東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
むちうちは、交通事故などによる外部からの衝撃が原因となり、頸部(首)がムチを打つように過度に伸縮した結果、頸部の靭帯や筋肉、椎間板などの軟部組織や骨組織が損傷することを総称したものです。
以下のような症状が代表的です。
一般的には、むちうちの治療期間はおよそ3ヶ月といわれていますが、事故の態様なども異なるため、人によりさまざまです。
治療を継続していても症状が消えることなく、完治せずに残存してしまうケースもあります。
「そろそろ治ってる頃ですよね?治療を打ち切ってください」と、保険会社から言われることがあるかと思いますが、治療を継続していく必要があると感じるのであれば、継続すべきです。
なぜなら、「治療期間」や「通院日数」などにより慰謝料の受け取り額が異なるからです。
それでは、具体的に「むちうちの慰謝料」についてみていきましょう。
交通事故によるむちうちで請求できる慰謝料は2種類あります。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、「入院期間」や「通院日数」を元に算出されます。
交通事故による怪我で、入院や通院を余儀なくされたことに対する肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料です。
医師の診断書が必要となり「後遺障害等級」の申請をして認定されれば請求することができます。
第1級~第14級までに分類され、認定された等級によって慰謝料額が変わります。
交通事故で、後遺症が残るほどの怪我を負わされたことによる肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料です。
交通事故の慰謝料の計算には3つの基準が存在します。
どの基準で、算定するかで受け取れる慰謝料額が変わるのでよく確認しておきましょう。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
弁護士基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
算定基準の違いによっては、慰謝料額に2倍ほどの差が生じるケースもあります。
どの算定基準で慰謝料を計算するか、これから示談交渉をする上で、とても大切なこととなりますので押さえておきたいポイントです。
むちうち症を含め、交通事故の入通院慰謝料は、3つのうちどの基準を用いるかによって、慰謝料額が大きく変わってしまいます。
むちうち症の通院期間は一般的に1~3ヶ月間と言われていますが、症状の重さによっては、6ヶ月以上かかることもあります。
ここでは、通院期間を3ヶ月・6ヶ月・8ヶ月としたときの気になる相場を見てみましょう。
通院期間 | 自賠責保険 | 任意保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|---|---|
3ヶ月 | 25.8万円 | およそ37.8万円 | 53万円 |
6ヶ月 | 51.6万円 | およそ64.2万円 | 89万円 |
8ヶ月 | 68.8万円 | およそ76.8万円 | 103万円 |
通院期間3ヶ月の自賠責保険基準と任意保険基準でみると、差額が12万円とそれほど大差ありません。
しかし、自賠責保険と弁護士基準を比較すると、差額は27.2万円と2倍近くの差額が出ます。
通院期間が長くなればなるほど、算定基準の違いによる慰謝料額の差は大きくなることがこの表でわかります。
むちうち症の入通院慰謝料は、以下の算定基準のいずれかで計算します。
自賠責保険基準の計算方法をみていきましょう。
まず、自賠責保険基準では日額4,300円を元に計算します。
(※2020年4月以降に発生した事故は4,300円で計算し、それ以前は4,200円です。)
上記いずれか少ない方に、日額4,300円をかけます。
(例)交通事故が原因で頸椎捻挫(むちうち)
このケースでは、実際に病院に足を運んで治療を受けた日数(通院日数)の方が60日間と少ないので、こちらに4,300円をかけます。
60日間×4,300円=258,000円
交通事故の被害にあい、むちうちになり入院・通院した場合の入通院慰謝料の計算方法の1つである任意保険会社基準は、各任意保険会社が独自に定めています。
そのため、任意保険会社一律ではなく、会社によって金額が異なります。
金額の詳細は公表されていませんが、おおむね自賠責基準による金額より少し高い程度の金額となっています。
なお、過去には各任意保険会社で統一された基準がありました。
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | |
1ヶ月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2ヶ月 | 25.2 | 50.4 | 73.0 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3ヶ月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102.0 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4か月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 168.9 | 176.4 | 181.4 |
5ヶ月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6ヶ月 | 64.2 | 83.2 | 102.0 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7ヶ月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8ヶ月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9ヶ月 | 82.0 | 99.6 | 116.0 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10ヶ月 | 87.0 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
弁護士基準は、別名「裁判所基準」と呼ばれることもある、入通院慰謝料の計算方法の基準です。
「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」という書籍に記載されているため、その金額は誰でも知ることができます。
被害の症状によって、骨折や脱臼などの場合、あるいはむち打ちや打撲の場合の基準となる金額が、それぞれ別に定められています。
むちうちや打撲の場合の金額は、以下の表のようになっています。
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | 11ヶ月 | 12ヶ月 | 13ヶ月 | 14ヶ月 | 15ヶ月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | 204 | 211 | 218 | 223 | 228 | |
1ヶ月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 206 | 212 | 219 | 224 | 229 |
2ヶ月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 | 213 | 220 | 225 | 230 |
3ヶ月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 | 214 | 221 | 226 | 231 |
4ヶ月 | 67 | 955 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 | 215 | 222 | 227 | 232 |
5ヶ月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 | 216 | 223 | 228 | 233 |
6ヶ月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 | 217 | 224 | 229 | |
7ヶ月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 212 | 218 | 225 | ||
8ヶ月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 213 | 219 | |||
9ヶ月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 | ||||
10ヶ月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 | |||||
11ヶ月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 | ||||||
12ヶ月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 | |||||||
13ヶ月 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 | ||||||||
14ヶ月 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |||||||||
15ヶ月 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
それぞれ以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
交通事故が原因でむちうちの後遺症が残った場合、加害者側には以下の損害賠償金も請求できます。
休業損害は収入が減ったときの補償になっており、逸失利益は後遺症がなければ得られたはずの将来的な収入補償です。
どちらも計算方法が公開されているので、以下を参考にしてください。
休業損害とは、交通事故の怪我やむちうちの影響で仕事を休むことになり、収入が減ったときの補償です。
自賠責保険に休業損害を請求するときは、以下のように金額を計算します。
基本的な日額は6,100円ですが、実際の収入を証明できれば、1万9,000円を限度した増額も認められます。
専業主婦などの家事労働者や、学生・無職は一般的な労働者の平均賃金をもとに日額を計算するので、就労していない方でも休業損害は請求可能です。
労働者の平均賃金は厚生労働省が公表する賃金センサス(賃金構造基本統計調査)を参照しますが、見方がわかりづらいので、弁護士に計算してもらうとよいでしょう。
また、休業損害には弁護士基準もあり、金額を以下のように計算します。
事故前3ヶ月間の収入を基準に計算すると、実態に近い休業損害を算出できます。
たとえば、交通事故の3ヶ月前に昇給があった場合、昇給後の賃金で休業損害を計算できるので、弁護士基準の場合は自賠責保険の補償額より高くなるでしょう。
なお、給与所得者がむちうちの治療に有給休暇を使った場合、休暇を取得する権利に損害が出るため、休業損害の請求が認められます。
逸失利益とは、むちうちの後遺症がなければ、今後得られたはずの将来的な収入補償です。
むちうちが後遺障害に認定されたときは「後遺障害逸失利益」、被害者が亡くなったときは「死亡逸失利益」を請求できるので、それぞれ以下のように計算します。
基礎収入は事故発生前の年収になりますが、未就労者の場合は賃金センサスを参照します。
労働能力喪失率は後遺障害等級と連動しており、事故前の労働能力を100%として、後遺症によって失われた労働能力の割合を5~100%の間で適用します。
また、被害者が亡くなった場合は今後の生活費が不要になるため、死亡逸失利益を計算するときは、30~50%の生活費控除率を適用した減額が必要です。
なお、後遺障害逸失利益や死亡逸失利益は一括で受け取ることになるので、運用によって利息が発生します。
本来の将来的な収入には利息が付かないため、利息分の控除用としてライプニッツ係数を適用させます。
逸失利益はシンプルな計算式ですが、計算要素がわかりにくいので、弁護士に計算してもらう方がよいでしょう。
「むちうちの後遺障害」が残ってしまうほどの怪我を負ったケースでの「後遺障害慰謝料」の相場についてもみていきましょう。
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
12級 | 93万円 | およそ100万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | およそ40万円 | 110万円 |
自動車事故で後遺障害が残った場合、1級~14級の後遺障害等級が認定されますが、むちうち症は14級9号または12級13号になるケースがあります。
14級9号の場合、神経症状として負傷部位に痛みやしびれが残り、神経学検査によって後遺障害の存在やレベルを説明できれば認定されます。
12級13号はレントゲン写真やMRI、CT画像から後遺障害が残ったことを「証明」する必要があるため、説明できるだけでは認定されません。
なお、14級9号と12級13号については、各認定基準によって以下のように慰謝料が異なります。
12級13号に認定されるケースは、神経学的検査と所見による異常個所の状態に整合性が認められる場合に限ります。
14級9号の3倍近い慰謝料となるため、強い神経症状が残っているときは弁護士に相談してみましょう。
交通事故の過失割合が10対0の場合、慰謝料や示談金を減額される可能性があります。
加害者側の一方的な過失であれば、請求どおりの慰謝料になるものと思われがちですが、示談交渉の難易度が上がるので注意が必要です。
具体的な理由は以下のとおりですが、まず過失割合10対0の慰謝料がいくらになるか、本来の金額を確認しておきましょう。
10対0の事故でむちうちになった場合、慰謝料相場は通院期間1ヶ月で19万円、2ヶ月で36万円、3ヶ月で53万円、6ヶ月の場合は105万円です。
ただし、後遺障害慰謝料が加算されると、100万円以上の相場になる可能性があります。
具体的な金額は以下の表を参考にしてください。
むちうちの慰謝料 | 通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|---|
軽度 | 重度 | |||
入通院慰謝料 | 1ヶ月 | 12万9,000円 | 19万円 | 28万円 |
2ヶ月 | 25万8,000円 | 36万円 | 52万円 | |
3ヶ月 | 38万7,000円 | 53万円 | 73万円 | |
4ヶ月 | 51万6,000円 | 67万円 | 90万円 | |
5ヶ月 | 64万5,000円 | 79万円 | 105万円 | |
6ヶ月 | 77万4,000円 | 89万円 | 116万円 | |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害12級 | 94万円 | 290万円 | |
後遺障害14級 | 32万円 | 110万円 |
通院期間1ヶ月で弁護士基準の場合、後遺障害に認定されると最低でも129万円の慰謝料を受け取れます。
また、過失割合が「0」のときは過失相殺がないため、慰謝料の減額もありません。
過失割合が10対0になる交通事故の場合、過失相殺がないので請求どおりに慰謝料を払ってもらえそうですが、以下の事情から示談交渉のハードルが上がります。
自分に過失がなく、加害者に対して賠償責任を負わないときは示談交渉サービスが使えないため、自分で示談交渉しなければなりません。
一方、加害者は示談交渉サービスを使えるので、交渉相手は任意保険会社になります。
保険会社が相手の示談交渉では知識量に大きな差があり、被害者の無知につけ込まれるケースが多いので注意が必要です。
本来の示談交渉は被害者主導になるべきですが、保険会社が主導権を握ると反論を聞き入れてもらえず、不当に慰謝料を減額される可能性があります。
過失相殺がなければ保険会社も妥協なしの条件を提示してくるので、過失割合が10対0になったときは、弁護士に示談交渉を任せた方がよいでしょう。
過失割合が10対0の場合、加害者側は100%の被害者補償を支払うべきですが、以下のような状況では慰謝料や示談金を減額される可能性があります。
身体的素因による減額 | 怪我の悪化に交通事故発生前の症状が影響しているケース |
---|---|
心因的素因による減額 | 被害者が痛みに弱く、消極的な治療になったために治療期間が長引いたケース |
必要性がない長期治療による減額 | 特に必要がないのに意図的に治療期間を長引かせるケース |
むちうちが重度の症状になった場合でも、交通事故前からの怪我や病気が影響しているときは、軽度のむちうちとして扱われる可能性があるでしょう。
また、保険会社は一般的な治療期間で慰謝料を算定するため、個別事情となる心因的素因は考慮してもらえません。
被害者によっては慰謝料を吊り上げるため、必要もなく治療期間を長引かせる、または治療回数を増やす場合もありますが、過剰診療は慰謝料の減額対象になります。
保険会社が過剰診療とみなした場合、休業損害も減額されるケースがあるので注意してください。
追突事故でむちうちになった場合、基本的には過失割合が10対0になります。
ただし、以下のような事故原因だったときは被害者の過失も問われるため、慰謝料や示談金を減額される可能性があります。
急停車や禁止場所の駐停車は道路交通法に違反するので、過失を問われても反論は難しいでしょう。
ブレーキランプが切れていた場合、後続車は前方車両の駐停車や減速に気付かず、ブレーキのタイミングが遅くなります。
また、追突事故の被害者は事故の瞬間を見ておらず、後方用のドライブレコーダーにも自分の車は映り込みません。
加害者に「ブレーキランプが点灯していなかった」と主張される可能性もあるので、運転前にはウインカーやブレーキランプのチェックも必要です。
むちうちの慰謝料で適切な金額をもらう方法をみていきます。
交通事故にあった場合に慰謝料をもらうには、まず交通事故にあった後、病院を受診する必要があります。
多少痛みがあっても、我慢できる程度だと病院を受診しないことがあります。
しかし、その後にどのような症状が発生したとしても、病院を受診しなければ慰謝料を請求することはできません。
そのため、交通事故にあったら、まずは病院を受診する必要があります。
なお、交通事故にあってすぐに症状が出ない場合でも、その後しばらくしてから症状が発生することがあります。
この場合、慰謝料の計算対象となる治療期間は、病院を最初に受診した日からとなります。
そのため、交通事故にあったらすぐに病院を受診する方がいいでしょう。
交通事故が原因でむちうちの症状が残ったときは、必ず整形外科で受診してください。
治療費や慰謝料の支払いは「医学的な治療」が対象になるため、整骨院や接骨院の施術は保険会社が治療とみなさない可能性があります。
整骨院や接骨院の施術もむちうちの症状が緩和されるので、必要があれば利用するべきですが、通院期間中の治療費は減額対象になるでしょう。
また、整骨院や接骨院の施術と相性がよく、整形外科の治療を受けない方もおられますが、後遺障害の認定に影響する恐れがあるので注意が必要です。
病院以外の治療ではレントゲンやCT、MRIなどの画像検査を受けられないため、後遺障害を申請しても、高確率で非該当や下位の等級になります。
事故直後に整骨院や接骨院に通い、ある程度の期間が経過してから整形外科の治療を受けたときも、むちうちと交通事故の因果関係を疑われてしまうでしょう。
後遺障害は認定率がかなり低いので、整骨院などの施術を受けるときは事前に医師の許可をもらい、病院の治療と並行してください。
むちうちの治療で通院していると、保険会社から治療費の打ち切りを打診される場合もありますが、安易に応じてはなりません。
保険会社は病院側と連絡を取っており、完治や症状固定の時期が近付くと、治療費の支払いを打ち切ろうとするケースがあります。
しかし、保険会社は一般的な治療期間を判断基準にしているので、治療費打ち切りに応じると以下のデメリットが生じます。
治療費の支払いが打ち切られると、症状固定前でも通院をやめてしまうケースがあるため、後遺障害に認定されない確率が高くなるでしょう。
また、痛みやしびれが残っていても、今後の治療費は自己負担になってしまいます。
治療費打ち切りの打診があると、「保険会社がいうのだから仕方ない」と諦めてしまう方もおられますが、完治や症状固定はあくまでも医師が判断します。
むちうちの症状が残っているときは、必ず通院を続けてください。
後遺障害慰謝料と呼ばれる慰謝料は、後遺障害に認定された人だけに支給されます。
そこで、後遺障害等級の申請を行います。
後遺障害の申請方法には、大きく分けて2つの方法があります。
1つ目は、保険会社が行う事前認定による方法です。
保険会社が必要書類を準備してくれるので、手続きは非常に簡単に進めることができます。
一方で、保険会社が申請書類を準備するため、認定に有利になりうる証拠を積極的にそろえてくれることはありません。
2つ目は、被害者が自ら請求を行う方法です。
被害者請求は被害者自身が請求手続きを行う必要があり、手間がかかります。
しかし、被害者側に有利になる証拠をすべて添付することができ、認定の可能性を上げることができます。
交通事故の損害賠償金(示談金)にはさまざまな項目があり混同しやすいものです。
慰謝料は示談金の一部です。
適切な損害賠償金であるかどうか、または請求できる損害賠償の項目に漏れがないかどうかをしっかりと確認する必要があります。
ここで、交通事故の種類毎に請求できる主な項目について、以下で一度おさらいをしておきましょう。
損害の種類 | 請求できる費目 |
---|---|
物損事故 |
|
人身事故(傷害) |
|
人身事故(後遺障害) |
|
死亡事故 |
|
交通事故にあった場合の慰謝料の金額基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあります。
このうち、最も金額が大きくなるのが弁護士基準による場合ですが、被害者自身で弁護士基準による交渉を行うことは非常に難しいでしょう。
そこで弁護士に示談交渉を依頼することで、弁護士基準による慰謝料を受け取れます。
弁護士に依頼すると、弁護士に対する報酬が発生するため、事前に弁護士に相談し、どれくらいの金額になりそうなのかを確認するようにしましょう。
弁護士に依頼するメリットは、やはり慰謝料アップといえます。
ここでは、弁護士が法的テクニックや適確な交渉を行うことにより慰謝料増額を得られたケースをご紹介します。
事例被害者は主婦
事故後に、むちうちで治療していたが改善せず、保険会社からの提示額は50万円だった。
自力で後遺障害等認定手続きを行ったが認定されず弁護士に依頼。
弁護士の懇意にしている「交通事故に強い医師」に意見書を作成してもらい異議申し立て手続きを行う。
その結果、後遺障害等級認定を受けて(認定されて)14級を獲得。
損害賠償額 | 後遺障害等級 | |
---|---|---|
弁護士に依頼する前 | 50万円 | なし |
弁護士に依頼した後 | 400万円 | 14級 |
このケースでの被害者は主婦でしたが、休業損害は発生します。
結果として、400万円もの損害賠償金を受け取れることとなります。
追突事故でむちうちになった場合、弁護士に損害賠償請求を依頼すると以下のメリットがあります。
弁護士が交通事故に関わると、証拠をもとに事故原因を分析し、正当な過失割合を算定してくれるので、慰謝料や示談金の減額を防止できます。
事故から時間が経つと証拠保全が難しくなるので、証拠集めも弁護士に協力してもらいましょう。
示談交渉サービスが使えない過失割合10対0の事故でも、弁護士に代理人を依頼すると、自分で示談交渉する必要がありません。
また、弁護士基準の慰謝料は裁判所の判断と同等になるため、保険会社も反論する余地がなく、請求どおりの増額に応じてくれる確率が高くなります。
なお、自動車保険や火災保険などに弁護士費用特約を付けていると、相談料と300万円程度の弁護士費用を保険会社が負担してくれます。
家族の弁護士費用特約を使えるケースもあるので、保険の加入状況をチェックしてみましょう。
過失割合10対0の交通事故は同乗者が被害を受ける場合もあるため、家族や友人が運転する車の同乗中に追突されると、慰謝料の請求相手がわからなくなります。
慰謝料の支払い時期もあまり知られていないので、過失割合10対0の交通事故が発生したときは、以下を参考にしてください。
追突事故でむちうちの後遺症が残った場合、慰謝料や示談金を受け取る流れは以下のようになります。
示談金は示談成立から2週間程度で受け取れます。
むちうちが後遺障害に認定されたときは、事故発生から示談金の受け取りまでに最短でも10ヶ月程度かかるでしょう。
追突事故の同乗者も慰謝料を受け取れます。
慰謝料も運転者が被害に遭ったときと同じ基準で計算されるため、同乗者を理由に減額されることはありません。
また、慰謝料は過失割合に応じてどちらの運転手にも請求できます。
運転していた友人や家族にも過失があり、慰謝料を請求しにくいときは、相手方から全額を支払ってもらい、後で相手方と友人・家族の間で清算する方法もあります。
ただし、同乗者の過失となるが安全運転の妨害があったときや、事故車の所有者だった場合は、慰謝料を減額されるので注意してください。
被害者にも以下のような過失があった場合、追突事故によるむちうちでも過失割合が10対0にはなりません。
道路交通法ではブレーキランプの運転前点検を義務付けているので、点灯していなかったときは被害者側の過失となり、慰謝料や示談金は減額されるでしょう。
交通事故でむちうちになったときに請求できる慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類です。
入通院慰謝料は入院期間や通院日数をもとに計算し、後遺障害慰謝料は後遺障害等級をもとに計算します。
どちらの慰謝料も、弁護士に示談交渉を依頼して弁護士基準で計算すると、もっとも高額になります。
慰謝料アップが期待できるだけではなく、示談交渉のストレスからも解放されるため、自力で示談交渉をするのが不安な方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
初回無料相談を行なっている弁護士事務所も多いので、弁護士費用についての不安も遠慮せずに聞いてみましょう。