給料を支払えなかった」 (越前:建設業)
「原因は自分の慢心。正確なリスクを把握せずに経営していた。自分のお金で一時的に回避したあと、担当税理士のアドバイスで金融機関に借りてリスクを軽減した」 (入江:ITサービス業)
「下請け業者への先払いが原因。貯蓄を切り崩して何とか資金ショートを回避した」 (土屋:建設業)
多くの起業家が恐れる資金ショートですが、なんと7人全員が起こしかけた経験があるという実態から、経営の難しさが窺い知れます。
資金ショートを回避した方法は「自己資金から補填」と「金融機関の融資」でしたが、世の起業家たちのなかには自己資金不足や融資が受けられず、廃業を余儀なくされるケースも珍しくありません。
100人アンケートでは、ちょうど半数の起業家が資金ショートを起こしかけたと回答しました。

たとえ自己資金を十分用意したと考えていても、思わぬトラブルで出費が発生することもあります。
いざというときに備えるため、日頃からキャッシュフローに注意し、あらかじめ融資や公的補助金・助成金の活用なども考えておきましょう。
実態調査でも、2022年から2024年にかけて、開業時に苦労したことは3年連続で「資金繰り、資金調達」が1位となっています。
参考:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(PDF) を加工して作成
事業においていかに資金が重要なのかが見て取れる結果となりました。
Q6・起業するなら若いほうがいい?

「10代、20代と30代、40代では生活コストが違う。家庭を持っていたらコストを下げにくいし、マイホームを購入していれば、銀行の借入れで担保に持っていかれてしまう。起業するなら、生活水準が上がる前にした方がいい」(角前:Web事業)
「学生のうちに起業を経験した方がいい。失敗してもやり直しがきく」 (入江:ITサービス業)
「なるべく若く健康なときに起業した方がいい。歳を取ると頑張りたいときに頑張れなくなる。会社を起ち上げた瞬間に自分が倒れたら、いろいろな人を巻き込んでしまう」 (田村:ITサービス業)
起業するなら若いうちにしたほうがいいと、7人全員が回答しました。
なかには入江社長のように「学生のうちから企業を経験したほうがいい」という意見も見られます。
近年では大学で起業の相談窓口や講座、ビジネスコンテストなどを開催していることも多く、若くても起業しやすい環境が整いつつあります。
100人アンケートでも、7割が「起業するなら若いうちのほうがいい」と回答しています。ただし、「若いうちは会社勤めで経験を積んだほうがいい」「十分な資金やスキルが身につくまでは起業しないほうがいい」という意見も見られます。

実際の開業時の年齢の推移を見てみると、29歳以下の起業は全体的には減少傾向です。
最も多い年齢層は、以前は30歳代が最も多かったものの、近年は40歳代のほうが多くなっています。
日本の少子高齢化の影響も考えられますが、起業家たちの意見とは裏腹に、若年層が安定した雇用や働き方を求めていることの表れとも言えるかもしれません。

参考:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(PDF) を加工して作成
Q7・起業前よりも起業後の方が忙しくなった?

「営業からそのほかすべてにいたるまで自身がやらなければならず、仕事が圧倒的に増えた」(中川:人材サービス業)
「従業者8名分の仕事を作るのが私の仕事。仕事を絶え間なくつくらないといけないので忙しくなった」(土屋:建設業)
「24時間365日仕事モードだが、自分でコントロールして仕事をしている感じがある」(角前:Web事業)
「自分が現場に行って作業するという機会が大幅に減り、身体面では忙しくなくなった。しかし、精神面では24時間365日、いつでも気を張っています」(田村:ITサービス業)
「会社員時代から仕事が好きだったので、昔も今も忙しさを測っていない。そのため、どちらとも言えない」(入江:ITサービス業)
社長として活動する場合、従業員を何人雇うかによって、自分の仕事の内容や忙しさも変化します。
自分が現場作業なども行ったり、逆に多くの従業員を抱える場合などは、どうしても多忙になりがちのようです。
一方で忙しくなくなったという人も、精神的には常に仕事について考えているという意見が多く見られました。
100人アンケートでは7割強が「忙しくなった」と回答しています。

起業は、自分で働き方を調整できることが魅力の1つとも言われますが、忙しさという視点で見れば、むしろ雇用者という立場のサラリーマンよりも、するべきことや精神的な負担は大きいのでしょう。
実態調査でも、週に50時間以上働いている経営者の割合は、3年連続で過半数を超えています。
参考:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(PDF) を加工して作成
サラリーマンと比較すると、経営者は長時間労働に陥りがちのようです。
Q8・サラリーマン時代に戻りたいと思うことがある?

「仕事柄、閑散期が必ずあり『どうやって仕事を確保するか』と悩むときには、サラリーマン時代に戻りたくなる」(土屋:建設業)
「雇われの身だからこその楽しみ方もあるので戻りたくないわけではない。しかし、自分の生き方として考えると今の働き方の方が満足できる」(関根:経営コンサルタント業)
「サラリーマン時代は平凡な生活だったから」(中川:人材サービス業)
「経営者は役割のひとつ。サラリーマン時代も同じ気持ちで仕事に取り組んでいた。自身の満足ではなく会社を成長させることを考えれば、自分より適任者がいた場合には役割を渡すべき。だから気持ちとしては、いつでもサラリーマンに戻れる」(入江:ITサービス業)
Q7では「経営者は忙しくなりがち」と結論づけましたが、サラリーマン時代に戻りたいという人は少数派でした。
唯一戻りたいときもあると回答した土屋社長も、閑散期の仕事の確保に苦慮するからという経営者ならではの悩みが理由です。
100人アンケートでも、サラリーマン時代には戻りたくないという意見が圧倒的に多数でした。

たとえ忙しくても、経営者としての仕事にやりがいを感じている人が多いようです。
実態調査の結果も、開業してからの仕事にやりがいを感じていると回答した人が8割強を占めています。

参考:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫総合研究所(PDF) を加工して作成
ワークライフバランスも半数以上が満足している一方、事業からの収入に関しては不満を持つ層も少なくありません。
「もっと稼ぐために、どんどん働く」スタイルの経営者が多いことの表れとも言えるでしょう。
Q9・日本人はもっと積極的に起業すべき?

「世のサラリーマンが『いかに会社に守られているか』を実感することができる。もっと、個人ひとりひとりが当事者意識を持つためにも、成功するにせよ失敗するにせよ、起業を経験しておいて損はないのでは」(中川:人材サービス業)
「迷っているんだとしたら、あきらめるよりも起業に動いた方がいいと思う」(越前:建設業)
「起業は自己責任。しかし日本人の気質として、失敗したときの理由を外部に求める他責の傾向が強い。実際にそういう起業家が多いので、起業に向いていない人が多いように感じる。それならば、最初から起業せずにサラリーマンを続けていた方がいい」(関根:経営コンサルタント業)
日本はしばしば起業後進国とも言われます。
起業家たちからは起業を後押しする声が多く、自身の経験と重ね合わせて「結果よりも後悔しないように」との意見が目立ちます。
一方、唯一の✕派の関根社長は、他責の傾向が強い日本人の気質を理由に、起業に向いていない人が多いと指摘しました。
やはり実際に起業して経営を続けるためには、強い覚悟が必要のようです。
100人アンケートでは3割強がNOと回答するなど、慎重な姿勢も見られました。

中小企業庁が発表している「小規模起業白書」からは、日本の開業率は全体的に減少傾向ということが見て取れます。

参考:2025年版 中小企業白書(HTML版) 第8節 開業、倒産・休廃業|中小企業庁 を加工して作成
これらの調査には「企業の組織再編などの目的で行われる会社分割による分社化も含まれる」として、内閣府がより狭義の起業率を測定した調査レポートもあります。
第2節 我が国における起業動向と成長企業の特徴
次に、分母に各月1日時点の企業数をとり、分子に起業法人数をとった起業率の動向を確認すると、分社化を除くベースでは、コロナ禍前の 2019 年頃までは、2.8%前後で比較的安定的に推移していたことが分かる(第3-2-5図(4))。その後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う1回目の緊急事態宣言が発令された期間を含む 2020年4月、5月においては 2.3%程度まで低下した。
(中略)
その後、経済社会活動が再開していく中で、一定の振れはあるものの、総じて起業率は上昇傾向で推移し、直近では3%前後と、コロナ禍前よりも高い水準で推移している。
この調査では、コロナ禍前よりも起業率は上昇していると結論づけていますが、実際の起業率が3%前後というのは依然として低い水準と言えます。
同調査では、起業率が低い要因として、日本はリスク回避的な志向を持つ人の割合が他国よりも相対的に高いことをあげています。
このほか、自分の住む地域で事業を始める機会があると認識する人の割合や、自身が事業を始めるのに必要な能力や経験を有していると信じる人の割合が、他国に比べて突出して低いことも原因としてあげています。
Q10・起業する前にやっておけばよかったと思うことは?
経営コンサルタント業 関根
失敗や反省は特にない。しかし、今の知識や経験をもとに起業し直すとすれば、お金や数字に対しての考え方を変えると思う。たとえば、融資や補助金、助成金の知識を得ること。集客に対してもっと費用や時間をかけるべきだった。慎重になり過ぎていて、手持ちのお金を増やすことよりも、手持ちのお金を減らしたくないと恐れていた部分がある。その結果、売上が立つまでに時間が掛かってしまった。
人材サービス業 中川
メンターのような存在を探すことです。成功体験を語りたがる先輩経営者は多いですが、失敗体験を教えてくれる人こそが大事。そんな信頼できる相談者が起業前にいたら、精神的にすごくラクだったと思います。
ITサービス業 田村
登記やお金のことなど、起業にあたって分からないことは、分かる人を探す、または人づてに聞くといった努力をもっとしておけばスムーズだったと思います。あとは、口約束をしないこと。起業後に仕事をもらえる予定の取引先が3社ほどありましたが、いずれも口約束で、そのすべてから仕事を回してもらえなかったので……。当時は私自身も起業準備で頭がいっぱいだったので、もっと取引先との信頼関係を築いておけばよかったです。
WEB事業 角前
ビジネスパートナーづくりです。起業前に仲間と計画しながら役割を決めて、複数人で踏み出していたら、いまとは全然違っただろうなと思います。1人で起業し、なまじ結果を出すと、あとから来る人がゲストのような感覚で来てしまうので、なかなか右腕を育てるのが難しいと感じます。
建設業 越前
何もしないままに起業したので、やっておけばよかったことは全部かもしれません。しかし、何もしてこなかったからこそ、起業後にその全部を自分で勉強できたことは、大きな財産になったと言えるかもしれません。
ITサービス業 入江
いろいろあるが、一番はお金のこと。「だいたいこのくらい入ってくるだろう」と勝手なイメージでやっていたため、最終的にイメージどおりの金額が入ってこないということが多かった。だから、最初にもう少し業界の金額感について知っておけばよかった。
建設業 土屋
私の場合はお金で苦労しました。どれだけ出ていくかという予想をある程度立てていましたが、それを上回る金額が出ていった。また、助成金が入ってくるのが遅いので、いつ支払われるのかなどの情報をもっと調べておけば、苦労は少なかったかなと思います。
Q11・これから起業を目指す人たちにアドバイスを
経営コンサルタント業 関根
自分がしたいことではなく、社会・世界が必要としているかを考える。そのうえで、本業以外で経営上必要なことは信頼のできる専門家に一任する。その費用を惜しんでいると、目の前のお金ではなく自身の時間や余計なことに神経をすり減らしてしまい、本業に大変な影響をもたらしてしまう。また、考え方として「この人は分かってくれない」ではなく「分かってくれないのは自分に魅力がないから」と受け止めること。ビジネスにおいて、人のせいにして得をする人、成功をし続けた企業はない。顧客、仲間、同僚に対して相手以上に相手を思うことが必要。
人材サービス業 中川
私は独立5年目となります。起業ではなく、あくまでも前職の事業を継承しているだけです。5年目である節目に新規事業を立ち上げましたが、新たなサービスで売上を立て、雇用し、会社を成長させていくことの大変さを痛感しています。起業することは誰にでもできますが、事業として売上を上げ、継続、成長させることは生半可なことではありません。事前準備を怠らず、協力者を見つけ、チャレンジしたほうがよいと思います。
ITサービス業 田村
私は経理総務の知識が皆無でしたが、さまざまな方のサポートもあり、今期で3年目になり売り上げも1億を超えました。右も左もわからなくても疾走する社長の背中を見ればまわりが助けてくれます。逆に、起業しても努力しないような人は誰も助けてくれません。私の座右の銘でもありますが「trial and error」でいいんです。どんなに頭で考えててもきっかけは生まれません。まずは行動してチャンスを掴みましょう。
WEB事業 角前
あなたらしさ、あなたの強みを活かすことが、市場・お客様・従業員・家族はもちろん、自分にとってもしあわせだと私は信じています。ぜひ、あなたらしさ、あなたの強み、あなたから買いたい理由を、探求して社会に価値を提供してほしいです。一緒にがんばりましょう。
建設業 越前
起業してみたいと本気で思った時が始める時だと思います。テンションが大事で、大体のことは何とかなりますし、何とかするしかありません。成功か失敗かは自分が決めることだと思うので、とにかく、やってみることが大事です。
ITサービス業 入江
自分を信じて行動することがとても大事。ただ、企業を成長させるためには「思い込み」や「慢心」を捨て、勝負時にリスクを軽減するための情報取集が必須。情報があれば勇気ある行動もできる。
建設業 土屋
アドバイスできるほど自分ができているとは思わないのですが、「勢い」「計画」「覚悟」があれば誰でも起業できると思います。私の場合、起業時に家のローンがあり、3人の子どももいました。なので「ローンがあるから」や「子どもがいるから」などの理由で起業を躊躇ってしまう人は、やめたほうがよいと思います。
税理士目線での「成功しやすい起業家」とは?
ここまでインタビューから7人の社長の考え方や経験を探ってきましたが、実際に多くの起業家を見てきた税理士としての意見も追記します。
前提として「こういう性格の起業家なら100%成功する」という絶対的な法則は存在しません。
しかし、数多くの企業と経営者を間近で見てきた税理士からすると、「長く生き残る社長」と「短命に終わる社長」にはいくつか違いがあるのも事実です。
一見すると矛盾しているようですが、成功する起業家は「極めて慎重」かつ「極めて大胆」な傾向があります。
普段はどちらかというと悲観的で、「もし計画どおりにいかなかったらどうするか」「資金がショートしたらどうするか」という最悪のケースを常に想定し、逃げ道や対策を用意しています。
しかし、いざ「ここが勝機だ」と判断した時の行動は素早く、決断的です。
普段は慎重なのに、勝てると分かった瞬間には全力でアクセルを踏み込めるという切り替えの早さが、変化の激しいビジネスの世界では重要と言えるでしょう。
特に、お金を稼ぐことよりも事業投資に楽しみを見出すタイプは、大きく飛躍しやすいです。
ただしこのタイプは、社内の組織管理がおろそかになる傾向もあるので、アクセル役の自分を支えてくれる、堅実な「ブレーキ役」を置けるかどうかが重要となります。
起業前にやっておくべき準備とは?
起業には一種の勢いや、覚悟が必要になる場面も多々あります。
しかし、その勢いを止めず、事業を長く継続させるためには、足元のリスクを減らしておくことも同様に重要です。
起業の成功確率を少しでも高めるためには、起業する前にこれら5つの準備をしておくといいでしょう。
- 顧客と売上の「当て」を具体化する
- 手元資金と生活コストを把握しておく
- 信頼できる「人」と「専門家」のルートを確保する
- 起業後1〜3年の働き方と生活のイメージを持っておく
- 起業のタイミングと「ここまでは許容できる」というラインを決める
具体的な内容について解説します。
準備1:顧客と売上の「当て」を具体化する
起業における最大のリスクは「売上が立たないこと」です。
インタビューでは顧客ゼロで起業した人も少なくありませんでしたが、準備段階で顧客や売上の「当て」があるに越したことはありません。
理想としては、開業初日から売上が立つ、あるいは誰が顧客となるかが明確に見えている状態を作っておきましょう。
「独立したら契約する」という口約束だけでは不十分です。
書面やメールで明確に契約を交わし、更にターゲット層のリストやテスト販売での受注実績などがあれば、起業初期のリスクを大きく減らすことができるでしょう。
準備2:手元資金と生活コストを把握しておく
「資金調達」というと、オフィス代や設備投資など「事業に使うお金」ばかりに目が向きがちです。
しかし、家賃や生活費といった個人の生活資金への備えを忘れてはいけません。
いざという時に「何とかする」ための体力を残しておくためにも、起業前には必ず、創業資金と生活防衛資金の2種類の資金を確保しておくことをおすすめします。
| 資金の種類 | 必要な金額の目安 | 解説 |
|---|---|---|
| 創業資金 | 初期投資額+運転資金の3〜6カ月分 | 会社設立費用、店舗取得費、PC購入費などに加え、売上がゼロでも会社や事業を維持できる固定費 |
| 生活防衛資金 | 現在の生活費✕6カ月〜1年分 | 自分の給与(役員報酬)を確保できなくても、自分と家族が生活水準をある程度は維持して暮らせるための貯蓄 |
生活防衛資金が十分にないと、目先の売上欲しさに条件の悪い仕事を受けてしまったり、本来投資すべきタイミングで広告費を惜しんでしまったりと、経営判断にも悪影響を及ぼします。
資金管理はできる限り現実的に、シビアに行う癖を起業前からつけておきましょう。
準備3:信頼できる「人」と「専門家」のルートを確保する
起業すると、日々の意思決定のほとんどを自分で引き受けることになります。
しかし、すべてを自分だけで抱え込んでしまうと、必要以上に慎重になったり、逆に勢いだけで決めてしまったりしやすくなるといった傾向があります。
そこで大切になるのが、起業前の段階で、相談できる知り合いや専門家のルートを用意しておくことです。
7人の起業家へのインタビューでも、「起業の先輩に早く相談しておけばよかった」「資金や手続きはもっと早く専門家に任せるべきだった」という声が複数挙がりました。
具体的には、事業アイデアや戦略を相談できる先輩経営者や、業界の事情に詳しい同業者、税に関する疑問や手続きを任せられる税理士などを見つけておきましょう。
さらに、家計や生活の前提を共有する相手として、配偶者やパートナーも重要な相談相手です。
起業前のうちに、「事業の方向性に迷ったときはこの人」「資金繰りや税金の相談はこの専門家」「生活レベルの調整は家族と話す」といった形で、自分なりの相談先をイメージしておくと、起業後の判断の質とスピードが大きく変わります。
準備4:起業後1〜3年の働き方と生活のイメージを持っておく
起業後の働き方については、インタビューやアンケートでも回答が分かれました。
起業前よりも忙しくなったと感じている人は多い一方で、その忙しさを前向きに捉えている人もいれば、体力的・精神的にかなり厳しいと感じている人もいます。
ここで重要なのは、自分の働き方の軸を定めておくことです。
起業前の段階で、どの時間帯にどのくらい働くのか、週あたりの労働時間をどの程度まで許容するのか、休日や家族との時間をどこまで確保したいのかを、紙に書き出してみることをおすすめします。
会社員として残業が多い状況からの独立であれば「起業後の1年目は今よりもさらに忙しくなる可能性が高い」前提で考える必要があります。子育てや介護と両立したい場合は、最初から時間帯や業務範囲を絞り込む前提で事業モデルを設計しなければいけません。
家族や配偶者がいるのであれば、起業前にこうした働き方についてすり合わせておくことが、後々のトラブル防止にもつながります。
準備5:起業のタイミングと「ここまでは許容できる」というラインを決める
起業を検討している人が悩みやすいのが、いつ会社を辞めるか、いつ副業から本業に切り替えるかというタイミングの問題です。
インタビューでも、起業するなら若いほうがいいと答えた人は多くいました。ただ、その理由は年齢そのものよりも、生活コストや家族の状況を含めて、どの時期ならリスクを取りやすいかという判断に近い内容でした。
準備2で解説した手元資金にもつながる話ですが、起業のタイミングは、市場の動きだけでなく、いますぐ起業しても生活を維持するだけの資金があるか、もしくはそれを賄うだけの売上の見通しが立つかという判断のうえで決定しなければいけません。
また、想定が外れたり予想外のトラブルが起こった場合も考慮し、手元資金の減少や赤字期間のボーダーラインをあらかじめ決めておきましょう。
そうしておけば、起業後に思ったように売上が伸びない時期が続いても、どこまでが想定内で、どこからが計画の見直しが必要な状態なのかを冷静に判断しやすくなります。
税理士から見た「専門家に相談するべきこと」とは
インタビューで関根社長が「本業以外で経営上必要なことは信頼のできる専門家に一任するべき」と語ったように、経営者がやるべきことは「雑務」ではなく「売上を作ること」です。
特に創業期は、節約のつもりで何でも自分でやろうとしがちですが、不慣れな手続きに多くの時間を取られれば、肝心の本業がおろそかになってしまいます。
ここでは、税理士の視点で「ここだけは専門家の力を借りるべき」という3つのポイント(設立関係の手続き、資金繰り、税務)を解説します。
会社設立に関する登記・税務・社会保険の手続き
会社を設立する際には、複数の官公庁に対して多くの書類を提出する必要があります。
中川社長が「会社設立の負担をもっと減らしてほしい」と感じていたように、これらをすべて1人でこなすのは、初めて起業する人にとってかなりの負担です。
現在は、定款の電子認証やオンライン申請の普及により、自分で手続きを行うことも不可能ではありません。
しかし会社設立では、定款の内容や事業年度の設定、本店所在地をどこにするのかなど、専門的な知識がないままに決めてしまうと、あとから大きなトラブルや損失につながる要素も数多くあります。
近年は、会社設立時の報酬を抑え、その後の税務顧問契約とセットで対応する税理士法人も増えています。
定款・登記・税務・社会保険の全体像を踏まえて設計してもらうことで、あとからやり直しが必要になるリスクを大きく減らし、土台のしっかりした会社を設立できます。
創業期の限られた時間を、本業の準備と初期営業に集中させるためにも、設立まわりの設計と手続きは専門家と一緒に進めることを検討してみましょう。
資金繰り・創業融資・補助金
資金繰りは、創業期の経営を左右する重要な要素です。
「お金が足りなくなってから銀行に相談する」状態では、融資を検討してもらう前提に立てないケースが少なくありません。
本来は、開業前から数カ月先までの入金と出金の流れを把握し、創業融資や補助金の申請タイミングを逆算しておく必要があります。
しかし融資は、申請したとしても必ず受けられるものではありません。
事業計画書をはじめとするさまざまな書類を提出し、融資面談を通過する必要があります。
事業計画書を作成する際には、体裁が整っているかだけはなく、売上と必要経費の想定に合理性があるか、生活費や既存の借入れをどう織り込んでいるか、自己資金の水準が妥当かといった点のチェックが必要です。
自己流で作った計画書では、数字の根拠が薄く「この前提では返済がイメージできない」と判断されることも珍しくありません。
クオリティの高い事業計画書を作成し、資金調達を成功させるためにも、融資や補助金を受けたいときには税理士に相談しましょう。
会社設立や融資対策の経験が豊富な税理士であれば、起業家ごとに最適な融資や補助金の提案から、書類の作成、面接の対策までワンストップで対応してくれます。
記帳・決算など日々の税務
近年は便利なクラウド会計ソフトが普及し、「日々の入力くらいなら自分でできる」と考える起業家が増えています。
しかし、日々の記帳と一年の総まとめである「決算」は、難易度が大きく異なります。
専門知識のない方が、独学で正しい決算書を作ることは極めて困難です。
なぜなら決算では、売上や経費を集計するだけでなく、減価償却や貸倒引当金、役員給与の扱いなど、さまざまな論点について税法上の判定と調整を行う必要があるからです。
「節約のために自分で決算書類を作成したものの、あとからミスが発覚して、高額な追徴課税を払うことになった」というのは、残念ながらよくある失敗談です。
思わぬ出費を防ぐためにも、最終的な「税金の確定(決算)」だけは、プロである税理士に任せることを強くおすすめします。
起業のお金やタイミングに不安があれば、税理士や司法書士に相談しよう
今回のインタビューで7人の起業家が語ってくれたように、多くの人が「起業してよかった」と感じている一方、お金や準備の面では、苦労や後悔を抱えている人も少なくありません。
起業は孤独な戦いになりがちですが、準備や資金繰りまで1人で抱え込む必要はありません。
実際の業務に関することは友人や先輩起業家などに、より専門的な税務や資金調達などは、税理士に相談しましょう。
私たち税理士法人は、単なる事務手続きの代行屋ではありません。
「起業したい」という想いが、資金面で現実的に可能なのか、今のタイミングがベストなのかを客観的に診断し、事業を長く続けるための「お金の地図」を一緒に描くパートナーです。
ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立・運営に関する無料相談を実施しています。
対面だけでなくWebでの相談にも対応しているほか、実際に無料相談に来られた方のうち、相談だけで契約は行わないケースも4割ほどあるため、気軽にご利用いただけます。
そうした場合であっても、創業以来20年以上、3万7,000社を超える会社設立をサポートしてきた経験と実績から、起業を成功させるノウハウをお伝えします。
また、「士業はサービス業」という共通理念のもと、起業家の方々の悩みや不安に即レス、即対応できる体制も整えています。
税理士だけでなく行政書士や司法書士、社労士も在籍しているため、ワンストップで相談が可能です。
初めての会社設立に疑問や不安がある方や、できるだけ早めにミスなく設立を行いたい方、そして税理士との会社設立に興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にご相談ください。


















