東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
打撲や捻挫などの比較的軽いけがでも、けがの治療のために通院していれば「通院慰謝料」を請求できます。
また、打撲が悪化して手足の痺れなどの神経症状が残れば、「後遺障害慰謝料」を請求できる可能性もあります。
入通院慰謝料とは、治療のために入院や通院をせざるを得なくなった場合の精神的苦痛を、少しでも緩和するために支払われるお金です。打撲や捻挫などの軽傷であっても、検査や治療のために医師の診察を受けているのであれば慰謝料を請求できます。
出血や傷口を伴わない打撲は軽傷の場合も多いですが、骨折を伴っていたり神経系の合併症など後遺症が残る場合もあります。手足に痺れや強い痛みが残った場合には、入通院慰謝料のほかに後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
後遺障害慰謝料とは、けがが完治せず後遺症が残ってしまった場合に、その精神的苦痛を和らげるための賠償金です。申請をして後遺障害等級に認定してもらう必要はありますが、後遺障害であると認められれば後遺障害慰謝料のほかに逸失利益も請求できるようになります。
打撲の通院期間の目安は、おおよそ1週間から1カ月程度です。比較的軽度の打撲であれば、数日から2週間以内には症状がなくなるケースが多いです。
一方で、打撲の痛みで日常生活に支障を来たすなど重傷であれば、治療に数カ月かかることもあります。コンパートメント症候群や外傷性骨化性筋炎などの症状が出ている場合には、完治もしくは症状固定の判断までに時間がかかる場合があるでしょう。
通院頻度は、けがの程度や治療の進行具合を見ながら医師と相談して決定します。週に2〜3回程度継続して通院していれば、示談交渉の際に揉めにくくなるでしょう。
打撲などで筋肉・血管・神経が圧迫されることにより循環不全を起こし、患部が壊死したり神経麻痺の症状が出る後遺症
打撲などで筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまい、慢性的な痛みや可動域の制限などの症状が出る後遺症
打撲で入通院慰謝料や後遺障害慰謝料を請求する場合、いくらくらい請求できるのでしょうか。ここでは、それぞれの慰謝料における計算方法や相場を確認していきます。
なお、交通事故における慰謝料の算定基準は次の3つです。
算定基準 | 概要 | 慰謝料額 |
---|---|---|
自賠責基準 | 自賠責保険会社が用いる算定基準 | 通常もっとも低額になる |
任意保険基準 | 各任意保険会社がそれぞれ独自に定めている算定基準 | 自賠責基準と弁護士基準の間くらい |
弁護士基準 (裁判基準) | 過去の裁判例に基づいて定められた算定基準 | 通常もっとも高額になる |
入院や通院による精神的苦痛は、けがの治療費や車の修理費などのように目には見えません。そこで、治療期間や実通院日数を基準に慰謝料額を算定します。
自賠責基準における入通院慰謝料の計算方法や相場は、以下のとおりです。
入通院慰謝料の計算方法(自賠責基準)
日額4,300円(※1)×対象日数(※2)
※1 2020年3月31日以前に起きた交通事故については、基準額を4,200円として計算する
※2 対象日数とは、次のうちいずれか少ない方の日数を指します。
・「入通院期間(初診日~治療終了日または症状固定日までの期間)」
・「実際の入通院日数 × 2」
入通院期間 | 実際の入通院日数 | 入通院慰謝料 |
---|---|---|
1カ月 | 5日 | 43,000円 |
10日 | 86,000円 | |
15日 | 129,000円 | |
2カ月 | 10日 | 86,000円 |
20日 | 172,000円 | |
30日 | 258,000円 | |
3カ月 | 20日 | 172,000円 |
40日 | 344,000円 | |
60日 | 516,000円 |
各保険会社が独自に設定している任意保険基準は、基本的に非公開です。ただし、かつて保険会社が使用していた統一基準(旧任意保険基準)を参考にすれば、おおまかに慰謝料額を推測することは可能です。
旧任意保険基準によれば、打撲で1カ月〜3カ月通院した場合の入通院慰謝料相場は以下のとおりです。
通院期間 | 入通院慰謝料額 |
---|---|
1カ月 | 12万6,000円 |
2カ月 | 25万2,000円 |
3カ月 | 37万8,000円 |
基本的には、自賠責基準と同程度かそれより若干高いくらいの金額になるケースが多いです。
弁護士基準では、裁判例を基に作成された算定表を使って慰謝料を計算します。打撲で1カ月〜3カ月通院した場合の入通院慰謝料相場は以下のとおりです。
通院期間 | 入通院慰謝料額 |
---|---|
1カ月 | 19万円 |
2カ月 | 36万円 |
3カ月 | 53万円 |
実通院日数が少ないことを理由に、保険会社が慰謝料の減額を主張してくるケースも多いです。その場合、同じ1カ月通院した場合でも、使う算定基準によって慰謝料額が10万円以上変わってしまう可能性もあるのです。
打撲が原因で痛みや痺れなどの後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害等級14級9号もしくは12級13号に認定される可能性があります。
後遺障害慰謝料は、認定される等級ごとに金額の目安が定められています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級 | 94万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
打撲した箇所の痛みや痺れなどの症状があれば、医師による神経学的所見で後遺障害等級14級9号に認定される可能性があります。また、それらの症状がレントゲンやMRIなどで確認できれば、より重い等級である後遺障害等級12級13号に認定される可能性もあるでしょう。
なお、申請したからといって、必ずしも希望する等級に認定されるわけではありません。とくに、打撲の場合は後遺障害等級に該当しない認定を受ける可能性が高いので、申請をする場合には弁護士のサポートを受けるのがよいでしょう。
打撲などの軽傷の場合、保険会社が慰謝料額を低く見積もってくる可能性があります。示談交渉で損をしないためにも、次のポイントを意識しておきましょう。
事故の規模が小さい場合や痛みや出血などの自覚症状がない場合、加害者から物損事故として処理してほしいと頼まれるかもしれません。しかし、慰謝料を請求したいのであれば必ず人身事故で処理してください。
慰謝料は、交通事故でけがを負ったことによる精神的苦痛を賠償するお金です。車を破損したことや事故に巻き込まれたことによる精神的苦痛は、慰謝料請求の対象となりません。
物損事故として処理してしまいあとから症状が出てきた場合には、人身事故への切り替えも可能です。このような場合には、なるべく早めに警察に申請して実況見分調書を作成してもらいましょう。
交通事故に遭ったら、事故当日もしくは2〜3日以内には医師の診断を受けましょう。
慰謝料を請求するためには、打撲による症状が事故によるものであると証明する必要があります。事故から時間が経って病院に行くと、痛みや痺れが事故以外の原因によるものだと主張されて慰謝料の支払いを拒否される恐れがあります。
また、事故後の初診は必ず病院で診察を受けてください。自己判断で整骨院や接骨院での治療をしても、慰謝料はおろか治療費の支払いすら拒否される可能性があるでしょう。
さらに、事故直後の症状を医師に伝えておけば、あとになって症状が悪化してもその経過を診断書に残せるので後遺障害等級認定で有利になる可能性もあります。
交通事故で打撲になったら、医師の指示に従い適切な頻度で通院しましょう。完治もしくは症状固定と診断されるまで治療を継続してください。
保険会社は、次のような理由で慰謝料の減額、もしくは支払いを拒否してくる可能性があります。
治療の頻度は医師と話し合って決めるべきですが、保険会社に治療費の打ち切りを打診されても、安易に治療を中断しないよう気をつけてください。
交通事故で負った打撲が原因で後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定の申請をおこないましょう。等級認定されれば、「後遺障害を負ったことによる慰謝料(後遺障害慰謝料)」や「事故に遭わなければ得られたはずの収入(後遺障害逸失利益)」などを請求できます。
後遺障害等級認定の申請方法の大まかな流れは、以下のとおりです。
後遺障害等級認定の申請方法
交通事故で打撲を負った場合、さまざまな賠償金を請求できます。
打撲を負った場合に請求できる主な賠償金
請求漏れがあると損をすることになるので、事故が原因で何らかの支出をしたら領収書や明細書を保管しておきましょう。
打撲や捻挫などの軽傷の場合、弁護士に依頼せずに自分で交渉を進めようとする人も多いです。しかし、たとえ軽傷でも弁護士に依頼するメリットは非常に大きいです。
交通事故の被害者として最大限の補償を受けるためにも、なるべく早めに専門家のサポートを受けることをお勧めします。
打撲や捻挫などの軽傷の場合、保険会社が提示してくる金額は低額な場合がほとんどです。しかし、弁護士が交渉することで慰謝料を増額できる場合があります。
弁護士が慰謝料の増額を実現しやすい理由
被害者が保険会社と交渉しても、基本的に対等な立場で交渉できません。交渉に慣れている保険会社との交渉を優位に進められるのは、専門家である弁護士に依頼するメリットの一つだといえるでしょう。
けがの程度にもよりますが、比較的軽傷の打撲で後遺障害等級に認定されるのは非常に困難です。たとえ、痛みや痺れなどの後遺症が残っても、それが事故の打撲が原因となって起こった症状だと認められにくいのが現状です。
しかし、弁護士なら後遺障害等級に認定されるために必要な書類を適切に準備できます。場合によっては、医師に後遺障害診断書の記載内容や検査の必要性などについて意見することもできます。
裁判例では、事故態様や症状、治療の経過などを考慮して、全身打撲を後遺障害等級14級9号に認定したケースも存在します(東京地判平成25.12.18)。
後遺障害等級に認定されるかどうかでもらえる賠償金は大きく変わるので、痛みが残るようであれば弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
車同士の事故だけでなく、自転車と歩行者の事故の場合でも打撲になる場合があるでしょう。この場合、弁護士が間に入ることで交渉がスムーズに進むことが多いです。
自転車保険の加入が義務付けられている自治体もありますが、そうでない場合には基本的に無保険であるケースがほとんどです。その場合、加害者と直接示談交渉をすることになるので、素直に慰謝料を支払ってくれない場合が多いです。
お互いに専門的知識のない状態で話し合うと、相場以下の金額で示談してしまう可能性があります。また、落とし所がわからず交渉が長期化する恐れもあります。
早めに慰謝料を受け取りたいなら、交通事故に強い弁護士に1度相談してみましょう。
交通事故で打撲になった場合、病院で治療を受ければ入通院慰謝料、後遺症が残れば後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
打撲の通院期間の目安は1週間から1カ月程度ですが、症状や治療の進行具合によっては通院期間が長くなることもあります。医師と相談して適切な頻度で通院しましょう。
後遺障害等級の認定も含めて、打撲で適切な賠償金をもらいたいなら弁護士のサポートを受けることをおすすめします。