東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故における慰謝料とは、被害者が精神的な損害を受けた場合に、それを慰撫するために支払われる金銭のことです。
慰謝料は、交通事故によって被害者が被った損害を補填するための賠償金とは異なります。
賠償金とは、怪我の治療費、入院費用、働けない期間の収入、車の修理代、精神的損害に対する慰謝料など、交通事故による損害を賠償するための金銭全体を指します。
慰謝料は賠償金の一部であると考えると、理解しやすいでしょう。
交通事故の被害者になった場合の慰謝料は、事故が発生する前の収入によってほとんど変化がないのが特徴です。
その理由は、慰謝料は事故で被った精神的苦痛を慰撫するための金銭という点にあります。
同じ怪我をした場合に、高収入の人ほど苦しみが大きくなる訳ではないことから、交通事故で被害者が受ける精神的な苦痛については、被害者の収入は影響しないということです。
一方、収入によって金額が変化するのは休業損害と逸失利益です。
交通事故の慰謝料は、物損事故では発生せずに、人身事故のみで発生します。
交通事故の慰謝料は3種類あります。
種類 | 内容 |
---|---|
入通院慰謝料(ケガの治療で入院や通院をした場合) | 怪我の治療での入院・通院に対しての慰謝料 |
後遺障害慰謝料(完治せず後遺症が残った場合) | 後遺症が残った場合の慰謝料 |
死亡慰謝料(被害者が死亡した場合) | 被害者が死亡した場合の慰謝料 |
それぞれ詳しく紹介します。
入通院慰謝料は怪我の程度に限らず、入院・通院した期間や日数を元に計算されます。
そのため入通院が長くなるほど、慰謝料の金額も高くなります。
例えば自賠責基準の場合、初診から治療終了までの期間・実際の通院日数の2倍、どちらかの少ない方に1日4,300円かけて算出します。
初診から治療終了までに30日間かかった場合は、129,000円になります。
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺症が残った場合に請求できる慰謝料です。
ただし慰謝料を請求するためには、後遺障害の等級認定される必要があります。
等級は1〜14等級に分かれていて、等級が上がるごとに慰謝料も高くなります。
例えば自賠責保険基準だと、第14級で32万、第1級だと1,150万円です。
死亡慰謝料は、被害者が死亡したときに支払う慰謝料です。
死亡慰謝料は他の慰謝料と異なり、死亡した本人だけでなく、遺族も慰謝料の請求ができます。
具体的には被害者の父母・配偶者・子供に慰謝料の請求権を持っています。
死亡慰謝料は、亡くなった人が「家計を支えているか・主夫/主婦なのか」によって金額が決まります。
交通事故の慰謝料の金額を算定する基準は全部で3つあり、それぞれもらえる金額が異なります。
交通事故の慰謝料には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準があります。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険機基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
弁護士基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
自賠責基準とは、自動車の所有者が加入することが法律で義務付けられている、自動車損害賠償責任保険(自賠責)を基準とするものです。
自賠責は加入が義務となっている反面、交通事故の被害者の最低限の救済を補償する保険なので、3つの基準の中では最も金額が低いのが特徴です。
自賠責基準でもらえる慰謝料は、通院が1日だけの場合は4,300円です。
2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4,200円となります。
弁護士基準で算定した場合にもらえる慰謝料の相場は、通院が1日だけの場合、重傷時は9,333円・軽傷時は6,333円です。
自賠責基準でもらえる慰謝料よりも、弁護士基準で算定した場合の慰謝料の方が高くなります。
任意保険基準とは、自動車の任意保険を取り扱う保険会社が主に用いる基準です。
任意保険基準の金額は、自賠責基準よりも高くなりますが、弁護士基準よりは低くなります。
弁護士基準とは、主に弁護士が交通事故の示談や裁判を取り扱う際に用いる基準です。
交通事故に関して行われた過去の裁判の例をもとに設定された基準で、3種類の基準の中では金額が最も高くなります。
交通事故の被害者になった場合に最も高額な慰謝料を請求したい場合は、弁護士基準が適しています。
交通事故に関する慰謝料は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。
入通院慰謝料は、交通事故を原因とする怪我等を治療するための入院や通院に対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残ってしまった場合の精神的苦痛に対する慰謝料です。
死亡慰謝料は、交通事故が原因で被害者が亡くなってしまった場合の慰謝料です。
慰謝料は、精神的な苦痛という目に見えないものに対して支払われる金銭なので、本来は具体的な金額に換算することは難しいものです。
かといって、慰謝料を算定するために時間がかかりすぎると、かえって被害者の救済が遅れてしまうことになります。
そのため、交通事故の慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準ごとに、大体の金額の相場があります。
以下、あくまで基準ごとの違いを理解するための大まかなものですが、3種類の慰謝料について、それぞれの金額の相場を見ていきます。
自賠責基準の入通院慰謝料の相場は、1日4,300円程度です。
任意保険基準の相場は、1日8,000円程度になります。
弁護士基準は状態によって細かく分かれますが、1日1万円以上といったところです。
交通事故を原因とする怪我等を完全に治療することができずに、後遺障害が残った場合の慰謝料については、障害の等級によって相場が設定されています。
後遺障害の等級は、症状が最も重い第1級から一番軽い第14級まであり、全部で14種類に分かれています。
等級に応じて慰謝料も高くなります。
症状が最も重い第1級の場合で比較すると、自賠責基準の慰謝料の相場は1,100万円程度、任意基準の場合は1,600万円程度、弁護士基準の場合は2,800万円程度です。
交通事故で被害者が亡くなった場合の死亡慰謝料は、亡くなった方の立場や遺族の人数によって金額が異なります。
家族の収入を支えている夫が亡くなり、遺族が妻1人の場合の相場を見ると、自賠責基準では慰謝料の相場は900万円程度、任意保険基準の場合は2,000万円程度、弁護士基準の場合は2,800万円程度です。
交通事故の慰謝料は以下のように請求するため、金額決定までのステップを把握しておくとよいでしょう。
交通事故の慰謝料の金額決定の流れ
交通事故が発生したときは状況確認が必要になるため、まず警察と保険会社に連絡します。
ケガや物損状況などから警察が実況見分調書を作成し、事故の過失割合は保険会社が決定します。
その後はケガの治療に専念しますが、後遺症が残る場合は症状固定となり、労働能力の低下や喪失を判定するため、自賠責後遺障害等級の認定を受けます。
自賠責後遺障害等級認定によって、1~14級のうちいずれかの等級が確定するので、次に慰謝料を計算して金額を決定します。
慰謝料が決まれば示談交渉となりますが、一般的には保険会社が金額を提示するので、納得できれば示談書等に署名捺印して振込みを待つことになります。
なお、後遺障害があるときは以下の書類を揃えて被害者請求を行いますが、事故や障害の状況によっては追加書類も必要です。
最も高額な慰謝料を獲得できるのは弁護士基準ですが、交通事故の被害者になった場合に、加害者の保険会社が弁護士基準を提示してくることはほぼありません。
保険会社は営利企業として利益を確保することが重要なので、支払う金額はできるだけ低くしようとするからです。
加えて、保険会社は交通事故の交渉に慣れておりノウハウも豊富なので、法律に詳しくない被害者が自力で弁護士基準を獲得するのは非常に難しくなっています。
弁護士基準を獲得するためには、交通事故に詳しい弁護士に依頼するのが近道になります。
交通事故の被害者になった場合、弁護士に示談や裁判などの対応を依頼すると弁護士費用が発生します。
弁護士基準で慰謝料を獲得したい場合は弁護士に依頼するのが近道ですが、弁護士費用はまとまったお金が必要なので、依頼することを躊躇するかもしれません。
そうした場合に便利なのが、弁護士費用特約です。
弁護士費用特約とは、自動車保険の任意保険に加入する際に、多くの場合に選択式の特約として設けられている制度です。
自動車保険に弁護士費用特約をつけておくと、交通事故が発生した場合に弁護士に依頼する費用について、保険会社が負担してくれます。
被害者が自分で費用を支払う必要がなくなるので、手軽に弁護士に依頼できるようになります。
弁護士費用特約は、交通事故について裁判を起こす場合だけでなく、相手方との示談交渉を弁護士に依頼する場合にも使用することができます。
法律に詳しくない場合に相手方と交渉するのは負担が重くなるので、弁護士費用特約を付けておくと便利です。
弁護士費用特約の一般的な補償の範囲としては、相談料、着手金、報酬金、保険料、実費など、弁護士に依頼した場合に発生する費用が広くカバーされます。
弁護士費用特約の特徴として、特約を使っても翌年の保険料が上がらない点があります。
車両保険や対物保険などは、使用すると多くの場合は保険料が上がりますが、弁護士費用特約は、単体では保険料に影響しません。
使用しても保険料が上がらないので、交通事故の規模に関係なく、気軽に弁護士に依頼できるようになります。
弁護士費用特約は、事故に巻き込まれた本人が契約者の場合だけでなく、家族が自動車保険の契約をしているケースでも適用されることがあります。
契約内容を確認しておくと良いでしょう。
注意点としては、弁護士費用特約には限度額が設定されていることがあります。
詳細は保険会社によって異なりますが、1件の交通事故について、300万円程度が限度額として設定されている場合があります。
もっとも、交通事故において300万円以上の弁護士費用が発生するのは、よほど大きな事故が発生した場合などに限られてきますので、限度額に神経質になりすぎることなく、特約を検討すると安心です。
以上は、弁護士費用特約の一般的な内容をご紹介したものです。
実際の補償の範囲や内容等は契約によって異なる場合がありますので、詳細については加入されている保険会社の契約の内容をご確認ください。
交通事故の被害者が慰謝料の請求を弁護士に依頼する場合に発生する弁護士費用には、大きく分けて着手金と報酬金があります。
着手金とは、弁護士に事件の処理を依頼する時点で発生する費用のことです。
着手金は慰謝料の獲得に成功したかどうかに関わらず支払うもので、交通事故の依頼の場合は10万円程度が相場です。
報酬金は、事件の解決に成功した場合に報酬として支払う費用です。
報酬金の相場は、弁護士が回収できた金額の10%~15%程度です。
弁護士基準の算定方法で交通事故の慰謝料を獲得するためには、弁護士に交渉を依頼することが重要です。
その一方で、弁護士に依頼する場合は、まとまった費用が発生することになります。
任意の自動車保険で弁護士費用特約に加入している場合は、弁護士費用の負担を心配する必要はありませんが、特約に入っていない場合は、弁護士費用は重要な課題になります。
弁護士に相談しても少ない慰謝料しか回収できない場合は、弁護士費用が発生することは負担になります。
一方、弁護士費用が発生しても、それ以上の慰謝料を回収できる可能性が高い場合には、弁護士費用を支出する価値があります。
そこで、交通事故が発生した際に、慰謝料の請求を弁護士に依頼すべきケースはどのような場合かを見ていきます。
回収した金額に関係なく支払う着手金が10万円程度かかることに加えて、回収できた金額の1割程度を報酬金として支払う必要があることから、交通事故について弁護士に依頼する場合は、少なくとも15万円程度が必要になります。
そこで、弁護士に依頼することで15万円以上の金額を回収できる可能性が高い場合には、弁護士に依頼することを検討する価値があるということになります。
15万円以上の金額を回収できる可能性が高いケースの例としては、交通事故が原因で入通院期間が6ヶ月以上かかる場合や、交通事故で後遺障害が残ってしまった場合などです。
後遺障害については等級認定を請求する必要がありますが、自分でするよりも、交通事故の手続きに詳しい弁護士に依頼した方が成功しやすくなります。
その意味では、後遺障害が残った場合には弁護士に対応を依頼する必要性が特に高いと言えます。
交通事故に遭った際には、慰謝料以外にも様々なお金を請求可能です。
慰謝料以外にも請求できる金額が多い場合には、弁護士に依頼するのが良いでしょう。
交通事故の慰謝料は、被害者が受けた精神的な苦痛に支払われるものです。
示談金・慰謝料が混同してしまいますが、示談金は損害賠償金を合わせたもので、慰謝料は示談金の中に含まれています。
損害賠償の種類はたくさんあって、慰謝料はその中の1つです。
下記では、交通事故に遭ったときに請求できる賠償金を紹介します。
種類 | 内容 |
---|---|
慰謝料 | 精神的な苦痛に対して支払われる |
治療費・入院費 | 治療にかかる費用、入院雑費なども含まれる |
通院交通費 | タクシーも含め通院にかかった交通費 |
通信費 | 交通事故によりかかった通話代など |
修理費 | 車両の修理にかかった費用(レッカー代・代車の費用も含む) |
付き添い看護費 | 入通院で付き添いが必要になった際に認められる費用 |
器具等購入費 | 治療や後遺症が残った際にかかる必要(車椅子・松葉杖など) |
家具等改造費 | 後遺症が残ることによってかかる自宅のバリアフリー化などの費用 |
物損費用 | 交通事故が原因で破損したものの費用 |
葬儀関係費 | 葬儀に関する費用 |
休業損害 | 休まずに働いていれば得られた現在の収入減少に対する損害賠償 |
逸失利益 | 交通事故がなければ将来得られたであろう経済利益 |
上記のような費用を請求できるため、かかった費用を証明できる領収書・レシートなどは取っておきましょう。
交通事故の慰謝料には大体の金額の相場がありますが、一番高い金額を獲得できるのが弁護士基準です。
交通事故の慰謝料は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類あり、全てにおいて弁護士基準の金額が最も高くなっています。
一方、加害者の保険会社が弁護士基準の金額を提示してくることはほぼないため、弁護士基準で慰謝料を獲得したい場合には、交通事故に精通した弁護士に依頼することが重要になります。