東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故に巻き込まれて負傷した被害者は、治療のための入通院にかかった費用などを損害として加害者に請求することができます。
もっとも、被害者が支出した金額の全てが費用として請求できるわけではありません。被害者の支出のうち相当と認められる範囲のみが、交通事故の治療関係費として請求の対象になります。
交通事故の治療関係費として一般的に認められない診療としては、健康保険の対象にならない自由診療が該当します。
自由診療の内訳として、必要滋養に丁寧な診療である濃厚診療、医学的に不必要な診療である過剰診療、一般的な水準と比較して著しく高額な診療である高額診療、などがあります。
上記に該当する診療については、医師による診療であっても全額が支払いの対象にならない場合があります。
鍼灸、柔道整復、マッサージ、温泉治療、治療器具などの医師以外の行為については、交通事故の被害者が自発的にそれを利用しただけでは支払い費用の対象になりません。
基本的には、医師が治療としての有効性を認め、かつ医師が通院や使用を指示した場合に、はじめて支払いの対象になります。
例外として、医師の具体的な支持や同意がなくても、負傷に対する治療効果が明確に認められるなどの特別の事情がある場合には、認められる可能性もあります。
また治療効果が認められた場合でも、費用の全部が損害として認められず、その一部のみが支払いの対象になることがあります。
医師以外の治療の費用が認めれる場合の具体例として、東京地裁が平成7年9月に下した判決が参考になります。これは交通事故の被害者がバレ・リュー症候群と診断された事案です。
バレ・リュー症候群とは、むちうち症によって自律神経が直接的または間接的に刺激を受け続けることで発症すると一般に考えられている症状で、症状を報告したフランス医学博士の名前が症状の由来になっています。
バレ・リュー症候群の主な症状としては、頭痛、めまい,耳鳴り、難聴、目の疲れ、かすみ、視力の低下、息苦しい、のどの違和感、声のかすれなどがあります。
事案においては、バレ・リュー症候群の治療のために被害者が受けたカイロプラックティックが必要な支出として認められるかが争われました。
治療の必要性について東京地裁は、医学的な見地からはバレ・リュー症候群の患者にはカイロプラックティックは有効ではなく、むしろ悪影響があると一般に把握されていることを認定しました。また、カイロプラックティックを受けたのは医師の指示ではなく、被害者が自発的に行ったことを認定しました。
一方で、カイロプラックティックには症状を軽快させる効果があったことも否定できない、と東京地裁は認定しています。その結果、被害者が受けた合計48回の通院のうち19回について、東京地裁は治療の必要性を認定しました。
交通事故の怪我が原因で病院に入院した際に、通常の病室とは異なる個室や特別室を利用した場合、いわゆる差額ベッド代として使用量が発生します。
入院の部屋代については一般的な病室にかかる費用が基準となるため、単に個室や特別室を使用した場合には差額ベッド代は認められません。
例外として、一般的な病室に空きがなく使用できなかった場合、受傷の状況から個室や特別室の使用が必要であった場合、などは必要な費用の支出として認められる可能性があります。
交通事故の治療を担当した医師、看護師、介護士などに対して、患者が謝礼を支払うことがあります。患者が支払った謝礼については、社会通念上相当と認められる範囲のものであれば、必要な支出として認められます。
「社会的通念上相当と認められる範囲」とは、一般的に社会に通用している常識に照らして考えた時に、それが常識の範囲に収まっている、という意味です。
社会通念上相当と認められるかの判断基準としては、入院期間や受傷の状況などが考慮されます。一般的には入院期間が長いほど、そして受傷の状況が重いほど、必要な支出として認められる可能性は高くなります。
注意点としては、支出した謝礼の全てが必要な支出として認められるとは限らないことです。相当と認められる範囲の金額については対象になりますが、それを超える金額の部分については患者の自発的な行為として支払いの対象外になります。
医療機関に入院すると、治療費以外にも日用品の購入などに雑多な支出が必要になりますが、これを入院雑費といいます。
入院雑費の種類には以下のものがあります。
入院雑費については、被害者が実際に支出した金額ではなく、1日あたりの費用が定額で定められているのが特徴です。そのため、支出の証明となる領収書等がなくても基本的に認められます。入院雑費として認められるのは1日あたり1100円~1500円程度です。
交通事故の怪我治療のために医療施設への入院や通院が必要になった場合、移動のための交通費が発生します。
被害者本人の交通費としては、電車やバスなどの公共交通機関を使用した場合は、原則として実費の全額が必要な支出として認められます。
タクシーを利用した場合は、負傷によって移動が著しく困難になるなど、公共交通機関ではなくタクシーを利用することがやむを得ないと認められる特別な事情がある場合には、必要な支出として認められる可能性があります。
自家用車を使用して入院や通院が必要になった場合は、入通院に要したガソリン代、高速道路料金、駐車場の料金などが支出として認められます。
見舞人が支出した交通費については原則として請求の対象になりませんが、付添看護が必要と認められた場合の交通費については、例外として請求の対象になる場合があります。
詳しく知りたい方は、「通院時交通費の請求ができる基準とは」を参照してください。
被害者の入通院にプロの専門家や家族が付き添いで看護をした場合に、その費用を請求できるかについてです。看護体制がきちんと整備された医療機関に入通院した場合は、入院付添費は原則として必要な支出としては認められません。
医師が入院付添の必要性を認めて指示した場合や、被害者の負傷の程度や年齢等の事情を考慮して入院付添の必要性が認められる場合にのみ、入院付添費を請求することができます。
プロの職業付添人を雇った場合は実費の全額が認められます。近親者が付き添った場合は、日額として4000円~7000円程度が入院付添費として認められます。
病院を退院した後に自宅で付き添い介護を行った場合でも、介護の必要が特に認められる状況であれば、付添費の請求が認められることもあります。
交通事故の被害者が支出した費用として加害者に請求できる金額は、相当と認められる範囲のものに限られます。
医師の診療であっても、医学的に必要のない診療や不相当に高額な自由診療については、相当とは認められない場合があります。
医師以外が施術を行う鍼灸や整体などについては、医師が治療の一環として指示した場合などには必要な支出として認められます。
交通事故の治療関係費として認められるケースと認められないケースをあらかじめ把握しておけば、万が一の事故の際に自分を助けることにつながります。