東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
会社の経営に行き詰ってしまうと、どのようにして立て直そうかということで頭がいっぱいになると思います。
しかし、結果的に立て直すことができず、そのまま経営破たんに陥ることも少なくありません。
会社が経営破たんとなってしまうと、経営者は少なからず責任を取らなければなりませんが、その際に自殺をしてしまう人もいます。
自殺は、数ある選択肢の中でも最悪な方法となってしまいます。
ここでは、自殺をしてはいけない理由と、会社が経営難になったときの解決方法について解説していきます。
会社が経営破たんに陥った時には、会社を倒産させて破産手続きを行う、スポンサーを見つけて民事再生手続を行うなどの選択肢があります。
しかし、中には経営難を苦にして自殺してしまう人がいるのです。
毎年、警察庁から自殺の状況をまとめた統計資料が公表されています。
最新の状況をまとめた「平成30年中における自殺の状況」は、平成31(2019)年3月に公表されていますが、この統計によれば、平成30年中に日本国内で自殺した人の数は2万840人となっています。
このうち、自殺の原因がはっきりと分かった人の数は、1万5,551人とされています。
自殺の原因にはさまざまなものが考えられますが、経済・生活問題を理由に自殺したとされる人の数は3,432人となっています。
これは、健康問題を苦にして自殺した人(1万423人)の次に多く、自殺した人全体の約16.5%、原因が特定された人の中では約22.1%となっています。
また、自殺した人を性別ごとにその内訳をみると、男性が1万4,290人となっており、全体の約68.6%を占めています。
年代別では、多い順に50代が3,575人、40代が3,498人、60代が3,079人となっています。
40代から60代の合計では1万152人となっており、ほぼ半分を占めています。
こうしてみると、自殺する人は40代から60代の中高年の男性が多いことが分かります。
特にこの年代で経済・生活問題を理由に自殺した人の中には、経営していた会社が行き詰ったことを理由とするケースも相当数いると考えられます。
本来、どのような経済・生活問題を抱えていても、法的な手続きに則って破産手続きを行ったうえで、公的なセーフティーネットを利用することができるため、自殺して解決するものではありません。
自殺することは、どのような苦境にあっても決して勧められるものではありません。
そればかりか、自殺しても目の前にある問題には何の解決にもなりません。
自殺がさらなる不幸を招くということを知っておく必要があるのです。
会社の経営難を理由に自殺した場合、その後どのようなことが起こると予想されるのでしょうか。
ここでは、自殺した場合に残された人に起こると考えられる事態を考えてみます。
自殺をした際に、その人が個人的な債務を抱えていた場合には、その債務を相続人である配偶者や子供などの相続人が引き継ぐこととなります。
通常、相続が発生した場合には財産を引き継ぐことを想定するケースが多いと思いますが、債務がある場合にはその債務も相続人が引き継がなければなりません。
仮に債務の額が財産の額より多くて相続したくない場合には「相続放棄」を選択することも可能です。
しかし、相続放棄をすれば財産を相続することもできませんから、長年住み慣れた自宅を手放さなければならなくなってしまうことも考えられるのです。
自殺をした本人は苦難から逃れたつもりかもしれませんが、残された家族にとっては、亡くなった人が抱えていた問題を引き継いでいかなければならないため、大切な家族を失った悲しみに続いて大きな不幸の連鎖となってしまうのです。
また、経営難となっている会社を残したまま自殺してしまうと、その従業員も路頭に迷うこととなってしまいます。
その処理を誰が行うのか、取引先に対して誰が説明するのかなどさまざまな問題が発生し、家族だけでなく従業員もまた困難に陥るのです。
経営状態の悪い会社を残した状態でその経営者がいなくなってしまっては、その会社を立て直すことは不可能です。
それまでの経営者を突然失った会社は、その後の経営者も会社の方針も決まらず、取引先や融資先との関係が途絶えてしまう可能性があります。
その結果、残された家族や従業員などにその会社を倒産させる手続きだけを残してしまう結果になりかねません。
会社の経営がうまくいかなくなったことを理由に自殺してしまった人は、倒産は悪いことであり怖いことだという思い込みが強かったのかもしれません。
確かに、ドラマや映画の世界では、倒産したら債権者が会社や自宅に押しかけて、中を荒らし、金目の物を探して持って行ってしまう描写がよく見られます。
あるいは、家族にも危害が及ぶと脅されたりするかもしれません。
破産した人として戸籍や住民票に載ってしまうため、その後の就職が難しくなるばかりでなく、子供の就職や結婚にも支障が出るのではないかと考える人もいるでしょう。
しかし、実際には会社が倒産したからといって債権者が押しかけるようなことは起こりません。
倒産の手続きは法律に定められたものであるため、債権者といえども勝手に債務者である会社やその会社の経営者の家に土足で踏み込むようなことはできないように決められているからです。
また、戸籍や住民票に記載されるという事実もありません。
倒産や破産に関する悪いイメージが勝手にそのような作り話を生み出してしまったのです。
実際には、会社を倒産させるための手続きは粛々と進められていきます。
もちろん、倒産した場合には債権者にすべての債務を弁済できないため、迷惑をかけてしまうことは事実ですが、きちんと法定の手続きを行わなかった場合には、より大きな迷惑をかけてしまいます。
会社の経営に行き詰った場合には、怖がらずに倒産することを考えてみましょう。
いざ会社を倒産させようと決断しても、実際に会社の倒産を行ったことがある人はほとんどいないため、どのようにその手続きを進めればいいのかが分からないうえ、周りに聞く人もいないという状況だと思います。
そこで、倒産の手続きの流れについてその概要を説明します。
会社を倒産する手続きを行うにあたっては、まず弁護士に相談するところから始まります。
弁護士は、会社の代理人として倒産の手続きを実際に行うこととなる人です。
もし知り合いの弁護士がいればその人に聞いてみるといいでしょう。
あるいは、弁護士の人を紹介してくれるという人がいれば、そのような人に聞いてみてもいいでしょう。
いずれの場合も、会社の倒産に強い弁護士を紹介してもらうことができるはずです。
また、後で説明する相談窓口を利用する方法もあります。
その窓口で相談をした後、特定の弁護士に倒産を依頼するのです。
どうしたらいいか分からない場合には、まず相談窓口へ行くのがおすすめです。
破産手続を正式に弁護士に依頼すると、その弁護士は会社から依頼を受けたことを債権者や取引先に通知します。
この通知により、債権者や取引先から会社への連絡はすべて弁護士を通して行われることとなります。
また、債権者から会社や経営者に対して債権回収を行うこともできなくなります。
同時に、金融機関の預金口座が凍結されて、入出金ができなくなります。
その後、弁護士が会社の破産手続開始申立書を裁判所に提出します。
申し立てが受理されると、裁判所は破産管財人の選任を行い、弁護士に対して就任を打診することとなります。
裁判所は、破産申し立てに関する書類をチェックし、問題がなければ1週間ほどで破産手続開始決定をします。
このタイミングで、会社の代表者はその地位を失い、会社と利害関係のない弁護士が破産管財人に就任して、その後の会社のかじ取りを行います。
もっとも、この時点で会社は完全に事業を停止しているため、破産管財人の行う仕事は、会社が保有する資産を売却してお金に換えたり、会社が保有する契約関係を見直し整理したりして、会社が破産手続きをスムーズに終えることができるようにすることです。
債権者集会は、破産手続開始決定から3ヵ月ほど経過したところで行われます。
破産申し立てを行った会社の代表者とその依頼を受けた弁護士、破産管財人、債権者、そして裁判所の関係者が出席します。
債権者が来て、経営者の責任を追及するというイメージがあるかもしれませんが、実際には債権者が1人も出席しない債権者集会も珍しくありません。
また、債権者が来ても一切発言することもなく、ほとんどの場合、簡単な手続きで終了してしまいます。
破産管財人が会社の財産をすべて換価処分したら、その残ったお金で債務の支払いを行います。
この手続きもすべて破産管財人が行うため、会社の旧経営者として関わる必要はありません。
また、旧経営者自身が個人としても破産手続きを行っている場合、旧経営者に対して免責が決定されます。
これにより、会社に対する個人としての債務が決定します。
会社を倒産しようと考えていても、実際に何をしたらいいのか分からないうえ、誰に聞いたらいいのかも分からないという人がほとんどだと思います。
そんなときは、無料で相談できる窓口が設けられているので、まずは相談してみましょう。
相談窓口は無料ですが、いずれも専門家が対応してくれるため、不安を解消できるはずです。
また、相談のうえ、その後の手続きを依頼することもできるため、実際に倒産の手続きをしようとする際に改めて弁護士を探す手間を省くこともできます。
法テラスとは、全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現を目指す理念のもと、国により設置された機関です。
法的トラブルを解決するための制度や手続きを案内してもらえるほか、経済的な余裕がないことや紛争解決の見込があることなどの要件に合致すれば弁護士や司法書士に無料で相談をすることもできます。
多くの商工会議所や商工会では「経営安定特別相談」などの名称で、中小企業の倒産を未然に防ぐための専門のスタッフが相談を受ける体制を整えています。
弁護士や公認会計士、税理士、中小企業診断士などの専門家がスタッフとして相談に対応してくれます。
経営再建の見込みがある場合には、そのための方策を講じる一方、経営再建の見込みがない会社については円滑な会社整理を行うための相談を行うことができます。
地方裁判所ごとに設置されている弁護士会では、さまざまな法律問題に関する相談窓口を設けています。
会社の倒産や再生に関する問題についても、無料で相談できる場合があるため、弁護士に相談したいがどこに行ったらいいか分からないという場合、真っ先に利用することができます。
司法書士は弁護士よりもさらに身近な法律家として、法律問題の相談に乗ってもらうことができます。
司法書士会が定期的に開催する無料相談会では、会社の倒産や債務整理に関する相談もできるため、何をしたらいいか分からないという人にとっては、非常に身近な相談相手となっています。
自治体の窓口で、会社の倒産に関する無料相談をすることができる場合があります。
多くの場合は、地元の弁護士による相談会という形になっているため、スケジュールが合えば足を運んでみるといいでしょう。
会社の倒産は犯罪ではないため、その手続きを恐れたり、倒産することによるデメリットを必要以上に考えたりする必要はありません。
もちろん、できれば会社を倒産はさせたくないでしょうし、債権者などに迷惑を掛けたくないという思いもあることでしょう。
しかし、倒産という手続きをとらずに自殺してしまった場合には、残された人たちにとって、よりひどい苦難が待ち構えています。
法律の手続きとして会社の倒産を行うことが、債権者に対しても、家族や従業員に対しても最小限の被害に抑える方法なのです。
まずは、身近な相談窓口を利用して、会社の今後について相談してみましょう。