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交通事故で破損した自転車や服は補償される?請求方法や賠償金の限度額について解説

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

交通事故で破損した自転車や衣類などの物的損害は、加害者に賠償請求できます。本記事では、賠償請求の方法や金額の算定方法などについて解説しています。

この記事でわかること

  • 交通事故で破損した自転車や服を弁償してもらえるのかがわかる
  • 自転車の修理代や破れた服はいくらまで補償されるのかがわかる
  • 交通事故による破損物の具体的な賠償事例がわかる
交通事故ではけがや治療費ばかりに目が向きがちですが、自転車や服、バッグなど身の回りの物が壊れてしまうことも少なくありません。特に自転車は日常生活に欠かせない移動手段であり、破損すれば修理や買い替えが大きな負担となります。

「誰が弁償してくれるのか」「いくらまで補償されるのか」と不安に思う方も多いでしょう。物的損害については加害者に損害賠償を請求できますが、補償額は新品価格ではなく「時価相当額」が基準です。

本記事では、交通事故の物的損害に関する補償の仕組みや請求方法、注意点をわかりやすく解説します。

交通事故で破損した自転車や服は誰が弁償してくれるの?

交通事故では、治療費や慰謝料といった人的被害に目が向きがちですが、壊れた自転車や衣類など「物の損害」についても適切な補償を受ける権利があります。補償の仕組みを理解していないと、自分で修理代や買い替え費用を負担することになりかねません。

ここでは、破損した自転車の修理代を誰に請求できるのか、そして補償を受けるための条件について解説します。

基本的には加害者に賠償請求できる

交通事故で壊れた自転車や衣類は、法律上「物的損害」として扱われます。民法709条(不法行為責任)では、故意または過失によって他人に損害を与えた者は賠償の義務を負うと定められています。つまり、加害者の不注意な運転によって物が破損した場合、その修理費や時価相当額は加害者に請求できることになります。

多くの場合、支払いは加害者本人ではなく、加入している自動車保険を通じて行われます。「対物賠償保険」が利用されるのが一般的で、自転車や服の損害も補償の対象に含まれます。そのため、実際のやり取りは加害者ではなく保険会社との交渉が中心となります。

たとえば、車と接触して自転車が大きく曲がってしまったケースでは、修理費や全損にあたる場合の時価相当額を保険から受け取ることが可能です。必要な交通手段を補償で確保できれば、事故後の生活再建にもつながります。

弁償してもらうには証拠が必要になる

損害を請求する際に欠かせないのが、事故と破損した物との関係を証明する証拠です。口頭で「壊れた」と伝えるだけでは補償は認められにくく、加害者や保険会社も判断できません。

証拠として役立つのは、以下のような資料です。

  • 壊れた自転車や衣類の写真(事故直後に撮影するとより有効)
  • 修理業者の見積書や購入時の領収書
  • 警察の交通事故証明書や実況見分調書

これらをそろえることで、事故による損害であることを客観的に示せます。逆に、証拠を残さずに処分してしまうと補償が受けられない可能性が高まります。

特に大切なのは、破損した自転車や破れた衣服などの現物を捨てずに残しておくことです。保険会社が実物を確認することを求める場合があり、その際に現物がないと補償額が下がるリスクがあります。修理や買い替えをするにしても、保険会社の確認が終わるまでは手元に置いておくのが安全です。

自転車の修理代や破れた服はいくらまで補償される?

補償の範囲や上限には法律上の考え方があり、保険会社との示談交渉でもその基準に沿って話し合いが進みます。基準を理解していないと提示された金額に納得できず、不利な条件で示談してしまうこともあるため注意が必要です。

ここでは、補償額がどのように決まるのかを具体的に確認していきましょう。

交通事故時の「時価相当額」が原則

交通事故で壊れた自転車や衣類の補償額は、購入時の金額ではなく「時価相当額」を基準に決まります。時価相当額とは、事故が起きた時点でその物にどのくらいの価値があるかを示す金額です。新品の価格ではなく、中古品としての価値に置き換えられる点が大きな特徴です。

この考え方が用いられる理由は、事故が起きなければその物を新品に買い替える必要はなく、あくまで「現在使っていた物の価値」を失ったことに対して補償する、というのが法律の原則だからです。もし新品の購入費用がそのまま補償されると、被害者が事故前よりも得をすることになり、公平性を欠くという考え方が背景にあります。

たとえば、5年前に10万円で購入した自転車が事故で壊れた場合、現在の中古市場では3万円程度の価値しかないと評価されることがあります。このケースでは、修理費が5万円かかったとしても、補償されるのは時価である3万円が上限になります。
衣類についても同様で、ブランド品や高額なコートであっても、購入から数年経過していれば評価額は下がります。8万円で購入したコートが事故で破れた場合でも、事故当時の価値が4万円と判断されれば、補償はその範囲にとどまります。

損害額の具体的な算定方法

交通事故で壊れた自転車や衣類の補償額は、修理できるかどうかによって「修理費基準」と「全損基準(時価基準)」のいずれかで算定されます。修理費が時価を下回れば修理費が補償され、修理費が時価を超える場合や修理不能の場合には、事故時点の時価が補償の上限となります。

この「時価」をどう算出するかについては、以下の考え方があります。

市場価格方式
中古市場での実際の取引価格を基準にする方法です。壊れた物と同じ種類・型式・使用年数の品物がどの程度の価格で流通しているかを調べ、その価格を時価として用います。たとえば、通学用に3年使用した自転車であれば、その時点で同程度の中古自転車を取得するために必要な価格が補償額になります。もっとも実態に即した方法であり、最も一般的に採用されています。
減価償却方式
購入価格から使用年数や耐用年数を考慮して価値を減少させ、事故時点の金額を算出する方法です。長く使った物ほど価値は低く評価されます。ただし、この方式はあくまで目安であり、必ずしもその金額が補償額として用いられるわけではありません。

実務上は、新品を購入して代替するケースも多く、加害者側の謝罪の意味を込めて、購入時の価格を基準に賠償が認められることがあります。たとえば、購入価格5万円の自転車なら、その金額がそのまま賠償額として扱われる場合があります。

具体的な賠償事例

交通事故では、自転車だけでなく身に着けている衣類や装飾品、さらに携帯していたスマートフォンやパソコンなどが損傷することも少なくありません。これらも物的損害として賠償の対象になりますが、いずれも時価を限度として補償される点に注意が必要です。

スマートフォンやパソコンなどの所持品

バッグや衣類のポケットに入れていたスマートフォンやノートパソコンが事故の衝撃で壊れた場合、その時点の時価が賠償額の上限となります。購入金額がそのまま支払われるわけではなく、使用年数やモデルの古さを考慮して減額された金額になります。修理不能、または修理費用が時価を超える場合は、下取りや買取価格が賠償額となります。反対に、修理が可能で修理費が時価を下回る場合は、修理費用がそのまま賠償されます。

半年前に23万円で購入したノートパソコン代11万円余と、ハードディスクのデータ移行修復費用11万円余、コンパクトディスク代2万円の賠償が認められた(東京地判平成17.10.27)

衣類や腕時計などの装飾品

事故当時に着ていた衣類や、身につけていた腕時計なども賠償の対象です。高級ブランド品であっても、支払われるのは新品価格ではなく時価です。さらに、本物かどうか、状態や使用年数がどの程度かといった点で加害者側や保険会社と交渉がこじれる可能性もあります。そのため、購入時の領収書や修理見積書、鑑定書などを準備して提示できるようにしておくことが重要です。

高校1年生の女子の制服(スカート、ブラウス)につき、用途や期間が極めて限定される特殊な性質を考慮して、新品購入価格が損害として認められた(大阪地判令和2.6.10)。

眼鏡などの例外的な扱い

事故当時にかけていた眼鏡については、物的損害ではなく「人身損害」の一部として扱われる場合があります。この場合、自賠責保険から補償を受けられる可能性があるため、保険会社に確認することが望ましいでしょう。

2カ月から2年4カ月前に購入した以下のものにつき損害が認められた(大阪高判平成28.3.24)。

  • メガネフレーム 3万4,800円(購入価格の80%)
  • メガネレンズ 5万3,865円(購入価格の95%)
  • パソコン 18万円(購入価格の50%)
  • 靴 9,600円(購入価格の80%)
  • 自転車 2万1,600円(購入価格の90%)
  • カバン 4,800円(購入価格の60%)

交通事故で破損した自転車や服の弁償代を請求する方法

交通事故で壊れた自転車や服を弁償してもらうには、事故直後から適切な対応を取ることが欠かせません。請求の流れを理解していないと、十分な補償が受けられず、不利な条件で示談してしまうおそれがあります。ここでは、実際に弁償代を請求する手順を順を追って解説します。

1. 警察に届け出て事故証明を取る
交通事故が起きた場合、必ず警察に連絡し、交通事故証明書を発行してもらう必要があります。この証明書は損害賠償請求に欠かせない基礎資料であり、あとから取得しようとしても難しい場合があります。
2. 証拠を確保する
壊れた自転車や服の状態を示す写真を撮り、現物も処分せずに残しておきましょう。購入時の領収書や修理見積書があれば、損害額の根拠になります。証拠を十分に準備しておくことで、保険会社との交渉がスムーズに進みます。
3. 加害者側の保険会社へ連絡する
弁償代のやり取りは、加害者本人ではなく、その任意保険会社を通じて行うのが一般的です。壊れた物の損害を申告し、証拠資料を提出すると、保険会社から補償額の提示を受けることになります。
4. 提示額に納得できない場合は交渉する
保険会社から提示された金額が低いと感じる場合には、時価の算定根拠や修理費の妥当性について説明を求めましょう。市場価格のデータや鑑定結果を提示することで、補償額を引き上げられる可能性があります。
5. 弁護士に相談する
交渉が難航したり、提示額に納得できなかったりする場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談するのが有効です。弁護士に依頼すれば、適正な損害額の算定や交渉を任せられるため、不利な条件で妥協するリスクを避けられます。

費用面を心配する方も多いですが、自動車保険に付帯されている弁護士費用特約を利用すれば、原則として自己負担なく弁護士に依頼できます。この特約は、被害者が歩行中や自転車で事故に遭った場合でも使えるケースが多いです。契約内容は事前に確認しておきましょう。

物的損害について早めに請求すべき理由

交通事故で壊れた自転車や衣類などの物的損害は、後回しにせず早めに請求することが重要です。時間が経つほど請求が難しくなり、結果的に補償を受けられないリスクが高まるからです。

時効による請求権の消滅
交通事故による損害賠償請求には時効があります。原則として事故から3年が経過すると請求権が消滅し、それ以降は補償を受けられなくなります。人的被害に比べて物的損害は軽視されやすいですが、時効の壁は同じように存在するため注意が必要です。
証拠の散逸リスク
事故直後に残しておいた証拠も、時間が経つと散逸しやすくなります。壊れた自転車を処分してしまったり、衣類を廃棄してしまったりすると、事故との因果関係を証明できなくなります。早めに請求しておけば、写真や修理見積書などの資料を基にスムーズに交渉が進み、適切な補償を受けやすくなります。
生活への影響を最小限にするため
自転車は通勤や通学に欠かせない移動手段であり、衣類やスマートフォンなども日常生活に直結する必需品です。請求を先延ばしにすると、新しい物を自費で調達せざるを得ず、生活への負担が大きくなります。速やかに補償を受けることで、事故前の生活を早期に取り戻すことができます。

交通事故で破損した自転車に関してよくある質問(Q&A)

自転車が全損した場合はどうなりますか?

自転車が大きく破損し修理が不可能、または修理費が時価を上回る場合は「全損」と判断されます。その場合、事故発生時点での時価額が補償の上限になります。たとえば、購入価格10万円の自転車であっても、使用年数が長く時価が3万円と評価されれば、補償されるのは基本的に3万円までです。

高価なスポーツ自転車やブランド品の服も補償されますか?

スポーツタイプのロードバイクやブランド品の衣類も、物的損害として補償の対象になります。ただし、こちらも原則として時価相当額が上限です。購入時に高額だったとしても、使用年数や状態によって価値が下がっているため、必ずしも購入価格が全額補償されるわけではありません。

弁償代に請求期限はありますか?

物的損害の損害賠償請求権には時効があり、原則として事故から3年で消滅します。この期限を過ぎてしまうと、加害者や保険会社に補償を求めても認められません。また、時間が経つほど証拠も散逸しやすいため、早めに請求を行うことが大切です。

破損したものを処分してしまったら補償は受けられない?

事故直後の混乱で壊れた自転車や服を捨ててしまった場合、補償を受けられなくなる可能性が高いです。保険会社は「事故と損害の因果関係」を重視するため、現物や写真などの証拠がないと補償を認めにくくなります。

ただし、例外的に補償が認められることもあります。たとえば、破損当時の写真が残っている、修理業者の見積書がある、購入時の領収書やクレジットカードの明細などで存在や価格を証明できる場合です。こうした証拠を組み合わせれば、現物がなくても損害を立証できるケースがあります。

まとめ 保険会社の提示に納得できないなら弁護士に相談を

交通事故で壊れた自転車や衣類などの物的損害は、原則として加害者に賠償請求できます。ただし、補償額は購入時の金額ではなく、事故当時の「時価相当額」が上限となります。修理が可能であれば修理費、修理不能または修理費が時価を上回る場合には時価額が補償の基準となります。

交通事故による物的損害の補償は、自ら行動しなければ適切な金額を受け取れない場合もあります。不安を抱えたまま妥協せず、必要に応じて専門家の力を借り、納得できる形で解決を図りましょう。

相談先に迷ったら、交通事故で豊富な実績を持つ「VSG弁護士法人」までぜひお気軽にご相談ください。

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保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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