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最終更新日:2026/8/10

相続定期預金とは?金利や解約時の注意点、預ける前に確認したいこと

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

VSG相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、立川、千葉、埼玉、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡などの全国の主要都市16拠点にオフィス展開し、年間3,500件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
YouTube:相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】

記事の要約

  • 相続定期預金は、相続で受け取った資金を原資にできる、金利が優遇(上乗せ)された定期預金のこと
  • 優遇金利が適用されるのは初回の満期日まで(多くは3カ月〜1年程度)であり、満期後は通常の金利に移行する
  • 遺産を預ける前に、相続税の納税資金を確保できているかを確認すること

相続定期預金は、相続財産の置き場所として、有効な選択肢のひとつです

金融機関で相続の手続きをしたときに、「相続定期預金」をすすめられた方もいらっしゃることでしょう。

パンフレットに記載されている金利を見て、通常の預金金利との差に驚かれたこともあるかもしれません。

ただし、相続定期預金の金利の見方や適用期間については、あらかじめ正しく把握しておくことが大切です

特に相続税の申告が必要なご家庭では、預け入れる金額を決める前に考慮すべきことがあります。

この記事では、次のことについてお伝えします。

  • 相続定期預金のしくみと、通常の定期預金との違い
  • 金利表示(例:「年2.5%」)に対して実際に受け取れる利息の計算方法
  • 申し込みに必要な条件と必要書類
  • 税理士の視点から、預け入れ前に確認しておきたい留意点

なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けております。
また、当グループ内には資産運用のご相談を承るVSGアセットマネジメント株式会社もございますので、なにかご不安なことがあればお気軽にご連絡ください。

相続定期預金とは「相続財産を対象とした定期預金」

相続定期預金とは、相続や遺贈によって受け取ったお金を原資として預け入れることを条件に、一定の金利が上乗せされる定期預金です

金融機関側には、「相続で発生したまとまった資金を自行に留めておきたい」という意図があるため、通常の定期預金よりも高い金利が設定されています。

通常の定期預金との違い:優遇金利は期間限定

通常の定期預金との違いは、以下のとおりです。

項目 通常の定期預金 相続定期預金
金利 店頭表示金利 上乗せされた優遇金利
優遇期間 初回の満期日まで(3カ月、6カ月、1年、3年など金融機関によって異なる)
対象者 誰でも可 相続で資金を取得した相続人本人
対象資金 制限なし 原則は、相続により取得した資金の範囲内
申込方法 窓口・ATM・インターネット 原則として窓口のみ

最も大きな違いは、「金利が優遇される期間が限定されている」ことです。

通常の定期預金は、預入期間中はずっと契約時の金利が適用されます。

一方、相続定期預金は、初回の満期日を迎えると通常の店頭表示金利に戻ります

商品の名称は、取扱金融機関によって異なりますが、基本的なしくみに大きな違いはありません。

主な名称例

  • 相続定期預金
  • 相続金専用特別金利定期預金プラン
  • 相続資金コース
  • 相続定期預金専用金利プラン

「相続で受け取ったお金を、決まった期間だけ高い金利で預かる商品」と捉えておくとよいでしょう。

表示金利と実際の受取利息について

たとえば、「当初3カ月間:年2.5%(税引後 年1.992%)」といった金利が提示されている場合、現在の普通預金金利と比べると、魅力的な水準に見えます。

それでは、仮に1,000万円を預け入れた場合、実際に受け取れる利息はいくらになるのでしょうか。

【注意】金利表示は「年率」である

金融機関が提示する金利は、すべて「お金を1年間預け入れた場合の利率(年率)」を基準としています。

そのため、たとえば預入期間が3カ月間である場合、実際に受け取れる利息は、単純計算では、年率で計算した利息の「4分の1」です

さらに、年2.5%などの優遇金利が適用されるのは、初回の満期日までに限られる商品もあります。

3カ月物の相続定期預金を自動継続した場合、満期後は「通常の3カ月物の定期預金」の店頭表示金利に切り替わるのが一般的です。

この前提を考慮せずに計算してしまうと、想定していた利息額と実際の入金額が大きくずれてしまいます。

【例】1,000万円を年2.5%で3カ月預け入れた場合

実際の受取額を試算してみましょう。

計算式

税引後の受取利息 = 1,000万円 × 1.992% × 3カ月 ÷ 12カ月 = 49,800円

※計算に使用した「1.992%」は、利息にかかる20.315%の税金を控除したあとの利率です。
また、実際の利息は、預入日数による日割り計算や金融機関所定の端数処理によって数円~数十円程度異なる場合があります。

実際に受け取れる利息は、約4万9,800円です。

相続定期預金に1,000万円を年2.5%で3カ月預け入れた場合の利息額

年2.5%という表記から「25万円程度の利息がもらえる」とイメージしていた場合は、実際の受取額との差を感じられるかもしれません。

ただし、この利息額を一概に「少ない」とは言えないでしょう。
同じ金額を普通預金に据え置いた場合の受取利息は、税引後で数千円程度です。

3カ月間という短期間でも受取利息額に差が出るため、当面の使い道が決まっていない資金の預け先としては、相続定期預金も選択肢のひとつになり得ます

【補足】相続定期預金がインフレ対策になるとは限らない

金融機関の窓口で「物価上昇が続いているため、このままだと実質的な資産価値が目減りする」と説明を受けた方もいらっしゃるかもしれません。

実際に、2026年6月の消費者物価指数は前年同月比で1.7%上昇しました。

しかし、相続定期預金が長期的なインフレ対策になるとは限りません

仮に1,000万円を年2.5%の相続定期預金に3カ月預けた場合、税引後の受取利息は約4万9,800円となり、元本に対する3カ月間の収益率は約0.498%です。

ただし、この0.498%は3カ月間の収益率である一方、消費者物価指数の1.7%は前年同月から1年間の物価変動を示した数値です。

そのため、両者をそのまま比較して「相続定期預金の金利が物価上昇率を下回る」と判断することはできません。

それでも、ここで例に挙げた3カ月ものの場合、年2.5%の優遇金利が適用されるのは初回の3カ月間だけであり、満期後は通常の店頭表示金利へ移行します。

相続定期預金は、当面使わない資金の一時的な預け先としては有効ですが、長期的な物価上昇への備えとしては十分でない可能性があります

なお、物価上昇の説明に続いて、投資信託などの投資性商品を案内されることもあります。

商品の提案を受けた際は、その場ですぐに判断せず、元本割れの可能性や手数料、資金を使用する時期を確認したうえで検討することが大切です。

高金利の相続定期預金には「条件」がある

特に高水準な金利が設定されているプランには、一定の条件が付帯されていることが一般的です。

条件の付け方には、大きく2つのタイプがあります。

項目 定期預金のみのタイプ 投資商品とのセット型タイプ
対象商品 相続資金を円定期預金に預ける 投資信託・ファンドラップと円定期預金を同時に申し込む
最低預入金額 10万円、100万円、1,000万円など商品により異なる 500万円、1,000万円など商品により異なる
主な条件 相続資金の取得時期、対象資金、利用回数など 申込額の一定割合を投資商品に充てることなど
元本割れリスク 定期預金部分は原則として元本割れしない 投資商品部分には元本割れのリスクがある
手数料 原則として預入手数料はない 投資信託の購入時手数料・信託報酬などがかかる場合がある

このように、まとまった資金を定期預金のみに預けるか、リスクを伴う商品と組み合わせて預けるかを選択することになります。

特に投資商品と組み合わせるタイプは、定期預金の利息以上に投資部分の運用結果が全体に影響してきます。

十分な検討なしに選択することは、避けたほうがよいでしょう。

優遇期間終了後の金利推移:店頭表示金利に切り替わる

相続定期預金は、最初の満期日を迎えると多くの場合で自動継続されます(非自動継続、普通預金への入金などに変わる商品もあります)。

自動継続される場合、2回目以降は満期日時点の店頭表示金利(通常の定期預金金利)が適用されるのが一般的です

満期を迎えたあとは資金をどのように活用するか、預け入れの段階でおおまかに決めておくとよいでしょう。

相続定期預金の利用条件

相続定期預金は、誰でもいつでも預けられる商品ではありません。

見落としがちな適用条件がいくつかあるため、申し込みの前に以下の点をご確認ください。

確認すること 押さえておきたい内容
申込期限 相続手続きの完了、またはお金を受け取ってから1年〜3年以内といった期限がある(金融機関によって期限が異なる)
預入可能額 原則として、相続により取得した金額が上限(商品によっては、相続資金の受取額を超えて預け入れられる場合がある)
対象資金の範囲 相続した現金や預金のほか、不動産や株式の売却代金、死亡保険金も対象になる場合がある
申込方法 原則として窓口のみ(WebやATMからの申し込みはできないことが多い)
必要書類 ・相続人であることがわかる書類
・相続手続きの完了時期がわかる書類
・預けるお金が相続で得たものだとわかる書類
取扱店舗 一部の支店では取り扱っていない場合がある
取扱期間 期間を限定して募集していることがある
利用回数 相続したお金につき1回限りと規定していることがある

死亡保険金を預入原資にできる相続定期預金もあります。
ただし、死亡保険金の受取人であるだけでは利用できず、申込者が相続人または受遺者でもあることを条件とする商品もあります。

詳細な条件は金融機関ごとに異なります。
利用をご検討の際は、金融機関に確認しましょう。

「他行」で相続手続きをした場合は、必要書類が増える

相続手続きをした金融機関と同じ金融機関で申し込む場合、すでに確認済みの相続情報を利用でき、必要書類の提出が一部簡略化されることがあります。

一方、ほかの金融機関に資金を預け入れたい場合は、相続に関する証明書類の提示が必要です。

主な必要書類の例

相続人であることがわかるもの
戸籍謄本の写し、遺言書遺産分割協議書など
相続手続きの完了時期がわかるもの
亡くなった人名義の解約済通帳、計算書など
預けるお金が相続で得たものだとわかるもの
解約済通帳および、解約金が入金された口座の通帳など

なお、遺言書や遺産分割協議だけでは相続した金額や受取時期を確認できない場合は、解約計算書、相続依頼書、入金先口座の通帳といった、追加書類の提出を求められることがあります。

預金の相続手続きの流れは、下記の記事をご参照ください。

中途解約時の注意点:優遇金利が適用されない

相続定期預金を途中で解約した場合、上乗せ金利は適用されず、各金融機関が定めた中途解約利率が適用されます

元本割れが生じるわけではありませんが、高金利のメリットは受けられなくなります

相続税の納税など、急にお金が必要になる可能性がある場合は、あらかじめ預入額を抑えておく判断も必要でしょう。

預け入れる前に確認したい3つのこと

相続定期預金そのものは、シンプルでわかりやすい商品です。

しかし、預け入れのタイミングは、相続全体の流れを踏まえたうえで判断する必要があります。

相続定期預金を申し込む前に、以下の3点を確認しましょう。

事前に確認したい点

  1. 相続税の納税資金を確保しているか
  2. 相続したお金だとわかる書類があるか
  3. 誰の名義で預け入れるか

相続定期預金に預け入れる前の確認点

(1)相続税の納税資金を確保しているか

相続税の申告と納税期限は、「相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内」と定められています。

もし、相続定期預金の預入期間が相続税の納税期限と重なり、納税のために満期前の解約を余儀なくされた場合、優遇金利は適用されない可能性があります

相続定期預金に資金を預け入れる前に、まずは相続税がいくらかかるのかを確認しておきましょう。

相続税がかかるかどうかは、相続財産やみなし相続財産、一定の生前贈与などから、債務・葬式費用・非課税財産を差し引いた「正味の遺産額」が、基礎控除額を超えるかどうかで判断します。

計算式

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円です。

正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告が必要です。
ただし、配偶者の税額軽減などを適用した結果、納付税額がゼロになることもあります。

概算の納税額を把握したうえで、納税に充てる資金は普通預金などに残しておき、残額を相続定期預金に預けるという順番であれば、納税資金が足りず慌てて解約する事態は起きにくくなります。

(2)相続したお金だとわかる書類があるか

相続定期預金の利用には、そのお金が相続によって取得したものであることや、取得した金額・時期を証明する必要があります

遺産分割協議を行った場合は遺産分割協議書、遺言により取得した場合は遺言書、預金の払戻しを受けた場合は相続依頼書や解約計算書などを使用します。

(3)誰の名義で預け入れるか

相続定期預金は、原則として相続や遺贈によって資金を受け取った本人の名義で申し込みます

相続資金を受け取った人とは別の家族名義で申し込むことは、通常できません。

なお、代表相続人が相続預金をいったん受け取り、ほかの相続人へ分配した場合は、遺産分割協議書や振込記録などによって、その相続人が取得した金額を証明できれば、申し込める可能性があります。

一方、相続した本人が資金を管理したまま、形式上だけ子どもや孫の名義で口座を作った場合は、実質的に本人の財産である「名義預金」と判断される可能性があります。

また、子どもや孫へ正式に贈与した場合、金額や制度適用の有無によっては、贈与税の課税対象になる可能性があります。
贈与された資金は、原則として相続定期預金の対象にはなりません。

対象者や必要書類は金融機関によって異なるため、本人以外の口座を経由して資金を受け取った場合は、事前に金融機関へ確認しましょう。

相続定期預金が向いている人・向いていない人

相続定期預金の利用が向いている人・向いていない人の傾向は、以下のとおりです。

区分 該当する状況
向いている人 ・資金の使い道が決まっておらず、当面動かす予定もない
・相続税の納税が済んでいる、または納税資金を確保済みである
・元本保証を重視したい
・店舗窓口での手続き時間を確保できる
向いていない人 ・数カ月以内に資金を使用する予定がある
・納税資金と運用資金の切り分けができていない
・長期的な高金利の維持を期待している
・投資性商品との組み合わせを希望しない(プランによる)

一言でまとめると「使い道が決まっていないお金を、数カ月だけ安全に置いておくための手段」として活用するのが、相続定期預金の合理的な利用法といえます。

中長期的な資産形成を目的とする商品ではない点にご留意ください。

相続定期預金以外の選択肢

相続資金の管理方法は、相続定期預金だけではありません。

ここからは、代表的なほかの選択肢を紹介します。

(1)普通預金にそのまま預け入れておく

普通預金へ資金を置いていても、利息はほとんどつきません。

しかし、普通預金は流動性が高く、いつでも引き出すことができます

特に相続税の申告が済んでいない段階では、最も使いやすい資金管理の方法でしょう。

(2)通常の定期預金や個人向け国債を利用する

通常の定期預金は、インターネットバンキングや専用アプリ、郵送手続きを利用することで、店舗へ来店することなく手続きできるケースがあります。

また、個人向け国債も元本保証された金融商品のひとつであり、昨今の金利の上昇を受けて、関心を持つ人も増えています。

個人向け国債には「原則として購入後1年間は中途換金ができない」「中途換金時には直前2回分の各利子(相当額)×0.79685が差し引かれる」という制約事項があります。

金利だけを見ると魅力的に見えるかもしれませんが、まずは納税資金の確保など、資金の使い道を決めたうえで利用を検討しましょう。

(3)投資信託などで運用する

長期的に使う予定のないお金については、投資信託などで運用する選択肢も考えられます。

ただし、投資性商品は元本が減るリスクを伴います

判断は急がず、相続税申告や各財産の名義変更などの手続きが完了し、状況が落ち着いた段階で検討されることをおすすめいたします。

相続定期預金に関するよくある質問

まとめ:相続定期預金は納税資金を確保したうえで活用しよう

今回は、相続定期預金のしくみと、預け入れにあたっての留意点をお伝えしました。

まとめ

  • 相続定期預金は、相続で取得した資金を対象とした初回満期までの優遇金利商品です。
  • 実際の受取利息は「年率」換算での計算が必要となります。
  • 手続きの前に相続税の納税資金を確保し、相続資金の取得額を証明できる書類を準備しましょう。

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