記事の要約
- 相続税は、亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に、現金で一括納付するのが原則です
- 相続税が払えない場合は、売却・借入れ・延納・物納・預貯金の仮払い制度・一部分割などの方法があり、どの方法をどの順番で検討するかが大切です
- 放置すると、延滞税や督促、差押えにつながります。期限が迫る前に、早めに選択肢を整理し、必要なら専門家へ相談しましょう
相続税は、原則として現金で一括納付する必要があり、申告・納付期限も亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内と定められています。
そのため、遺産の多くが不動産で手元の現金が少ない場合や、遺産分割協議がまとまらず預貯金を使えない場合には、「相続税を期限までに払えないのではないか」と不安になる方も少なくありません。
ただし、相続税が払えない場合でも、取れる方法はいくつかあります。大切なのは、売却・借入れ・延納・物納などの選択肢を、自分の状況に合わせて正しい順番で検討することです。
この記事では、相続税が払えないときにまず確認すべきこと、6つの対処法、延納・物納の条件、放置した場合のリスク、専門家に相談すべきケースを相続専門の税理士がわかりやすくお伝えします。
目次
相続税はいつまでに払う?納付期限と支払いの原則
はじめに、相続税の納付期限と支払い方法の基本を整理します。ここを押さえておくと、後半で解説する売却・借入れ・延納・物納などの対処法を理解しやすくなります。
申告・納付期限は死亡を知った日の翌日から10カ月以内
相続税の申告と納付の期限は、どちらも「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」です。
たとえば、1月15日に亡くなったことを知った場合、その年の11月15日が申告・納付期限となります。
注意したいのは、申告期限と納付期限が同じ日である点です。相続税は、申告書を提出するだけでなく、原則として同じ期限までに納税も済ませる必要があります。
また、遺産分割協議がまとまっていない場合でも、相続税の申告・納付期限が自動的に延びるわけではありません。分割が決まっていないときは、いったん法定相続分などに従って財産を取得したものとして申告・納付する必要があります。
相続税は現金一括納付が原則
相続税は、金銭で一度に納めるのが原則です。納付書を使って金融機関や税務署の窓口で納める方法のほか、電子納税やクレジットカード納付などの方法もあります。
ただし、どの方法を選ぶ場合でも、期限までに納付することが重要です。
「遺産はあるのに、納めるための現金がない」という状態は、決して珍しくありません。相続した財産の評価額が大きくても、その中身が不動産や非上場株式など、すぐには現金化しにくい財産であれば、納税資金が不足することがあります。
期限までに払えない場合は早めに対策が必要
相続税を期限までに払えないと分かったとき、最も避けたいのは、そのまま放置することです。
期限を過ぎると延滞税が発生し、日がたつほど負担が増える可能性があります。さらに放置を続けると、税務署から督促を受けたり、最終的には財産が差し押さえられたりすることもあります。
一方で、期限までに早めに動けば、延納や物納、預貯金の仮払い制度、不動産売却、金融機関からの借入れなど、状況に応じた対処法を検討できます。
特に延納や物納は、申告期限までに申請書などを提出する必要があります。相続税が払えない可能性がある場合は、まず不足している納税資金と現金化できる財産を整理し、早めに対策を進めましょう。
相続税が払えないときに最初に確認すべきこと
相続税が払えない場合でも、いきなり延納や物納を考えるのではなく、まずはご自身の状況を整理することが大切です。
次の4点を確認しておくと、売却・借入れ・延納・物納など、どの方法を優先すべきか判断しやすくなります。

申告・納付期限まで何カ月残っているか
はじめに確認したいのが、申告・納付期限までの残り期間です。残り期間によって、現実的に選べる方法は変わります。
たとえば、不動産の売却は、買主が見つかり売却代金を受け取るまでに数カ月かかることもあります。そのため、期限が目前に迫っている場合は、売却だけで納税資金を用意するのが難しいこともあります。
残り期間が短いほど、預貯金の仮払い制度や金融機関からの借入れなど、比較的早く動ける方法を優先して検討することになります。
不足している納税資金はいくらか
次に、納めるべき相続税額に対して、手元資金がいくら不足しているのかを確認します。
相続した現預金と、ご自身がもともと持っている現預金を合わせ、そこから当面の生活費などを差し引いた金額が、納税に回せるお金の目安です。この金額と相続税額との差が、実際に用意しなければならない不足額になります。
不足額が数十万円なのか、数千万円なのかによって、取るべき対策は変わります。不足額が少なければ預貯金の仮払い制度や一部財産の売却で対応できる可能性がありますが、不足額が大きい場合は、不動産売却、借入れ、延納、物納などを本格的に検討する必要があります。
現金化できる財産があるか
相続した財産や、ご自身がもともと持っている財産の中に、売却して現金化できるものがないかも確認しましょう。
現金化できる財産としては、不動産、上場株式、投資信託、車、貴金属などが考えられます。ただし、財産によって現金化しやすさは異なります。上場株式や投資信託は比較的売却しやすい一方、不動産は買主探しや相続登記、測量などに時間がかかることがあります。
また、思い入れのある自宅や、事業に使っている財産まで手放すべきかは慎重に判断する必要があります。売却せずに済む方法として、延納や金融機関からの借入れもあわせて検討しましょう。
遺産分割協議はまとまっているか
遺産分割協議がまとまっているかどうかも、重要な確認ポイントです。
遺産分割協議がまとまっていない場合、被相続人名義の預貯金をすぐに納税資金として使えなかったり、不動産の売却を進めにくかったりすることがあります。
このような場合は、遺産分割協議全体を急ぐだけでなく、預貯金の仮払い制度を利用する方法や、納税資金分だけ先に遺産分割協議を進める方法も検討できます。
相続税が払えなくなる主なケース
ここでは、実際に「相続税を払えない」状態に陥りやすい代表的なケースを解説します。
ご自身の状況がどのケースに近いかを確認しておくと、後半で解説する対処法を選びやすくなります。
相続財産の多くが不動産で現金が少ない
最も多いのが、遺産の大半が自宅や土地などの不動産で、納税に充てられる現金や預貯金が少ないケースです。
不動産は評価額が高くても、すぐに現金化できるとは限りません。特に都市部では土地の評価額が高くなり、相続税額が大きくなることがあります。それでも手元の現金が少なければ、納税資金が不足してしまいます。
このような場合は、不動産を売却して納税資金を作るのか、金融機関から借入れをするのか、延納を利用するのかを早めに検討する必要があります。
遺産分割がまとまらず預貯金を使えない
相続人同士で遺産の分け方をめぐる話し合いが長引くと、被相続人の預貯金を納税資金としてすぐに使えないことがあります。
金融機関は口座名義人が亡くなったことを知ると、口座を凍結します。そのため、被相続人が多くの預貯金を残していても、相続人が自由に引き出して納税資金に充てることは難しくなります。
ただし、遺産分割前でも一定額の払戻しを受けられる預貯金の仮払い制度があります。遺産分割協議がまとまらない場合は、この制度や、納税資金分だけ先に遺産分割協議を進める方法を検討しましょう。
また、遺産分割がまとまっていないと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、当初の申告では適用できません。これらの特例は、誰が何を相続するかが決まっていることが前提になるためです。ただし、申告のときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、期限内に分割がまとまった段階で、後から適用できます。
想定より相続税額が高くなった
生前に見込んでいた金額よりも、実際の相続税額が高くなり、準備していた資金では足りなくなるケースもあります。
たとえば、土地の評価額が思っていたより高かった場合や、名義預金、生前贈与財産、生命保険金、死亡退職金などが相続税の計算に含まれる場合です。
また、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使えると思っていたものの、要件を満たさなかったり、遺産分割がまとまらず当初申告では適用できなかったりすることもあります。
相続税額は、財産の評価方法や特例の適用可否によって大きく変わります。納税資金の不足を防ぐためにも、早い段階で相続税額の概算を確認しておくことが大切です。
非上場株式など換金しにくい財産が多い
会社を経営していた方から自社株、つまり非上場株式を相続した場合も注意が必要です。
非上場株式は、会社の業績や資産の状況によって高い評価額がつくことがあります。一方で、上場株式のように市場で売却できるわけではないため、そのままでは納税資金に変えにくい財産です。
なお、後継者が一定の要件を満たす場合、事業承継税制によって相続税の納税が猶予されます。非上場株式の相続は特に専門的な判断が必要になるため、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
相続税が払えない場合の対処法6つ
ここからは、相続税が払えない場合の具体的な対処法を6つ解説します。
大切なのは、思いついた方法から進めるのではなく、ご自身の状況に合う方法を順番に検討することです。

一般的には、まず手元資金や相続した現預金で払えないかを確認します。遺産分割がまとまらず預貯金を使えない場合は、預貯金の仮払い制度や納税資金分の一部分割を検討します。
それでも足りない場合は、不動産や株式の売却、金融機関からの借入れ、延納を比較します。物納は、延納によっても金銭で納付することが難しい場合の選択肢として考えるとよいでしょう。
相続した不動産や株式を売却して納税資金を作る
相続した財産のうち、自分で使う予定のない不動産や上場株式などを売却し、その代金を相続税の納税資金に充てる方法です。まとまった資金を用意しやすく、売却後は不動産の管理や固定資産税の負担から解放される点がメリットです。
売却によって利益、つまり譲渡所得が出た場合は、譲渡所得税がかかります。ただし、相続税を納めた人が、相続や遺贈で取得した財産を一定期間内に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。
この特例を使えるのは、原則として相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した場合です。通常は、相続開始から3年10カ月以内に売却するケースが多いと考えると分かりやすいでしょう。
一方で、不動産は買主が見つかるまでに時間がかかることが多く、申告・納付期限に間に合わないおそれがあります。その場合は、いったん金融機関からの借入れで納税を済ませ、その後に時間をかけて買主を探す方法もあります。
この方法は、手放してもよい不動産や株式があり、売却までの時間にある程度余裕がある方に向いています。
金融機関から借入れをして納付する
相続税の納税資金が一時的に足りない場合は、金融機関から借入れをして納付する方法もあります。金融機関によっては、相続税の納税を目的とした融資商品を扱っています。財産をすぐに売却せず、手元に残しながら資金を用意できる点がメリットです。
商品によっては、相続税の納付だけでなく、代償分割の支払いや専門家への報酬などに使える場合もあります。ただし、利用できる資金使途は金融機関によって異なるため、事前に確認が必要です。
借入れをする場合は、保証人や担保が必要になることがあります。また、審査に時間がかかったり、利息の負担が生じたりします。遺産分割が終わっていないと融資を受けにくい場合もあるため、早めに金融機関へ相談しておきましょう。
この方法は、自宅や土地を手放したくない方、または期限までに不動産売却が間に合わない方に向いています。延納を利用する場合の利子税と、金融機関から借入れをした場合の利息を比較して判断するとよいでしょう。
延納を利用して分割で納付する
延納は、相続税を分割して納められる制度です。一度に納付するのが難しい場合に、一定の要件を満たすことで、複数年に分けて納付できます。延納期間は相続財産の内容などによって異なり、最長20年となるケースもあります。
延納の期間中は利子税がかかります。利子税の割合は年度や財産の内容などによって変わるため、金融機関から借入れをした場合の利息と比較して判断することが大切です。
延納は、すぐに不動産を売却したくない方や、毎年の収入から少しずつ納付できる方に向いています。要件や注意点は、後ほど詳しく解説します。
物納を利用して相続財産で納付する
物納は、現金の代わりに相続した財産そのもので相続税を納める制度です。ただし、相続税は金銭での一括納付が原則であり、延納によっても金銭で納めることが難しい場合に検討する、いわば最終的な選択肢です。
また、物納できる財産には順位があり、管理や処分が難しい財産は物納できないことがあります。
物納は売却より有利とは限りません。収納価額は相続税評価額を基準にするため、売却して現金で納めた方がよいケースもあります。物納を検討する場合は、物納できるかどうかだけでなく、売却した場合との損得も比較しましょう。
預貯金の仮払い制度で納税資金を確保する
遺産分割がまとまらず預貯金が凍結されている場合に役立つのが、預貯金の仮払い制度です。この制度を利用すると、遺産分割協議が終わる前でも、被相続人名義の預貯金から一定額の払戻しを受けられます。
金融機関の窓口で手続きする場合、引き出せる金額は、原則として「口座ごとの残高 × 3分の1 × その相続人の法定相続分」と「1つの金融機関につき150万円」のいずれか低い金額までです。
一時的な資金確保には有効ですが、上限があるため、これだけで相続税全額をまかなえるとは限りません。また、戸籍などの必要書類をそろえる必要があるため、利用する場合は早めに金融機関へ確認しましょう。
納税資金分だけ先に遺産分割協議を進める
遺産全体の分け方がまとまらない場合でも、納税に必要な預貯金などの部分だけ先に分ける方法があります。これを一部分割といいます。
一部分割を行えば、相続税の納付に必要な資金を確保しつつ、分けにくい不動産などについては時間をかけて話し合いを続けられます。
ただし、一部分割をする場合も、相続人全員の合意が必要です。合意がないまま相続財産を使ったり、不動産の売却を進めたりすると、後のトラブルにつながる可能性があります。
合意した内容は、後々の誤解を防ぐためにも、遺産分割協議書などの書面に残しておくことが大切です。
延納・物納を利用するための条件と注意点
対処法の中でも、延納と物納は要件や手続きが複雑です。申請すれば必ず認められるわけではないため、利用を検討する場合は条件と注意点を早めに確認しておきましょう。
国税庁の処理状況によると、令和7年度の許可件数は延納が891件、物納が40件でした。「土地があるから物納すればよい」と安易に考えず、他の方法との比較も含めて検討しましょう。
延納は相続税を分割で納付できる制度
延納は、一度に納めるのが難しい相続税を、一定の要件を満たすことで年払いにより分割納付できる制度です。
延納できる期間は、遺産に占める不動産などの割合によって変わります。不動産などの割合が高い場合には、最長20年まで認められることがあります。
延納期間中は利子税がかかります。利子税の割合は延納特例基準割合などをもとに計算されるため、金融機関から借入れをした場合の金利負担と比較して判断することが大切です。
延納が認められるための要件と注意点
延納を利用するには、次のすべての要件を満たす必要があります。
- 相続税額が10万円を超えていること
- 金銭で一度に納めることが難しい事情があり、その難しい金額の範囲内であること
- 延納する税額と利子税に相当する担保を提供すること
- 期限までに、延納申請書と担保に関する書類を税務署へ提出すること
担保については例外があり、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下であれば、担保を提供する必要はありません。
注意したいのは、延納で分割できるのは、あくまで「金銭で納めることが難しい金額」までという点です。相続した現預金や、ご自身の現預金から当面の生活費などを差し引いた金額は、まず納税に充てるものとして考えます。
そのため、手元資金を残したまま、不足額のすべてを延納できるとは限りません。延納を検討する場合は、どの財産を納税に充てられるか、どの金額なら分割納付が必要かを整理しておきましょう。
物納は延納でも納付が難しい場合の制度
物納は、延納を利用しても金銭で納付することが難しい場合に、相続した財産そのもので相続税を納める制度です。
相続税は金銭で一括納付するのが原則です。一括納付が難しい場合に延納を検討し、延納によっても金銭で納付することが難しい場合に、物納を検討する流れになります。
また、相続時精算課税の適用を受けた財産や、一定の納税猶予の特例を受けた財産などは、物納の対象にできません。
物納できる財産・できない財産
物納に充てられる財産には順位があり、先の順位の財産から選ぶ決まりになっています。

ただし、物納できる種類の財産であっても、そのままでは国が引き取れない「管理処分不適格財産」に当たる場合、物納は認められません。
たとえば、次のような不動産は物納が難しくなります。
- 担保権が設定されている不動産
- 権利関係に争いがある不動産
- 境界が明らかでない土地
- 管理や処分に過大な費用がかかる不動産
- 共有関係や賃貸借関係が複雑な不動産
物納は要件が厳しく、申請しても認められないことがあります。検討する場合は、その財産が物納に適しているかを早い段階で確認しましょう。
延納・物納は期限内に申請する必要がある
延納も物納も、相続税の申告期限までに申請書などを提出する必要があります。
なお、担保や物納に関する添付書類については、期限までにそろわない場合、届出書を提出することで提出期限を延長できます。延納の担保関係書類は最長6カ月、物納の手続関係書類は最長1年まで延長が可能です。
いずれにしても、延納や物納は書類の準備に時間がかかります。利用を検討している場合は、申告期限の直前ではなく、早めに税理士や税務署へ相談することが大切です。
相続税が払えないときのリスクとやってはいけないこと
ここでは、相続税を払えないまま放置した場合に起こることと、避けるべき行動を解説します。不安をあおる意図はありませんが、リスクを正しく知っておくことが、落ち着いた判断につながります。
延滞税や加算税が発生することがある
相続税を期限までに納付できないと、まず延滞税がかかります。延滞税は、納期限の翌日から納付を終える日までの日数に応じて発生します。
令和8年(2026年)の延滞税の割合は、納期限の翌日から2カ月以内が年2.8%、2カ月を超えると年9.1%です。2カ月を境に割合が大きく上がるため、遅れてしまった場合でも、できるだけ早く納付することが負担を抑えるポイントです。
さらに、申告そのものをしていなかった場合は、無申告加算税がかかります。無申告加算税の割合は、税務署からの税務調査の通知を受ける前に自主的に申告したか、税務署の調査を受けた後に申告したかなどによって変わります。
財産を意図的に隠していたなど悪質な場合には、より重い重加算税が課されることもあります。
税務署から督促状や電話連絡が来る
期限を過ぎても納付がないと、税務署から督促状が届いたり、電話で連絡が来たりすることがあります。
督促は、納付をうながすための正式な手続きです。ここで放置せずに対応し、納付が難しい事情を伝えて相談すれば、その後の進め方について案内を受けられることもあります。
連絡を無視し続けることが、状況を悪化させる原因になります。
自宅や土地が差し押さえられる可能性がある
督促を受けても納付や相談をしないままでいると、財産の差押えに進むことがあります。
差し押さえられた財産は、最終的に公売などで換価され、納税に充てられる可能性があります。自宅や土地が対象になることもあり、住まいを失う事態にもなりかねません。
こうした結果を避けるためにも、相続税を期限までに払えないと分かった時点で、売却、借入れ、延納、物納などの選択肢を早めに検討することが大切です。
また、相続税には連帯納付義務があり、ほかの相続人が相続税を納めていない場合、その分の納付を求められることがあります。自分の相続税を納めた後でも、ほかの相続人の納税状況に注意が必要です。
申告しないまま放置してはいけない
「払えないから申告もしない」という対応は、最も避けるべきです。
申告をしないまま期限を過ぎると、無申告加算税などが加わり、負担がさらに重くなる可能性があります。
一方で、納税が難しくても申告を期限内に済ませておけば、延納などの制度を検討できる余地があります。相続税を払えない場合でも、まずは申告と納税資金の確保を分けて考え、期限内申告を優先しましょう。
税額が分からないまま不動産を急いで売却しない
期限が迫ると、あわてて不動産を売却したくなるかもしれません。しかし、正確な相続税額や、使える特例を確認しないまま急いで売却すると、かえって損をすることがあります。
たとえば、相続した不動産を一定期間内に売却した場合、取得費加算の特例によって譲渡所得税の負担を抑えられる可能性があります。
また、小規模宅地等の特例を検討している土地については、取得者や宅地の種類によって、申告期限までの保有継続などが要件になる場合があります。売却のタイミングによって特例の適用に影響することがあるため、事前確認が必要です。
不動産の売却は、一度進めると後戻りが難しい手続きです。売却前に、相続税額、使える特例、売却後の譲渡所得税、相続人間の合意を確認しておきましょう。
相続税が払えない場合に相談すべきケースと相談前の準備
相続税が払えない場合は、税額だけでなく、不動産売却、借入れ、遺産分割、延納・物納の要件をあわせて判断する必要があります。
特に次のようなケースでは、自分だけで判断せず、早めに専門家へ相談すると選択肢を整理しやすくなります。
申告期限まで3カ月を切っている場合
申告期限まで残りわずかな場合は、取れる方法が限られてきます。
不動産売却で納税資金を用意しようとしても、買主探しや売買手続きに時間がかかり、期限までに間に合わないこともあります。
この場合は、預貯金の仮払い制度や金融機関からの借入れ、延納申請の可否など、比較的早く動ける方法を優先して検討する必要があります。期限まで3カ月を切っている場合は、できるだけ早く相談しましょう。
相続財産の大半が不動産である場合
相続財産の大半が不動産で、現金や預貯金が少ない場合は、早めに専門家へ相談した方がよいケースです。
不動産は評価額が高くても、すぐに納税資金に変えられるとは限りません。また、自宅・賃貸物件・共有不動産・農地など、不動産の種類によって、売却のしやすさや税務上の注意点も異なります。
不動産を売却するのか、借入れで納税するのか、延納を利用するのかは、相続税額、申告期限までの残り期間、不動産の状況によって変わります。判断に迷う場合は、相続税額と納税資金の不足額を整理したうえで、相続税に詳しい税理士へ相談しましょう。
遺産分割協議がまとまっていない場合
遺産分割協議がまとまっていない場合は、被相続人の預貯金を納税資金として使いにくくなったり、不動産売却を進めにくくなったりします。
この場合は、預貯金の仮払い制度を利用できるか、納税資金分だけ先に一部分割できるかを検討します。
また、相続人同士で意見が対立している場合や、話し合いが進まない場合は、税理士だけでなく弁護士への相談が必要になることもあります。
延納や物納を検討している場合
延納や物納は要件や手続きが複雑で、期限内の申請と担保・書類の準備が必要です。
特に物納は、財産があるからといって必ず認められる制度ではありません。延納や物納を検討している場合は、申請する前に、売却・借入れも含めてどれが現実的かを比較しておきましょう。
相談前に整理しておきたい情報
相談をスムーズに進めるために、次の情報をまとめておくと役立ちます。
- 被相続人が亡くなった日
- 相続人の人数・関係・連絡状況
- どんな財産をいくら相続したか
- 相続した現預金と、ご自身の現預金の残高
- おおよその相続税額と、不足している金額
- 遺産分割協議の進み具合
- 売却できそうな不動産や株式の有無
- 担保に使えそうな財産があるか
- 申告・納付期限までの残り日数
すべてを正確にそろえる必要はありません。分かる範囲で整理しておくだけでも、初回相談で具体的な提案を受けやすくなります。
まとめ|相続税が払えない場合は早めに選択肢を整理しよう
今回は、相続税が払えないときの対処法と、延納・物納・売却・借入れの判断ポイントを解説しました。
- 相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に、現金で一括納付するのが原則です
- 相続税が払えない場合は、売却・借入れ・延納・物納・預貯金の仮払い制度・一部分割などの方法を検討できます
- 放置すると、延滞税や督促、差押えにつながる可能性があります
- 期限までの残り期間、不足している納税資金、現金化できる財産、遺産分割の状況を早めに整理することが大切です
特に、申告期限まで時間がない場合や、相続財産の大半が不動産である場合、延納・物納を検討している場合は、自分だけで判断するのが難しくなります。
VSG相続税理士法人では、相続税に関するご相談を無料で受け付けております。相続税の納税資金に不安がある方は、早めにご相談ください。

