東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
資金繰りに困っているときに使える方法の1つが「売掛金の早期回収」です。
会社の事業の中で発生した売掛金(債権)を早めに取引相手(債務者)から回収し、資金難の助けとする方法になります。
売掛金は大きな額であることが少なくありません。
そのため、資金繰りに苦しんでいるときに、天の助け的な存在になる可能性があるのです。
ただ、売掛金を早めに回収する方法には、使用上の注意点があります。
経営の再起をはかる場合、注意点に気をつけなければ、別のトラブルを呼び込む可能性も考えられるのです。
売掛金を早めに回収する方法と、回収時の注意点について解説します。
Contents
売掛金は主に取引において発生する債権です。
たとえば、取引先の会社にAという商品を納品したとします。
このAという商品の代金を月末頃に払ってもらう約束を取引先と交わしていました。
これが売掛金という債権の代表例です。
売掛金の多くは「〇月〇日」「月末」「15日」などのかたちで、支払ってもらう日(回収日)を決めていることが多いのではないでしょうか。
売掛金は会社と会社のやり取りの中で主に生じるためです。
払う側の会社(例ではAの納品を受けた会社)も、別の取引先から売掛金を回収し、回収した売掛金でA納品ぶんの売掛金を払うという循環ができている可能性が高いからになります。
ほかには、売掛金の額が大きく、会社の経理上の都合で支払いまである程度の時間だというケースも少なくありません。
頻繁に取引している中小企業間やつき合いの長い中小企業間では、支払期日をなあなあ主義的に決めていることもあります。
「大体このくらいで支払うよ」という慣習や経験が根づいているのです。
売掛金を早めに回収する方法は、支払先の理解を得て、売掛金を期日や大体の支払日より「早く」支払ってもらうことで、資金繰りの苦しさを改善する方法になります。
例で解説したA納品先の会社が「大体1カ月くらいで払う」と言っていた場合、交渉によってそれより早く払ってくれるように促し、資金を回収するのです。
売掛金の早めの回収は、資金状況の改善にとって有効な策です。
ただし、使い方に気をつけなければ、トラブルのもとになったり、友好関係に亀裂を入れてしまったりする可能性があるのです。
売掛金の交渉決裂となっては、資金繰りが改善できても事業の将来を考えればマイナスになる可能性もあります。
そもそも、「取引先に売掛金の早期回収の交渉をしていいものか」と悩む経営者も少なくないことでしょう。
交渉の基準や決断については、どのように判断すべきなのでしょうか。
売掛金を早めに回収するときに気をつけたいのは、次の4つの注意点です。
多くの経営者は、「売掛金を早く回収できれば有り難い。
しかし、取引先に売掛金を早めに払ってくれとお願いしていいものか」という点で迷うかもしれません。
早めに回収する方法にメリットを感じていても、取引先との関係を考えて一歩を踏み出すことができないのです。
取引先との関係には「永遠」や「絶対」はありません。
取引先も資金繰りに困って売掛金の早期回収を交渉してくる可能性もありますし、資金繰りに困って倒産する可能性もあります。
現在は商品の取引関係が生じていても、ほかに良い会社が見つかれば乗り換える可能性もあるのです。
そもそも、自分の会社が倒産すれば、取引関係すら消滅してしまうことでしょう。
資金繰りに困ると、事業を回すことにも困ります。
結果、取引関係にある相手の会社も困ることになるのです。
取引関係に永遠や絶対はないからこそ、事業を継続するための決断をすることが必要になります。
まずは、事情に理解を示してくれそうな取引先や、期日より早めにリアクションしてくれそうな取引先に交渉してみてはいかがでしょう。
売掛金を早めに回収する場合は、相手との交渉が不可欠になります。
交渉のさいは、こちら側の事情のみを押しつけないことが重要です。
なぜなら、相手にも経営と事情があるからです。
たとえば、相手の会社は別会社からの売掛金が入ってから売掛金の支払いをするつもりだったとします。
それなのに「事情があるから」と一方的に言い募っては、相手も困ってしまうことでしょう。
交渉のときの態度や言葉によっては、相手に不快感を抱かせるかもしれません。
一方的に事情を押しつけては、売掛金を早く支払って状況改善に協力しようという気持ちすら失せてしまうかもしれません。
場合によっては「今後の取引関係を見直す」というマイナスの結果や、トラブルを呼び込むことすらあるのです。
事情を話す場合は、相手の事情にも配慮した交渉を心がけることが重要になります。
中小企業にとって資金繰りの問題は「明日は我が身」の問題です。
事情を話せば理解を示してくれる取引先も少なくないことでしょう。
ただ、理解を示してくれることと、売掛金を早めに払ってくれるかどうかは別物です。
理解を示したとしても「自分の会社があるから、難しい」という反応があることも少なくありません。
感情だけで自社にマイナスになりそうなことはできないからです。
このようなケースでは、取引先のメリットになることは何かを分析することが大切になります。
自社にマイナスになることはできませんが、交渉に応じることが自社のメリットになるとすれば話は別です。
応じてくれる可能性が高くなると考えられます。
下請法とは、中小企業を守るために作られた法律です。
大きな会社と取引するときに、中小企業は不利な立場に立たされがちです。
また、立場が弱いことを利用され、不平等な要求を呑まされる可能性もあります。
どうしても中小企業の立場が弱いため、下請法によって大きな会社から中小企業を守っているのです。
たとえば、大きな会社から「支払いは半年後でお願いしたい」と言われたとします。
半年後の支払いでは、会社の資金繰りに影響が出てしまう可能性があるため、もっと早く払って欲しいと思っていました。
しかし、相手は大きな会社。
「これからも取引して欲しいのではないか」と圧力をかけられてしまいました。
中小企業の場合、大きな会社に対して「もっと早期に払ってください」という要求を突きつけることは、容易ではありません。
下請法は大きな会社からの無理な要求や圧力から中小企業を守るためにあるのです。
無理な要求や圧力によって売掛金の回収が進まない場合は、公正取引委員会や中小企業庁に相談することもできます。
中小企業庁は各都道府県に「下請けかけこみ寺事業」の窓口を設置しているので、相談してみてはいかがでしょう。
公正取引委員会や中小企業に相談した場合は、取引先の大きな会社の目が怖いと感じるかもしれません。
相談などに対する報復措置は禁止されています。
会社間の取引や事業資金、債権回収などに詳しい弁護士や税理士などに相談するのも方法の1つです。
資金繰りに苦心している場合は、売掛金を早めに回収することも改善のための良い方法です。
ただし、売掛金の早期回収のためには交渉が必要であり、注意点に気をつけなければ取引先との関係悪化などが懸念されます。
交渉や注意点に不安がある場合は、公的な窓口や専門家に相談し、売掛金の回収について対策してみましょう。