記事の要約
- 自筆証書遺言は「全文・日付・氏名を手書きし、印鑑を押す」というルールを守らないと無効になる
- ケース別の例文や自動作成システムを使えば、遺言書の作成が楽になる
- 形式が正しくても、遺留分や相続税対策が欠けていると相続トラブルが起きやすい
「遺言書を用意しておきたいが、どう書けばいいのだろう?」
「自分で書いた遺言書が、無効になってしまわないか?」
自分で作成する遺言書(自筆証書遺言)は、「全文・日付・氏名を自筆し、押印する」という要件を満たせば、費用をかけずに書くことができます。
ただし、形式にひとつでも不備があると、法的に無効となってしまう場合があるため注意が必要です。
また、形式が正しくても、遺留分や相続税への配慮が足りないと、遺された家族の間でトラブルや税負担がかかることもあります。
この記事では、「無効にならない遺言書の書き方と手順」「そのまま使えるケース別の例文」「家族が揉めない遺言書にするためのポイント」をお伝えします。
なお、私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で承っております。
少しでもご不安な点がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。
無効にならないための遺言書の書き方
遺言書は、自分の死後に「どの財産を誰に引き継ぐか」を意思表示するための書類です。
法的に有効な遺言書があれば、民法で定められた取り分である「法定相続分」よりも、遺言書の内容が優先されます。
実務上は、相続人全員および受遺者(遺言によって財産をもらう人)が合意すれば、遺言書と異なる分け方をすることも可能です。
遺言執行者がいる場合は、執行者の同意も必要になります。
- 財産のこと:どの財産を誰に相続させるか、相続人以外の人に財産を渡す(遺贈する)か
- 家族のこと:子どもの認知、未成年後見人の指定など
- 手続きのこと:遺言の内容を実行する「遺言執行者」の指定など
このほか、家族への感謝の気持ちや分け方の理由を説明する「付言事項」を書くこともできます。
付言事項に法的拘束力はありませんが、家族が故人の思いを理解するために役立ちます。
自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらで作成するか
遺言書の多くは「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」で作成されます。
内容を秘密にしたまま、遺言書の存在のみを公証役場で証明してもらう「秘密証書遺言」もありますが、手続きの手間に対して形式不備のリスクが残るため、実務上利用されるケースはほとんどありません。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 本人が全文を手書きする(財産目録はパソコン作成可) | 公証人が本人から内容を聞き取って作成する |
| 費用 | 0円(法務局の保管制度を使う場合は3,900円) | 財産額に応じた公証人手数料 |
| 証人 | 不要 | 2人必要 |
| 家庭裁判所の検認 | 必要(法務局の保管制度を利用した場合は不要) | 不要 |
| 無効になるリスク | 形式不備で無効になることがある | 形式不備で無効になることは極めて少ない |
自筆証書遺言は、費用をかけずに手軽に作成や書き直しができます。
公正証書遺言は、費用と手間はかかりますが法律の専門家である公証人が作成に関与するため、法的にも確実性の高い形式です。
この記事では、「自筆証書遺言」の書き方を中心にお伝えします。
ステップ1:財産と相続人を整理する
まずは自分の保有財産をすべて洗い出します。
預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も確認します。
また、遺言書に財産の情報を正確に記載できるよう、あらかじめ必要書類をそろえておきましょう。
- 不動産:登記事項証明書(登記簿謄本)に記載の所在・地番・家屋番号など
- 預貯金:金融機関名・支店名・預金種別・口座番号
- 株式・投資信託:証券会社名・支店名・口座番号
続いて、法定相続人の範囲を確認します。
たとえば、前の配偶者との間に子どもがいる場合、その子も第一順位の相続人です。
誰が法定相続人かは、戸籍謄本で確認しておくと確実です。
ステップ2:誰に何をどれだけ相続させるか決める
次に「誰に・どの財産を・どの割合で」引き継ぐかを決めます。
この段階で、以下の2点も確認しておくと、後々の修正やトラブルを防ぎやすくなります。
- 遺留分(一定の相続人に保証されている最低限の遺産取り分)を侵害していないか
- 財産の分け方によって、かえって相続税の負担が増えないか
ステップ3:下書きを作る
いきなり清書をするのではなく、まずは下書きを作成します。
下書きを何日か置いてから読み返すことで、記載漏れや言葉の表現のあいまいさに気づきやすくなります。
なお、当社では簡単な入力で遺言書の下書きを作成できる「遺言書の下書き自動作成システム」を、無料でご提供しています。
「簡易版」は質問に答えていくだけで、大まかな文案が仕上がります。
初めて遺言書を作成される方におすすめです。
「詳細版」では、財産や相続人の情報を細かく入力し、そのまま清書に生かせる文案を作成できます。
戸籍謄本や課税明細書があれば、スムーズに入力しやすいです。
自動作成システムを活用した遺言書の書き方については、下記の動画もご参照ください。
生成AIで遺言書の文案を作成するときは、以下の点に注意しましょう。
- 自筆証書遺言は、最終的に全文を自分の手で筆記する必要がある
- AIで作成した文言が、法形式や最新の税制に即しているとは限らない
- 財産や個人情報を入力するときは、データの取り扱いに気をつける
ステップ4:要件を満たすかたちで清書する
自筆証書遺言は、民法で定められた要件を厳密に満たす必要があります。
| ルール | ポイント |
|---|---|
| ①全文を手書きする | ・本文はすべて自分で書く。代筆やパソコン作成、録音・録画は無効 ・冒頭に「遺言書」と表題を書き、「遺言者〇〇は、次のとおり遺言する。」と書き出すと、遺言書だとはっきりわかる |
| ② 作成日付を書く | ・「令和◯年◯月◯日」のように、年月日を特定できるように書く ・「令和◯年◯月吉日」は日付が特定できないため無効 |
| ③ 氏名を正しく書く | ・戸籍どおりのフルネームを自署する |
| ④ 印鑑を押す | ・認印でも有効だが、本人が書いたことを示しやすい実印が安心 |
| ⑤ 訂正は法律で決められた方法で行う | ・訂正箇所を示して変更した旨を付記のうえ署名し、変更箇所に押印する ・方法を間違えると訂正が無効となるため、書き損じたら最初から書き直すほうが安全 |
なお、財産の一覧である「財産目録」は、パソコンでの作成が可能です。
ただし、目録の全ページ(両面印刷の場合は両面それぞれ)に、本人の署名および押印が必要です。
氏名は通称・雅号・ペンネーム等でも有効となることもありますが、戸籍の名前を書くほうが確実です。
遺言書の法改正について
2026年6月の民法改正により、自筆証書遺言の押印は不要になることが決まりました(執筆時点では具体的な施行日は公表されていません)。
施行日前に作成した遺言書には、従来どおり押印が必要です。
また、デジタル端末で作成して法務局に預ける「保管証書遺言(デジタル遺言)」の創設も決まりましたが、開始は公布から3年以内とされています。
ステップ5:遺言書を保管する
清書した遺言書は、「自宅での保管」または法務局の「自筆証書遺言書保管制度」のいずれかで管理します。
| 項目 | 自宅で保管 | 法務局の保管制度 |
|---|---|---|
| 費用 | 0円 | 3,900円 |
| 紛失・改ざんリスク | 心配がある | 法務局で原本を預かるため心配は少ない |
| 家族が見つけられるか | 見つからないおそれがある | 死後に法務局から通知が届くしくみが利用できる |
| 家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 |
法務局の保管制度を利用する場合は、A4用紙の余白設定や片面記載など、細かな様式ルールがあります。
自宅で見つけた遺言書は「検認」が必要
自宅で保管されていた遺言書は、開封せずに家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。
検認前に開封すると、5万円以下の過料が科されることがあります。
遺言者は、遺族への配慮として封筒の表面に「開封せず家庭裁判所に提出すること」と書いておくとよいでしょう。

司法書士からひと言
「故人が遺言書を残していたかどうか分からない」というお声をいただくこともあります。
法務局や公証役場に保管されていれば照会が可能ですが、自宅にしまわれたまま見つからない遺言書は、存在しないことと同じです。
また、家庭裁判所の検認には1~2カ月程度の時間を要することが多く、その間は名義変更などの手続きが進められません。
公的な保管制度をご活用いただくか、信頼できるご家族へ保管場所を伝えておかれることをおすすめいたします。
【ケース別】遺言書の例文集
遺言書を作成するときは、標準的な文例を参考のうえ、家族構成や財産状況に合わせて必要な部分だけを書き換える方法がおすすめです。
例文1:標準的な遺言書の書き方
家族関係が比較的シンプルで、財産の引き継ぎ先を個別に定めておきたい場合の標準的な文面です。
- 標準的な遺言書の文例・見本▼


例文2:予備的遺言の書き方(遺言者より先に亡くなるケースの想定)
たとえば、「長男にすべての財産を相続させる」と書いていても、長男が遺言者より先に亡くなっていると、その部分の遺言は効力を失い、指定していた財産は遺産分割協議の対象になります。
財産を渡す相手が先に亡くなった場合に備え、代わりの承継者を決めておく条項が「予備的遺言」です。
- 予備的遺言の文例・見本▼


例文3:遺言執行者を指定する場合
遺言執行者とは、遺言者に代わり遺言内容を実現する人のことです。
「遺言執行者」を指定しておくと、預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きが格段にスムーズになります。
相続人を遺言執行者にすることもできますが、手続きが複雑な財産がある場合や執行者が認知症になってしまい手続きが進みにくくなる場合もありえます。
そのようなリスクも踏まえると、遺言執行者には、士業などの専門家などを指定しておくほうがよいでしょう。
- 遺言執行者を指定する場合の文例・見本▼


例文4:妻(夫)にすべて相続させたい場合(子がいないケース)
子どものいない夫婦の場合、遺言書がないと、故人の親や兄弟姉妹(甥・姪)も法定相続人となります。
兄弟姉妹には「遺留分」がないため、「妻(夫)に全財産を相続させる」旨の遺言書があれば、配偶者へ確実に全財産を遺すことができます。
ただし、配偶者の親が健在の場合は、親にも遺留分が発生します。
- 妻(夫)にすべて相続させたい場合(子どもなし)の文例・見本▼



司法書士からひと言
子どもがいない家庭で遺言書がない場合、遺された配偶者は関係性の薄い親族と遺産の分け方を話し合わなければいけないケースもあります。
配偶者に負担をかけないためにも、確実な形で遺言書を残しておくことをおすすめします。
例文5:妻(夫)にすべて相続させたい場合(子がいるケース)
配偶者に全財産を相続させたい場合でも、子どもには遺留分が認められています。
子どもから遺留分の請求がなされる懸念や、将来の二次相続における子どもの税負担などを考慮し、付言事項を添えて想いを伝えておくことが大切です。
- 妻(夫)にすべて相続させたい場合(子どもあり)の文例・見本▼


例文6:親にも財産を分け与えたい場合
子どもがいる場合、親や祖父母は相続人にはあたりません。
そのため、親にも財産を渡したい場合は、遺言書が必須です。
相続人ではない人に財産を渡すため、文言は「相続する」ではなく「遺贈する」と書きます。
- 親にも財産を分け与えたい場合の文例・見本▼


例文7:子ども同士で分ける財産に差をつける場合
たとえば、献身的に療養看護などをしてくれた特定の子どもへ、手厚く財産を遺したいケースです。
ほかの子どもの遺留分を侵さない配分に配慮しつつ、付言事項で理由を書き添えておきましょう。
- 子ども同士で分ける財産に差をつける場合の文例・見本▼


例文8:特定の子どもに事業を継がせる場合
経営している事業を子どもに継がせたい場合は、事業が「会社(法人)」か「個人事業」かで書き方が変わります。
法人の場合は、会社の株式を、誰にどれだけ相続させるかを書きます。
株式は事業の意思決定権と結びつくため、後継者に集中的に承継させるのが基本です。
個人事業の場合は、事業用資産(店舗や設備、売掛金など)を財産目録にまとめておき、遺言書で「一括して相続させる」旨の指定を残しておくとよいでしょう。
記載漏れがあると、経営を引き継いだ子どもが、その事業で使用する資産を相続できないといったことが起こりえるため注意が必要です。
また、ほかの相続人が不満を持つこともあるため、事前の丁寧な説明と遺留分への配慮が大切です。
- 特定の子どもに事業を継がせる場合(個人事業)の文例・見本▼


例文9:相続人がおらず、財産を世話人にあげたい場合
相続人が一切いない場合、遺言書がなければ財産は国庫に帰属することとなります。
特別寄与者や特別縁故者として財産を受け取れるケースもありますが、お世話になった方へ確実に財産を引き継ぎたい場合は、遺言による包括遺贈を行います。
- 相続人がおらず、財産を世話人にあげたい場合の文例・見本▼


例文10:財産を特定の団体に寄付したい場合
特定の団体や自治体へ財産を寄付(遺贈寄付)したいときの文面です。
相続人がいる場合は、遺留分に配慮し、付言事項で寄付の理由を伝えておきましょう。
- 財産を特定の団体に寄付したい場合の文例・見本▼


例文11:相続人以外の親族・姻族に財産をあげたい場合
子どもの配偶者(例:長男の妻)は相続人でないため、介護などに尽力してくれたとしても、遺言書がなければ財産は渡りません。
財産を渡したいときは、遺言書で「遺贈する」と書いておきます。
- 相続人以外の親族・姻族に財産をあげたい場合の文例・見本▼


例文12:内縁の妻(夫)に財産をあげたい場合
長年生活を共にしていても、法律上の婚姻関係がない内縁の配偶者には相続権が認められません。
遺言書で「内縁の配偶者の氏名・生年月日・住所」を明記して遺贈の意思を示すとともに、遺留分の要件を満たす相続人がいる場合は配分額にも配慮しましょう。
また、手続きをスムーズに進めるために、専門家などの第三者を遺言執行者に指定しておくことをおすすめします。
- 内縁の妻(夫)に財産をあげたい場合の文例・見本▼


例文13:前妻(夫)との間に子どもがいる場合
離婚すると、元配偶者は相続人ではなくなります。
しかし、元配偶者との間に生まれた子どもは相続人のままです。
今の配偶者との間に子どもが生まれている場合、どちらの子どもも同等の法定相続分を持っています。
仮に、元配偶者との子どもに対し「財産を渡さない」旨の指定をしても、その子どもが相続欠格や相続廃除に該当しない限りは、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。
再婚をしている場合は、2つの家族が揉めないよう、遺留分に配慮した内容にしておくことが大切です。
- 前妻(夫)との間に子どもがいる場合の文例・見本▼


例文14:再婚の連れ子に財産をあげたい場合
養子縁組を結んでいない再婚相手の連れ子には、相続権がありません。
連れ子にも財産を渡したいときは、遺言書で「遺贈する」と書いておきます。
このケースでも、ほかの相続人の遺留分への配慮が大切です。
- 再婚の連れ子に財産をあげたい場合の文例・見本▼


例文15:婚外子を認知し、財産をあげたい場合
認知とは、結婚していない男女の間に生まれた子どもについて、法律上の父親を決める手続きです。
生きているうちに認知するのが一般的ですが、遺言書で認知することもできます(遺言認知)。
遺言認知の届出は遺言執行者がするため、遺言書で遺言執行者を指定しておきましょう。
- 婚外子を認知し、財産をあげたい場合の文例・見本▼


例文16:自分が亡き後も介護を必要とする家族がいる場合
自分の死後に財産を渡す代わりに、遺された配偶者の療養看護などをお願いする手段として「負担付遺贈」があります。
ただし、受遺者は遺贈を断ることもできますし、受遺者が負担を果たさない場合、相続人などは家庭裁判所に遺言の取り消しを申し立てられます。
受遺者とは、事前によく話し合っておくことが大切です。
- 自分が亡き後も介護を必要とする家族がいる場合の文例・見本▼


例文17:ペットが遺される場合
財産を渡す代わりに、ペットの世話をお願いする負担付遺贈をします。
どのような世話を頼むのか、受遺者と事前によく話し合っておきましょう。
- ペットが遺される場合の文例・見本▼


形式が正しくても揉める?遺言書を確実にする7つのポイント
遺言書としての形式が正しくても、内容や作成時の状況によっては、無効と判断されたり、相続人間のトラブルを招いたりすることがあります。
(1)無効を主張される要因を避ける
遺言書の有効性が争われる主な要因は、以下のとおりです。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 形式不備 | 日付がない、署名や押印がない、訂正方法が誤っている |
| 遺言能力に疑いがある | 認知症などで、作成時点の判断能力が不十分だった可能性がある |
| 公序良俗に反する | 社会的妥当性を著しく欠く内容である |
| 共同遺言 | 夫婦などが2人で1通の遺言書を書いている |
特に争点となりやすい要因が「遺言能力の有無」です。
医師の診断書など、作成当時に判断能力があったことを示す記録を残しておくと安心です。
(2)どの財産か特定できるように明記する
遺言書に記載する財産は、誰が見ても「どの財産のことか」がわかるよう正確に書くことが大切です。
「自宅は妻に」「預金は長男に」といったあいまいな表現は、家族間のトラブルを招くだけでなく、法務局や金融機関での名義変更手続きが滞る原因にもなりかねません。
- 不動産:登記事項証明書のとおりに、所在・地番・家屋番号などを正確に書く
- 預貯金:金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号まで書く
- 株式:証券会社名・支店名・口座番号を書く。非上場株式は、会社名と本店所在地、株式の数を書く
遺言書に書いていない財産については、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
財産の書き漏れに備えて、遺言書の最後に「前各項に記載した財産以外の一切の財産を、〇〇に相続させる」と書いておくと安心です。
(3)「相続させる」と「遺贈する」を使い分ける
遺言書では、財産を渡す相手の立場に応じて、「相続させる」と「遺贈する」という言葉を使い分けます。
| 表記 | 主な対象者 |
|---|---|
| 相続させる | 配偶者や子どもなど、法律上の「法定相続人」に財産を引き継ぐとき |
| 遺贈する | 子どもの配偶者や孫、内縁のパートナー、団体など、「法定相続人以外」に財産を譲るとき |
法定相続人に対し「遺贈する」と書いても、遺言書自体が無効になるわけではありません。
ただし、不動産の名義変更などで、必要書類や手続きの流れが変わってしまうことがあるため、法定相続人には「相続させる」と明記しておくのが一般的です。
(4)遺留分に配慮する
遺留分とは、配偶者や子どもといった一定の相続人に対して最低限保障された取り分です。
ただし、兄弟姉妹には遺留分はありません。
| 相続人 | 遺留分(遺産全体に対する割合) |
|---|---|
| 配偶者と子ども | 配偶者4分の1、子ども全員で4分の1 |
| 配偶者と直系尊属(父母・祖父母) | 配偶者3分の1、直系尊属全員で6分の1 |
| 配偶者のみ/子どものみ | 2分の1 |
| 直系尊属のみ | 3分の1 |
遺留分を侵害する遺言書を作成しても、遺言書そのものが無効になるわけではありません。
ただし、指定された遺産額が遺留分より少なかった相続人は、多く受け取った人に対して、相当額の金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求)。
遺言書を書くときは、あらかじめ各人の遺留分を算定したうえで配分を考慮するか、生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄してもらうなどの対策を検討しておきましょう。
(5)付言事項で理由を伝える
付言事項に法的な効力はありませんが、遺された家族の心情を和らげる効果があります。
特定の相続人に多く財産を残す場合、理由がわからないと、ほかの相続人は不満を抱きやすくなります。
一方、「長年寄り添ってくれたことへの感謝」や「事業を維持するためのやむを得ない措置」といった真情が書いてあれば、ほかの相続人も納得しやすくなります。
- 家族一人ひとりへの感謝を書く
- 配分に差をつけた理由を、具体的に書く
- 特定の家族を非難する言葉は書かない
(6)相続税や納税資金まで踏まえた分け方にする
基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える財産がある場合、誰がどの財産を引き継ぐかによって、最終的な納税負担は大きく左右されます。
遺産配分を考えるときは、次の3点を確認しておきましょう。
- 1.小規模宅地等の特例が使えるか
- 同居親族などの要件を満たす相続人が自宅を相続することで、土地評価額を最大80%減額できる。
別居の子どもに自宅を相続させると制度適用外となる場合がある。 - 2.二次相続のときに税負担が重くならないか
- 配偶者の税額軽減を活用して配偶者が多く相続すれば、最初の相続(一次相続)の税負担は抑えられるが、その配偶者が亡くなったときの二次相続では、子どもが負担する相続税が重くなることがある。
- 3.納税資金が確保できるか
- 相続税は原則として現金一括納付であり、換金性の低い財産(例:不動産)ばかりを相続させると、相続した人が税金を払えないことがある。
相続税がかかりそうな場合は、二次相続まで見たトータルの税額シミュレーションを行っておく、不動産を相続させる人を生命保険の受取人にして納税資金を確保させるといった準備が大切です。
(7)公正証書遺言での作成や専門家のサポートを検討する
自筆証書遺言は手軽に作成できる一方、形式不備や記載内容のあいまいさによる相続人同士のトラブルを招きやすいデメリットがあります。
財産の種類が多い場合や、親族関係が複雑である、またお身体の具合から全文を自筆するのが難しい場合は、「公正証書遺言」での作成をおすすめします。
なお、2025年10月からは、条件を満たせばウェブ会議を利用して公正証書遺言を作れるようになりました。
また、行政書士や司法書士などの専門家に相談することで、税務・法務の両面からバランスの取れた遺言書を作成しやすくなります。
- 形式の不備で無効になる心配がなくなる
- 遺留分や相続税を踏まえた分け方を提案してもらえる
- 遺言執行者を任せられる
遺言書の書き方に関するよくある質問
Q.遺言書の用紙やペン、封筒に決まりはある?
ただし、改ざんや経年劣化のリスクを避けるため、鉛筆やフリクションペンの使用は避けましょう。
丈夫な紙と油性ボールペンの使用がおすすめです。
なお、法務局の「自筆証書遺言証書保管制度」を利用する場合は、A4サイズの用紙を使う、余白の寸法や片面のみの記載といった決まりがあります。
Q.遺言書に有効期限はある?
Q.一度書いた遺言書は書き直せる?
Q.エンディングノートに分け方を書いても効力はある?
まとめ:遺言書は「正しい形式」と「揉めない中身」の両方が大切
この記事では、遺言書の基本的なルールと文例、そして相続トラブルを防ぐためのポイントを紹介しました。
- 自筆証書遺言は「全文・日付・氏名を手書きし、印鑑を押す」というルールを守らないと無効になる
- ケース別の例文や自動作成システムを使えば、遺言書の作成が楽になる
- 形式が正しくても、遺留分や相続税対策が欠けていると相続トラブルが起きやすい
遺留分や相続税まで踏まえて財産の分け方を決めるには、専門的な知識が欠かせません。
遺言書を作成する前には、一度専門家へご相談いただくことをおすすめいたします。
私たちVSG相続税理士法人では、相続に強い税理士と、グループ内の司法書士・行政書士・提携先の弁護士が連携し、法律と税金の両面から遺言書の作成をサポートいたします。
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