東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
まずは、示談金の内訳について知っておきましょう。
交通事故における示談金は、和解金や損害賠償請求金ともいい、人身事故において「被害者が加害者に対して請求することができる金額の総額」のことを指します。
示談金の内訳は下記のとおりです。
実費
慰謝料
これは、軽症の場合も変わりません。
軽症の場合は、骨折などに比べて治療費や入院費も少ないことから、慰謝料(入通院した日数に従って算出されます)も低額になります。
しかし「算出された金額が●万円以下の場合は請求できない」という決まりはありませんから、恐れることなく示談金を精算し、請求しましょう。
上記のうち、実費については実際にかかった費用をレシートなどを用いて計算すればいいわけですから、単純な足し算ですみます。
しかし、問題となるのは慰謝料の計算です。
慰謝料には3種類の計算方法あり、それぞれ全く金額が異なります。
加害者が加入している自賠責の保険会社が被害者に対して支払う際の基準です。
の少ない方の数値を元に、4,200円×日数の合計額が自賠責基準の慰謝料となります。
相手方が任意に加入している各保険会社が提示してくる際に用いる基準です。
以前は統一されていましたが、現在は廃止されているため、保険会社によって金額が違います。
弁護士基準は、今までに蓄積された裁判例などを参考に作成された基準です。
軽症の場合の弁護士基準(万円)
過失割合 | 後遺障害または死亡 | 傷害 |
---|---|---|
7割未満 | 過失相殺なし | 過失相殺なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
上記3つのうち、金額が高い順に弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準となります。
弁護士基準は、裁判でも採用される基準であり、弁護士でなければ使ってはいけないという決まりはありません。
しかし、他の基準と比べて高額であることや、そもそも今回のように軽症の場合、弁護士に依頼することはあまりないでしょうから、弁護士基準が相手方との任意の話し合いの中で採用されることは難しいでしょう。
自賠責基準は定額ですので、任意保険基準が最も交渉によって増額される可能性があるといえます。
任意保険基準と弁護士基準の間ぐらいの金額で和解を目指しましょう。
少し前置きが長くなりましたが、実際に軽症の場合の慰謝料の相場について見ていきましょう。
まずは、上記の表に該当するかを確認しましょう。
軽症でも、ねんざや打撲の場合は、擦り傷などに比べて比較的症状も重く、またレントゲン検査などをする場合もあり、通院日数が数日・数回に及ぶケースもあります。
そういった場合でも、上記の表を用いて、ある程度自動的に算出することができます。
事例治療が数回に及んだ場合(通院期間7日間、通院回数2日)
自賠責基準:¥4,200×4(※)=¥16,800
(※)通院回数2日の2倍<通院期間7日のため
任意保険基準:¥126,000÷30×7=¥29,400
弁護士基準:¥190,000÷30×7=¥44,333
上記の表に基づく計算だと月単位で計算していくことになりますが、1ヵ月未満や1.5ヵ月通院した場合など、端数が生じた場合、その分は日割り計算をしていくことになります。
ただ、軽症の場合、通院期間といっても経過観察などであまり治療をしない場合もあります。
その場合、保険会社は通院期間ではなく、通院日数×3で金額を算出し提示してくることがあります。
相手方保険会社がわざわざ金額の高い弁護士基準の金額を提示してくることは考えられませんが、仮に弁護士基準で計算すると、
つまり軽症の場合の慰謝料(通院期間7日間の例)の相場は、
となります。
弁護士に依頼しない場合は、最低でも2万3,000円、できるだけ弁護士基準に近い3万後半代を目指しましょう。
事故の状況によっては、擦り傷など、病院に全く通院しない場合もあります。
頭や首、背中を打った場合は、本人は気づかなくても、脳に損傷が出たり、むち打ちや脊髄に損傷が出ている場合もありますから、念のため病院で検査をすることをおすすめします。
病院に行かなかった場合、通院日数が0日で通院期間がないため、表に基づく計算をすることができません。
しかし、怪我をしたことは事実ですし、相手方の保険会社も全く慰謝料を支払わないということはあまりないようです。
あくまで保険会社の対応にもよりますが、通院日数が1日の場合より、少し低めの金額を提示してくることが多いようです。
例としては、以下のような金額になります。
自賠責会社より、任意保険会社の方が提示してくる金額が高い傾向があります。
これまでご説明してきたことをまとめると、軽症の場合の示談金の相場は以下のようになります。
軽症の場合の示談金の相場
・1回も通院しなかった場合
実費(消毒費や、物が壊れた場合は修理費)+慰謝料¥3,500の数万円前後
※通院しない程度の交通事故ですと、そこまで多額の実費が発生することは稀でしょう。
・通院をした場合(通院期間7日間、通院日数2日)
実費+慰謝料¥23,000~¥30,000の数万から十数万円前後といえるでしょう。
たとえ軽症でも、必ず警察を呼び、適切な処理を行ってもらってください。
まれに、被害者が軽症のため、「人身事故」ではなく「物損事故(物が壊れただけ)」として処理してしまう場合があります。
もし物損事故として処理された場合、保険会社に対して治療などの慰謝料を請求できなくなりますので、注意が必要です。
相手方の連絡先は、後日交渉の際に必要になります。
相手方が逃げてしまった場合でも、ナンバープレートや事故現場の情報や状況は、携帯のカメラで撮影したり目撃者を探すなどして、きちんと記録しておきましょう。
※事故に遭った場合、たとえ軽症でもショックを受けていることが少なくありませんから、当時の自分の記憶だけを頼りにするのではなく、できるだけ目撃者を探したり、携帯のカメラやレコーダー機能を活用しましょう。
交通事故の場合、人と人がぶつかっただけならともかく、何十kgという鉄の塊が時速何十kmというスピードで衝突してくるわけですから、本人の自覚がなくても怪我をしている場合があります。
事故後しばらく経ってから、そのことに気づいて通院を開始したとしても、事故との関係性が問われるでしょうし、ましてや示談が成立した後に通院を開始しても、その分の治療費や慰謝料が認められることはかなり難しいです。
軽症の場合、示談金の相場は数万~十数万円前後となります。
軽症だからといって適当に処理をするのではなく、まずは①警察への通報、②相手方および事故現場の記録、そして③病院での治療は必ず行ってください。
物損事故として処理されると、治療費を含む慰謝料の請求ができなくなります。
万が一、交通事故に巻き込まれても泣き寝入りにならないよう、この3つは心に留めておきましょう。