東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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会社の経営に行き詰まった場合に、会社の整理を行う際の選択肢の1つとして会社の破産手続き、いわゆる倒産をすることがあります。
倒産の手続きは、債務を抱えて再起も難しいと考えられる会社が、すべての財産を処分する代わりにその債務を帳消しにするものです。
しかし、倒産したからといってすべてが終わるわけではありません。
倒産しても、その後に再起を図ることは可能です。
倒産した後にすぐ新たなスタートを切ることができるよう、すべきことについてまとめました。
Contents
それまで経営していた会社が倒産してしまったが、もう一度再起をしたいと考えるのであれば、倒産にいたった経緯について分析をしなければなりません。
いくらいいアイデアを持っていたとしても、あるいは品質の良い製品を作っていたとしても、会社の運営がうまくいくかどうかは別の問題です。
もし、商品やアイデアに自信があったのに倒産してしまったとすれば、経営がうまくいかなかったのにはそれ以外の何らかの原因があったと考えられます。
例えば、設備投資を行って金融機関から借入をしたが、その後の売上が予想どおりに伸びず過剰な投資になってしまった場合もあれば、経営していた飲食店が順調に売上を伸ばしていたため2店舗目を出店したが、最初の店舗の味を守ることができず共倒れになってしまった場合もあるかもしれません。
まずは、経営が悪化した原因を分析しましょう。
そして、どこにうまくいかない原因があったのかを分析すると同時に、倒産に至るまでにどのような対策ができたのかを考えておくことも必要です。
設備投資を行うと同時に従業員の教育をどのように行えばよかったのか、新しい顧客を確保しつつ既存の顧客から受注をもらうための努力をしていたのかなど、過去の失敗を振り返り反省することで、次に同じ失敗をしないはずです。
倒産した原因の中には、自分の力では防ぐのが難しいケースもあります。
例えば、取引先が倒産したために資金繰りが悪化した場合や仕事量が激減してしまった場合、あるいは災害により会社の事業を継続することができなくなった場合などです。
ただし、このような外的要因によって倒産に至った場合でも、被害を受けたすべての会社が倒産しているわけではないことに着目しなければなりません。
連鎖倒産を防ぐために中小企業倒産防止共済制度に加入したり、特定の取引先だけに売り上げが集中しないようにしてリスクを分散したりすれば、倒産を防ぐことができたかもしれないのです。
何かが起こってからでなければ、このようなリスク管理をすべきだったと実感することはありませんから、その時に感じたことを振り返るのが大切です。
破産手続きをしている間は、裁判所での手続きや債権者への対応に追われて冷静に振り返る時間はほとんどないでしょうから、倒産の手続きがすべて終了してからでも遅くないでしょう。
会社の倒産を進めるうえで、債権者集会は避けては通れない重要な手続きです。
ほとんどの経営者は、債権者集会に出ることに大きなプレッシャーを感じ、大変なことが起こるのではないかと恐れていると思います。
しかし、実際の債権者集会はそのような怒りに満ちあふれた場所ではありません。
中小企業が倒産した場合、債権者集会は裁判所内の会議室のような一室で開催されるのが通常です。
破産した者(会社の場合は代表者)、その代理人弁護士、裁判官、破産管財人、債権者が出席します。
ただ、実際に債権者が債権者集会に現れることは非常に稀ですし、この場で厳しく叱責されたり罵声を浴びせられたりすることはないと考えていいでしょう。
また、裁判官や破産管財人から厳しく質問されることはまずありません。
債権者が出席すること自体がほとんどないため、実際に債権者集会に出席すると実に拍子抜けしたような気持ちになるかもしれません。
ただ、債権者が出席することが絶対にないわけではないため、債権者が来た時のためにある程度の準備をしておく必要はあるでしょう。
債権者集会に出席した債権者がいる場合には、むしろ運が良かったと考えてみてはいかがでしょうか。
なぜなら、債権者に対して公の場所で直接謝罪をする機会を得ることができたからです。
債権者集会に至るまでの手続きで、すでに債権者に対しては何らかの謝罪を行っているケースが多いとは思いますが、改めて正式に謝罪することで、倒産に関する手続きやその後の展開に少しでもプラスになることが期待できます。
会社の倒産によって、債権者をはじめ多くの人に迷惑をかけてしまったと負い目を感じる人も多いと思いますし、むしろそのように感じるのが普通かもしれません。
そうすると、倒産の手続きがすべて完結した後も、関係者にこちらから連絡を取るようなことはしないかもしれません。
しかし、倒産の手続きがすべて終了した段階で、改めて挨拶を行うべきです。
一番いいのはアポを取って直接会うことですが、遠方でどうしても会えない場合や会うための時間が取れなかった場合には挨拶状を送るようにするといいでしょう。
このタイミングで直接会って怒りをぶつけてくるような人はほとんどいません。
もちろん、会って謝罪したからといって許してもらえるわけではないでしょうが、倒産手続きが完了するまでの労をねぎらってくれるような人もいるくらいです。
それまでの関係者に挨拶をするのは、単に結果報告や謝罪をするためだけではありません。
倒産手続きが完了したことを報告しつつ、これまでのお礼を伝え、同時にこの先自身がどのように進んでいこうとしているのかを報告することに大きな意味があります。
他の会社に入社する場合にしろ、もう一度自分で会社を設立する場合にしろ、これまでに受けてきた多くの人からの恩を忘れないこと、また倒産によって得た貴重な経験を次に活かすことを表明し、可能であればこの先新たな関係を築いていくことができればと伝えておきましょう。
債権放棄した相手ともう一度取引をすることは難しいかもしれませんが、人とのつながりは決して無駄にはなりません。
もう一度起業しようと考えているのであれば、なおさらです。
また、倒産が完結してすべての債務返済が免除された後であっても、会社が個人や取引先の会社などから借りていたお金について返済する人もいます。
法的にはすでに債務はなくなっているため返済する義務はないのですが、個人的にお金を貸してくれた人に対してその恩に報いるという気持ちになってもおかしくはありません。
少しでも信用を取り戻したいという気持ちもあるでしょう。
返済する義務はありませんが、返済してはいけないわけでもないため、その相手と今後どのような関係性を作っていきたいのかを考えて行動すべきです。
倒産の手続きを終えて会社の財産はゼロとなり、個人保証をしていた経営者の場合には個人の財産を失っていることも考えられます。
会社の倒産と同時に個人としても破産しているのであれば、手元に残るのは多くても通常の生活に必要な家財道具や20万円未満の財産、現金99万円、預貯金20万円です。
会社を倒産させて、債権者などに迷惑をかけてしまった以上は仕方がありません。
しかし、財産がないからといって再起できないわけではありません。
もう一度起業するために最も必要なものは、事業を成功に導く熱意と、その熱意を裏打ちする知的財産なのです。
そのような知的財産についてもう一度じっくり考えて、再起するための事業計画を立てていきましょう。
財産がなくても素晴らしいアイデアがあり、そのアイデアに賛同してくれる人を見つければ、必ず支援してくれる人は現れます。
支援者といっても単に出資をしてくれる人だけでなく、口コミでその商品やお店も魅力を広めてくれる人もいれば、積極的に取引をして売り上げに貢献してくれる人もいるでしょう。
多くの支援者が新たな事業・会社を支えてくれるのです。
どのような中小企業であっても、最初から資金繰りに余裕があるということはありません。
それでも、多くの人の協力や理解のもと徐々に大きくなっていくのです。
また、資金調達の方法は銀行からの融資に限りません。
クラウドファンディングに代表されるような、これまでにない調達方法も今や当たり前になっています。
資金は少なくても、知的財産があればそこから事業を開始し拡大することが可能なのです。
ただし、知的財産がありアイデアがあれば、すべてうまくいくわけではないのは、すでに倒産を経験して分かっていると思います。
その点、倒産した経験があるからこそ、前回の反省を活かした事業展開を考えていくことができるはずです。
資金がないからとか若くないからという言い訳をせず、真摯に新たな事業に向き合うことが次への飛躍につながるのではないでしょうか。
会社を倒産させてしまったという事実は消えることはありません。
しかし、倒産は犯罪ではありませんから、そのことを特に負い目に感じる必要はありません。
また、経営していた会社が倒産したということはあまり知られたくないかもしれませんが、隠す必要もありません。
倒産させてしまったことやお金がないことは、新たな事業を始められないことの理由にはならないからです。
大事なのは、今どのような事業を行っているのかであり、会社の未来にどのようなビジョンを持っているかです。
ただし、会社を大きくし、大きな利益を出すことが成功ではありません。
会社を経営する人とその従業員、そして取引先の人が幸せと感じることのできる会社を作ることが大切なことなのです。
倒産した経験をプラスに変えて、前向きに進んでいきましょう。