東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
会社が債務超過や支払い不能になりかけている場合、在庫を処分したり、会社の資産を処分したりして現金化するなどの方法を取る場合があります。
ここでは、会社の資産の売却に焦点を当てて、詳しくご説明いたします。
会社が倒産の危機に直面する場合の多くは、資金繰りの悪化です。
借金が順調に返済できない、取引先の買掛金を回収できないなど、現金がうまく回っていない状態が続くことになります。
そこで、現金を回す方法、使える現金を作り出す方法が必要になってきます。
もちろん、金融機関などからお金を借りる方法が最も手っ取り早いのですが、結局借金ですから、いつかは返済しなければなりません。
また、会社の業績が悪化していれば、金融機関がすんなりとお金を貸してくれる可能性は低くなるはずです。
そこで、会社が持っているものを現金に換えるという方法を取れば、借金する必要はありませんし、無駄なものを処分することもできます。
このようにして、倒産、破産を考える前に、会社が持っているものを処分することで現金を作ることを検討するべきです。
会社では、決算の時に「貸借対照表」を作成しているはずです。
この「貸借対照表」には、年度末における会社の資産、負債がまとめられています。
この中の「資産の部」を確認してみましょう。
資産には、流動資産、固定資産、繰延資産の3つがあります。
それぞれを細かく見ていって、現金にできるものとできないものとを識別してみましょう。
そしてさらに、現金にできるもののうち、すぐに売っていいものと、売ってはいけないものに識別します。
図に示すように、「お金になる」と同時に「売っていい」ものが絞られてきます(図の右上の部分)。
漠然と会社にあるものを売っていいものか、そうでないかと考えるよりも、このように、機械的に判別していけば、おのずと見えてくるのです。
それでは、具体的にどのような資産を売却すればいいのでしょうか。
ここからは、あくまでも一般論ですから、会社の事情に合わせて参考にしてください。
まず売っていいものは、以下の資産です。
次に、お金にはなるけれど、売ってはいけないものは、以下の資産です。
以上の例からわかるように、今後の会社の事業に直接関係ない資産は、すぐに売却しても構いません。
会社の事業に直接関係なく、現金化しやすいものは、積極的に売却した方が良いのですが、注意すべき点があります。
まず、本当に会社の営業や生産に支障がないかを検討します。
もし少しでも、今後使用する可能性があれば、売却はとどまった方が良いでしょう。
特に、一度売却してしまうと再度購入することが難しい資産であれば、売却はやめた方が良いでしょう。
また、外部の人から見えるものについても、売却を慎重に検討すべきです。
会社内部にある資産で売却したことがすぐに外部に気づかれてしまうものを売ると、取引先の人が来社した際に物が無くなったことに気づき、「この会社は危ないのでは」と邪推されてしまう原因となります。
外部から見えるものとして、売掛債権もその一つです。
売掛債権を売却するということは、その債務がある取引先にすぐわかってしまうことになります。
そうなると、「なぜ売却するだろう」と不思議に思われ、経営状況を心配されるので、売掛債権を売却する際には、売掛の相手に事前にきちんと説明すべきです。
売掛債権の売却は、名称が「ファクタリングサービス」となって、大手銀行の子会社などが行っています。
また、建設業界では、国土交通省が「下請資金繰り支援事業」として、助成金を出す場合もあります。
最も大事な注意点としては、すぐに現金化できるが売ってはいけない資産をきちんと把握しておくことです。
仮に倒産して、破産手続きに着手し、破産管財人が選任されれば、会社の資産が現金化されます。
そして、債権者に分配されることになります。
先ほど提示した「お金にはなるけれど、売ってはいけないもの」は、まさに債権者に分配するものの原資になるのです。
会社の資産のうち、売却して良いもの、いけないものをご紹介しました。
一度売却してしまうと、もし必要な時に買い戻すことは難しいはずですから、売却前に十分検討する必要があります。