東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
目次
交通事故の示談交渉が進むと、相手方から最終的に払われるお金(つまり示談金)の金額の提示を受けることや、また、自分から相手方に対して請求する場合もあります。
その時、相手方が提示してきた金額が正しいのか、あるいは自分がどれくらい請求していいのかわからないことがありますよね。
今回は、具体的な示談金の計算方法を、内訳について押さえるべきポイントも含めて解説します。
以下に必要な項目や金額を入力するだけで、裁判基準(弁護士基準)の慰謝料額が簡単に計算できるツールを用意していますので、ぜひご利用下さい。
まず、示談を開始すべき時期は、病院や整骨院の治療が完全に終了した、あるいは病院から「もうこれ以上は治らない」と診断され、後遺障害が確定してからです。
よくある話として気をつけなければならないのは、保険会社が「後でなんとかするから、とりあえず示談しましょう」と強引(あるいは物腰柔らか)な態度でなんとか示談をさせようとしたり、「これ以上通院しても以降の費用は払いませんよ」とあの手・この手を使って、なんとか低い金額で示談しようとすることです。
いったん示談が成立した(つまり示談書・和解書に押印した)後は、それを覆したり、示談成立後に発生した金額を相手方に請求することはかなり困難なので、まずは、示談を開始するのは、病院や整骨院の治療が完全に終了するか、あるいは後遺障害が確定してからです。
これは最重要必須事項なので、必ず忘れないようにして下さい。
また、事故の治療費や治療のために会社を休み、生活費に困った場合は、安易に示談に応じず、相手方の自賠責保険会社に請求できる仮渡金請求や内払金請求の活用も検討して下さい。
示談を開始し、金額を計算する前に予め準備しておくことは①資料を揃える、②過失割合を検討するの2点です。
上記のうち「①資料を揃える」について解説します。
通常、相手方の自賠責保険会社から案内が来る、あるいは「交通事故の示談請求をしたい」と申し出ると書式一式が送られてきます。
示談開始時に必要な書類は下記のとおりです。
最寄りの交番や警察署で申請用紙を入手し、自動車安全運転センターへ申請します
当時の事故現場の状況を図面化したものです。
被害者と加害者の過失割合を算定するのに重要な材料となりますから、写真なども活用し、交通事故に関する本やインターネットの参考例を見ながら、丁寧に作成して下さい。
病院や整骨院で作成してもらいます。
「どのような治療をしたか」「どのような後遺障害が残ったか」「費用がいくら発生したか」を算定するのに必要です。
病院オリジナルの書式ではなく、保険会社が作成する書式に書いてもらう必要があります。
病院へ通うためのタクシー代をはじめとした交通費や、レッカー車代など交通事故の被害に遭うことにより発生した実費を請求する際には、領収書やレシートが必要になります。
これらは、ほとんどの保険会社がコピーではなく原本の提出を求めてきます。
控えとしてコピーを取っておくとよいでしょう。
また、給与明細や確定申告書の写し(自営業者の場合)は、交通事故の被害に遭い、通院や治療、労働能力の低下などでやむを得ず仕事を休み、その分の給与や収入が下がった場合の証明として使用します。
その他、印鑑証明書などを請求してくることもありますので、詳細は、相手方の保険会社に問い合わせをしてみて下さい。
まず、示談金とは、加害者側が被害者に支払う最終的な金額の総合計を示し、交通事故における示談金は、内訳が細かく分かれています。
漏れのないように一つ一つチェックしていきましょう。
具体的には、治療や通院にかかった費用、交通費や治療費、付添看護費など交通事故の被害に遭い実査にかかった実費をレシートや領収書を元に総合計します(入院するためのパジャマ代などの雑費は自賠責基準で1日1,100円前後、弁護士が使用する弁護士基準でも1日1,500円と固定化されていることがあります)。
消極損害は、交通事故に遭わなければ得られたであろう金額を示します。
実費のように具体的な資料があるわけでもありませんので、個別に計算していくことになります。
消極損害には「休業損害」「後遺障害逸失利益」「死亡逸失利益」があります。
具体的に示談交渉や示談金の計算をする際に忘れてはいけないのが、示談金には3つの基準があるということです。
実費などレシートで金額が明らかな場合はいいのですが、慰謝料など目にみえず分かりにくい金額を処理する際に、迅速に処理するために作られた基準です。
示談金の計算や内訳を検討する際など、随所で出てくるキーワードですので、ここで簡単に見ていきましょう。
自賠責法(正式名称「自動車損害賠償保証法」)で定められた基準です。
各保険会社が個別に定めた基準です。
以前は統一化されていますが、現在は廃止されております。
ただし、保険会社によって金額が大幅に異なるということはあまりなく、おおよその基準を予想することは可能です。
弁護士会が、過去の裁判例を元に算出した金額です。
示談が話し合いで成立せず、裁判や調停になった場合にも利用されます。
この3つの基準は被害者にとって有利な(金額が高い)順に、
弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準
となります。
相手方からすればできるだけ低い金額でまとめようとしますから、弁護士基準(少なくとも弁護士がついていない)が認められる可能性は決して高くはありません。
交通事故の被害に遭い、治療をしている被害者は、通院や入院のために仕事を休まざるをえないことがあり、その分収入が減ってしまうことがあります。
その減った分の補填を休業損害として請求できます。
給与明細などを元に、実際に休んだ日と照らし合わせながら計算していくことになりますが、先ほど説明したとおり、「3つの基準」で計算方法が異なります。
一日あたり5,700円が支払われるのが原則ですが、給与明細などで一日あたりの金額が5,700円を超える場合は、下記計算式に基づいて支払われます(上限は1日あたり19,000円)
事故前3ヵ月の収入を日割り計算×休業日数
(過去一年の収入-必要経費)÷365×休業日数
仕事をしている人は、給与明細などを元に実際に減った金額となります。
一日あたりの収入が5,700円を下回る場合や、資料などがなく計算が難しい場合も5,700円として計算します。
任意保険基準と同様、実際に減った金額で算出します。
資料が乏しい場合でも、賃金センサスと呼ばれる、厚生労働省が毎年発表している賃金の指標(同種内容や同規模の職場の平均賃金が分かる)を元に計算されます。
また、自営業者の場合でも必要経費は控除されず、
(前年度の実収入÷365)×休業日数
として計算されます。
通院をして治療を続けたものの、医師から「もう以上は治らない」と診断され、痛みや障害が残った状態のことを後遺障害といいます。
後遺障害が認められるには医師に診断書を書いてもらう必要があります。
よく、整形外科ではなく整骨院に通う人もいますが、整骨院は医師ではなく柔道整復師という資格を持つ方が施術を行っているケースがほとんどであり、後遺障害診断書を書いてもらえませんので、整形外科と整骨院の使い分けは上手く活用して下さい。
後遺障害は、残った障害および介護が必要か否かについて、全部で16に分類されます。
「介護を必要とする場合」
後遺障害の内容 | 労働能力喪失率 | |
---|---|---|
要介護1級 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 100/100 |
要介護2級 | ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 100/100 |
「介護を必要としない場合」
後遺障害の内容 | 労働能力喪失率 | |
---|---|---|
1級 | ・両眼が失明したもの ・咀嚼及び言語の機能を廃したもの ・両上肢をひじ関節以上で失ったもの ・両上肢の用を全廃したもの ・両下肢をひざ関節以上で失ったもの ・両下肢の用を全廃したもの | 100/100 |
2級 | ・1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの ・両眼の視力が0.02以下になったもの ・両上肢を手関節以上で失ったもの ・両下肢を足関節以上で失ったもの | 100/100 |
3級 | ・1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの ・咀嚼又は言語の機能を廃したもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、 終身労務に服することができないもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 終身労務に服することができないもの ・両手の手指の全部を失ったもの | 100/100 |
4級 | ・両眼の視力が0.06以下になったもの ・咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの ・両耳の聴力を全く失ったもの ・1上肢をひじ関節以上で失ったもの ・1下肢をひざ関節以上で失ったもの ・両手の手指の全部の用を廃したもの ・両足をリスフラン関節以上で失ったもの | 92/100 |
5級 | ・1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの ・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・1上肢を手関節以上で失ったもの ・1下肢を足関節以上で失ったもの ・1上肢の用を全廃したもの ・1下肢の用を全廃したもの ・両足の足指の全部を失ったもの | 79/100 |
6級 | ・両眼の視力が0.1以下になったもの ・咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの ・両耳の聴力が耳に接しなければ 大声を解することができない程度になったもの ・1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では 普通の話声を解することができない程度になったもの ・脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの ・1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの ・1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの ・1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの | 67/100 |
7級 | ・眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの ・両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では 普通の話声を解することができない程度になったもの ・1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では 普通の話声を解することができない程度になったもの ・神経系統の機能又は精神に障害を残し、 軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・胸腹部臓器の機能に障害を残し、 軽易な労務以外の労務に服することができないもの ・1手のおや指を含み3の手指を失ったもの 又はおや指以外の4の手指を失ったもの ・1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの ・1足をリスフラン関節以上で失ったもの ・1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ・1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの ・両足の足指の全部の用を廃したもの ・外貌に著しい醜状を残すもの・両側の睾丸を失ったもの | 56/100 |
8級 | ・1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの ・脊柱に運動障害を残すもの ・1手のおや指を含み2の手指を失ったもの 又はおや指以外の3の手指を失ったもの ・1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの 又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの ・1下肢を5センチメートル以上短縮したもの ・1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの ・1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの ・1上肢に偽関節を残すもの ・1下肢に偽関節を残すもの ・1足の足指の全部を失ったもの | 45/100 |
9級 | ・両眼の視力が0.6以下になったもの ・1眼の視力が0.06以下になったもの ・両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの ・両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの ・鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの ・咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの ・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を 解することができない程度になったもの ・1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、 他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが 困難である程度になったもの ・1耳の聴力を全く失ったもの ・神経系統の機能又は精神に障害を残し、 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの ・胸腹部臓器の機能に障害を残し、 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの ・1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの ・1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の 3の手指の用を廃したもの ・1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの ・1足の足指の全部の用を廃したもの ・外貌に相当程度の醜状を残すもの ・生殖器に著しい障害を残すもの | 35/100 |
10級 | ・1眼の視力が0.1以下になったもの ・正面を見た場合に複視の症状を残すもの ・咀嚼又は言語の機能に障害を残すの ・14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの ・両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を 解することが困難である程度になったもの ・1耳の聴力が耳に接しなければ 大声を解することができない程度になったもの ・1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの ・1下肢を3センチメートル以上短縮したもの ・1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの ・1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの ・1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 27/100 |
11級 | ・両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの ・両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの ・1眼のまぶたに著しい欠損を残すも ・10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの ・両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することが できない程度になったもの ・1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を 解することができない程度になったもの ・脊柱に変形を残すもの ・1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの ・1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの ・胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | 20/100 |
12級 | ・1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの ・1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの ・7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの ・1耳の耳殻の大部分を欠損したもの ・鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの ・1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの ・1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの ・長管骨に変形を残すもの ・一手のこ指を失ったもの ・1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの ・1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの 又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの ・1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの ・局部に頑固な神経症状を残すもの ・外貌に醜状を残すもの | 14/100 |
13級 | ・1眼の視力が0.6以下になったもの ・正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの ・1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの ・両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの ・5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの ・1手のこ指の用を廃したもの ・1手のおや指の指骨の一部を失ったもの ・1下肢を1センチメートル以上短縮したもの ・1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの ・1足の第2の足指の用を廃したもの、 第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの 又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの ・胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | 9/100 |
14級 | ・1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの ・3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの ・1耳の聴力が1メートル以上の距離では 小声を解することができない程度になったもの ・上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの ・下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの ・1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの ・1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を 屈伸することができなくなったもの ・1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの ・局部に神経症状を残すもの | 5/100 |
後遺障害に関する請求の中身は、
です。
また、後遺障害が残ったために労働能力が低下し、賃金が下がってしまった場合は、その減った分も「逸失利益(いっしつりえき:本来ならば受け取られたであろう金額)」として請求することができます。
具体的な逸失利益の計算方法は、年収や上記表の労働能力喪失率(67歳まで働けるとした場合の年数が基準)に加え、事故後からの就労可能年数(例えば20歳だったら47年)から導き出したライプニッツ係数という数値をかけて計算されます。
ライプニッツ係数は「国土交通省のホームページ」に記載されているのでご確認下さい。
となります。
後遺障害が残った場合、実費や逸失利益だけでなく、慰謝料も請求することができます。
各等級の3基準は下記のとおりとなります。
等級 | 自賠責基準 | 任意保険基準(目安) | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
要介護1級 | 1,600万円 | ||
要介護2級 | 1,163万円 | ||
1級 | 1,100万円 | 1,850万円 | 2,800万円 |
2級 | 958万円 | 1,450万円 | 2,370万円 |
3級 | 829万円 | 1,150万円 | 1,990万円 |
4級 | 712万円 | 850万円 | 1,670万円 |
5級 | 599万円 | 750万円 | 1,400万円 |
6級 | 498万円 | 650万円 | 1,180万円 |
7級 | 409万円 | 550万円 | 1,000万円 |
8級 | 324万円 | 450万円 | 830万円 |
9級 | 245万円 | 350万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 250万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 200万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 150万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 65万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 45万円 | 110万円 |
後遺障害が残った場合、どの基準が採用されるかで金額が大きく異なることがおわかりいただけたでしょうか。
交通事故に遭い、健全な日常生活が送れなくなったり、わざわざ病院に通うはめになったことに対する身体的・精神的苦痛を金銭で補償する意味合いを持ちます。
レシートなどで計算される訳ではなく、それぞれ3つの基準で計算されます。
示談金の内訳で、最も差が出るといっても過言ではないかもしれません。
自賠責基準の支払額は1日あたり4,200円です。
また対象日数は「実際の通院日数×2」もしくは「治療期間」の少ない方です。
つまり、4,200×(「実際の通院日数×2」もしくは「治療期間」の少ない方)が自賠責基準となります。
例えば、1月1日に事故に遭い当日から治療を開始し、実際に治療が終了したのが1月31日であった場合(実際に病院に通院したのは3日間)、
「実際の通院日数×2=3×2」と「治療期間=31」
の低い数値が採用されますので、実際の計算式は 4,200×6 となります。
平成9年までに採用されていた旧統一基準は廃止されましたが、大手保険会社が個別に定めた基準の平均相場は概ね下記のとおりです。
入院→ 通院↓ | 0ヵ月 | 1ヵ月 | 2ヵ月 | 3ヵ月 | 4ヵ月 | 5ヵ月 | 6ヵ月 | 7ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0ヵ月 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | |
1ヵ月 | 12.6 | 37.8 | 63 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 |
2ヵ月 | 25.2 | 50.4 | 73 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 |
3ヵ月 | 37.8 | 60.4 | 82 | 102 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 |
4ヵ月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 |
5ヵ月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 |
6ヵ月 | 64.2 | 83.2 | 102 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 |
7ヵ月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 |
8ヵ月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 |
9ヵ月 | 82 | 99.6 | 116 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 |
10ヵ月 | 87 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 |
<表の見方>
まず入院した月数を計算します(月未満の場合は30日の日割り計算。25.2÷30)
その後退院した月数を計算します(月未満の場合は30日の日割り計算。12.6÷30)
例えば、
1/1~1/31:入院
2/1~3/31:通院
した場合、
入院は「1ヵ月」のところ、通院は「2ヵ月」の重なり合ったところ、つまり50万4,000円が任意保険基準の示す入通院慰謝料となります。
(※1月あたりの通院日数が10日未満の場合は減額される可能性があります。)
最後に、最も高くなる弁護士基準をご紹介します。
弁護士基準は怪我の度合いによって2種類に分類されてあります。
「通常の怪我の場合」(万円)
入院→ 通院↓ | 0ヵ月 | 1ヵ月 | 2ヵ月 | 3ヵ月 | 4ヵ月 | 5ヵ月 | 6ヵ月 | 7ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0ヵ月 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | |
1ヵ月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 |
2ヵ月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 |
3ヵ月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 |
4ヵ月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 |
5ヵ月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 |
6ヵ月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 |
7ヵ月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 |
8ヵ月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 |
9ヵ月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 |
10ヵ月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 |
「比較的軽症(むち打ち症)で他覚症状がない場合」
入院→ 通院↓ | 0ヵ月 | 1ヵ月 | 2ヵ月 | 3ヵ月 | 4ヵ月 | 5ヵ月 | 6ヵ月 | 7ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0ヵ月 | 0 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 |
1ヵ月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 |
2ヵ月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 |
3ヵ月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 |
4ヵ月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 |
5ヵ月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 |
6ヵ月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 |
7ヵ月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 |
8ヵ月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 |
9ヵ月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 |
10ヵ月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 |
表の見方は、任意保険基準と同じです。
このページの上部に自動で慰謝料が計算できるツールをリンクしていますので、是非ご活用下さい。
交通事故に遭い被害者の方が亡くなられた場合も、その残された家族(相続人)は費用を請求することができます。
葬儀費など実費(60~150万円が原則)はもちろんのこと、逸失利益(生きていたならば得られたであろう金銭)や損害賠償も請求することができます。
後遺障害と同様、年収やライプニッツ係数を採用しますが、他に生活費控除率という数値も採用します。
<生活費控除率>
一家の大黒柱の場合 | 30~40% |
---|---|
上記以外の女性 | 30% |
上記以外の男性 | 50% |
では、年収350万の独身男性22歳(実家暮らし)が死亡事故にあった場合の逸失利益を計算してみましょう。
年収(350万)×生活費控除(1-0.5)×ライプニッツ係数(17.774)=3,110万4500円
となります。
死亡事故も、もちろん3つの基準があります。
【自賠責基準】
死亡者本人の慰謝料300万円に加え、請求者(父母、妻、子のみ)の人数により、1名の場合は550万円、2名の場合は650万円、3名以上の場合は750万円加算されます。
【任意保険基準(目安)】
一家の大黒柱の場合 | 1,400万円前後 |
---|---|
高齢者(65歳以上) | 1,000万円前後 |
18歳未満 | 1,200万円前後 |
上記以外 | 1,300万円前後 |
【弁護士基準】
一家の大黒柱の場合 | 2,800万円 |
---|---|
大黒柱の母親、配偶者の場合 | 2,400万円 |
それ以外 | 2,000~2200万円 |
上記で算出した金額の総合計から、過失割合を計算した金額がおおよその請求可能金額となります。
過失割合は、事故当時の双方の状況(信号無視など)に応じて求めていくことになります。
例)後遺障害なし、治療期間3ヵ月、通院日数30日
信号機のある交差点で直進車同士の事故(被害者が黄色信号、加害者が赤信号での通行)
※この場合の過失割合は被害者2:加害者8とされます。
積極損害(実費):12万円
休業損害:50万円
入院慰謝料:
自賠責基準……4,200×(30×2)
任意保険基準……85万6,000円
弁護士基準……162万円
請求可能金額:
自賠責基準……64万5,200円×0.8=51万6160円
任意保険基準……147万6,000円×0.8=118万800円
弁護士基準……224万円×0.8=179万2,000円
となります。
物損事故における示談金の内訳は、車両の修理費やレッカー車代などの実費のみや修理の為の休業損害のみで、慰謝料請求は原則できませんのでご注意下さい。
※被害者が怪我をしているのにもかかわらず、物損事故扱いとなっている場合は人身事故への切り替えが必要です。
今回紹介した、交通事故示談金の計算方法は下記のとおりとなっています。
人身事故における示談金の内訳
(積極損害(実費)+休業損害+入院慰謝料)÷過失割合
後遺障害が残った場合の示談金の内訳
(積極損害(実費)+休業損害+逸失利益+後遺障害慰謝料)÷過失割合
死亡事故の場合の示談金の内訳
(積極損害(実費)+逸失利益+死亡事故慰謝料)÷過失割合
物損事故の示談金の内訳
(積極損害(実費)+休業損害)÷過失割合
消極損害といわれ、計算が難しい休業損害や慰謝料については、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの基準があり、事故や被害者の状況によっては大きく差が発生します。
自動計算ツールを使ってみて、相手方の提示額に納得が行かない場合は、法律家に相談するのも方法の一つでしょう。