東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
倒産、その言葉にはマイナスのイメージが伴います。
多くの人の信用を失い、自身の財産を失い…。
果たして、他に何が残っているのでしょうか。
ここでは倒産という苦汁を舐めた経営者が再起するにあたって重要なものとは何なのか、検討していきます。
まず、倒産に至った経緯を思い起こしてみましょう。
倒産とは、ある意味リセットを指します。
ゲームでリセットしたと言えば、最初からやり直すということになるのでしょう。
倒産は今まで寝ても覚めても頭から離れることがなかった「債務」「支払」という言葉が消えてなくなることですから、その意味ではリセットということになります。
しかし自分の過去を消すことはできません。
どういう状況になってこういう心境になったか、そのときに自分はこう決断して倒産に至った、その原因を自分なりに分析してみるのです。
なぜこういうことをするのかというと、倒産に至った経験を無駄にして欲しくないからです。
倒産して再起を誓った、しかし時が経過して、気がつけば元の木阿弥、再び借金まみれになっていたという話はよくあることです。
2回目の倒産は法的にも中々できませんし、不幸にも2回倒産ということになれば、信用は0になり誰からも相手にされなくなりかねません。
同じ道をたどらないように過去の自分の何処に非があったのか、冷静に自分なりに分析して再出発して欲しいと思います。
ここで倒産して得るもの、失うものについて見ていきます。
冗談じゃない、倒産して色々失ったけど得るものなんてないよ、という声が聞こえて来そうですが、果たしてそうでしょうか。
確かに倒産して法的整理になると裁判所の監督下に入り、今まで獲得してきた財産を失ってしまいます。
財産的評価の高い土地や建物、骨董品や株式・金銭などは、手元に残すことが許されたもの以外は全て自分の元を離れていきます。
また倒産して法的整理するということは、多くの人に支払わなければならない債務の拘束から解放されることを意味しますが、それは多くの人の信用を失うことでもあります。
他方で得るものもあります。
それは何かというと経験です。
倒産するということは抱えている債務の責任を免除されて再起に向かうことです。
倒産までの道のりを思い出してみてください。
この支払が終わったから次の支払、それに向けての金策、場合によっては携帯が鳴りやまず心身ともに疲弊、と辛い日々ばかりだったかもしれません。
ここでの判断がまずかったからこうなった、あるいはここで決めるべきことをしなかったから辛い日常になったといったことが記憶の喚起と共に蘇ってくるでしょう。
倒産とは経営者であれば誰もが経験したくない出来事です。
ですが、その修羅場を既に当事者としてくぐり抜けてきたのであれば、得た経験は決して小さくないのではないでしょうか。
では、会社をたたむ、それもお金が払えないというような形で倒産をした人に、果たして再起は可能なのでしょうか?
先ほど倒産して失うものについて見てきました。
そのものの大きさは小さくはないと思います。
お金も信用もなければ、再起とは言ってもこの先お先真っ暗に思えるかもしれません。
倒産すると財産管理の能力に問題があると判断されて、破産という一事で色々な資格上の要件にも引っかかってきます。
そう考えると再起というのはただのきれい事なのでしょうか。
厳しい一面があることは否定できません。
ですが、倒産・破産という一事で人生そのものが奪われたわけではありません。
破産すると一時的には職業制限や居住制限が加わります。
しかし、それはあくまでも一時的なものであります。
復権すれば上記のような制限はなくなります。
加えて、経営者として得難い経験をしたのであります。
経営者として失格という評価を受けるかもしれませんが、それは今までの自分の成績であります。
これからの自身の作る道のりに反面教師になるところはあっても、その烙印通りの道のりしか歩けないわけではありません。
要は再起するか否かは自分次第であります。
ただ再起するにしても過去を単にリセットしただけでは足りないでしょう。
過去の自分の何処に非があったかのかを分析・反省してこそ、過去の経験を生かすことのできる芯の強い再起をすることができます。
十人十色。
人が再起を誓い、到達点を何処に持って行き何をもって成功と考えるのかは人それぞれです。
仮に一度は倒産したものの再び事業をすることで身を立てたいと考えたとしましょう。
よく経営に必要なものとして挙げられるのがヒト・もの・カネです。
この3要素をうまく扱うことで事業は成功の度合いが高くなります。
加えて近年の情報化社会では情報も大きな成功要因となってきます。
それでは、復活を誓った経営者には何があって何が足りないのでしょうか?
カネがないことは明白でしょう。
それでは他の要素はどうでしょうか。
まず情報は経営者として第一線で働いていたとすれば、その仕入はたやすいでしょう。
同じ業種で再起するのであれば、今まで培ってきた経験やノウハウ、業界の流れ等はそのまま使えますし、自ずと頭の中に入っていることでしょう。
次にヒトとものについては先の倒産要因にも深く絡んできます。
もし多くの人に迷惑をかけた形で倒産したのであれば、ヒトやものを揃えるのは難しいです。
他方で、迷惑をかける人を少なくするよう心がけて倒産した、きれいな倒産の場合は、場合によってはヒトやものが再び調達できるかもしれません。
先ほど再起をする、再び経営者として社会に参画するときに必要なものは何かについて述べてきました。
それはヒト・もの・カネ・情報に集約されることがご理解頂けたと思います。
では、その中でも最も重要な要素は一体何なのでしょうか?ここでは、その経営資源について述べていきます。
こういう話をするとカネだ、カネがないと何もできないのでは。
そう思うかもしれません。
確かにカネがないと何も調達できませんし、動くことすらままならないかもしれません。
ですが、倒産するよりもっともっと前のことを思い出してみましょう。
事業をしよう、自分の会社を立ち上げようと決意したときに、事業をカバーできるほどのお金はあったのでしょうか?中にはそういう人もいるかもしれませんが、大多数の方はカネなしの状態から出発したことでしょう。
そう、お金は重要な要素であることに変わりはありませんが、それが全てではないのです。
結局のところ、事業で最も大切なのはヒトです。
ヒトの協力なくしては何も始まらないし、成功もできないのです。
そしてこのヒトには喜怒哀楽という感情があります。
この怒に響いてしまったら協力は難しいどころか再起は破壊されることでしょう。
そうならないために、きれいな倒産をする必要があるのです。
今まで貯めてきた財産を手放すのは惜しい、だから至る所に財産を隠して関係者の多くを泣かせて事業を再出発させたとしましょう。
それで多くのヒトは賛同してくれるでしょうか。
「悪事千里を走る」という諺がありますが、悪評は良い評判よりも駆け抜けるのが早いです。
一時的には再起できても、長くは続かずいつか来た道をたどることになるでしょう。
これに対して、支払うものは支払って迷惑を最小限に抑えた倒産の場合は少なからずヒトが協力してくれるでしょう。
たとえ元のメンバーが協力してくれないとしても、違う所から協力者が現れることかと思います。
ここまで再起にあたり最も大切なものを見てきました。
ヒト次第で再起は成功にも失敗にもなります。
倒産という大きく不幸な事件を乗り越えて、再び社会に立ち向かうときに何が大切なのか、その一助となれば幸いです。