東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
再起できる倒産の方法として重要なことのひとつは、「最大限の返済を済ませる」ことです。
具体的には、本当にギリギリのところまで負債を膨らませないことと、資産を最大限現金化することが必要です。
こちらでは資産を最大限現金化するために、会社と社長個人の資産価値を把握することの重要性についてお伝えしていきます。
Contents
会社の資産を現金化すると大体どのくらいになるのか、考えたことはありますか?
会社の資産の現実的な価値を正確に把握しておくことが、万が一経営が行き詰ったときでも再起できる大きな要因となります。
会社の資産価値の正確な把握が、引き際の把握に直結するからです。
「いざとなったら土地を売れば何とかなる」「会社の預金もあるからこれくらいは借入をしても問題ないだろう」そう思っていたために足元をすくわれる経営者は少なくありません。
帳簿上の数字を見ているだけでは分からないのが、本当の資産の価値というものです。
資産価値は決算書を見れば分かるというのは誤解です。
決算書は、会計上税務上必要な情報を記載する書類であって、会社の経済状況の実態をそのまま反映しているわけではありません。
例えば、貸借対照表には資産の部という項目があります。
ここには価値のある資産が計上されていますが、その数字はあくまで決められたルールに則って数値化されたものです。
そこに計上されている売掛金は本当に全額回収できる保証があるのでしょうか。
取引先の経営状況によっては、今後0になってしまうかもしれません。
土地や建物といった不動産は、本当に計上されているだけの売値で買い手がつくのでしょうか。
相場より高いのであれば売却は難しいでしょうし、もし担保がついていればその市場価値は大きく下がります。
また、無形固定資産や繰延資産に計上されている資産の中に、実際に現金化できそうなもの、手元に戻ってきそうなものはあるでしょうか。
こうして「実際にどのくらいの額で現金化できるか」という視点でひとつひとつの資産を把握することが重要です。
会社の資産の把握と同じく、社長個人の資産の把握も忘れてはいけません。
そもそもどこからどこまでが会社の資産なのか、その認識が社長にも曖昧な場合もあります。
経営がうまくいっているうちはさほど問題にならないかもしれませんが、いざ倒産となったとき、その資産は社長の個人資産として手元に残しておくものなのか、会社の資産として売却の対象とするものなのかは大きな問題になります。
中小企業の場合、会社が金融機関から借り入れをする際には、社長が連帯保証人となるケースが多いと思います。
連帯保証人になると、会社が借り入れた負債であっても、連帯保証人への請求が可能になります。
つまり、会社が経営に行き詰まり資金繰りが苦しくなると、社長個人による返済が求められるのです。
そのため、社長個人の資産の把握も会社の資産の把握と同じくらい重要になるのです。
ですが、個人であれば貸借対照表すらもないため、漠然としか把握していないことがほとんどだと思います。
個人の資産の把握で厄介なのが、社長の資産なのか家族の資産なのかが曖昧になっているものが多いことです。
特に相続財産のうち社長が他の相続人と共に受け継いだ資産などがあれば、後々会社の返済に充てようとして周りの大反対に遭い大きな親族トラブルに発展…なんてことにもなりかねません。
親族も不幸にするばかりか、その資産をあてにしていた会社にとっても悲劇です。
それぞれの資産がいくらの現金になるかの把握も非常に大事ですが、まずはどの資産が社長個人のものになるのかの線引きを周囲と一緒に行うことから始めてみてください。
そして、線引きができたら目録を作成しておくことをおすすめします。
ここまで読んできた方であれば、次に気になるのは資産価値を把握するための具体的な方法かと思います。
とはいっても、大々的に業者を呼んで見積などを始めたら、まだ倒産が決まっていないうちから変な噂が立ち周囲を不安にさせかねません。
そんなことになったら経営に悪影響が出てしまいます。
周囲に気付かれずに資産価値を計算する方法をいくつかご紹介します。
不動産は一点ものですので、売主と買主の合意によって価格が決まります。
つまり、正確な価格を事前に知ることはできません。
そこで参考として使用するのが「実勢価格」です。
実勢価格とは、条件の似た土地で行われた複数の取引事例から、平均的な売買価格を算出した、いわば売値の相場です。
あくまで相場なので、その価格で実際に売却できるわけではありませんが、参考値としては適正でしょう。
ちなみに、実勢価格は過去の複数の取引事例を参考にして算出するため、過去の取引事例が少ない物件は正確性に欠けてしまいます。
こうした土地に関しては、近隣地の査定価格や売り出し価格も参考にしましょう。
在庫を持つ会社であれば、在庫処分の専門業者を活用しましょう。
専門業者なので取り扱いの品目が多く、ネットだけで簡略的に見積もりを算出してもらうことができます。
ただし、専門業者であるがゆえに、実際に在庫に高値を付けてもらうことはあまり期待できません。
専門業者の利用はあくまで資産価値の算出のためだけと割り切って、時間的に余裕があるうちに見積よりも高額で売却できそうな先を探しておくことが不可欠です。
「今すぐ現金にするわけじゃないし、いざというときに査定すればいいだろう」という考えをもしお持ちだったとしたら、それは甘い考えです。
いざというときが来てから相場を調べて買い手を探しても、もっともよい買い手を探す余裕が会社にはありません。
倒産の予兆を察知した相手に買いたたかれてしまうのが通常です。
また、会社が経営の危機に陥るときは、大抵の場合社会全体の景気も悪化しています。
資産価値は高くても、それに見合うだけの出費ができる買い手が見つからないことも充分にあり得ます。
倒産準備として資産を売却するのであれば、少しでも高値で買ってもらう必要があります。
相場を知っておくことはもちろん、すぐに現金化できそうなものと、そうでないものをより分けておきましょう。
何を、どのタイミングで、どんな順番で売っていくのがよいのか、また誰に売ればよいのかまで事前に考えておく必要があるのです。
きれいな倒産のために欠かせない、会社の資産の現実的な価値の把握。
手間が掛かる作業なのでつい避けてしまいがちですが、これができているかどうかで経営の引き際が見えるようになります。
また、いざというときになってから慌てて売却をするのでは、せっかくの資産も最大限に現金化できず、大変悔やまれることになります。
社長としての責任感は、会社と社長個人の資産価値をどれだけ現実的に把握できているかに表れているのかもしれません。