交通事故の被害者になってしまったとき、慰謝料がいくらもらえるのか不安になる人も多いでしょう。
今回は、交通事故の被害者から最も相談が多いといわれる慰謝料について、算定基準と計算方法について福西弁護士にインタビューしました。
慰謝料の基準や種類、計算方法についてもわかりやすく解説しています。
さらに弁護士基準で慰謝料を簡単に計算できるツールを用意していますので、是非こちらのツールでまずは計算してみてください。
目次
今回は、交通事故被害者の方から最も相談が多いといわれる慰謝料について、算定基準と計算方法について福西弁護士にインタビューしてみたいと思います。
その前に、上記の交通事故慰謝料の計算を簡単にできるツールについてご説明をいただければと思います。
このツールで計算できる慰謝料金額は裁判基準(弁護士基準ともいわれています)ですので、保険会社提示の金額より高い金額で算出される場合が多いです。相手方保険会社から提示された賠償額に対して、本当に適切な項目で慰謝料を提示しているかを求めることができます。
基本項目を入力していくだけで、裁判基準の慰謝料が自動で計算できるんですね。保険会社提示の金額より高く計算されるということで、こちらの理由も後ほどお聞きしたいと思います。交通事故被害者の方は、是非こちらのツールでまずは計算してみてください。
先ほど、慰謝料計算機(ツール)では裁判基準での慰謝料を計算できるとのことでしたが、慰謝料計算の基準はいくつか種類があるのでしょうか?
慰謝料を算定するための基準には、次の3つがあります。自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つです。この3つの中で一番高い慰謝料になるのが弁護士基準、次が任意保険基準、最も安いのが自賠責基準です。
保険会社が算定した示談金の提案を見ても、なんとなくしっかり算定されたものなのかなと思ってしまい、そのまま示談成立してしまう人が多いのでしょうね。
おっしゃる通りです。保険会社としては、支払う保険金をできるだけ少なくするために交渉を進めようとします。そのため、任意保険基準は弁護士基準と比べて金額の基準が非常に低くなります。
つまり、任意保険基準は被害者に対する正当な賠償をするためではなく、保険会社自身の利益を失わないための基準なのです。
弁護士に依頼すると、裁判基準(弁護士基準)で慰謝料を算定して交渉を進めてくれるのですね。
被害者が直接相手方保険会社と交渉をするよりも慰謝料が増額する可能性が非常に高くなりますので、この点で弁護士に相談することによる最大のメリットです。
交通事故に遭った場合に請求できる慰謝料の種類について教えてください。
慰謝料といっても3種類に分かれるのですね。
交通事故で入通院される方は多いかと思いますので、具体例をあげながら入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の相場や計算方法などを教えてください。
入院慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの算定基準が存在します。
自賠責基準では日額4,300円を基礎として、治療にかかった日数を乗じて算定します。
自賠責基準での傷害慰謝料は、以下の計算式で算定します。
自賠責基準での傷害慰謝料の計算方法
日額4,300円×治療にかかった日数
たとえば、怪我の治療で20日間入院し、退院後10日間通院した場合であれば、治療にかかった日数は、30日になりますので、傷害慰謝料は4,300円×30日=12万9,000円です。
※自賠責保険の支払基準の改正により、2020年4月1日以降の事故は4,300円となっています。
任意保険基準や弁護士基準で入通院慰謝料の計算方法・算定表については、こちらの記事をご覧ください。
交通事故で怪我をして最初の1ヶ月入院し、続いて2ヶ月通院した場合と、3ヶ月通院のみの場合に分けて見ていきましょう。
1ヶ月・2ヶ月通院のケース
3種類の基準のそれぞれで慰謝料の金額が大きく異なることがわかります。
3ヶ月通院のみのケース
自賠責保険基準と任意保険基準では同じ金額になりましたが、弁護士基準(裁判基準)だと倍近い金額になります。
交通事故で怪我をして最初の2ヶ月入院し、続いて4ヶ月通院した場合と、最初から6ヶ月通院のみの場合に分けて見ていきましょう。
2ヶ月入院、4ヶ月通院のケース
入通院期間が長くなると、どの基準を使うかによって慰謝料の金額の開きが大きくなることがわかります。
6ヶ月通院のみのケース
通院のみの場合は、通院期間が長くなると任意保険基準による慰謝料の金額が自賠責保険基準による場合よりも低くなってしまいます。
このような場合、実務上は自賠責保険基準による金額で保険会社が示談してくれることが多いですが、被害者の方から申し出ないと任意保険基準による金額しか提示してこないこともあります。
示談交渉で主張すべきポイントをしっかり抑えましょう。
3種類の基準による計算方法を知っておかないと、金額の差が大きく、損をしてしまうので、要注意ですね。
症状固定後に悪化して入院や治療を再開する場合もあるかと思いますが、症状固定後には入院費や治療費は請求できないのですか?
症状固定以降の金銭請求については、基本的には入通院慰謝料ではなく後遺障害慰謝料の形で請求していくことになりますね。
治療再開の入院費や治療費も後遺傷害慰謝料として請求できるんですね。
後遺障害者慰謝料をもらうためには、どのような手続きが必要になりますか?
後遺障害等級認定を受けるためには、自賠責事務所という審査機関に対して、主治医に書いてもらった後遺障害診断書を含む書類を提出し、審査をしてもらう必要があります。
交通事故の後遺障害等級申請の審査は書面主義といって、被害者との面談は行われず、提出された書類のみで判断されます。後遺障害等級が認定してもらえないと、後遺症があったとしても後遺障害慰謝料は受け取れません。
被害者申請という方法をとることが、高い後遺障害等級を得るためには重要なポイントとなります。
後遺障害等級には第1級から第14級までの等級が存在し、等級番号が若いほど症状が重篤であるという意味になりますので、後遺障害慰謝料も高額となります。
弁護士基準を用いた後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜2,800万円です。
後遺障害慰謝料は後遺障害が認定された場合のみ請求できます。
後遺障害等級に応じて慰謝料額が異なりますので、等級別の金額は下記の表を参考にしてください。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
第1級 | 1,100万円 | 1,600万円 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 1,300万円 | 2,400万円 |
第3級 | 829万円 | 1,110万円 | 2,000万円 |
第4級 | 712万円 | 900万円 | 1,700万円 |
第5級 | 599万円 | 750万円 | 1,440万円 |
第6級 | 498万円 | 600万円 | 1,200万円 |
第7級 | 409万円 | 500万円 | 1,030万円 |
第8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 300万円 | 670万円 |
第10級 | 187万円 | 200万円 | 530万円 |
第11級 | 135万円 | 150万円 | 400万円 |
第12級 | 93万円 | 100万円 | 280万円 |
第13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
後遺障害慰謝料も自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準で全く金額が違いますね。最も重い第一級でいうと、弁護士基準で計算すると約2,800万円であり、自賠責基準や任意基準よりも1,500万円も高くなりますから、弁護士に依頼しないと損をしてしまう可能性が高いですね。
弁護士基準での計算は全てにおいて慰謝料金額が高く計算されます。
弁護士基準での計算方法を知っているかいないかで損をするかが決まってしまいますね。
ところで、後遺障害の中では重篤度が下がる14級はどのような症状なのでしょうか?
わかりやすいところでいうと、交通事故で起きることが多い「むちうち」の場合で説明させていただきます。むち打ちは自覚症状の要素が大きい後遺症ですが、事故直後から症状固定するまでの間、継続的に同じ自覚症状が出ていたことも必要です。
例えば、被害者本人の自覚症状が雨の日は首が痛む、というむらのある訴えである場合は、後遺障害等級14級非該当になりやすいといえるでしょう。
また、症状が一定以上重度であることも必要です。
なんとなくだるい、疲れやすい、首に何か違和感があるというような症状だと、気の持ちようや元々の体質にもよるものではないかと判断されて、後遺障害等級非該当になりやすいでしょう。
むち打ちは、骨折などのように画像診断に表れにくいので、医学的証明テストを受けていて、そのテスト結果を添付できれば、むち打ちが確かに存在していることの説得力が増します。
むち打ちの検査にはスパーリングテスト・ジャクソンテストなどのテストが有名であり、このテスト結果が陽性であれば、後遺障害等級14級を認定してもらいやすいといわれています。
症状の軽い「むちうち」ではさすがに後遺障害認定はされないわけですね。
むち打ちは、後遺障害等級14級のほかに、もっと上の等級である後遺障害等級12級に該当する可能性もあるので、なるべく高い後遺障害等級認定を勝ち取ることができるように、弁護士にあわせて相談してみましょう。
後遺障害になった場合に他に請求できる慰謝料はありますか?
後遺障害になった場合には、上記の後遺障害慰謝料の他に「逸失利益」を請求することができます。被害者が将来得られる予定の収入が交通事故により健康を害し、予定の収入より下回ります。そこで、その補填として「後遺障害逸失利益」という慰謝料を請求できます。
交通事故による怪我等で入院や通院で会社を休まなければならなくなったときの給与カット分も逸失利益となりますか?
仰るとおりです。休業損害も広義の逸失利益です。本来働いて得られたはずの収入分を休業損害慰謝料として加害者に請求できます。
死亡慰謝料はどのような算定になるのでしょうか?
死亡慰謝料は2種類に分かれています。被害者遺族に対して支払われる慰謝料と被害者本人に対して認める慰謝料の2つです。相場は、一家の支柱の死亡の場合は2,800万円、母親や配偶者の場合は2,500万円、その他の場合は2,000万円~2,500万円です。
弁護士基準 | 任意保険基準 | 自賠責基準 | |
---|---|---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 | 1,700万円 | 【被害者本人に対する慰謝料】 一律 350万円 【遺族に対する慰謝料】 遺族一人 550万円 遺族二人 650万円 遺族三人以上 750万円 |
母親・配偶者 | 2,400万円 | 1,250~1,450万円 | |
その他 | 2,000~2,200万円 |
実際のケースでは、上記のように弁護士基準で適正慰謝料を受け取ることが出来るのでしょうか?
上記の基準はあくまでも相場です。増減を求めるべき特別事情があれば、示談交渉でも裁判でも多少増減修正されることがあります。
保険会社の提示してくる金額について、どう対応すればよいでしょうか?
保険会社の提案内容に納得がいかなければ応じる必要はありませんので、あわててイエスと言わないように気をつけてください。具体的な事例で、基準額が増減修正されるケースはかなり特殊なケースでも50パーセント前後、大抵は最大30パーセントとなります。示談交渉の際はこの辺りのレンジを頭に入れて交渉しましょう。
示談交渉を自分でやるには限界があると感じる場合には、交通事故案件の取り扱い実績が豊富な弁護士に代行してもらうのもひとつです。
保険会社も交通事故示談交渉のプロフェッショナルともいえますもんね。一方で、被害者側は手負いの状態の個人ですので、保険会社とは情報力や体力に大きな違いがありますね。
交通事故案件を多く取り扱う弁護士は、日常的にこれらの任意保険と交渉をしているので、対等に交渉をすすめることができます。示談交渉にあたり少しでも不安があれば、交通事故に精通した弁護士に相談するのをお勧めします。
慰謝料以外に請求できるものはありますか?
物損についての慰謝料が請求できます。
車に対する思い入れには個人差があるといえ、単なる移動手段という人もいれば、何千万円もする愛車にこだわりを持って大切に手入れしながら乗っている人もいますよね。
まれに、愛車が傷つけられたことに対する精神的慰謝料を請求したいと思う人がいますが、物損事故については人身事故と違い、基本的には精神的慰謝料は認められません。
人間と違い、やはりものには代替がきくということもあるでしょう。
物損事故の場合は、車の修理によりダメージが回復できる場合は修理代、大破してしまい修理ができない場合は車の時価相当額を賠償することになります。
愛犬や愛猫などのペットが交通事故で死んでしまった場合はどうでしょうか?
基本的には物損事故として取り扱われます。自分の子供のようにペットを可愛がっている人も多いですが、法的には動物はものとして取り扱われるからです。
そのため、車と同様、ペットの時価が賠償額となり精神的慰謝料は認められないか、たとえ認められてもごく低額のようです。
本日は、お忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。
交通事故に遭われて、保険会社の対応に満足していない、どこに相談すればいいかわからない、弁護士に相談したいが躊躇をされている方へのメッセージをいただければと思います。
人生で交通事故に遭われることは多い話ではありません。
なので、事故直後どうすればいいのか、どうなってしまうのか分からない中で、保険会社の言われた通りに手続きを進めてしまい、本来得られたはずのお金の半分も貰えないケースも少なくありません。
この記事を読んでいる皆様は、事故にあったらすぐにご相談ください。事故直後であれば将来の示談交渉を有利に進めるための通院に関するアドバイス、保険会社からの治療費打ち切りの連絡に対する対応のアドバイスなども事前に行うことができます。
ご自身の保険証券や約款を確認してみてください。そこに弁護士特約がついていれば無料で弁護士をつけることができます。
無料で弁護士をつけられて、貰えるお金が増えるということになります。
交通事故に遭ってしまったときに慰謝料についてこんなに気を付けるべき点があったことを、今回のインタビューを通して知ることができました。万が一のときは、弁護士の先生に相談できると心強いですね。自動車保険の特約なども今まであまり考えずにいましたが、見直してみようと思いました。福西先生、本日はありがとうございました。