東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、皆様の問題に真摯に取り組む所存です。
目次
交通事故における示談とは、慰謝料や治療費などの賠償金額を決める当事者間の話し合いのことです。
裁判で争う場合、解決までに時間がかかります。重度の後遺症を負った場合や過失割合で揉めているような場合には、長いと1年以上も裁判が続くケースもあります。事故後に何かとお金がかかる被害者にとって、賠償金をすぐに受け取れないのは大きなデメリットになるでしょう。
一方で、当事者間であまり揉めていないケースでは、話し合いで早期解決できる場合が多いです。事故状況やけがの程度にもよりますが、早ければ2カ月〜3カ月程度で示談が成立します。ただし、後遺症が残ってしまう場合には、治療が長引く関係で交渉開始も遅れます。その場合には、事故から示談金の受け取りまで1年以上かかるケースもあるでしょう。
示談交渉の相手は、加害者もしくは加害者が加入している任意保険会社です。
加害者が任意保険に加入している場合、基本的にはその保険会社と交渉をおこないます。
一方で、加害者が無保険だった場合には、加害者の加入している自賠責保険会社に賠償請求をおこないます。ただし、自賠責保険では賠償額に上限が定められているので、上限額を超える部分については加害者に直接賠償請求することになります。
示談交渉で話し合う主な内容は、以下のとおりです。
示談金とは、相手方との話し合いで取り決めた賠償金のことです。交通事故で請求できる賠償金は多岐に渡るため、請求漏れがないよう注意しましょう。
財産的損害 | 積極損害 | 治療費 | けがの治療にかかった費用 |
付添看護費 | 介護が必要になってしまった場合にかかる費用 | ||
入通院交通費 | 病院に通院するときにかかる交通費 | ||
装具・器具購入費 | 介護支援ベッドや義足など、後遺障害が原因で身体が不自由になってしまったことを補うための器具にかかる費用 | ||
入院雑費 | イヤホンや衣服など、入院中の生活でかかる雑費 | ||
葬祭費 | 被害者が亡くなった場合の葬儀費用 | ||
家屋・自動車改造費 | 後遺症が原因で身体が不自由になってしまったため、家の段差にスロープをつけたり、身体障害者用に車を改造するためにかかる費用 | ||
子どもの学習費 | けがが原因で学校を休まなくてはいけなくなってしまった場合、無駄になってしまうであろうすでに支払っている授業料などの損害 | ||
保育費 | 入通院が原因で、子どもを保育施設に預けなくてはいけなくなってしまった場合にかかる保育費用 | ||
弁護士費用 | 弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用 | ||
消極損害 | 休業損害 | 事故のけがで仕事を休んでしまったことにより減ってしまった収入や利益 | |
逸失利益 | 【後遺障害逸失利益】 後遺障害が原因で働けなくなったことで失った将来の収入や利益 【死亡逸失利益】 被害者が亡くなったことで失った将来の収入や利益 |
精神的損害(慰謝料) | 入通院慰謝料 | 事故が原因で、入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ってしまったことで、今まで通りの生活を送れないことに対する精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金 | |
死亡慰謝料 | 被害者が亡くなったことによる本人および遺族の精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金 |
精神的損害(慰謝料) | 入通院慰謝料 | 事故が原因で、入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ってしまったことで、今まで通りの生活を送れないことに対する精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金 | |
死亡慰謝料 | 被害者が亡くなったことによる本人および遺族の精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金 |
その他 | 物損(物件損害) | 車体が損壊したり、衣服がダメになってしまったことに対する損害 |
遅延損害金 | 期日までに示談金を支払ってもらえなかったことで発生した損害 |
過失割合とは、事故の責任が当事者双方にどれくらいあるかを示す割合のことです。被害者にも過失が2割認められる場合であれば、「被害者:加害者 = 2:8」のように表されます。
過失割合は、実際に受け取れる示談金に大きく影響を及ぼします。たとえば、慰謝料や治療費などの損害金が100万円で、被害者にも過失が1割認められる場合には、実際に受け取れる金額は90万円になってしまいます。
過失割合は警察が決めるのではなく、当事者間での話し合いによって決定されます。ドライブレコーダーなど事故当時の状況を示す客観的な証拠がない場合には、過失割合で揉める可能性があるでしょう。
示談金の支払い方法についても話し合われます。
一括で指定口座に振り込まれるのが基本ですが、加害者に直接賠償請求する場合には、分割での支払いや手渡しでの支払いになるケースもあります。
示談交渉では、支払い期日や支払いが遅れた場合の遅延損害金なども取り決めます。
また、謝罪条項・清算条項・免責事項・守秘義務などを記載する場合も多いです。
示談金をもらえるのは、相手方との示談交渉が成立したあとです。示談交渉を適切なタイミングで始めるためにも、事故発生から示談がまとまるまでの流れを把握しておきましょう。
交通事故の当事者になったら、けが人の救護活動および警察への通報をおこないましょう。事故の規模が大きくないからといって通報を怠ると、罰則を科される恐れがあります。
警察でも事故現場の確認はおこなわれますが、可能であれば現場の状況や車体の損傷状況などを写真や動画に収めておきましょう。また、加害者の氏名・連絡先・加入している保険会社と担当者の名前などを確認しておくと、その後の交渉がスムーズに進みます。
なお、被害者自身が加入している保険会社には、なるべく早めに連絡しておきましょう。弁護士費用特約、人身傷害保険、車両保険など、使える保険について詳細を確認します。
交通事故でけがをしたら、できれば事故当日遅くとも事故から2〜3日以内には病院で診察を受けてください。
事故直後は痛みがなくても、あとから症状が現れるケースも珍しくありません。事故から時間が経ってから受診すると、「事故によるけがではないから治療費は支払えない」などと保険会社に言われてしまう可能性があります。
また、自己判断で整骨院や接骨院での治療をするのは避けた方が無難です。病院での治療以外は、けがの治療に必要ではないと判断されてしまう可能性があるからです。
なお、物損事故の場合、けががないので治療をおこなうこともありません。そのため、車の修理費などの損害が確定した時点で、加害者側の保険会社に賠償金を請求することになります。
けがの治療は、完治もしくは医師が症状固定(治療を続けても症状の改善が見込めない状態)と診断するまで継続してください。
完治の場合、この時点で全ての損害額が確定するため保険会社との示談交渉に進みます。
後遺症が残ってしまう場合には、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益なども事故による損害として請求できます。保険会社にこれらの賠償金を請求するためには、専門の機関に申請をして後遺障害等級に認定してもらう必要があります。
等級認定されると、その時点で損害額が確定します。慰謝料や逸失利益を算定し、保険会社との示談交渉に移りましょう。
加害者側の保険会社との示談交渉では、過失割合や示談金の内訳などについて話し合います。内容に合意できた場合には、示談書を取り交わすことになります。基本的に示談のやり直しは認められないので、内容に少しでも不満があるなら示談書にサインしてはいけません。
示談書については、以下に挙げる項目に誤りがないか確認しましょう。
話し合いでの解決が難しい場合には、ADRや裁判などでの解決を目指すことになります。
示談書の取り交わしが完了すると、早ければ1、2週間程度で示談金が振り込まれます。
ただし、示談書の取り交わしがスムーズに行かなかったり、保険会社側の都合で示談金の受け取りが遅れる場合もあります。支払い期日までに支払われない場合には、1度保険会社に問い合わせてみましょう。
交通事故で示談交渉をする際は、次の3つの点に注意しましょう。
示談交渉では、交渉相手である保険会社の提案には安易に応じないことが重要です。
保険会社は、自社の利益を追求する営利企業です。被害者に支払う示談金を少しでも減らすため、示談交渉では低額な金額を提案してきます。相場や計算方法を知らずに示談に応じると、適切な補償を受けられない恐れがあるので注意が必要です。
また、保険会社からの治療費の打ち切りにも安易に応じないことが大切です。治療を途中でストップすると、慰謝料を減額されてしまう可能性があります。立て替えた分の治療費は、あとから請求することも可能です。医師の指示に従い、完治もしくは症状固定まで通院するようにしましょう。
交通事故における損害賠償請求権は、一定の期間が経過すると時効により消滅します。事故から時間が経っている場合には、時効が成立しているかどうかを弁護士に確認してみましょう。
事故の種類 | 起算点 | 時効 |
---|---|---|
物損事故 | 事故日 | 3年 |
人身事故 (後遺障害なし) | 事故日 | 5年 |
人身事故 (後遺障害あり) | 症状固定日 | 5年 |
死亡事故 | 死亡日 | 5年 |
加害者不明の事故 | 事故日 | 20年 |
あとから加害者が発覚した事故 | 加害者が発覚した日 | 3年or5年 ※最長でも事故日から20年 |
事故の種類 | 起算点 | 時効 |
---|---|---|
傷害 | 治療を終了した日 | 3年 |
死亡 | 死亡日 | 3年 |
後遺障害 | 症状固定日 | 3年 |
なお、「起算点」とは、時効の日数を計算し始める最初の日のことを指します。
加害者が任意保険に加入していない場合、強制加入である自賠責保険会社から補償を受けることになるでしょう。もし損害の全てを自賠責保険でまかないきれない場合、残りの損害については加害者に直接賠償請求する必要があります。
ただし、任意保険未加入の加害者が、賠償金を素直に支払ってくれるケースはそう多くはありません。そもそも連絡すら取れない場合も多いので、その場合には示談金の受け取りまでに時間がかかることもあるでしょう。
また、分割払いでの支払いを希望されることもあるので、すぐに賠償金全額を受け取れない恐れもあります。自分で交渉しても素直に支払ってくれそうにない場合には、弁護士に早めに相談することをおすすめします。
交通事故における示談は、慰謝料や治療費などの賠償金額を決める当事者間の話し合いです。交渉がスムーズに進むこともありますが、事故状況によっては交渉が難航するケースもあります。
とくに、過失割合などについては、専門的な知識がなければ適切な主張を保険会社にするのは難しいでしょう。もし保険会社の示談金額に納得できないようであれば、専門家である弁護士のサポートを受けるのがよいでしょう。
後遺障害等級認定の申請、スムーズな示談交渉、示談金の増額など、弁護士への依頼はさまざまなメリットがあります。対応を全て任せられるので、精神的な負担も大きく軽減されます。
泣き寝入りする必要はありません。お困りの際は、 “ベンチャーサポート法律事務所”にお気軽にご相談ください。