東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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「痛くて首が回らない」
「手が痺れて辛い」
「頭痛や吐き気が酷い」
一般的に広く知られている「むちうち」ですが、なった人にしかわからない辛さが特徴的です。
外見では、怪我人ということがわからないため我慢して無理をしてしまうことも多いものです。
交通事故の中でも比較的軽症と扱われることの多い「むちうち」について、慰謝料の種類や相場についてみていきたいと思います。
これから示談交渉をする予定のある方のご参考になれば幸いです。
目次
むちうちになると、治療のために仕事を休まなければならなかったり、家事が思うようにできなかったりと、日常生活に支障がでてしまいます。
肉体的なダメージだけではなく精神的にも相当なダメージを負ってしまいます。
むちうちの医学的な傷病名は「外傷性頸部症状群」「頸椎捻挫」と呼ばれます。
〈主な症状〉
一般的なむちうちの治療期間はおよそ3か月といわれています。
ですが、これはあくまでも一般的なものであるため、事故の態様により一概にはいえません。
また、残念ながら治療を継続していても症状が完治せずに残存してしまうケースもあります。
事故直後は、痛みや不調を感じなくても、時間が経つにつれ徐々に体調が悪くなるパターンが多いことも特徴の一つです。
むちうちの慰謝料は2種類ありますので、さっそく確認していきましょう。
傷害慰謝料(入通院慰謝料) | 「入院期間」「通院日数」を元に計算される。 交通事故による怪我で、入院や通院を余儀なくされたことに対する肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料。 ※慰謝料をアップさせるには適切な通院頻度が求められます。 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 「後遺障害等級」の申請をして認定されれば請求することができる。第1級〜第14級に分類されていて「等級」により慰謝料額が異なる。(14級が最も低い) 交通事故により後遺症が残るほどの怪我を負わされたことによる肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料。 |
「後遺障害慰謝料」は認定されなければ慰謝料を請求することができないということに注意しなければならないのがおわかりいただけたかと思います。
慰謝料を計算するときに使われる基準は3種類あります。
最終的に受け取ることのできる金額がおよそ2倍程度左右されることもありますので、よく確認しておきましょう。
自賠責保険基準 (車両所有者全員に加入義務のある保険) | 必要最低限の補償を目的としている。 3つの中で最も低い基準となる。 |
---|---|
任意保険基準 (任意で加入する保険) | 保険会社が各社独自に定めている基準。 保険会社ごとに基準が異なり計算基準は非公開。 3つの中で中間に位置する基準。 |
弁護士基準(裁判基準) ※弁護士に依頼しなくても主張することはできるが、一般的には困難といえる。 事実関係・裁判例など専門的で多岐にわたる正当な根拠を示すことは複雑かつ専門的な知識を要するため。 | 法的な根拠があり、過去の裁判例に基づき裁判所や弁護士に依頼したときに採用される基準。 ※いわゆる「赤本」(東京三弁護士会の交通事故処理委員会により公表)と呼ばれる本に記載されている基準。 3つの中で最も高い基準となる。 |
・原則として年齢、職業により請求できる金額が異なることはありません。
~逸失利益、休業損害などは、被害者の方の年齢や職業などにより請求できる金額が異なります。
・「事故が軽微」「怪我の程度も軽症」といった理由で慰謝料を請求できないわけではありません。
~なぜなら慰謝料は、怪我の程度や怪我の部位、入通院期間などに応じて計算されるからです。
これらは、交通事故の被害者の方がご不安に思われていることの多い点です。
「むちうち症」は、怪我の程度が比較的軽傷とされています。
いったいどのくらいの慰謝料を受け取ることができるのでしょうか?
今後の生活に不安を抱えている方も少なくありません。
損をしないためには正しい知識が役に立ちます。
下記で、詳しくみていきましょう。
以下は、むちうちの治療期間と完治した割合を表にしたものです。
外見では分かりづらいものの、完治するまでには長い時間がかかってしまうことがわかります。
治療した期間 | 完治した割合 |
---|---|
1日のみ | 40.7% |
1週間 | 60.4% |
1か月以内 | 79.1% |
3か月以内 | 89.6% |
6か月以内 | 93.9% |
1年以内 | 97.4% |
次に「任意保険基準」をみていきましょう。
前述のとおり、任意保険基準は公開されていないため、下記の金額は参考値としてお考えください。
(完治した割合が多い1か月、3か月、6か月、8か月を抜粋しています。)
通院 | 入通院慰謝料 |
---|---|
1か月 | およそ13万円 |
3か月 | およそ38万円 |
6か月 | およそ64万円 |
8か月 | およそ77万円 |
続いて「後遺障害慰謝料」についてみていきましょう。
「むちうち」で認定されるのは12級と14級がほとんどですので、抜粋してご紹介します。
等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
第12級 | およそ100万円 |
第14級 | およそ40万円 |
後遺障害等級認定の手続きはとても煩雑です。
法的な知識や医師の診断書など自分1人で行うことが困難な方は、弁護士に一任することも検討してみてはいかがでしょうか。
書類等の不備や煩雑な手続きの心配などを心配することなく早期解決を期待することができます。
「そろそろ治っている頃ですよね?症状固定では無いですか?治療を打ち切ってください」
このように保険会社からいわれた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ですが、治療により改善傾向を感じているのであれば継続するべきです。
保険会社にいわれたとおりにしなくてはならないわけではありません。
我慢して治療をやめてしまうと、後々後悔する結果となります。
なぜなら、「治療期間」や「通院日数」などにより最終的に受け取ることの出来る慰謝料額が異なるからです。
以下の表にある金額は、あくまで参考値です。
旧任意保険基準を踏襲した設定となり算出基準は非公開です。
平成11年以降は旧任意保険基準(統一基準が存在していた)が撤廃となりました。
現在では、各保険会社が自由な算出基準を設定できるようになりました。
(単位:万円)
入院 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 | 7か月 | 8か月 | 9か月 | 10か月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | |
1か月 | 12.6 | 37.8 | 63 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2か月 | 25.2 | 50.4 | 73 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3か月 | 37.8 | 60.4 | 82 | 102 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4か月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 168.9 | 176.4 | 181.4 |
5か月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6か月 | 64.2 | 83.2 | 102 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7か月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8か月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9か月 | 82 | 99.6 | 116 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10か月 | 87 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
表の見方は簡単です。
(例)通院3か月なら37.8万円
入院3か月入院1か月なら60.4万円となります。
慰謝料を計算して交渉するための準備のポイントは「適切な通院頻度を守ること」が大切です。
下記でみていきましょう。
むちうち症状のケースでは「通院3か月間」の適切な通院頻度は週2〜3回または月に10回程度といわれています。
通院頻度は保険会社が決めることではありませんので、いいなりになる必要はありません。
あくまでもその判断は、怪我の治療にあたられている主治医の判断によるものです。
ご自身の体の痛みなどを遠慮せずに主治医に訴えて、円滑なコミュニケーション図ることも大切です。
むちうちは、外見ではその辛さがわかり辛く「軽症」と思われてしまうことが多いものです。
このような理由から、保険会社は慰謝料の金額を低く見積もって提示してくることがあります。
保険会社からの連絡だからといって慌てずに対応することが大切です。
任意保険基準で算出された慰謝料の額に納得がいかなければ、算出基準の高い「弁護士基準」で算出する方法が考えられます。
前述でもお伝えしたとおり、弁護士や裁判所だけしか使えない基準ではありませんが、この基準で主張するには法的な根拠のある証拠が必要となり法的なテクニックも要します。
また、「過失割合の修正」や「後遺症等級認定の手続き」にも専門的かつ煩雑な知識が問われます。
これらを自力で行うことはかなり大変な労力を要します。
弁護士に一任することで、これらすべてのことを任せられますので、その分の時間や労力を治療にまわすことが賢明といえるのではないでしょうか。
そこで、気になるのが弁護士に依頼することで増額が期待できる項目です。
いったいどのような項目が該当するのでしょうか。
下記で、確認しておきましょう。
弁護士に依頼し、相手方との交渉や適切な手続きを行うことで増額が期待できる項目です。
逸失利益についてですが、例えば事故の影響で労働能力が一部喪失してしまうような「後遺障害」が残ってしまった場合です。
「労働能力喪失率」の該当等級分だけ減少します。
しかし、適用されるためには「後遺障害等級認定」が認められなければなりません。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
14級 | 5% |
13級 | 9% |
12級 | 14% |
11級 | 20% |
10級 | 27% |
9級 | 35% |
8級 | 45% |
7級 | 56% |
6級 | 67% |
5級 | 79% |
4級 | 92% |
3級 | 100% |
2級 | 100% |
1級 | 100% |
逸失利益は、事故後の将来に関わる重要な事柄です。
向こう何十年に渡る「年収」が元となり計算されますので、認定される「等級」が異なれば数百万円ほどの差が生じることもあります。
このことから、後遺障害等級認定の「等級」が何級で認定されるかがとても大切な意味を成します。
一度認定されると、変更することはかなり難しいので、専門的な知識を有する弁護士に相談されることも検討されてみてはいかがでしょうか。
むちうちなどのケースでは、時間の経過による「軽減」が見込まれ「労働能力喪失期間」が10年以下で認められることが多くみられます。
しかしながら、後遺障害は一生涯残るので「事故当時の年齢」をその期間とするのが原則となります。
本来であれば「年収」はまとめて受け取るものではないため、現時点で一時的にまとめて受け取ることができます。
そのお金で「資産運用」で利益を立てられることを仮定した上でその利息分(中間利息)を控除するための計算式のことを「ライプニッツ係数」といいます。
(計算例)労働能力喪失期間5年=1年当たりの基礎収入׬8.53 (←5年ではなく4.58をかける)
ライプニッツ係数 | 労働能力喪失期間 |
---|---|
0.97 | 1年 |
4.58 | 5年 |
8.53 | 10年 |
14.88 | 20年 |
19.6 | 30年 |
治療期間が長くなるほどその分だけ高額となります。
また、物損事故の場合は修理費用や車両評価の損失などが補償の対象となります。
後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力逸失率×労働能力喪失期間に該当するライプニッツ係数
【42歳男性 会社員 】
車(自家用車)を運転中の男性が信号待ちで停車中に、後続車に追突され事故発生。
男性(被害者)は、頸椎捻挫(むちうち)の傷害を負う。
事故後、およそ半年ほどで「症状固定」となるが、痛みが残る状態。
損害賠償金に納得がいかず、自力で行った後遺障害等級申請が認められなかったが、弁護士に相談して「後遺障害等級14級」が認められた。
※後遺障害「非該当」→「14級」を獲得。
およそ3倍の損害賠償金を獲得することができたケース
任意保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) | |
---|---|---|
後遺障害等級 | 非該当 | 14級 |
入通院慰謝料 | 約80万円 | 約100万円 |
後遺障害逸失利益 | 0円 | 約90万円 |
後遺症慰謝料 | 0円 | 約110万円 |
休業損害 | 約30万円 | 約30万円 |
合計金額 | 約110万円 | 約330万円(220万円アップ) |
一度「非該当」となった後遺障害等級認定でも、弁護士に依頼することで認められるケースもあります。
「異議申し立て」を行うには、医師との面談や適正な追加書類を揃えるなど煩雑な手続きを要しますが不可能なことではありません。
任意保険基準は、非公開で算出されているため、私たちには参考値しか知ることができないことがわかりました。
また、同時に、弁護士に依頼することで得られるメリットが多いこともおわかりいただけたのではないでしょうか?
事故後の生活再建に役立つ慰謝料の額はとても重要です。
もし、保険会社から提示された金額で納得がいかずお悩みであれば、早めに弁護士に相談された方が結果的に満足のいく結果となることが多いです。
後遺障害認定手続きには時間もかかりますので、あまり悩んでいる時間はありません。
また、ご自身の加入している保険に「弁護士特約」が付帯されていれば、弁護士費用の負担なく弁護士に依頼して問題を解決することができます。
軽微な事故だからと躊躇せずに積極的に活用されることをおすすめします。