東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
人身事故に遭って傷害を受けたけれども、治療を受けるに当たって慰謝料の相場はどれぐらいなのか知りたい、または、不幸にして人身事故に遭って身内を亡くしたが、どれぐらいの慰謝料を請求できるのか、弁護士に依頼した方がいいのか、知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、人身事故で加害者が負う賠償責任、慰謝料の種類、慰謝料の基準と相場、請求の方法について解説します。
併せて、慰謝料の請求を弁護士に依頼するメリット・デメリットについても説明します。
目次
一般には、人身事故とは、交通事故によって被害者が身体に傷害を負ったとき、また、その傷害が後遺障害として完治することなく残ってしまったとき、そのような結果の原因となった事故を言います。
これに対して、物損事故は、物が壊れただけで、人の身体や生命に損害が生じていない事故です。
警察が交通事故の事件処理において人身事故扱いとするかどうか、というのも重要です。
交通事故の負傷書が警察に診断書を提出して、それが受理されれば、人身事故として刑事捜査が開始されます。
また、公安委員会によって行政処分が科される可能性もあります。
人身事故が発生した場合、加害者は被害者が被った損害について賠償する責任を負います。
これは、民法709条の不法行為責任によるためです。
民事責任は、基本的には刑事責任とは関係なく、加害者は、被害者が被ったあらゆる損害を金銭に置き換えて賠償することになります。
人身事故において、加害者が賠償しなければならない損害賠償金は、主に、被害者の財産的損害を対象とするものと、精神的損害を対象とするものに分けられます。
このうち、財産的損害を対象とするものは、治療費や入通院費、交通費などの実際に支出した費用(積極損害)と、休業損害や逸失利益などの交通事故がなければ得られたであろう利益を失った損害(消極損害)があります。
精神的損害を対象とするものを慰謝料と言います。
ここでは、交通事故によって生じ得る慰謝料をそれぞれ項目ごとに説明しましょう。
入通院慰謝料は、交通事故で入通院を余儀なくされた場合、被害者がそれによって被った精神的損害を賠償するものです。
基本的に、入通院した期間を基礎に計算されます。
自賠責基準では、全治療期間の日数と通院日数の2倍の少ない方の日数に4,200円/日を乗じて算出されます。
弁護士基準では、赤本と呼ばれる専門書に記載された基準表によって算定します。
入院と通院の月数によって細かく慰謝料基準が一覧表に決められているのです。
骨折など怪我の種類によっては、必ずしも通院が頻繁に行われるとはかぎらないため、治療期間の日数を優先的に考慮すべきと言えるでしょう。
後遺障害とは、交通事故によって負った傷害の症状が完治せずに固定した場合、その障害の状態のことです。
具体的には、痛みが残ったり、可動域が制限されたりします。
後遺障害の慰謝料は、このような後遺障害によって、痛みや外見の悪さ、生活への支障などが生じ、精神的苦痛を受けることに対する慰謝料です。
交通事故の損害賠償において後遺障害が対象として認められるには、認定機関によって1級~14級までの後遺障害等級認定を受けなければなりません。
後遺障害の慰謝料は、この認定された等級によって金額が決められています。
死亡慰謝料には、2種類あります。
交通事故によって被害者本人が死亡した場合、そのことによって本人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料と、被害者の近親者、相続人などの遺族が受ける精神的苦痛を賠償するための慰謝料の2種類です。
死亡慰謝料を受け取ることができるのは、被害者の近親者、相続人のほか、内縁の妻など被害者との間に近親者と同視できる特別な関係が認められる者になります。
自賠責基準では本人の死亡慰謝料は一律に350万円とされています。
このほか、遺族に対する慰謝料は、請求者である近親者が1人だと550万、2人だと650万、3人以上であれば750万です。
被害者に扶養されていた場合は、200万が加算されます。
事故の態様が悪質であったり、加害者の態度が不誠実だったりする場合、増額されることもあります。
慰謝料というのは、精神的損害に対する賠償を金銭に置き換えて行うものです。
本来、交通事故の被害者個人の事情によるところも大きく、一概に金銭的評価をするのは難しいでしょう。
しかし、同じような被害を受けた人たちの間で慰謝料が異なるのも好ましくないと言えることから、交通事故の慰謝料には一定の基準による相場があります。
それが
の3つの基準です。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険機基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
裁判所基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
自賠責基準は、自賠責保険による最低限の保障を目的とした基準です。
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めている基準です。
弁護士基準は、裁判所の過去の判例、解釈をもとに弁護士会が採用している基準です。
一般的には、弁護士基準が最も高いとされています。
ここでは、いくつかの通院と入院のケースを想定し、慰謝料の相場の具体例を算出してみましょう。
自賠責基準と弁護士基準を比較できるように一覧表化しました。
弁護士基準は()は別表Ⅱを利用しています。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
通院のみ3カ月(実通院1カ月) | 252,000円 | 730,000(530,000)円 |
通院のみ6カ月(実通院2カ月) | 504,000円 | 1,160,000(890,000)円 |
入院1カ月通院3カ月(実通院1カ月) | 504,000円 | 1,150,000(830,000)円 |
入院1カ月通院6カ月(実通院1カ月) | 756,000円 | 1,490,000(1,130,000)円 |
入院2カ月通院6カ月(実通院1カ月) | 1,008,000円 | 1,810,000(1,330,000)円 |
自賠責基準は、治療期間と通院期間の2倍の少ない方を基礎に算定するため、治療期間が長引くと弁護士基準との差が広がる傾向にあると言えるでしょう。
後遺障害の慰謝料の相場を、1級~14級まで、自賠責基準と弁護士基準を一覧表で比較します。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1,100万円 | 2,800万円 |
2級 | 958万円 | 2,370万円 |
3級 | 829万円 | 1,990万円 |
4級 | 712万円 | 1,670万円 |
5級 | 599万円 | 1,400万円 |
6級 | 498万円 | 1,180万円 |
7級 | 409万円 | 1,000万円 |
8級 | 324万円 | 830万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
こちらも、自賠責基準と弁護士基準では2倍~3倍の開きがあるのがわかります。
実際に、人身事故に遭った場合、慰謝料を請求するまではどのような手順を踏む必要があるのか、説明します。
事故に遭ったとき、すぐに警察を呼ぶことが最初にすべきことです。
警察に届出ないと、保険会社に慰謝料を請求するときの必要書類である、交通事故証明書や実況見分調書を入手できません。
事故状況は警察が調書を作成しますが、現場を撮影したり、目撃者がいれば連絡先を入手したりするなど、事故状況を証明できるような準備をしておくとよいでしょう。
事故後は、当日か2~3日以内に病院に行き、交通事故による怪我について適切な診断、治療を受けることが大切です。
事故から期間が空いていると、怪我と事故との因果関係を証明しにくくなりますので、注意しなければなりません。
自賠責基準、弁護士基準ともに通院日数、期間を重視しますので、定期的に通院して治療経過を見るようにしましょう。
傷害が完治せず、症状が良くも悪くもならない状態と医師から判断されたら、症状固定となります。
症状固定となったら後遺障害の認定を受けましょう。
主治医から「後遺障害診断書」をもらい、保険会社に提出して認定機関に申請してもらうか、あるいは、被害者請求という自分で後遺障害の等級認定申請を受ける方法もあります。
認定される等級によって後遺障害の慰謝料は大きく変わってくるので、被害者請求を行う場合は弁護士に依頼することも検討した方がいいでしょう。
認定された等級に不満がある場合、異議申し立てをすることもできます。
後遺障害と認定されたら、示談交渉を開始します。
この時点でようやく慰謝料を請求することになるのです。
保険会社に任せるのも一つの方法ですが、保険会社に任せると、任意保険基準での慰謝料が提示されるのが一般的です。
金額の高い弁護士基準を保険会社任せで勝ち取るのは困難です。
少しでも高い慰謝料を受け取ることを希望しているなら、弁護士に依頼することを検討しましょう。
人身事故の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットは、弁護士基準による請求ができることです。
慰謝料請求には、下記のような3つの基準があります。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険機基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
弁護士基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
同じ慰謝料を請求しても、弁護士基準が適用されるだけで、慰謝料金額はかなり増額します。
「弁護士に依頼せず、弁護士基準の高い慰謝料を請求したい」と思うかもしれません。
ただ被害者個人が、弁護士基準という基準があることを根拠に保険会社と交渉しても、保険会社は営利目的なのでできる限り保険会の支払いを抑えようとし、なかなか交渉には応じません。
弁護士が交渉することで、裁判による強制執行という可能性を背景に、保険会社から弁護士基準での慰謝料支払いを引き出すことができるのです。
示談交渉には慰謝料のほかにも、休業損害や逸失利益など、高度な専門知識を必要とする損害賠償金の交渉があります。
保険会社を相手に、法的な理論武装をして適正な損害賠償金の引き出すためにも、弁護士に依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。
弁護士費用がかかるという点です。
人身事故による傷害が軽く、後遺障害の認定を受けられないようなものであれば、費用倒れになる可能性もあるので注意が必要です。
また、保険会社の基準より高額の慰謝料等を引き出すように交渉するのですから、弁護士に依頼すると、保険会社の言いなりに進めるよりは交渉が長引くおそれがあります。
「弁護士に依頼したいけど、弁護士費用は払いたくない」と思うかもしれません。
そんな方は自分の保険に弁護士特約がついてないかチェックしましょう。
弁護士特約とは、弁護士費用を保険会社が負担してくれる仕組みです。
保険会社にもよりますが、最大300万円までの依頼費用を負担してくれます。
弁護士への依頼費用が300万円を超えることは少ないため、ほとんど場合は実質無料で弁護士依頼できます。
ただ加入している保険に弁護士特約がついてないかもしれません。
その場合は、弁護士事務所の初回無料相談を利用しましょう。
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で受け付けています。
無料の範囲内であれば依頼費用もかからないので、まずは「弁護士依頼しても費用倒れにならないのか?」を聞いてみましょう。
ここからは示談金をアップさせる方法を2つ説明します。
弁護士基準で慰謝料計算できれば増額が期待できます。
例えば入院1ヶ月・通院6ヶ月した場合の傷害慰謝料は、任意保険基準だと80万程度になりますが、弁護士基準だと120万程度まで増額します。
基準が変わるだけで、40万近く増額されるのは大きいですよね。
交通事故に遭って慰謝料請求するなら、1円でも多くの慰謝料を請求したいと思うはず。
ただし弁護士基準を適用するためには、弁護士への依頼はかかせません。
示談自体は自分でも可能ですが、自分での交渉になると、弁護士基準の適用は難しいでしょう。
交通事故の慰謝料は、そのままの金額を受け取れるわけではありません。
「お互いにどのぐらい過失があったのか?」という過失割合によって金額が決まります。
例えば慰謝料が100万で、過失割合が自分4:相手6だった場合は、受け取る金額が60万円になります。
示談交渉で過失割合を自分1:相手9に変更できたら、受け取る金額は90万円になり、30万の増額に繋がります。
過失割合を下げることで受け取る金額が増えるため、示談交渉が重要になります。
示談交渉は相手の保険会社と行うので、自分に知識がないなら、無理に交渉せず弁護士に依頼した方がいいでしょう。
交通事故の被害で、後遺症が残った場合に「後遺障害慰謝料」を請求できます。
後遺障害慰謝料は、後遺症の重さによって決まります。
後遺症の重さは「等級」というレベルで定められており、14~1級の間で認定されます。
例えば14級の後遺障害慰謝料は110万円ですが、10級になると550万円まで増額します。
等級が少し上がるだけで、後遺障害慰謝料の金額がかなり増額するため、後遺症の等級認定は重要です。
実際の症状よりも低い等級で認定されてしまうと、それだけ損をすることになります。
適切な等級認定を受けて、後遺症障害慰謝料で損をしないように気をつけましょう。
等級認定では、治療をしている担当医に書いてもらう「後遺障害診断書」が重要になります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
→後遺障害診断書は重要!診断書を医者に書いてもらうタイミングと料金相場を解説
下記では示談金を損をしないために、気をつけることを紹介します。
示談交渉は相手の保険会社とのやりとりになります。
保険会社は数多くの交通事故案件をこなしているため、交通事故対応のプロです。
さらに示談金は相手の保険会社が払うため「なるべく支払う示談金を少なくしよう」と交渉してきます。
もしなにも疑わずに相手の言いなりになってしまうと、不利な示談交渉をしてしまうかもしれません。
例えば「示談を長引かせずに〇〇円で示談締結しませんか?」という提案があったとしても、すぐに返事せず、必ず検討期間を設けるようにしましょう。
交通事故で怪我をしたら、通院治療をします。
怪我の度合い・回復具合によりますが、治療が長期化してくると「治療を打ち切りってください」と保険会社から言われることもあります。
交通事故の被害者が通院する場合は、その治療費を加害者の保険会社が支払います。
なるべく支払う治療費を減らすために、治療打ち切りの提案をされるかもしれません。
ここでも保険会社の言いなりにならず、治療は続けましょう。
治療の判断をするのは医師なので「医師の判断に従います」といって、治療を継続してください。
交通事故によって被害者が傷害を負ったとき、後遺障害が残ったとき、または死亡したとき、加害者はその人身事故によって被害者あるいはその遺族が負った精神的損害を賠償する法的義務が生じます。
この精神的損害を金銭に換えて被害者側が請求し、加害者が支払うのが慰謝料です。
慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
入通院慰謝料は主に入通院した期間を基礎に算定されます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害の認定等級によって算定されます。
死亡慰謝料は、本人の慰謝料と近親者の慰謝料とに分かれており、そのほか、扶養されていたかどうかなどの事情、事故の態様、加害者の態度によっても左右されます。
慰謝料の算定基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあり、自賠責基準が最も低く、弁護士基準が最も高い金額になります。
慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットは、最も高い弁護士基準による慰謝料を保険会社から引き出すことができるということです。
弁護士の専門的知識や経験に基づく交渉力と、裁判という強制力を背景に、高い慰謝料を勝ち取ることが可能になります。
しかし、弁護士に依頼するデメリットもあります。
弁護士費用がかかり、費用倒れになる可能性があるということと、交渉が長期化するおそれがあることです。