東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故により損害を受けた場合は、加害者側に賠償金の請求が可能です。
交通事故にあってから賠償金もらうまでの流れは、怪我の事故と死亡事故のどちらも基本的に同じで、以下の4つのステップになります。
賠償金をもらうまでの流れ
死亡事故の場合、それぞれのステップで事故の状況確認や請求後の交渉などさらに細かな手順が必要ですが、大まかな流れは上記のようになります。
死亡事故の賠償金請求では「死亡事故の賠償金を誰に請求するか」「死亡事故の賠償金の交渉が必要なときに誰と交渉するか」が問題です。
死亡事故の加害者が任意保険に加入していれば、加害者の任意保険会社に賠償金の請求を行い、加害者が任意保険に加入していなければ、賠償金の請求は加害者に直接行うことになります。
加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者と直接交渉することになりますが、その際には以下のような問題が考えられます。
・被害者側の精神的な負担が大きい
たとえ交渉相手が加害者側の保険会社でも、事故のダメージを受けた側である被害者が交渉することには精神的な負担が伴いますが、死亡事故の直接的な相手と交渉するわけですから、精神的な負担はなおさら重いことでしょう。
加害者側の僅かな言葉に心を傷つけられたり、落ち込んでしまったりすることがあるかもしれません。
・加害者が死亡事故の賠償金の支払いに応じない可能性がある
死亡事故の加害者は、原因が自分側にあるとわかっていても「もっと賠償金を安くして欲しい」と言ってきたり、「なぜ支払いに応じなければならないのだ」と賠償金の支払い自体を拒否することがあります。
また、「払うお金がないので払わない」というケースもあり、このような加害者からどうやって死亡事故の賠償金を回収するかが問題です。
死亡事故の賠償金は「死亡」という大きな損失を伴うため、非常に高額になる可能性があり、加害者の過失が大きい場合は賠償金が億を超えるケースもあります。
任意保険に加入していない加害者や支払を渋る加害者から、高額な死亡事故の賠償金を回収するためには、どのような方法で交渉すればいいのでしょうか。
死亡事故の賠償金を回収するための交渉方法は3つ考えられます。
賠償金を回収するための交渉方法
死亡事故の加害者が賠償金を払わないときの1つ目の交渉方法は、賠償金の一部を自賠責保険(自賠責)に請求する方法です。
自賠責保険は車やバイクを所有する人に加入が義務付けられている保険で、死亡事故の被害者などに最低限の補償を行うためのものです。
任意保険に加入していない加害者によって事故による損害を受けた場合、加害者側の資力や態度によっては最低限の補償すら受けられなくなるため、自賠責保険は強制加入となっています。
加害者が死亡事故の賠償金を支払わない場合でも、被害者側は直接自賠責保険に支払いの請求をすることが可能で、被害者が直接自賠責保険に請求することを「被害者請求」と言います。
被害者請求をすることで、賠償金の一部を自賠責保険から支払ってもらうことができ、被害者と自賠責保険の間の手続きになりますので、加害者が賠償金の支払いを渋っていても問題ありません。
死亡事故の場合、被害者請求の時効は「3年」となってるため、自賠責保険に請求する際は時効になる前に手続きをしましょう。
また、自賠責保険に請求できる金額には限りがあり、すべて補償してもらえるわけではありません。物的損害についても対象外になっているため、注意してください。
死亡事故の賠償金について、弁護士に加害者と交渉してもらう方法です。
被害者が死亡事故の加害者と直接交渉すると、「払えない」「もっと安くして欲しい」などといわれる可能性があり、「払えない」と言い続ければ賠償金についてしつこく交渉する気持ちが失せるだろうと、被害者を甘く見ていることもあります。
しかし、専門家である弁護士が交渉の場に出てくると、「払えない」と渋っていた加害者も交渉に応じる可能性があります。
また、死亡事故の賠償金は高額になることが多いため、加害者も弁護士を立てることが考えられます。
被害者側が弁護士を立てていれば、相手有利の状況を回避しつつ交渉できるはずです。
交渉しても加害者が支払わない場合や支払えない場合も、弁護士により適切な回収手段を講じてもらえるというメリットがあります。
死亡事故の場合、自賠責保険に請求できる賠償金の限度額は3,000万円となっています。
また、物的損害は自賠責保険の請求対象外となっているため、物損が大きかった場合も自賠責では補償が足りません。
自賠責で足りない分の賠償金については、死亡事故の加害者に分割払いの交渉をする方法があります。
高額な賠償金を一括請求すると、支払いの拒絶や踏み倒しにつながることが考えられるため、分割払いで少しずつ払ってもらえるように交渉すれば、加害者が支払いに応じる可能性があります。
ただし、分割払いには、加害者が途中で支払いをやめたり、逃げたりするリスクがあります。
また、口約束で死亡事故賠償金の分割払いを約束しても、「言っていない」などと約束を反故にされるリスクもあります。
そのため、死亡事故賠償金を分割払いしてもらう場合は、公正証書による示談書を作成するなどの対策を講じておきましょう。
賠償金を分割払いしている場合、加害者が途中で自己破産をするリスクもあります。
自己破産とは「借金を免責してもらう裁判所での手続き」です。
自己破産には「借金のすべてを免責してもらえる」という印象があるかもしれませんが、自己破産しても免責されない借金がいくつかあり、たとえば、養育費や税金などは自己破産しても免責されません。
交通事故の賠償金についても、破産法253条1項3号に該当すれば、自己破産しても免責されません。
破産法253条1項3号は「破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命や身体を害する不法行為についての賠償金」となっており、死亡事故の賠償金がこれに該当するかどうかが問題になります。
物損については、人の生命や体に対する不法行為ではないため免責の対象になると考えられ、自己破産すると賠償を受けられなくなります。
死亡事故は物損ではないため、故意または重大な過失に該当していれば、加害者が自己破産しても賠償金の請求が可能です。
重大な過失とはどのくらいのものなのかというと、無免許運転や飲酒運転、50キロ以上の制限速度オーバーなどが基準となり、これらは一般的に重過失だと解釈されます。
よくある脇見運転などは、重大な過失とまではいえないと考えられています。
たとえば、脇見事故をして人身事故を起こしてしまった場合は自己破産による免責の可能性がありますが、飲酒運転をして人身事故を起こした場合は免責されない可能性が高いということです。
死亡事故の賠償金の支払いが免責されるかは、重過失に該当するかなどをチェックした上で、ケースバイケースで判断が変わります。
人的損害であり、なおかつ無免許や飲酒運転による損害以外は賠償金の支払いを免責される可能性があるため、加害者の自己破産によって賠償金を踏み倒されるリスクがあるのです。
加害者に分割払いで死亡事故の賠償金を分割払いで払ってもらう場合は、加害者が払えない状態に陥って自己破産をしないよう、分割金額をよく検討する必要があります。
死亡事故の賠償金の支払い交渉を行っているにもかかわらず、加害者側が「払わない」「自分は悪くない」などと言って賠償金の支払いを拒絶している場合はどうすればいいのでしょう。
支払いを拒絶している加害者から無理に金銭を奪おうとすると、窃盗罪(刑法235条)に該当してしまいます。
死亡事故の被害者側が犯罪の加害者になってしまいますから、死亡事故の賠償金支払いを拒絶している加害者から無理に金銭を奪うことはできません。
ではどうすればいいのかというと、死亡事故の賠償金交渉で支払いがまとまらない場合は訴訟を起こすことになります。
訴訟は裁判所での手続きが必要で、訴状など必要なものを準備し、管轄の裁判所に提出します。
訴額や死亡事故の発生場所などによって管轄の裁判所が変わるため、注意してください。
訴訟には法的な専門知識が必要なため、弁護士に訴訟手続きも含め今後の賠償金回収について相談することをおすすめします。
訴訟によって判決が下ると死亡事故の賠償金問題が解決すると思うかもしれませんが、実は、判決だけでは死亡事故の賠償金を回収できません。
加害者が判決通りに賠償金を払ってくれればいいのですが、中には判決が出てもなお支払わない加害者がいます。
訴訟を担当した裁判所は、判決に沿った賠償金の回収まではしてくれませんので、判決に従わない加害者から死亡事故の賠償金を回収するためには、被害者側が自ら回収のために動かなければいけないのです。
死亡事故の賠償金を回収する方法としては、裁判所で手続きをする「強制執行」があります。
強制執行とは、死亡事故の加害者の財産を強制的におさえて賠償金を回収する方法で、対象となる財産は不動産や債権、動産などです。
例として、不動産に対して強制執行し、賠償金を回収する流れを見てみましょう。
賠償金を回収する流れ
以上が賠償金を回収する基本的な流れになります。
債務者(死亡事故の加害者)にどのような財産があるかわからない場合は、裁判所の財産開示手続などを利用して、加害者の財産状況を確認します。
死亡事故の賠償金を払わない加害者の場合、「判決後に強制執行されるだろう」と予想して、被害者側が強制執行の準備を進める間に財産隠しをする可能性があります。
死亡事故の加害者の財産隠しが不安な場合は、先に保全手続きによって加害者が財産を処分できないようにする方法もあります。
弁護士に相談して、必要な手続きを進めるといいでしょう。
死亡事故の慰謝料は、被害者の方の職業などの状況で異なりますが、1億円を超えるケースも珍しくありません。
慰謝料の算出には3つの基準「自賠責保険基準・任意保険基準・裁判基準」があり、どの基準で計算するかで大きくかわってきます。
このツールでは、入力していくと裁判基準で計算されますので、保険会社の提示額が適切かを確認することができます。
交通事故被害者の方は、是非ツールで計算してみてください。
死亡事故の賠償金は高額になりがちなため、任意保険などに加入していない加害者から「払えない」「払わない」などといわれることがあります。
加害者が死亡事故の賠償金を払わない場合は、分割払いの交渉や自賠責への請求などの対処法があり、どうしても加害者が払わない場合は訴訟という方法もあります。
死亡事故の賠償金は損害補償の大切なお金ですので、加害者が払ってくれない場合や回収が困難などの場合は、弁護士に相談して早めに対処しましょう。