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最終更新日:2026/10/28

合同会社はやめとけ?複数人での起業に株式会社を勧める理由を税理士が解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
【公式】ベンチャーサポートグループチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/startup/profilemori
YouTube:【公式】ベンチャーサポートグループチャンネル
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

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この記事でわかること
  • 合同会社と株式会社で、税金や社会保険の負担などは変わらない
  • 「複数人で起業する場合」は、合同会社だと意思決定の面でトラブルになりやすい
  • 認知度の低さが、取引や採用で悪影響になることもある
  • 持分継承や、住所を登記事項証明書で非表示にできない点などにも注意

合同会社は、株式会社より設立費用を抑えられることから、起業時の選択肢の1つとなっています。
一方で、株式会社と比べてどのようなデメリットがあるのか、設立後の経営や取引に支障はないのかといった点は、会社形態を選ぶうえで気になるところです。

実際には、税金や社会保険、銀行融資などにおいては、合同会社と株式会社で大きな違いがありません。
ただし、友人同士など複数人で出資して起業する場合は、原則として出資した全員が対等な立場で業務の決定に関わるという合同会社の特性上、トラブルにつながりやすいという注意点もあります。
さらに、「代表取締役等住所非表示措置」が使えないため、女性やライバーなど自宅住所を公開したくない方も注意が必要です。

こうした、事前に知っておくべき合同会社の注意点は、ほかにも複数存在します。
この記事では、合同会社が「やめとけ」と言われる理由や設立前の注意点を解説し、ベンチャーサポート税理士法人の実際の会社設立事例を交えて、合同会社が向いている人や事業の特徴を紹介します。

合同会社は「やめとけ」と言われるが、株式会社と大きく変わらない点も多い

合同会社は株式会社と同じく、会社法で認められた法人形態の1つで、株式会社より設立費用を抑えられることが大きな特徴です。

「設立費用が安いなら、ほかの部分でデメリットがあるのでは?」と思う方も多いですが、実際は合同会社と株式会社では、税金や社会保険などの基本的なルールには違いがありません。

法人税率を始めとし、経費として認められる支出や、役員報酬を経費にするための条件などは共通しています。
株式会社では利用できるが合同会社では利用できないといった節税方法も、基本的にはありません。
社会保険についても同様で、健康保険や厚生年金への加入義務、保険料の計算方法などは共通です。

そのため、税金や社会保険の面で、合同会社を選んだからといって不利になることは基本的にありません。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

以前は、合同会社という理由で法人口座の開設や銀行融資が難しくなることもありました。しかし、現在の会社設立支援の実務では、そうした違いは見られなくなっています。

少なくとも私たちが支援するなかでは、合同会社だからという理由で銀行融資や法人口座の開設が不利になることはなく、会社形態の違いを心配する必要もないと考えています。

一方で、合同会社特有の注意点がないわけではありません。
複数人で起業する場合や、新規取引先の開拓、従業員の採用などを進める場合には、合同会社を選んだことで不都合が生じる可能性があります。
また、株式会社では利用できても、合同会社では利用できない制度も一部存在します。

なお、合同会社そのものについての解説は、以下の記事をご確認ください。

【設立前の注意点】合同会社が「やめとけ」と言われる理由

合同会社には、設立時には問題にならなくても、経営を続けるなかで不都合が生じる場合があります。
あとから「株式会社にしておけばよかった」と後悔しないためにも、合同会社特有のしくみや制約を理解しておくことが大切です。
合同会社を選択したことにより発生しうる不都合は、主に以下の5つが考えられます。

複数人での出資の場合、経営上のトラブルが起きやすい

友人や同僚と共同で起業する場合や、家族を役員に迎える場合は、合同会社だと「会社の意思決定」においてトラブルが発生するリスクがあります。

株式会社では、原則として保有株式の割合に応じて株主総会の議決権が与えられます。
一方、合同会社では出資した人を「社員」と呼び、社員が会社に対して持つ「持分」という権利が与えられます。

持分は株式会社の株式に似ていますが、持分の割合がそのまま決定権に反映されるわけではなく、会社の業務方針などは原則として社員の過半数の賛成によって決定されます。

共同出資で起こりやすい違い

持分がどうトラブルにつながりやすいのかを理解するために「友人と2人で起業することを決め、自分が90万円、友人が10万円を出資した」ケースを想定してみましょう。

この際に株式会社であれば、出資額に応じて株式を割り当てることで、自分が90%の議決権を持ち、株主総会での決定権を確保しやすくなります。
しかし、合同会社では出資額が異なっていても、原則として出資した全員が対等な立場で業務の決定に関わります。
そのため、2人の意見が対立すると、重要な意思決定が進まなくなるデッドロックと呼ばれる状態に陥る可能性があります。

家族を役員にする場合でも、同じような問題が発生します。

株式会社なら自分が株式を100%保有したまま、配偶者を取締役にすることができます。
しかし、合同会社で配偶者を業務執行社員にするには、配偶者も出資者となる必要があり、定款に別段の定めがなければ、出資額が少なくても経営上の意思決定に関わることになります。

こうしたリスクは定款で意思決定のルールを定めることで軽減できますが、共同経営者との関係が悪化すると、持分の譲渡や退社などを巡ってトラブルになるおそれもあります。

税理士 森健太郎

代表税理士
森 健太郎

起業する際に「家族同士だから大丈夫」「絶対に仲違いはしない」と思っていても、事業やお金が絡むと意見が対立することは少なくありません。

こうしたリスクを踏まえ、ベンチャーサポート税理士法人では複数人出資での設立の際には、起業家の意向を尊重しつつ、基本的に株式会社をおすすめするケースが多いです。

1人会社で唯一の社員が死亡すると会社が解散するおそれがある

合同会社を1人で設立する場合は、相続についても注意が必要です。

1人会社で代表者が死亡したときの違い

株式会社では株主が死亡すると、原則として株式が相続の対象になります。
一方、合同会社では社員の死亡は原則として退社事由となり、相続人に社員の地位が自動的に引き継がれるわけではありません。

そのため、社員が1人しかいない合同会社で、その社員が死亡して誰も社員がいなくなると、会社は自動的に解散することになります。
この場合、遺された家族が事業の継続を希望していても、そのまま会社を存続させることはできません。

ただし、定款に「社員が死亡した場合は、その相続人が持分を承継する」という内容を定めておけば、相続人が社員の地位を引き継ぐことが可能です。
そのため相続時の対策のためだけに、合同会社を諦める必要はありません。

しかし、こうした定款の取り決めを設立時にしっかりと設定しておかないと、後々になって大きなトラブルに発展することもある点には注意が必要です。

代表社員の住所を登記事項証明書で非表示にできない

会社を設立する際には、代表者の氏名と住所が、原則として登記事項証明書などで確認できる状態になります。
しかし住所という個人情報の公開に抵抗を感じる人も多く、2024年10月から商業登記規則等の改正により「代表取締役等住所非表示措置」が導入されました。

これは、一定の要件を満たせば、登記事項証明書などに表示される代表取締役の住所を市区町村までに省略できる制度です。
しかし、代表取締役等住所非表示措置は株式会社が対象であり、合同会社は利用できません。

そのため、自宅住所をできるだけ隠したいという場合は、株式会社を選ぶことをオススメします。
特にライバーなど、顔や名前を公表して活動している方にとっては、会社形態を選ぶうえで重要な違いになるでしょう。

参考:代表取締役等住所非表示措置について|法務省

取引先や求職者からの信用に影響することがある

合同会社は株式会社と比べて一般的な認知度が低く、「規模が小さい会社」「経営基盤が弱い会社」といったイメージを持たれることがあります。
そのため、新規取引先を開拓する際に、会社形態を理由として信用面で不利になったり、取引先から難色を示されたりする可能性があります。

また、従業員を採用する際にも注意が必要です。求職者の中には、合同会社という形態に対し「将来性が不安」「安心して働ける会社なのか」と感じ、応募や入社をためらう人もいます。

もちろん、合同会社だからといって実際に経営基盤が弱いわけではありません。
事業内容や実績、待遇などをしっかり伝えることで、こうした不安を解消することは可能です。
ただし、新規取引先の開拓や一般からの従業員採用を積極的に進める場合は、社会的な認知度の高い株式会社を選んだ方が有利になるケースもあるでしょう。

株式を発行できず、上場もできない

合同会社は株式を発行できないため、株式会社のように株式を投資家に引き受けてもらう形で資金を集めたり、株式市場に上場したりすることができません。

ただし、合同会社でも、新たな出資者を社員として迎えることで出資を受けることは可能です。
また、設立後に株式会社へ組織変更することもできます。

そのため、将来的に外部からの出資を受けたり、事業を大きく成長させたりする可能性があるからといって、最初から株式会社を選ぶ必要があるわけではありません。

ただし、株式会社への組織変更には手続きや費用がかかるため、株式による資金調達や上場を具体的に予定している場合は、設立時から株式会社を選ぶ方がよいでしょう。

合同会社が向いている人・事業の特徴

1人で起業するか、会社形態が重視されにくい事業なら合同会社が向いている

ここまで説明した注意点は、すべての起業家に同じように影響するわけではありません。

大切なのは、株式会社と合同会社のどちらが優れているかではなく、自分の事業や経営方針に合った会社形態を選ぶことです。

具体的にどのようなケースが、合同会社の設立に向いているのかについて解説します。

1人で起業し、外部からの出資を予定していない場合

自分1人で出資して会社を設立し、今後も外部からの出資を受ける予定がない場合は、合同会社が有力な選択肢になります。

出資者が1人であれば、経営方針を巡って他の出資者と意見が対立する心配がなく、合同会社特有の意思決定のしくみが問題になることもありません。
また、合同会社は株式会社より設立費用が安いため、事業を始める際の初期費用を抑えることもできます。

例えば、フリーランスとして活動していたITエンジニアやデザイナーが、1人で法人化するようなケースがこれに当たります。

会社形態が取引先や顧客との関係に影響しにくい場合

会社形態が取引先や顧客の判断にあまり影響しない事業も、合同会社に向いています。

たとえば、個人事業主の頃から取引している企業との関係が強固で、法人化後も同じ取引先を中心に事業を続ける場合などがこのケースに当たります。
すでに実績や信頼関係があるならば、株式会社か合同会社かという違いが問題にはなりにくいでしょう。
また、飲食店や美容室など、対法人よりも消費者をメインターゲットとし、会社名よりも店舗名やサービスの内容で顧客から選ばれる事業も、合同会社を選びやすいケースです。

実際に合同会社・株式会社を選んだ会社設立の事例

ベンチャーサポート税理士法人では、会社設立のご相談を受ける際、事業内容だけでなく、出資者の人数や今後の経営方針なども確認し、適した会社形態をご提案しています。

実際にご相談いただいた方が、どのような理由で合同会社・株式会社を選んだのか、3つの事例をご紹介します。

※個人や企業が特定されないよう、事例の一部情報は省略しています。

事例1:共同経営のため株式会社を選んだケース

ブライダル業界で豊富な人脈を持ち、式場などとのつながりが強いAさんと、経理などの裏方業務を得意とするBさんが、共同で新事業を立ち上げたケースです。
双方が出資して経営する予定だったため、担当者から、株式の保有割合によって議決権を明確にできる株式会社をおすすめしました。

将来的な意見の対立も考慮し、最終的に株式会社で設立することになりました。

事例2:友人からの出資を受けるため株式会社に変更したケース

Cさんは当初は1人で旅館業を営む予定で、合同会社の設立を検討されていました。
しかし、2棟目の施設を新築する計画が持ち上がり、複数名の友人から出資を受けることになりました。

出資者が増えることで、経営上の意思決定や代表者の立場に影響が生じる可能性があるため、担当者から株式の保有割合によって議決権を調整できる株式会社をご提案しました。

Cさんも共同出資によるリスクを考慮し、最終的に株式会社で設立することを選びました。

事例3:設立費用を抑えるため合同会社を選んだケース

エステサロンを開業するにあたり、できるだけ設立費用を抑えたいというご相談がありました。

新たに役員を迎える予定もなく、すでに個人として多くの顧客との関係性があり、かつ今後の運営においても会社名が営業に与える影響は少ないという判断から、合同会社を選択しました。

この記事のまとめ

合同会社は株式会社より設立費用を抑えられる一方、税金や社会保険、銀行融資などの面では大きな違いがありません。
ただし、複数人で出資する場合には経営上の意思決定を巡るトラブルが起こりやすく、新規取引先の開拓や従業員の採用などで、会社形態が不利に働く可能性もあります。

一方、1人で起業する場合や、会社形態が取引先との関係に影響しにくい事業では、合同会社を選ぶメリットも大きいでしょう。

大切なのは、設立費用だけで判断せず、出資者の人数や今後の事業展開を踏まえて会社形態を選ぶことです。

ベンチャーサポート税理士法人では、事業内容や将来の計画を伺いながら、合同会社・株式会社のどちらが適しているかをご提案しています。
ベンチャーサポートグループには司法書士や行政書士も在籍しており、会社設立に必要な手続きをワンストップでサポートしています。
初めて会社を設立する方も、お気軽にご活用ください。

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