最終更新日:2026/8/14
マイクロ法人の役員報酬「月4万5,000円」が候補になるのはなぜ?専門家が徹底解説します!

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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- マイクロ法人の役員報酬の目安
- 役員報酬を0円にする場合の注意点
- 役員報酬を決める際に確認すべきポイント
マイクロ法人を設立する際「役員報酬をいくらにすべきか」で迷う人は少なくありません。
役員報酬の金額は役員個人の所得となり、所得税・住民税・社会保険料に影響します。さらに法人の損金にも関わるため、慎重に決めるべき事項です。
この記事では、マイクロ法人の役員報酬の目安や具体的な金額、0円にする場合の注意点など、役員報酬を決める際の考え方を専門家がわかりやすく解説します。


目次
マイクロ法人の役員報酬は月4万5,000円前後が候補になる
マイクロ法人の役員報酬として、月4万5,000円前後が1つの目安とされることがあります。
役員報酬は、所得税や住民税だけでなく社会保険料にも影響するため、個人の所得だけでなく法人の利益とのバランスをとる必要があります。
ここでは、役員報酬の目安と、役員報酬を0円にする場合のリスクを解説します。
社会保険料と所得税に関係する
マイクロ法人の役員報酬を考える際は、社会保険料と所得税、そして法人側の会計や税金も考慮する必要があります。
法人から役員報酬を受け取る場合、原則として健康保険・厚生年金保険の対象になります。この社会保険料については、報酬額に応じた標準報酬月額をもとに計算されます。
当然ですが、役員報酬を高く設定すると、役員個人が受け取る金額は増えます。その一方で、役員の所得税や住民税、社会保険料の負担は大きくなります。
逆に、役員報酬を低く設定すると、個人側の所得税や社会保険料は抑えられますが、会社側の法人税の負担が増える可能性があります。
役員報酬は、社会保険料だけでなく、所得税・住民税・法人税を含めて総合的に判断しましょう。
役員報酬を「0円」にすることもできる
マイクロ法人の役員報酬を0円にすることも可能です。
役員報酬を0円にすると、法人から代表者個人へ報酬を支払わないため、個人側の所得税や住民税、社会保険料を抑えられる可能性があります。
ただし、役員報酬を0円にすると、会社から役員へ資金を移動しづらくなります。法人に売上があっても、そのお金を代表者の生活費として自由に使うことはできないため注意が必要です。
会社負担分の社会保険料がかからない
社会保険料は役員報酬をもとに計算されるため、役員報酬を0円にすれば会社側の保険料負担を抑えられます。
マイクロ法人の維持費をできるだけ下げたいというケースでは、この方法が検討されることがあります。もちろん、社会保険料は将来の年金受給額に影響するため、そことの兼ね合いには要注意です。
また、個人事業主の法人化の場合、役員報酬が0円だと社会保険に加入できず、前年の高い所得をベースに国民健康保険料を支払うことになる点も注意しましょう。
公私混同と判断されるリスク
役員報酬を0円にする場合は、公私混同と判断されるリスクにも注意が必要です。
役員報酬が0円であるということは、原則として法人から個人への正当な資金移転(生活費等の支給)が行われていない状態です。
この状態で個人の食費や家賃、私的な買い物を会社の資金から支払うと、税務調査で経費性が認められず「役員給与(賞与)」と認定され、法人・個人双方に追徴課税が発生するリスクがあります。また、経費にできない分が「役員貸付金」として処理され、融資で著しく不利になるリスクもあります。
なお、このリスクは役員報酬の有無にかかわらず発生しますが、特に報酬0円の場合は「生活費の出所」として税務署から真っ先に注目されやすくなります。
法人のお金は法人のものです。代表者1人だけのマイクロ法人であっても、法人の資金を個人の生活費として自由に使うことはできません。
役員報酬は法人利益・扶養家族・生活費などの要素で変わる
役員報酬を決める際は、法人利益、個人の生活費、扶養家族の有無、他の所得、社会保険料、将来の年金額などを総合的に考慮する必要があります。
特に、扶養家族がいる場合は、所得税や社会保険の扶養の扱いにも注意が必要です。家族の収入や扶養条件によって、世帯全体の負担が変わるケースもあります。このような場合は個別の判断が必要になるため、専門家に相談しましょう。
法人の役員報酬とは?
マイクロ法人の役員報酬を決める前に、そもそも役員報酬とは何かを正確に理解しておく必要があります。ここでは、法人の役員報酬の基本を解説します。
役員報酬とは会社が役員に支払う報酬
役員報酬とは、会社が取締役などの役員(合同会社の場合は社員)に対して支払う報酬です。
マイクロ法人では、代表者1人だけで会社を運営しているケースがほとんどです。つまり、役員報酬は、自分で運営している会社から自分という代表者へ支払う報酬です。
役員報酬は、会社法では「定款の定め、または株主総会の決議」で決定するとされています。
役員と従業員は異なる
役員と従業員は、法律的な意味合いや税務上の扱いが異なります。
従業員は、会社と雇用契約を結んで会社で働く人です。一方で、役員は会社の経営に関わる立場です。会社の意思決定を行う側であり、従業員とは役割も立場も異なります。
そのため、従業員に支払う給与と、役員に支払う役員報酬は税務上の扱いが違います。従業員の給与は、業務に対する対価として処理できます。しかし役員報酬については、損金にするための一定のルールがあります。
役員報酬の変更についての注意点
役員報酬は定款もしくは株主総会決議で決定しますが、いつでも気軽に変更できるというものではありません。
役員報酬は原則として会社の損金(法人税法上の経費)に計上できる支出ですが、毎期、事業年度開始の日から3カ月以内に決める必要があります。起業1年目も例外ではなく、会社設立日から3カ月以内に役員報酬を決めなければ損金にできません。
3カ月を経過した後の変更は、原則として認められないのです。
役員報酬が社会保険料に影響する
役員報酬の金額は自由に設定できますが、社会保険料に影響するということも忘れないようにしましょう。
社会保険料は報酬額(標準報酬月額)をもとに決まるため、報酬が高くなるほど負担も大きくなります。
そして、社会保険料は、本人負担分だけでなく会社負担分も発生します。代表者1人のマイクロ法人の場合は、特に会社側の負担を考える必要があります。
マイクロ法人の役員報酬は、個人と法人双方の全体的な支出を考慮して慎重に設定しましょう。
金額別!マイクロ法人の役員報酬比較
マイクロ法人の役員報酬は、税金や社会保険料に影響するため慎重に検討するべきです。
ここでは、マイクロ法人で検討されやすい役員報酬の金額を比較します。
※健康保険は報酬月額6万3,000円未満、厚生年金は報酬月額9万3,000円未満まで最低等級(標準報酬月額はそれぞれ5万8,000円・8万8,000円)です。そのため月1万〜6万円台の範囲では社会保険料はほぼ同額で、金額を上げても社会保険料が増えるわけではない点に注意しましょう。
参考:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ(PDF)
月1万円前後
月1万円程度の役員報酬は比較的低めの設定です。この金額は、法人以外の別の収入で生活費を賄える人が検討することがあります。
ただし、役員報酬を低くすることで、法人に利益が残った結果、法人税の負担が増える可能性があります。
また、役員報酬が低すぎると本人負担分の社会保険料を報酬から差し引けず、社会保険に加入できない場合があります。加入したい場合は、月1万円台前半程度を下限の目安として考える必要があります(正確な下限額は加入先の協会けんぽ支部の最新料額表で要確認)。
最低限の報酬
月1万円程度の役員報酬は、法人から役員への支払いを低く設定するケースといえます。
少額でも役員報酬を設定することで、法人から役員に報酬を支払う形を作れます。
ただし、この金額だけでは役員の生活を維持することができないため、別の収入源があることが前提です。法人の売上や業務内容、生活費、社会保険の扱いまで含めてシミュレーションする必要があります。
月4万5,000円前後
月4万5,000円前後は、マイクロ法人の役員報酬としてバランスを取りやすい金額の1つといえます。
この金額は、給与所得控除を差し引くと、課税対象となる給与所得が実質的に生じにくく、役員個人の所得税負担を抑えやすい水準として、従来から目安とされてきたものです。
ただし、月4万5,000円前後がすべての人に適しているわけではありません。法人の利益、個人の生活費、扶養家族の有無、将来の年金額などによって適切な金額は変わります。
また、所得税がかからない給与収入の上限は税制改正で年々変動しています。令和7年分から給与所得控除の最低保障額が65万円に、令和8・9年分は特例を含め74万円に引き上げられ、いわゆる「年収の壁」も160万円から178万円へ拡大しました。
役員報酬を決める際は、その年に適用される最新の控除額を必ず確認してください。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
月6万円前後
月6万円前後は、社会保険料の標準報酬月額を意識する際に候補になる金額です。
社会保険料は標準報酬月額をもとに計算されます。標準報酬月額には等級があり、その等級に応じて保険料が決まります。
月6万円前後という金額は、健康保険における標準報酬月額の1等級(5万8,000円)に収まる上限を意識した金額です。協会けんぽ東京支部の表では、報酬月額6万3,000円未満が標準報酬月額5万8,000円の範囲です。
月6万円前後は、標準報酬月額の等級を意識しつつ役員報酬を設定したい場合の目安となります。
ただし、法人から個人へ移せる金額が増える一方、所得税や住民税、社会保険料の負担も増えることを忘れないようにしましょう。
参考:厚生年金保険・健康保険の標準報酬月額の等級表|厚生労働省(PDF)
月8万円
月8万円は、厚生年金の標準報酬月額の最低等級8万8,000円を意識しつつ、ある程度の報酬を個人に移せる目安です。
ただし、個人の所得が増えるため、所得税や住民税、社会保険料の負担が増えることになります。法人側では会社負担分の社会保険料も発生するため、全体的な資金繰りへの影響について確認が必要です。
役員の報酬を高く設定するメリット
役員報酬を高く設定するメリットは、法人から個人へ資金を移動できる点です。法人化した場合、マイクロ法人であっても法人のお金と個人のお金を分けて管理する必要があります。
役員報酬を設定すれば、法人から個人へ報酬としてお金を移すことができます。
役員報酬をある程度高く設定すると、法人として役員に報酬を支払っている実態を対外的に示しやすくなります。
マイクロ法人の役員報酬を低くしすぎるとデメリットもある
マイクロ法人の役員報酬は低ければよいというものではありません。ここでは、マイクロ法人の役員報酬を低くしすぎるデメリットを解説します。
法人税が増える可能性
役員報酬を低くしすぎると、法人税の負担が増える可能性があります。
役員報酬は、法人から役員へ支払う報酬です。つまり、一定のルールを満たせば、法人の経費(損金)として扱えるのです。
役員報酬を低く設定すると、法人から個人へ支払う金額が少なくなり、そのぶん法人に利益が残ります。
そして、法人に利益が残ると、その利益に対して法人税などがかかります。つまり、役員報酬を低く設定して個人側の所得税や社会保険料を抑えられたとしても、法人税の負担が増えてしまう可能性があるのです。
そのため、役員報酬を決める際は、個人側の税金や社会保険料だけではなく、法人側の税負担も考慮する必要があります。
将来受け取る年金額が少なくなる可能性
役員報酬を低くしすぎると、役員が将来受け取る年金額が少なくなる可能性があります。
法人から役員報酬を受け取る場合、原則として健康保険・厚生年金保険の対象になります。厚生年金保険料は、役員報酬の金額に応じた標準報酬月額をもとに決まります。報酬が少ないと、将来受け取る老齢厚生年金の金額に影響する可能性があります。
役員報酬を決める際は、社会保険料の金額だけでなく将来の年金額も考慮する必要があるのです。
事業の実態を説明できるか
役員報酬を低く設定する場合は、事業の実態を説明できるかもポイントになります。
マイクロ法人は、1人または少人数で運営する小規模な法人です。規模が小さいこと自体は問題ありませんが、法人として事業を行なっているという実態は必要です。
たとえば、法人として売上があるのか、契約書や請求書があるのか、役員が実際に業務を行っているのかを説明できる状態にしておくことが大切です。
役員報酬が極端に低い場合、社会保険料を抑えるためだけに法人を作っているのではと疑われる可能性があります。法人としての業務内容や報酬額の妥当性を説明できないと、社会保険加入を否認される可能性もあります。
マイクロ法人の役員報酬を決める手順
マイクロ法人の役員報酬は、何となくやその場のノリで決めるものではありません。それでは、どのような流れで何を検討して役員報酬を決めればよいのでしょうか。
ここでは、マイクロ法人の役員報酬を決める手順を解説します。
フローチャートで見るマイクロ法人の役員報酬を決めるステップ
マイクロ法人の役員報酬は、専門家とともに次のような流れで決めるとスムーズです。
専門家と役員報酬を決める流れ
- STEP1専門家に相談して、一緒に法人の利益を見積もる
※売上、原価、販管費の予測があるといい - STEP2生活費・将来の年金について確認する
※特に生活費を下回らないように見積もる - STEP3法人税・所得税・住民税を含めて確認する
- STEP4月0~8万円も検討した適正額で最終決定する
※社会保険料の会社負担、個人負担も忘れずに
まず、個人と法人それぞれの所得・利益を見積もります。次に、マイクロ法人を設立した場合と、しない場合で社会保険料の負担がどう変わるかをチェックします。
- 0円:実態や社会保険に注意
- 月1万円前後:最低限の実態確保
- 月4万5,000円前後:負担を抑えたい人向け
- 月6万円前後:健康保険の等級を意識
- 月8万円前後:厚生年金の等級を意識
役員報酬は、社会保険料だけでなく、法人税・所得税・住民税も含めて総合的に判断します。生活費や将来の年金、法人の実態との整合性も確認が必要です。
最終的には税理士や社会保険労務士に相談し、全体の負担を比較して決めましょう。
【FAQ】マイクロ法人の役員報酬に関するよくある質問
マイクロ法人の役員報酬は慎重に検討すべき重要事項
マイクロ法人の役員報酬は、自由に決められますが、税金や社会保険料に大きく影響する重要な項目です。
役員報酬を低く設定すれば、個人側の所得税や社会保険料を抑えられます。ただし、法人に利益が残るため、法人税の負担が増える可能性があります。
役員報酬は0円にすることもできますが、法人から個人へ資金を移しにくくなるため注意が必要です。生活費や将来の年金額、法人としての事業実態も含めて考える必要があります。
役員報酬を法人の経費として扱うには「定期同額給与」というルールもあるため、事実上、変更に制限があることも忘れないようにしましょう。
役員報酬は、個人と法人それぞれの税務と社会保険の両方に関わります。わからないことがある場合は、自己判断せず、税理士や社会保険労務士に相談しながら慎重に検討しましょう。
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