東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
Contents
保証人 | 連帯保証人 | |
---|---|---|
返済金額 | 保証人の人数で割った金額 | 保証人の人数に関係なく債務全額 |
返済請求に対する対応 | 請求に対して「まずは債務者に請求して欲しい」と拒否できる | 請求に対して拒否する権利がない |
差押え | 債務者に支払い能力があれば差押えを防げる | 債務者に支払い能力がある場合でも、差押えられる可能性がある |
お金を貸す側の債権者は、お金を返してもらえないときに備えて担保を求めてきます。
人を担保にするのが保証人と連帯保証人で、どちらもお金を借りた債務者が返さないときに返済義務が発生します。
しかし、保証人と連帯保証人では、責任の重さが違うので注意が必要です。
返済金額について、保証人は複数人いる場合、その人数に応じて払う金額が決まります。
例えばA、B、C、Dの4人の保証人がいる場合、債務が100万円なら各25万円ずつ支払う義務が発生します。
差し押さえについても、債務金額を保証人の人数で割った金額だけ差し押さえられます。
一方、連帯保証人の場合、返済金額は人数に関係なく全額債権者に支払う必要があります。
つまり4人の連帯保証人がいて、債務が100万円ならば全員100万円支払う必要があるのです。
また、保証人に返済請求が来た場合、もし債務者に金銭的余裕があれば、保証人は債務者に返済請求するよう申立てることができます。
しかし、連帯保証の場合は債務者が払うかどうかに関係なく、債権者から直接請求を受ける立場にあります。
差し押さえについては、連帯保証人の場合は複数人いても均等に割るのではなく、差押えできる財産がある人から差し押さえを受けることとなります。
契約で求められる保証人のほとんどは連帯保証です。
法人の債務を個人保証している代表者の場合、代表者は法人が払えるかどうかに関係なく請求を受ける立場にあり、債務全額を支払う義務があります。
債務整理を行うと、債務者の返済義務の一部または全部が免除されます。
ただし、債務者から返済されなかった分は連帯保証人が返済義務を負うこととなる可能性があります。
債務整理を行った場合、連帯保証人にはどのような影響があるかご紹介します。
任意整理を行うと、取引を開始した時にさかのぼって金利を引き下げて再計算するとともに、債務の減額を行い、その後3年程度で分割返済していきます。
任意整理を行うかどうかの判断は、債務者自身で行えます。
そのため、連帯保証人がついている債務について任意整理を行わないようにすれば、連帯保証人への影響は避けられます。
自己破産や個人再生を行うと、裁判所での手続きにより債務者の債務が免責、あるいは減額されます。
ただし、債務者としての返済義務は大きく減額できる一方で、連帯保証人としての債務はそのまま残ります。
そのため、債務者が自己破産や個人再生を行っても、連帯保証人は債務を返済しなければなりません。
この場合、連帯保証人には原則、分割返済ではなく一括返済が求められます。
交渉次第で分割返済が認められる場合もありますが、返済ができなければ連帯保証人も自己破産や個人再生をする必要があります。
基本的には、法人破産と経営者個人は別のものとして扱われます。
経営者Aさんが自分の会社を破産させたとしても、会社の破産とAさん個人は一切関係はありません。
そのため、法人破産をしても、経営者は銀行で借金する必要はないのです。
通常は法人破産しても経営者に影響はありません。
しかし経営者が会社の連帯保証人になっていると、経営者に返済義務が発生します。
実際は法人の債務を法人の経営者が個人保証しているのが通常です。
もし、が破産して経営者も自分の財産で支払いができず支払不能の状態に陥った場合は、連帯保証人である経営者も破産手続をすることになります。
法人が破産して経営者も破産するケースが多いのは、このように個人保証しているケースが多いからです。
手続きとしては、法人と経営者の破産申立を一緒に行います。
そうすると、破産手続開始決定を経て破産管財人が選任され、法人・経営者に同じ破産管財人が選任されることが多く、法人と経営者の破産手続きは同時に進められます。
また、破産管財人に予納するお金も1件として処理されます。
債務整理の方法は、3種類あります。
個人破産 | ・裁判所を通じて行う破産の手続き ・破産手続きが完了すると債権が消滅する ・自由財産の保持が認められている |
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個人再生 | ・裁判所に依頼して、借金を減らす方法 ・減額された借金を分割で数年間かけて返済 ・一定以上の資産は保持できる |
任意整理 | ・裁判所を通さず、債権者と債務者の間で交渉 ・減額や利息分をカットした負債を数年間で返済 ・すべての資産を手放さなくてよい ・法的な手続きを取らないので証拠が残らない |
代表者が会社の連帯保証人になっている場合は、個人で会社の債権を支払えないと、個人破産することになるでしょう。
債務整理については、以下の記事で詳しく解説しているので、ご覧ください。
法人破産と個人破産では、税金の扱いが異なります。
ここからは、法人破産と個人破産では税金の取り扱いがどう違うのかを説明します。
まず会社の税金は、法人が破産すれば消滅します。
なぜなら、税金は法人に対して発生しているため、破産で法人が消滅すれば支払う義務がなくなるからです。
もし会社の税金の支払いで悩んでいるなら、破産して支払い義務をなくすという方法もあります。
法人破産すれば会社の税金は無くなりますが、個人破産の場合は税金が消滅しません。
つまり、個人破産しても滞納している税金は支払う必要があります。
一般的に、破産手続きが終われば債権はすべて消滅しますが、税金は特例的に消滅せず、支払い義務が継続される仕組みになっています。
もし「個人破産を検討しているけど、税金は払えない」という場合は、税務署に相談してみましょう。
税務署は、税金を支払う意思のある人に対しては手厚く対応してくれるため、分割払いや減額の手続きができることがあります。
もし会社が破産して、債務整理を行い、経営者自身も債務整理をすることになると、どのような影響がでるのでしょうか。
経営者が債務整理を行ったら、家族の資産はどうなるのでしょうか?
基本的には、家族の財産には影響しません。
たとえば、夫が破産しても妻の資産を差し押さえられることはありません。
ただし、妻も会社の保証人になっている場合は資産を差し押さえられてしまいます。
判断ポイントは「会社の保証人になっているかどうか」で、「経営者の配偶者だから」という理由で資産を取られることはありません。
破産というとよくないイメージがあるかもしれませんが、法的な罰則はありません。
もちろん周りからの信用を失ったり、新しく借入するのが難しくなる可能性はありますが、破産して会社がなくなったとしても、新しく会社を立ち上げることはできます。
また、個人に対しても破産で罰則はないので、安心してください。
保証人としての責任の重さが浮かび上がってきますが、「根」という言葉がついた「根保証」になると、通常の保証と違い極度額の範囲で金額が変動しますので、さらに責任が重くなります。
保証人になることにはほとんどメリットがないにもかかわらず保証人になるのは、身内や仲の良い友人からの依頼を断りきれないという事情が考えられます。
保証人になるかどうかを慎重に判断できるように、2020年の民法(債権法)の改正点は以下のとおりです。
1つ目の改正点にある「根保証契約」とは、不特定の債務を保証する契約のことです。
将来発生する債務についても保証することとなるため、債権者にとってはメリットが大きく、保証人にとっては負担が大きな契約となります。
そこで、保証を行う上限金額である極度額を定めなければ、根保証契約自体が無効になることとされました。
2つ目の改正点は、法定利率の引き下げです。
金融機関の金利が超低金利となっている中、法律で商事法定利率は以前からずっと6%と定められていましたが、これを3%に引き下げます。
なお、今後は3年ごとに法定利率を見直すこととされたため、2023年には新たな法定利率が決定されることとなります。
3つ目は、消滅時効期間に関するものです。
一定の期間が経過してしまうと、請求権が消滅してしまう時効があることは、多くの人が知っていると思います。
この時効は、これまで職業ごとに細かく分類して定められていましたが、今回の改正によって権利行使できることを知った時から5年、権利行使できる時から10年という2つの基準で、時効の判定を行うこととされました。
4つ目は生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の延長についてです。
交通事故や医療事故などによって生命や身体に被害を受けた場合は、損害賠償請求権の時効成立までの期間が従来の3年から5年に延長されました。
法人破産と経営者の関係や保証人の責任の範囲などについて解説してきました。
通常は、法人破産と経営者個人は関係ないため、法人破産で経営者の個人資産が差し押さえられることはありません。
しかし、連帯保証人になっていると返済義務が発生し、支払えない場合は経営者も破産手続きをすることになります。
また、親族や友人等の保証人になったことによる二次破産を減らすために、2020年施行の債権法で保証人の項目が改正されましたが、保証人の責任についてはそれほど緩和されていません。
法人の代表者となると個人保証を求められるケースが多いですが、保証人になることの重さはしっかり認識しておく必要があります。
また破産は法的な手続きなので、裁判所に行ったり債権者集会を開いたりする必要があります。
もし破産手続きについて法的な知識がない場合は、法律のプロである弁護士へ相談してアドバイスをもらうのがおすすめです。
初回の相談は無料で受けてくれる弁護士事務所も多いので、気軽に相談してみましょう。