東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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企業を経営していれば、資金繰りのために借入が必要なことは度々起こります。
しかし借入は事業を回していく上で重要な決断であるため、「どこから」「何のために」借りるのかが非常に重要です。
特に「どこから」借りるかは、企業の行く末に直結するといっても過言ではありません。
こちらでは銀行以外からの借入について、その恐ろしさと注意点をまとめています。
Contents
企業が借入で資金を調達する場合には、銀行あるいは政府系の金融機関を借入先の第一候補にするのが一般的です。
金利が低いからです。
ただし、銀行から借入をするには企業としての信用や返済能力を証明する必要があり、その基準は決して低くありません。
また、そういった信用や返済能力を確かめるため、審査の過程が非常に綿密です。
そのため、銀行からの借入をする際は時間も労力も掛かってしまうのです。
つまり、銀行以外からの借入を検討する理由としては銀行からの借入が行えない場合や、借入に時間や労力を掛けたくない場合が考えられます。
借入の目的は様々あるかと思いますが、最も注意しておく必要があるのは「銀行への返済資金のための借入」です。
中小企業の資金調達方法として真っ先に検討されるのは、一般的に政府系金融機関か銀行からの借入です。
その理由は、最も金利が低く、社会的にある程度の信頼がおける貸し手だからです。
この政府系金融機関や銀行による融資を受けるための審査はとても厳しくなっています。
数多くの書類の提出を求められますし、経営者との面談も度々設定されます。
そういった慎重な審査の結果、企業にとって無理のない融資額が設定されるのです。
つまり、そうして設定した月々の返済資金が用意できなくなる状態は、企業にとってとても危険な状態なのです。
ところが、銀行への返済が滞ると今後の融資可否にも影響が出て、取引先からの信用問題にも関係するため、経営者は何とか目先の返済を遂行しようとしてしまいます。
姿勢としては正しいのですが、ここでつい「借りやすい借入」手を出してしまうのは思いとどまってほしいのです。
銀行への返済ができないような企業にあっさりと融資してくれる先は、大抵の場合利息が非常に高いと思います(個人的な関係によって貸してくれる場合は別かもしれませんが…)。
本当に一時的な問題で、少しの期間が経てば必ず借入額と利息が返済できるという保障がある場合を除き、銀行への返済もままならない状態でさらに高利な借入を行うのは倒産の道をまっしぐらに進んでいるようなものです。
しかもその倒産は、悲惨なものになる可能性が高いです。
その理由について、商工ローンを例に見ていきましょう。
商工ローンとは消費者金融やカード会社などのノンバンクが中小企業向けに提供しているビジネスローンのことです。
商工ローンが企業を悲惨な倒産へと招きやすい理由は、大きくは3つあります。
商工ローンとは、事業用の消費者金融です。
その金利は都市銀行・地銀・信金等と比較になりません。
金利が高い借入をすると、毎月加速度的に借入額が膨れ上がります。
たとえ毎月返済していても利息の支払いすら追いついていないといった事態が起こりえます。
銀行の借入とは比になりません。
そんな中で1回でも支払いが滞ってしまうと、一気に借入額が増大し、借入時ただでさえ苦しかった資金繰りをさらに困難にしていきます。
商工ローンの金利の高さは、商工ローンのメリットである借りやすさ・借りるまでのスピードの早さを支えています。
商工ローンを行う側からみると、金利を高く貸し付けているからこそ、万が一その中に貸し倒れする案件があっても採算がとれる仕組みになっているのです。
借入時に「きちんと回収できるだけの見込みがあるか」「無理な借入になっていないか」等の審査を厳しく行わなくとも、全体から見れば最終的に利益が出るため、審査を簡単にすることができるのです。
ビジネスチャンスとは一瞬のうちにつかむものです。
そのとき手元に資金がなかったり、資金の用意が間に合わなかったりで大きな機会損失を被るのは企業にとって大きな痛手です。
こういったときに融資スピードに大きな価値を見出して、あえて商工ローンから借入をするという戦略も大いにあると思います。
ですが、それには「会社の経常利益率が商工ローンの金利より高い状態である」「短縮できる融資スピードで防げる機会損失の額が、金利の高さを上回っている」という2点が明確になっていることが大前提です。
根拠もなく商工ローンのスピードに価値を見出すのは失策と心得ておきたいところです。
先述の通り、銀行から借入をするにあたっては、提出書類や経営者との面談が多く、経営者の時間も労力も取られます。
審査の中では様々なことを聞きだされたり、または何度も同じ説明を求められたり、担当者によっては企業への理解度が低かったり横柄な態度を取ってきたり…嫌な思いをしてしまう機会もあるかと思います。
一方、商工ローンから借入をする際は、そういった煩わしさがほとんどありません。
審査が簡略化されているので、提出書類の準備も簡単ですし、あれこれと聞かれることもありません。
そして、すぐに融資がなされます。
経営者としてはとても楽なのです。
また、借入を申し込むとは本来気が重いことですが、商工ローンの従業員はサービス業に近い立ち位置で接するように設計されているため、借りる側としてはお客様という気分になって気分もよくなります。
そのため、一度商工ローンで借入をして無事に返せたとしても、次に別の借入を行う際は銀行に相談することをやめてしまうことがあるのです。
金利が低く堅実な銀行で借りられるかもしれない状況でも、煩わしい思いや嫌な気分になることを避けたいがためにいきなり商工ローンに申し込みをしてしまうケースは決して少なくありません。
しかし、審査が簡略的なのは金利が高いからです。
さらに言えば、返済が滞っても絶対に貸し手が損をしないような回収の仕組みを持っているのです。
銀行が真似をできないような仕組みです。
商工ローンのこうした表と裏をしっかりと把握し、借入先を感情的に選択しないことが重要です。
この理由が、悲惨な倒産の大きな要因となってしまいます。
商工ローンでは、無保証・無担保を謳っているところもあります。
ですが、そもそも最終手段であるはずの商工ローンを頼ってくる企業というのは、経営状態が不安定な企業です。
商工ローンの貸し手も、そのような返済能力が乏しいであろう企業が、高利の借入の返済がやがて行き詰ってくるだろうと予想をしています。
そのため、様々な理由をつけて担保を求めてきます。
担保としては企業の資産・不動産であったり、連帯保証人であったりします。
この資産が企業のものの場合や、連帯保証人が経営者本人であるうちはまだいいかもしれません。
ですが、これが企業や経営者以外にまで広がったときは悲惨です。
事業には引き際を見極めることも重要です。
ですが、借入に周囲を巻き込んでしまった経営者の心理としては、何が何でも倒産させるわけにはいかないと自転車操業であっても降りることができなくなります。
そうしているうちに借入がますます膨らみ、今度は商工ローンへの返済金を工面するために別の商工ローンで借入を行ってしまう…こんな連鎖が生まれてしまうのです。
倒産にも再起できる倒産と、再起不可能な悲惨な倒産があります。
後者を引き起こす代表として、商工ローンについての恐ろしさを以下3つご紹介しました。
(1)金利が高い
(2)借りやすさがクセになってしまう
(3)借入に周囲を巻き込んでしまう
商工ローンほどではなくとも、銀行以外からの借入を行うのはハイリスクです。
そういった事実を肝に銘じ、そのリスクを跳ねのけるだけの見通しがあるのかを冷静かつ慎重に判断する
必要があります。
くれぐれも気軽に手を出さないよう意識しておきましょう。