国税庁では、非上場株式の評価方法の見直しが議論されており、株価が上がってしまうのではないかという懸念が広がっていましたが、国税庁が検討する見直し案は検討の前提とされないことになるようです。
一安心といえども、特例事業承継税制の期限は刻刻と迫っています。今回の記事では、オーナーでもある経営者が今何をすべきかをお伝えします。
自民党から「待った」がかかった国税庁版「残余利益モデル」
国税庁では、非上場株式の評価方法の見直しが議論されており、株価が上がってしまうのではないかという懸念が広がっていましたが、自民党の日本成長戦略本部は29日、「非上場株式の評価等を含めた成長志向型の相続税の在り方に関する緊急決議(案)」を決議しました。
決議(案)は「国税庁の非上場株式の評価見直しは、官民連携による成長投資を通じて強い経済を作っていくという政府と党で議論を積み重ねてきた政策の方向性と平仄があっているとは言えず、現行案を容認することはできない」との冒頭から始まるものとなっており、国税庁案はかなり雲行きが怪しくなってきました。
国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」において、令和10年1月以降の贈与・相続より非上場株式の評価方法を見直しをすべく議論を行ってきましたが、国税庁が発表した株価計算モデルを用いて商工会議所が一定の仮定の下で行った試算では、評価額が現行方式の2倍から5倍近くに達し、相続税負担が数千万円から数億円規模で増加する事例も確認され、「自分の会社の株も、評価方法が変わって将来的に株価が高騰してしまうのではないか」と危機感を抱く経営者が多く出ている状況でしたので、今回の自民党の緊急決議(案)によって、胸をなでおろす経営者も多いのではないでしょうか。
引き続き事業承継税制の検討を
後継者に株を贈与・相続するときに、税負担が猶予・免除される事業承継税制があります。
経営者の若返りを図るべく「特例」事業承継税制が平成30年に創設されましたが、制度の利用には特例承継計画の策定・提出を要し、専門家への相談コストや事務負担などから適用はあまり進んでいないのが実情です。
この特例事業承継税制は令和9年12月31日をもって終了します。
現在、経済産業省は特例事業承継税制の後継制度を検討しており、後継制度の対象となる企業を成長投資や賃上げを着実に実施する企業に絞り込む考えのようです。
事業拡大を目指す企業には非常にありがたい制度ですが、長年の伝統的技術を守り、維持していくことを社命としている会社や、過疎地域の生活基盤を支えるべくなんとか事業継続している零細企業は成長投資や賃上げを着実に実施するのは至難の業でしょう。
経済産業省が考える後継制度がどうなるかはまだわかりませんが、だからこそ、中小企業者に該当し、特例事業承継税制適用要件に当てはまる会社なら、株の評価がすぐに変わらなくとも、現在の特例事業承継税制の適用を考えてみてはいかがでしょうか。
特例事業承継税制の適用を受けるために経営者の方は何をいつまでにすればいいのでしょうか。
今すぐ動くべきかを見極める3つの基準
中小企業者に該当し、特例事業承継税制適用要件に当てはまる会社なら、以下のチェックをしてみましょう。
以下の3点にYESと言えるか
- 株価リスク:業績が好調、または不動産・含み益のある資産を保有している
- 後継者:親族内、あるいは社内に次の社長となる候補者が(未経験・若手であっても)決まっている
- 出口戦略:将来的に会社を第三者に売却(M&A)したり、完全に廃業したりする予定はなく、後継者に事業を引き継がせる意思がある
すべてに該当する場合、今すぐ以下の行動に移る必要があります。
税制終了に滑り込むための緊急TODOリスト
特例事業承継税制の適用を受けるには、段階を踏んだ手続きが必要です。来年(2027年)の期限に向けて、今すぐ以下の順に進めてください。
【今年中の最優先】後継者を「役員」に登記する
かつて必要だった「役員歴3年」という要件は、税制改正により撤廃されました。「贈与の直前時点で役員(取締役等)であればOK」です。
もし後継者がまだ役員になっていない場合は、今すぐ臨時株主総会を開き、役員就任の登記手続きを行ってください。まずは受贈者の資格を満たすことがスタートラインです。
【来年春頃まで】顧問税理士へ「現状の株価算定」を依頼する
「今の株価と税額シミュレーション」を税理士に依頼します。
本制度によって「いくらの税金が猶予(免除)されるのか」というメリットを数字で可視化します。
【2027年9月30日まで】「特例承継計画」を都道府県に提出する
「代表権を後継者に譲り、自社株を贈与する」という未来の計画書を都道府県へ提出し、知事の確認を受けます。
提出期限は2027年9月30日ですが、2027年の春〜夏までの提出を目指して動くのが安全です。
特例承認計画は、提出前に「認定経営革新等支援機関」による指導及び助言を受ける必要があります。
顧問税理士が「認定経営革新等支援機関」でない場合は、事業承継の専門税理士を急ぎ手配する必要があります。
【2027年12月31日まで】贈与契約の締結と代表取締役の交代
都道府県から計画の確認書を受領したら、代表者を交代し、いよいよ株式の贈与を実行し、株主名簿を書き換えます。
この「代表者交代」「株の移転」を2027年12月31日までに完全に完了させる必要があります。
「計画の提出」はノーリスク!
「本当に来年中に贈与・社長交代まで踏み切れるかまだ迷いがある」という経営者も多いはずです。
しかし、「特例承継計画(2027年9月末締め切り)」を出すこと自体には、何のペナルティも義務もありません。
計画を出したからといって、必ず代表者交代し、株を贈与しなければならないわけではなく、方向性が変わってM&Aや通常の相続に切り替えても何も問題ありません。
つまり、「将来、税金を猶予・免除にできる権利(切符)」を確保しておく行為なのです。
当法人は認定経営革新等支援機関であり、当法人が属するベンチャーサポートグループ(VSG)全体で、中小企業の融資や補助金申請、事業計画書の作成などの財務コンサルティング、および事業承継のサポートを行っています。
株価評価や特例承継計画の書き方でご不明点のある方はお気軽にお問合せください。

