東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
会社が倒産し破産申し立てをする日に、会社の社長は従業員に対して経緯などを説明しなければなりません。
具体的にどうすれば良いのか、詳しくご説明いたします。
会社の倒産、つまり破産申し立てを行う日(ここでは、「Xデー」とします)までに、注意すべきことは、特に取引先、従業員に対して、絶対に情報が漏れないようにすることです。
会社が破産の申し立てをするためには、会社の役員会で承認してもらう必要があります。
会社の役員は破産の申し立てを知っていることになりますが、社長は役員に対して、くれぐれも口外しないように、念を押しておく必要があります。
これは、役員の家族もその対象となります。
もし役員が、「家族には言ってもいいだろう」と思って、破産申し立てをする旨を話した場合でも、そこで話がとどまるという保証ありません。
従って、社長は役員に対して、「家族であっても、決して口外してはいけない。どこから話が漏れるかわからないし、もしそうなれば大きな混乱を来すことになる」と釘を刺しておかなければなりません。
また、会社の経営悪化に対して、従業員は敏感に感じ取るはずです。
従業員の中には、「会社の経営は大丈夫ですか」、「倒産しませんよね」などの質問がくるかもしれません。
ここでも、決して従業員に破産申し立てについて、話をしてはいけません。
「誰にも言わないで」とお願いしても、一人に話すことで、全体に伝わることは時間の問題です。
従業員に内緒にする、ある意味で嘘をつくことは、心苦しいとは思いますが、破産手続きがスムーズに行くためには、致し方ないことです。
いよいよ、Xデーになり、社長にとっては、正念場の一日です。
まずやるべきことは、従業員を一堂に集め、社長が自ら説明を行うことです。
説明する内容は、倒産に至った経緯、本日破産手続きを行うこと、本日限りで会社を閉鎖すること、今後の従業員の処遇についてです。
まず、倒産に至った経緯ですが、業績が悪化した経緯を簡単に説明し、お詫びの言葉を添えた方が良いでしょう。
そして、本日破産手続きを行うことについては、役員全員の総意であること、細かい手続きは弁護士に一任していることを説明します。
その結果、本日限りで会社を閉じること、そのため会社に置いている私物を全て持ち帰って欲しい旨を伝えます。
そして、従業員には、本日給与を支給すること、今後失業保険をもらう際に必要となる「離職票」を渡すことなどを伝えます。
また、契約途中で従業員を解雇することになりますから、解雇予告手当金の支給、該当者には、退職金を支給する旨も伝えます。
ただ、給与、解雇予告手当、退職金については、資金繰りの関係で、準備できない会社があるかもしれません。
その際には、準備できなかったことについて、誠意をもって説明する必要があります。
以上、Xデーに社長が従業員に説明すべきことを列記しましたが、すべてを社長自らが説明する必要はありません。
従業員にとっては、薄々「この会社は危ないのでは」と思っていても、実際に社長の口から「倒産」と言う言葉が出るのは、かなりショックのはずです。
まず、従業員が思うことは、「明日からどうなるのか」「次の仕事はすぐに見つかるのか」「給料や退職金はちゃんと出るのか」などの不安です。
このような金銭的、法律的な事柄については、担当の弁護士がきちんと説明した方が良いと思います。
特に、給与、解雇予告手当、退職金が出せない場合、社長が説明しても、従業員は感情的になり、収拾がつかないことが予想されます。
このような話は、弁護士が専門的な立場から、従業員に対して説明した方が、収まりやすいはずです。
またその際にも、弁護士の口から、社長の資産も抵当に入っていること、個人資産もなくなっていること、場合によっては個人破産をする可能性があることなどを説明してもらったほうが良いでしょう。
このように、従業員に対して、社長は最低限の説明を行い、詳しい経緯、金銭的、法律的な事柄については、弁護士がきちんと説明すると言った「役割分担」を明確にしておきます。
そのためには、事前に綿密な打ち合わせを行っておく必要があります。
最もやってはいけないことは、従業員の感情的な態度に応戦する形で、感情的になることです。
倒産の原因は、会社や社長だけが原因ではないかもしれませんが、変に言い訳したり、逆に開き直るような態度を取ったりすれば、従業員の感情を逆なですることにもなりかねません。
破産手続きを行う日、Xデーは、社長にとって痛恨な一日になることは、間違いありません。
しかし、社長以上に、職を当日限りで失う従業員、その家族にとっても、辛い一日になるのです。
会社の最高責任者として、最後まで従業員には、誠意をもって対応するべきです。