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最終更新日:2026/8/18

紛失した土地の権利証は再発行できる?売却や相続への影響、悪用リスクを解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

VSG司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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記事の要約

  • 権利証(登記済証・登記識別情報)は紛失しても再発行できないが、所有権は登記記録で公示されているため失われず、権利証だけで勝手に名義変更されることもない
  • 実印・印鑑証明書などと一緒に盗難された場合は悪用リスクが高まるため、法務局への不正登記防止申出・登記識別情報の失効申出・警察への届出を早めに行う
  • 権利証がなくても、売却や生前贈与は3つの代替手段で進められ、相続登記では亡くなった方の権利証は原則不要のため、通常どおり手続きできる

「大切に保管していたはずの土地の権利証が見つからない」「親から相続した家の権利証をなくしてしまった」。このような場合、再発行できるのか、悪用されないか、売却や相続に影響しないかと不安になる方も多いでしょう。

結論からいうと、権利証(登記済証・登記識別情報)は、紛失しても再発行できません。ただし、権利証をなくしただけで不動産の所有権を失うことはなく、権利証だけを使って第三者が勝手に名義変更できるわけでもありません。

また、権利証が手元になくても、売却や生前贈与では事前通知制度や司法書士による本人確認情報などを利用して手続きを進めることができます。相続登記についても、亡くなった方の権利証は原則として必要ありません。

一方で、権利証と一緒に実印や印鑑登録カードなどを盗まれた場合や、登記識別情報の12桁の符号を第三者に知られたおそれがある場合には、早めの対策が必要です。

この記事では、権利証を紛失しても再発行できない理由や悪用のリスク、紛失・盗難時に取るべき対策、権利証なしで売却・生前贈与を行う方法、相続登記への影響までわかりやすく解説します。

【結論】権利証(登記済証・登記識別情報)は再発行できない

権利証は、紛失・盗難・焼失した場合でも、原則として再発行や再交付(登記識別情報の再通知)を受けることはできません。まずは、なぜ再発行されないのか、そして紛失によって所有権がどうなるのかを整理します。

なぜ紛失しても再発行されないのか?

権利証は、不動産の登記手続きが完了した際に交付・通知されるもので、紛失した場合に同じものを再発行する制度はありません

現在使われている登記識別情報も、不動産と登記名義人となった申請人ごとに個別に付与される情報であり、一度通知されたものと同じ情報を再び通知してもらうことはできません。

そのため、権利証を紛失した場合は、新しい権利証を発行してもらうのではなく、売却や贈与などで登記手続きが必要になった際に、事前通知制度や司法書士による本人確認情報など、別の方法で本人確認を行います。

なお、一般に「権利証」と呼ばれているものには、旧制度の「登記済証」と、現在の「登記識別情報」の2種類があります。

「登記済証」と「登記識別情報」の違い

「登記済証」と「登記識別情報」は、どちらも不動産の登記手続きで名義人本人であることを確認するために使われますが、形式や取り扱いが異なります。

2005年(平成17年)の不動産登記法改正に伴って登記手続きのオンライン化が進み、それまでの「登記済証」に代わって「登記識別情報」が通知されるようになりました。法務局ごとに順次切り替えられ、おおむね2005年から2008年ごろに移行しています。

登記済証は、法務局の登記済印が押された書面そのものが重要です。一方、登記識別情報は、登記によって新たに名義人となった人に通知される12桁の英数字の符号で、この符号を登記手続きの際に提供します。

登記済証 登記識別情報
交付された時期 おおむね2005〜2008年より前 おおむね2005〜2008年以降
形式 登記済印が押された書面 12桁の英数字による符号
本人確認の方法 書面そのもの 12桁の符号
再発行 できない できない

登記識別情報は通常、「登記識別情報通知」という書面などで通知されますが、重要なのは通知書そのものではなく、記載された12桁の符号です。 この符号を第三者に知られると不正利用につながるおそれがあるため、他人の目に触れないよう厳重に管理する必要があります

紛失しても不動産の所有権はなくならない

権利証が見つからないと、「このまま不動産の権利まで失ってしまうのではないか」と不安になるかもしれません。しかし、権利証を紛失しただけで、不動産の所有権が失われることはありません

権利証は所有権そのものを表すものではなく、売却や贈与などの登記手続きで、名義人本人であることを確認するために使われる書類・情報です。

そのため、権利証を紛失しても、登記記録上の所有者名義や実際の所有権が、それだけで変わることはありません。 不動産の権利関係は法務局の登記記録に記録され、公示されています。

つまり、「権利証を持っている人=不動産の所有者」というわけではありません。権利証をなくしたからといって、直ちに不動産を失ったり、拾った人が所有者になったりすることはないので、その点は安心してよいでしょう。

権利証を紛失!悪用されて勝手に名義変更されるリスクは?

権利証を紛失すると、「拾った人や盗んだ人に悪用されて、不動産の名義を勝手に変更されるのではないか」と不安になるかもしれません。

しかし、権利証だけで第三者が勝手に所有権移転登記をすることはできません。売買や贈与による名義変更では、権利証以外にも本人確認のための書類や情報が必要になるためです。

ただし、権利証と実印や印鑑登録カード、本人確認書類などを一緒に盗まれた場合は、不正登記のリスクが高まります。紛失した状況によっては、法務局への申出など早めの対策が必要です。

権利証だけで名義変更はできない

売買や贈与による売買や贈与による所有権移転登記は、原則として、不動産を手放す人と取得する人が共同で申請します。

その際、不動産を手放す側は、権利証(登記済証・登記識別情報)だけでなく、印鑑証明書などの必要書類を提出し、本人であることや登記申請の意思を確認できる状態にする必要があります。

そのため、第三者が権利証だけを拾ったり盗んだりしても、それだけで不動産の名義を変更することはできません

もっとも、権利証は登記手続きで本人確認に使われる重要な書類・情報です。紛失したからといって放置してよいわけではなく、盗難の可能性がある場合などは、状況に応じた対策を取ることが大切です。

【注意】実印や印鑑証明書、身分証と一緒に紛失・盗難された場合は危険

特に注意が必要なのは、空き巣などによって、権利証と一緒に実印・印鑑登録カード・本人確認書類なども盗まれた場合です。

不正な登記に利用されるおそれのある書類や情報がまとめて第三者の手に渡るため、権利証だけを紛失した場合と比べて、なりすましによる不正登記のリスクが高まります。

このような場合は、警察への届出や印鑑登録の廃止・改印に加え、法務局への「不正登記防止申出」や、登記識別情報を紛失した場合の「失効申出」などを検討しましょう。

具体的な対策について、次の章で詳しく解説します。

権利証を紛失・盗難された場合にすぐにやるべき対策

権利証だけを紛失した場合は、直ちに不動産の名義を変更されるわけではありません。ただし、盗難の可能性がある場合や、実印・印鑑登録カード・本人確認書類なども一緒になくした場合は、早めの対応が必要です。

法務局への「不正登記防止申出」を行う

「不正登記防止申出」は、なりすましによる不正な登記が行われる差し迫った危険がある場合に、法務局へ申し出る制度です。

申出をしておくと、その後3カ月以内に対象となる不動産について登記申請があった場合、法務局から申出人へ通知されるとともに、登記官が申請者に正当な権限があるかを確認します。

ただし、不正登記防止申出をしただけで、登記申請そのものを禁止できるわけではありません。あくまで、不正な登記が疑われる場合に、登記官が本人確認などを慎重に行うための制度です。

申出の有効期間は3カ月で、自動的に更新されるものではありません。不正登記のおそれが続いている場合は、3カ月ごとに改めて申出を行います。

また、申出は本人が法務局へ出頭して行うのが原則です。本人が出頭できない事情がある場合は、管轄の法務局に取扱いを確認しましょう。

登記識別情報の「失効申出」を行う

紛失した権利証が登記識別情報で、12桁の符号を第三者に知られたおそれがある場合は、「失効申出」を検討します。

失効申出をすると、その登記識別情報は以後の登記手続きで使用できなくなります。そのため、登記識別情報が記載された書類を盗まれた場合や、符号を第三者に見られた可能性がある場合の不正利用防止に有効です。

なお、一度失効させた登記識別情報を元に戻すことはできません。将来、不動産を売却・贈与する際には、事前通知制度司法書士による本人確認情報など、別の方法で本人確認を行うことになります。

警察へ遺失届・被害届を提出する

権利証をなくした場合は、その状況に応じて警察への届出も行いましょう。

どこかで落とした、置き忘れたなどの紛失であれば「遺失届」、空き巣などによる盗難であれば「被害届」を提出します。

不正登記防止申出を行う際には、不正登記のおそれが生じた原因に応じて必要な措置を取っていることが求められるため、警察への届出がその対応の一つとなる場合もあります。

また、実印や印鑑登録カードも一緒に盗まれた場合は、市区町村で印鑑登録の廃止や改印の手続きも早めに行いましょう

権利証がない状態で「不動産の売却・生前贈与」を行う3つの代替手段

権利証を紛失していても、不動産を売却したり、生前贈与したりすることは可能です。

売買や贈与による所有権移転登記では、原則として権利証(登記済証・登記識別情報)が必要ですが、紛失などによって提出できない場合には、別の方法で本人確認を行う制度が用意されています。

主な方法は、次の3つです。

それぞれ、手続きの流れや費用、利用しやすい場面が異なります。

① 法務局から本人へ確認する「事前通知制度」

事前通知制度は、権利証を提出せずに登記を申請したあと、法務局が現在の登記名義人へ通知を送り、本人からの回答によって登記申請が本人の意思によるものか確認する方法です。

登記申請後、法務局から本人限定受取郵便などで事前通知が送付されます。本人は、登記申請の内容に間違いがないことを確認し、所定の期間内に回答します。

回答期限は、通知が発送された日から原則として2週間以内です。海外に住所がある場合は4週間以内となります。期限内に回答しなければ、登記手続きを進めることができません。

事前通知制度そのものに追加の費用はかかりませんが、登記が完了するまでに時間がかかり、予定どおり登記できるかを申請時点で確定できないというデメリットがあります。

そのため、売買代金の支払いと所有権移転登記を同日に行う不動産売買では、利用しにくい方法です。

② 司法書士などが本人確認を行う「本人確認情報の提供」

不動産売買などでよく利用されるのが、司法書士などの資格者代理人に「本人確認情報」を作成してもらう方法です。

司法書士が登記名義人と面談し、運転免許証などの本人確認書類や、不動産を取得した経緯などを確認したうえで、本人確認情報を作成して法務局へ提出します。

その内容を登記官が適切と認めた場合は、事前通知を行わずに登記手続きを進めることができます。

事前通知のように登記申請後の回答を待つ必要がないため、売買代金の決済と同時に所有権移転登記を行う場合に利用しやすい方法です。

ただし、本人確認情報の作成には司法書士への報酬がかかります。金額は司法書士事務所や案件によって異なるため、依頼する際に確認しておきましょう。

③ 公証人による本人確認

公証人に本人確認をしてもらい、登記申請に必要な書面を認証してもらう方法もあります。

公証人が、登記名義人本人であることを確認したうえで、登記申請に関する委任状などを認証します。この認証を利用することで、権利証がない場合でも登記手続きを進めることができます。

公証人による認証には手数料がかかりますが、司法書士に本人確認情報の作成を依頼する場合より費用を抑えられることがあります。

紙の書面による認証では、本人または代理人が公証役場へ出向くのが基本です。電子的な手続きを利用できる場合もあるため、利用を検討する際は公証役場へ確認するとよいでしょう。

費用 特徴 向いているケース
事前通知制度 原則として追加費用なし 法務局からの通知に期限内に回答する必要がある 急ぐ必要がない場合
司法書士による本人確認情報 司法書士報酬が必要 事前通知を省略できるため手続きしやすい 不動産売買など、決済日に確実に登記を進めたい場合
公証人による本人確認 公証人の認証手数料が必要 費用を抑えられる場合がある 公証人による認証を利用しやすい場合

不動産売買では、買主への所有権移転と売買代金の支払いを同日に行うことが一般的です。そのため、登記完了まで時間のかかる事前通知制度より、司法書士による本人確認情報が利用されることが多くあります

どの方法が適しているかは、売買か贈与か、手続きまでの期間、費用などによって異なります。権利証を紛失した状態で不動産の売却や贈与を予定している場合は、早めに司法書士へ相談しておくと手続きを進めやすくなります。

【相続】亡くなった親の権利証が見つからない!相続登記はできる?

親が亡くなったあと、家や土地の権利証が見つからなくても、通常の相続登記では被相続人の権利証(登記済証・登記識別情報)は原則として必要ありません

ただし、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所がつながらない場合や、相続人以外への遺贈などでは、権利証が必要になったり、本人確認の資料として役立ったりすることがあります。

相続登記において「亡くなった方の権利証」は原則不要

売買や生前贈与では、不動産を手放す本人の意思を確認するため、原則として権利証が必要です。

一方、相続は被相続人の死亡によって発生するため、通常の相続登記では、被相続人の意思を権利証で確認する必要がありません。戸籍謄本や遺産分割協議書などの必要書類をそろえれば、権利証が見つからなくても相続登記を進めることができます。

なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月1日より前の相続についても、原則として2027年3月31日までに申請が必要です。

例外として相続登記に権利証が必要になるケースとは?

代表的なのが、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所がつながらないケースです。

通常は住民票の除票や戸籍の附票などで住所の変遷を確認しますが、保存期間の経過などで取得できない場合があります。このようなときは、登記済証などを同一人物であることを確認する資料として利用できることがあります。

また、相続人以外の第三者へ不動産を遺贈する場合は、原則として被相続人の権利証が必要です。ただし、紛失していても、事前通知制度などを利用して登記を進めることができます。

権利証の紛失に関してよくある質問(FAQ)

権利証が「登記済証」か「登記識別情報」かによって扱いが異なります。

登記済証(昔の権利証)は、コピーを原本の代わりに使うことはできません。 原本を紛失した場合は、事前通知制度や司法書士による本人確認情報など、別の方法で手続きを進めます。

一方、登記識別情報は通知書そのものではなく、記載された12桁の符号が重要です。そのため、符号が記載された部分をコピーすると、第三者に情報を知られるおそれがあります。コピーも原本と同様に厳重に管理し、符号を知られた可能性がある場合は失効申出を検討しましょう。

まとめ|相続不動産の売却や相続登記のお困りごとはVSG税理士法人にご相談ください

権利証(登記済証・登記識別情報)は、紛失しても再発行できません。ただし、権利証をなくしただけで不動産の所有権が失われたり、権利証だけで勝手に名義変更されたりするわけではありません。

権利証がなくても、売却や生前贈与は事前通知制度や司法書士による本人確認情報などを利用して進めることができます。また、通常の相続登記では、亡くなった方の権利証は原則として必要ありません。

一方、実印なども一緒に盗まれた場合や、登記簿上の住所と亡くなった方の最後の住所がつながらない場合などは、個別の対応が必要になることがあります。

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