東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故の後遺症として多いものに、むちうちという症状があります。
後ろから車に追突されるなどして、頚椎部分に大きな衝撃がかかると、神経を痛めてしまい、耳鳴り・頭痛・うつなど、つらい後遺症が残ってしまうことがあります。
むちうちになってしまった場合の慰謝料の計算方法はどのようになるのでしょうか?
また、事故のケース別の相場についてはどのように違ってくるでしょうか?
交通事故で「むち打ち症」になる人は少なくありません。追突などの衝撃で頭が激しく振られて首がしなり、頸椎などの神経や靭帯が損傷することにより症状が現れます。
事故直後はあまり症状が出ずに、後から痛みが出てくることがしばしばあります。
症状としては、頭痛、吐き気、耳鳴り、肩こり、めまいなどから、麻痺やしびれ、味覚・視覚・聴覚・嗅覚・触覚などいわゆる「五感」に障害、場合によっては記憶障害がおこるなどさまざまです。
それぞれの症状の現れ方によって診断名が異なり、比較的軽症の場合は「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」など、重症の場合は「頸椎損傷」「頚髄損傷」「脳せき髄液減少症」などがつけられることがあります。
通常、ケガをした場合、客観的に状態を見ることが可能です。
たとえば、裂傷ができたり、骨折したりした場合は、明らかにケガをしたことがわかります。
しかしむち打ちに関していえば、画像診断をしようにも何も映らず、被害者本人の自覚症状以外、それらしい症状がないということもしばしばです。これがむち打ち症で後遺障害の認定を受けることを難しくしています。
医学的に証明するためにも、MRI による「画像所見」や、画像だけでは判断できない神経症状を調べる「神経学的検査」が重要になります。
慰謝料とは、被害者が交通事故で受けた精神的苦痛を補う損害賠償金となります。
民法709条は、故意過失により他人の生命・身体・財産に損害を加えた者はそれを賠償する責任がある旨を定めています。
この損害とは財産的な損害にかかわらず、精神的な損害も含む概念とされています。
慰謝料は、加害者が民法に基づきこの精神的損害を填補するために支払う損害賠償金なのです。
交通事故でもらえる慰謝料には大きくわけて3つのものがあります。
一つ目は入通院慰謝料といい、交通事故のけがを治療するために病院に入通院をしなければならなくなったことへの精神的苦痛に対する慰謝料です。
二つ目は、後遺障害慰謝料です。
けがの治療を続けていくうちに、症状固定といって、もうこれ以上治療を続けても症状が改善も悪化もしない状態になります。
症状固定を受けたあとは、自賠責事務所という認定機関に後遺障害等級の認定申請を提出し、後遺障害等級認定を受けることになります。
認定を受けた場合は、後遺障害が残ってしまったということへの精神的苦痛に対する慰謝料である後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
三つ目は、死亡慰謝料といって、交通事故で亡くなった方ご本人とその近親者に対する精神的苦痛に対する慰謝料が支払われます。
むち打ちの場合は、被害者は死亡しておりませんので、むち打ちを治療するための入通院慰謝料と後遺症が残った場合の後遺障害慰謝料を請求していくということになります。
同じむちうちという症状だとしても、慰謝料をどの基準で算定するかによって慰謝料の金額は大きく異なります。
慰謝料を含む交通事故の損害賠償金を計算するための基準は一つではなく、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つが存在します。
なぜ算定基準が存在するのかというと、慰謝料とは精神的苦痛という目に見えない損害を金銭という具体的な数字で評価しなければ支払うことができません。
そのため、ある一定の基準がなければ、公平で妥当な慰謝料の金額を導き出すことができないからです。
一つ目の自賠責基準とは、運転者全員に加入が義務付けられている自賠責保険の支払請求に用いる基準です。
自賠責はすべての交通事故の被害者に最低限の救済をすることを目的としているので、もっとも低額な金額となります。
二つ目の任意保険基準は、加害者が加入している任意保険会社が、自社基準として示談金の算定に用いる基準となり、自賠責基準よりは高いものの、三つ目の弁護士基準に比べると定額となります。
任意保険会社としては営利法人として、なるべく被害者に支払う金額を低廉に抑えたいという事情があるからです。
三つ目の弁護士基準は、弁護士が示談金の交渉をするときに用いたり、裁判になった場合に裁判所がこれによって判断するための基準となり、最も高額となります。
弁護士基準は、通称「赤い本」とよばれる公益財団法人日弁連交通事故相談センター編 東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』に表としてまとめられています。
むちうちとなってしまった被害者としては、この弁護士基準をベースに慰謝料を請求していくということになります。
むちうちの治療は平均的には3ヵ月くらいの通院が必要とされるといわれています。
では、上述の3基準にあてはめて3ヵ月通院した場合の入通院慰謝料を計算してみましょう。
まず、自賠責基準では、4,200円を日額とし、それに「実際に入通院した日数の2倍」と「治療開始日から治療終了日までの日数」のうちいずれか少ない日数をかけて計算します。
たとえば、通院期間が3ヵ月、その間週3日通院していたとすると、実際の通院日数は36日です。
この場合、実治療日数の2倍である72日は治療期間である3ヵ月よりも短くなるため、計算式は、4,200円×72日となり、慰謝料の金額は30万2,400円になります。
次に真ん中の基準である任意保険基準で計算した場合のケースを見てみましょう。
任意保険会社は自社ごとに基準を設けているので完全に統一的な金額を出すことはできませんが、平成11年に保険が自由化されるまでは、統一基準が設けられていて、現時点でもその基準に近いものを踏襲している保険会社が多いようです。
先ほどの事例のむち打ちで通院3ヵ月だった場合、旧任意保険基準によれば、入通院慰謝料は37万8,000円です。
自賠責基準と比較してみると、約7万8千円ほど高いことがわかります。
最後に最も高水準の弁護士基準では、どうなるのでしょうか?弁護士基準は通称赤い本の「入通院慰謝料算定表」が用いられ、重症の場合は別表Ⅰ、軽傷の場合は別表Ⅱが適用になります。
通院3ヵ月のむち打ちの入通院慰謝料は、軽症で別表Ⅱが適用になれば53万円、画像所見などでもわかる重症の場合で別表Ⅰが適用になれば73万円になります。
自賠責基準や任意保険基準と比べると数十万円の差がありますね。
治療によってもむちうちが完治せず、しびれや耳鳴りなどが残ってしまう場合があります。
こうした後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定申請をし、認定をうけることで後遺障害慰謝料をうけとることができます。
後遺障害等級認定申請は自賠責機関という審査機関に書類を提出し、症状の重篤度に応じて、1級から14級までの認定を受けます。
なお、1級が一番重い等級で、寝たきりになってしまうような状態の場合がこれにあたります。
後遺障害の等級はそれぞれ以下のとおりになります。
等級 介護を要する後遺障害 第1級 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 第2級 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
等級 後遺障害 第1級 1.両眼が失明したもの 2.咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3.両上肢をひじ関節以上で失つたもの 4.両上肢の用を全廃したもの 5.両下肢をひざ関節以上で失つたもの 6.両下肢の用を全廃したもの 第2級 1.一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 2.両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 3.両上肢を手関節以上で失つたもの 4.両下肢を足関節以上で失つたもの 第3級 1.一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 2.咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5.両手の手指の全部を失つたもの 第4級 1.両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 2.咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3.両耳の聴力を全く失つたもの 4.一上肢をひじ関節以上で失つたもの 5.一下肢をひざ関節以上で失つたもの 6.両手の手指の全部の用を廃したもの 7.両足をリスフラン関節以上で失つたもの 第5級 1.一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの 2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4.一上肢を手関節以上で失つたもの 5.一下肢を足関節以上で失つたもの 6.一上肢の用を全廃したもの 7.一下肢の用を全廃したもの 8.両足の足指の全部を失つたもの 第6級 1.両眼の視力が〇・一以下になつたもの 2.咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3.両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 4.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 5.脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6.一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 8.一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの 第7級 1.一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの 2.両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 3.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 4.神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5.胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6.一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの 7.一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの 8.一足をリスフラン関節以上で失つたもの 9.一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10.一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11.両足の足指の全部の用を廃したもの 12.外貌に著しい醜状を残すもの 13.両側の睾丸を失つたもの 第8級 1.一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 2.脊柱に運動障害を残すもの 3.一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの 4.一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 5.一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8.一上肢に偽関節を残すもの 9.一下肢に偽関節を残すもの 10.一足の足指の全部を失つたもの 第9級 1.両眼の視力が〇・六以下になつたもの 2.一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 3.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 7.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 8.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 9.一耳の聴力を全く失つたもの 10.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12.一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの 13.一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの 14.一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの 15.一足の足指の全部の用を廃したもの 16.外貌に相当程度の醜状を残すもの 17.生殖器に著しい障害を残すもの 第10級 1.一眼の視力が〇・一以下になつたもの 2.正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3.咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4.十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 6.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 7.一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 8.一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9.一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの 10.一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 11.一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 第11級 1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4.十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 6.一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 7.脊柱に変形を残すもの 8.一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの 9.一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 10.胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 第12級 1.一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4.一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5.鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8.長管骨に変形を残すもの 9.一手のこ指を失つたもの 10.一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 11.一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの 12.一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 13.局部に頑固な神経症状を残すもの 14.外貌に醜状を残すもの 第13級 1.一眼の視力が〇・六以下になつたもの 2.正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3.一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4.両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5.五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6.一手のこ指の用を廃したもの 7.一手のおや指の指骨の一部を失つたもの 8.一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 9.一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの 10.一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 11.胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 第14級 1.一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 2.三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3.一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 4.上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5.下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6.一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの 7.一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの 8.一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 9.局部に神経症状を残すもの 引用:国土交通省 「後遺障害等級表」
それでは、むちうちについて認められる後遺障害等級はどの程度になるでしょうか?
むちうちの等級としてもっとも認定される可能性が高いものが、14級9号となります。
むちうちは不快な自覚症状が本人には感じられるものの、レントゲンやCT画像など、第三者が目に見える画像所見では証明が難しい症状の一つです。
そのため、画像所見に代えて、むちうちの自覚症状が確かに存在することを医学的に証明する方法として、スパーリングテストやジャクソンテストなど各種の信頼性が確認されている神経学的検査等を実施し、症状の存在を合理的に説明することによって、後遺障害等級14級認定を目指すということになります。
後遺障害等級14級9号の症状として、上述のように自賠責機関では、「局部に神経症状を残すもの」と定義していて、目立った他覚的所見が認められないが神経系統の障害が医学的に推定されるものや、外傷性の画像所見は得られないが自覚症状を説明する神経学的所見が認められるものを認定しています。
このように多くのむち打ち症状の場合は、14級9号の認定をしますが、衝撃の程度や被害者の姿勢や症状の特徴により、CT画像など他覚所見が現れるより重症なむち打ち症状も存在し、その場合はさらに重症な等級として、12級13号が認定されることも、ケースとしては多くありませんが稀にはあります。
自賠責機関は上述のように12級13号の定義として「局部に頑固な神経症状を残すもの」を定めています。
頑固な神経症状とは、具体的には、他覚的検査により神経系統の障害が証明されるもの、または自覚症状に一致する外傷性の画像所見と神経学的所見の両方が認められるものということになります。
後遺障害慰謝料は、14級9号の場合、自賠責基準では32万円、弁護士基準では110万円です。
3倍以上の差がありますね。
より重症な基準なむち打ち症状である後遺障害等級12級13号の場合、自賠責基準での慰謝料は92万円、弁護士基準では290万円です。
むちうち、特に他覚画像がないような症状の場合、後遺障害等級認定申請には工夫がさまざまに必要です。
後遺障害等級認定申請は、書類審査といって、被害者の面接などは行われず提出された書面だけを見て、等級が判定されます。
後遺障害等級認定申請には、2つの方法があります。
1つ目は、事前申請といって、加害者の任意保険会社に申請手続きをすべて代行してもらう方法です。
任意保険会社は、自賠責保険から支払われる金額と、自社が支払う示談金を合算していったん立替払いをして被害者に支払うので、どのくらいの金額の後遺障害慰謝料が支払われるかを事前に知っておく必要があるからです。
2つ目は被害者申請といって、被害者自らが後遺障害等級認定申請資料を準備して自賠責機関に申請を行う方法です。
事前申請は、書類の準備などをすべて任意保険会社にやってもらえるので、被害者の事務負担が少ないというメリットはありますが、十分にむちうちの存在について立証を果たせないというリスクがあります。
加害者の任意保険会社は、特段後遺障害慰謝料が多くても少なくても、自社には利益がでないので、それほど熱心に証明書類を用意してくれないということになるためです。
そのため、むち打ちのような場合は、被害者申請を選び、主治医に説得力のある後遺障害診断書を記載してもらう、各種神経テストを補強で受けてそれを添付するなど、納得がいくまでの証明資料を用意することをおすすめします。
この際には、交通事故に詳しい弁護士に提出資料のアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士のアドバイスにより、主治医に後遺障害診断書の書き方を変えてもらっただけで、慰謝料の金額が大きく上がった事例も見られます。
いかがでしたでしょうか。
交通事故の慰謝料の計算方法には3つの算定基準があり、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準(裁判基準)の順に高くなっています。
ご自身の納得のいく額の慰謝料をうけとるためには、弁護士基準が適当といえるでしょう。
また、後遺障害等級認定については慰謝料額に大きな影響を与えるため、慎重に判定してもらわねばなりません。
むちうちの慰謝料にお悩みの方のご参考になれば大変幸いです。