東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
示談金が振り込まれるのは、加害者側の保険会社との示談が成立したあとです。
示談金とは、治療費や慰謝料、車の修理費などの賠償金を全て含んだお金のことを指します。
保険会社との話し合いで決めた支払い金額のことを「示談金」と呼ぶので、示談金としていくら支払うかの話し合いがまとまったあとにお金が振り込まれることになります。
事故発生から示談成立までにかかる期間は、3カ月〜1年程度が目安となります。
被害者は事故による損害を賠償請求できるので、示談交渉を開始するのは全ての損害額が確定したあとからになります。
示談交渉開始のタイミングは次のとおりです。
物損事故 | 修理代や買替費用などが確定したら |
人身事故(後遺症なし) | けがが完治したら |
人身事故(後遺症あり) | 後遺障害等級認定の結果が出たら |
死亡事故 | 四十九日法要が終わったら |
物損事故であれば、車の修理費が確定すればすぐにでも示談交渉を開始できます。
一方で、後遺症が残るような重症を負った場合には、治療期間も長くなりその分示談交渉開始までに時間がかかる場合があります。
事案により異なりますが、示談交渉にかかる期間の目安は2カ月〜1年程度です。
お互いに争いのない事故であれば、示談交渉で揉めることもなくスムーズに話が進むでしょう。書面のやりとりで話が進むので、早くても2カ月程度の時間がかかるケースが多いです。
一方で、過失割合で揉めた場合や話し合いで決着がつかずに裁判にまで発展した場合には、交渉がまとまるまでに1年以上かかる場合もあります。この場合、けがの治療期間から考えると1年半以上に渡り示談金を受け取れない可能性もあるでしょう。
保険会社と示談が成立すると、2週間程度で示談金が振り込まれます。
示談成立後は示談書を取り交わしますが、この書面のやりとりに1週間程度かかります。そのため、振込みは早くても示談が成立してから2週間前後が目安となります。
ただし、必ずしも示談から2週間程度で示談金が振り込まれる訳ではありません。保険会社が多忙だったり、土日祝日を挟んだりすると振込みが遅くなる場合もあります。
示談書には示談金の振込み期限が記載されているので、もしその期限内に支払いがなかった場合には、保険会社に問い合わせをしてみましょう。
示談成立や示談金の振込みが遅れる原因はどこにあるのでしょうか。
いち早く慰謝料や賠償金を受け取るためにも、示談金の支払いが遅れる原因をしっかり把握しておきましょう。
加害者が強制加入の自賠責保険にしか加入しておらず任意保険に加入していない場合、示談交渉がスムーズにいかずに示談金の支払いが遅れる可能性があります。
自賠責保険でも被害額の補償はしてくれますが、あくまでも被害者に対する最低限の補償をしてくれるだけです。そのため、賠償額が大きい場合には自賠責保険だけでは補償しきれない場合があるのです。
加害者が任意保険に加入していれば、自賠責保険の限度額を超えた部分については任意保険会社から支払ってもらえます。しかし、任意保険未加入の場合は、損害の賠償を加害者に直接請求することになるのです。
被害額が少ない場合や加害者にある程度の資産がある場合は、そこまで示談成立が遅延することもないでしょう。しかし、任意保険にすら加入していない加害者が素直に賠償金を支払ってくれるケースはそう多くはありません。場合によっては、一括での支払いではなく分割払いを求めてくることもあります。
中には加害者と連絡が取れなくなってしまうケースもあるので、その場合には示談金の受け取りが先延ばしになってしまうでしょう。
後遺症が残る場合などで治療期間が長引く場合には、その分示談交渉の開始が遅くなり示談金の受け取りも遅くなります。
一般的に言われているけがごとの治療期間・症状固定時期は、次のとおりです。
けがの症状 | 症状固定の時期 |
---|---|
打撲 | 1カ月〜6カ月程度 |
むちうち | 3カ月〜6カ月程度 |
骨折 | 6カ月〜1年程度 |
醜状障害 | 6カ月〜1年程度 |
高次脳機能障害 | 1年〜2年程度 |
複数の症状がある場合 | それぞれの症状ごとに個別に判断する |
打撲などの比較的軽い症状であれば、治療期間が長くなることもなくスムーズに示談交渉に入れるでしょう。
一方で、高次脳機能障害や複数のけがをした場合には、症状固定までの治療期間が長くなる可能性があります。その場合、その分示談交渉の開始が遅れて示談金の受け取りも遅くなるでしょう。
ここで挙げた治療期間は、あくまでも目安期間です。症状の程度や治療の進行具合、本人の痛みの自覚症状や今後の回復の見込みなどを総合的に考慮したうえで、症状固定は判断されます。
むちうちなどの後遺障害が残ってしまう場合、症状固定後に後遺障害等級認定の申請をおこなうことで、「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」などの賠償金を請求できるようになります。
一方、必ずしも希望する後遺障害等級に認定される訳ではないので、場合によっては認定結果を巡って何度も審査のやり直しを求めることがあります。
複雑な事故の場合、後遺障害等級の認定審査に2カ月以上の期間がかかるケースもあります。さらに審査のやり直しに時間がかかると、示談金の振込みがかなり遅くなる場合もあるのです。
複雑な事故など過失割合で揉めた場合、話し合いがスムーズにいかずに示談交渉が長引く可能性があります。
過失割合は示談金額に大きな影響を及ぼします。たとえば、示談金が100万円で過失割合が「被害者:加害者=2:8」だった場合、実際に獲得できる示談金は80万円になってしまうのです。
保険会社は、自社の利益のためできるだけ支払う金額を低くしようと考えます。そのため、過失割合で加害者に有利に認定しようと主張してくる可能性が高いです。
また、規模の大きい事故で被害額が大きい場合にも、被害者側の主張と加害者側の主張の間に溝ができる場合があるでしょう。
示談金は示談交渉がまとまってから支払われるのが原則です。
しかし、次の制度を使えばいち早く示談金の一部を受け取ることが可能です。
交通事故の場合、治療費の支払いは本来加害者が支払うべきものです。そのため病院が治療費の支払いを待ってくれる場合もあります。
しかし、病院によっては治療期間が長期化すると支払いを求めてくる場合もありますし、けがが原因で会社を休んでいる場合は生活費にも影響が出てしまうでしょう。
この場合、加害者が加入する自賠責保険会社に対して、示談成立前に一定のまとまった金額を請求することができます。
これを仮渡金請求(かりわたしきんせいきゅう)もしくは被害者請求といいます。
事前に受け取れる金額はけがの症状によって異なります。
被害者が借渡金を請求してから1週間程で入金されますが、1回しか請求できないことに注意が必要です。
加害者側の任意保険会社に賠償金の一部を前もって支払ってもらえることを「内払い」といいます。全ての保険会社が対応してくれるわけではありませんが、損害が確定している部分については、前もって賠償金を支払ってもらえる場合があるでしょう。
保険会社によって上限金額を設けているところもありますが、基本的には回数制限や補償上限金額もありません。
請求してから1〜2週間程度で支払ってもらえるので、仕事を休んでしまったことによる減収分「休業損害」などについては、内払いで早めの補償を受けるメリットが大きいといえます。
なお、内払い金や借渡金として受け取った金額は、示談交渉の際に示談金から差し引かれます。
仮渡金請求・内払金請求は、事故で経済的に苦しい状況にある被害者にとってはメリットの大きい制度です。
けがの影響で仕事ができない場合など、金銭的に余裕がない場合は積極的に活用すべき制度ですが、注意点があります。
賠償金の一部は、相手方の保険会社に対して請求します。
したがって、保険会社からすれば「この人は早くお金を受け取りたいんだな」ということがわかってしまうことになります。。
こうした事情は示談交渉の際に被害者に不利な材料とされ、「●●円なら、早期解決できますよ」と被害者の弱みにつけこんだ低い金額での示談を求めてくる場合があるのです。
もちろん「銀行や消費者金融から借金してでも、仮渡金や内払金請求は活用しないほうがよい」というわけではありません。
しかし、これらの制度を活用する場合には、むやみやたらに活用するのではなく最小限度の利用に努めましょう。
まだ治療が続いているにもかかわらず示談をもちかけられたり、保険会社から治療費の立て替えを拒絶された人も多いと思います。
保険会社にもよりますが、打撲は事故から1カ月後、むち打ちは3カ月後、骨折は6カ月を目安に、治療費の打ち切りを打診されるケースが多いです。治療継続中なら毅然とした態度で治療を継続すればいいのですが、なかには横暴な態度でなんとか示談を成立させようとしてくる担当者もいます。
その場合は早めに弁護士に間に入ってもらい、交渉の窓口になってもらうのがおすすめです。
自動車保険のオプションの一つである弁護士費用特約に入っていれば、ほとんどのケースで実質タダで弁護士に依頼できます。
交通事故の解決実績が豊富な弁護士なら、示談交渉をスムーズに進めるためのノウハウを熟知しているでしょう。
借渡金や内払金請求をすべきかどうかについても相談できるので、精神的にも安心できる点が弁護士に依頼する魅力になるでしょう。
示談金の支払時期は、保険会社との示談が成立してから2週間前後です。しかし必ずしも示談交渉がスムーズにいくわけではなくさまざまな要因で示談金の支払いが遅れることがあります。
示談成立が遅れることによりお金に困った場合は、仮渡金請求や内払金請求で賠償金の一部を前もって受け取ることも可能です。
しかし、その際は保険会社から低い額での早期解決を打診されるリスクがあることを念頭に置いたうえで、慎重に利用を判断する必要があるでしょう。
また、示談交渉をスムーズに進めたいなら早めに弁護士に依頼することも重要です。
1人で悩まず専門家のサポートを受けて示談金をいち早く受け取りましょう。