記事の要約
- 登記申請書を自分で書く機会が最も多いのは「相続登記」。2024年4月の義務化に伴い正確な作成が必須
- 申請書には8つの必須項目があり、登記事項証明書通りの正確な転記や登録免許税(0.4%)の計算が必要
- 書類収集や作成が難しい・時間がない場合は、司法書士などの専門家へ相談・依頼するのが安心
「不動産の名義変更を自分でやりたいけれど、登記申請書の書き方がわからない」
「法務局のホームページを見たけれど、専門用語が多くて挫折しそう……」
そのようなお悩みを抱えていませんか?
登記申請書は、ルールに従って正確に記入しなければ法務局で受理されず、何度も修正を求められることになります。特に2024年4月からは相続登記が義務化されたため、「早く手続きを終わらせたい」と焦っている方も多いでしょう。
この記事では、個人の方が自分で作成する機会が最も多い「相続登記(相続による名義変更)」の登記申請書の書き方をわかりやすく解説します。
ケース別の記入例や必要書類、計算がややこしい登録免許税の求め方まで完全網羅していますので、ぜひこの記事を手元に置きながら作成を進めてみてください。
目次
登記申請書とは?個人が自分で書く機会が最も多いのは「相続登記」
不動産の持ち主が変わったり、住宅ローンを完済したりした際は、国(法務局)が管理する登記簿の情報を書き換える手続きが必要です。この手続きの際に法務局へ提出する書類が「登記申請書」です。
登記申請書の種類(売買・贈与・相続など)
登記申請書には、目的によって様々な種類があります。代表的なものは以下の通りです。
- 所有権移転登記:売買、贈与、相続などで不動産の所有者が変わったとき
- 所有権保存登記:新築の建物を建てて、最初の所有者として登録するとき
- 抵当権設定・抹消登記:住宅ローンを組んだとき、または完済したとき
- 登記名義人住所・氏名変更登記:引っ越しや結婚で所有者の住所・氏名が変わったとき
このうち、売買や住宅ローンに関する登記は、安全取引の観点から金融機関や不動産会社が手配した司法書士が代理で行うのが一般的です。そのため、一般の方が自分で登記申請書を作成する機会が最も多いのは、親族間で完結する「相続登記(相続による所有権移転登記)」となります。
なぜ今、相続登記の申請書の書き方が注目されているのか?(義務化の影響)
近年、登記申請書の書き方への関心が非常に高まっています。その最大の理由は、2024年(令和6年)4月1日より「相続登記が義務化」されたためです。
これまでは放置していても罰則はありませんでしたが、義務化以降は「不動産を相続したことを知った日から3年以内」に相続登記の申請をしなければならなくなりました。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料(ペナルティ)の対象となる可能性があります。
「余計な費用をかけずに、まずは自分で書いて申請したい」というニーズが高まっているため、本記事では相続登記に絞って解説を進めます。
【見本付き】相続登記申請書の基本的な書き方と8つの必須項目
まずは、最も一般的な「遺産分割協議で特定の人が不動産を相続する場合」を例に、登記申請書の基本的な書き方を解説します。
申請書のフォーマットは、A4サイズの白紙(コピー用紙など)にパソコンで入力して印刷するか、黒のボールペンで手書きして作成します。法務局のホームページからひな形(Word・PDF)をダウンロードすることも可能です。

登記申請書に記載すべき「8つの必須項目」は以下の通りです。
① 登記の目的
不動産の名義をどのように変更するのかを記載します。
亡くなった方(被相続人)が不動産を単独で所有していた場合は「所有権移転」と記載します。もし、夫婦などで共有していた持分のみを相続する場合は「〇〇(亡くなった方の名前)持分全部移転」と記載します。
② 原因
不動産を取得した原因とその日付を記載します。
相続登記の場合は、被相続人が死亡した日(戸籍上の死亡日)に続けて「相続」と記載します。
記載例
③ 相続人
不動産を相続する人(新しい名義人)と、亡くなった人(被相続人)の情報を記載します。
- 被相続人:亡くなった方の氏名のみを記載します。
- 相続人:不動産を取得する人の「住所」「氏名」「連絡先(電話番号)」を記載し、氏名の横に押印します(認印可)。
なお、2025年4月21日以降、所有権を取得する人の氏名ふりがな、生年月日、メールアドレスなどの「検索用情報」も併せて記載が必要になりました。
④ 添付情報
登記申請書と一緒に法務局へ提出する書類の名称を記載します。相続登記の場合は、一般的に以下の2つを記載します。
- 登記原因証明情報(戸籍謄本や遺産分割協議書など、相続が起きたことを証明する書類)
- 住所証明情報(新しく名義人になる人の住民票など)
⑤ 申請年月日と管轄の法務局
登記申請書を法務局の窓口に提出する日(郵送の場合は発送日)を記載し、宛先として不動産の所在地を管轄する法務局名を記載します。
記載例
- ※
- 管轄の法務局は、法務局ホームページで「不動産の所在地」から検索できます。
⑥ 課税価格
登録免許税を計算するための基準となる金額です。市区町村で取得できる「固定資産評価証明書」に記載されている評価額を基準に計算します(計算方法は「つまずきやすい「登録免許税」の具体的な計算方法」の項目で解説)。
⑦ 登録免許税
国に納める税金(登録免許税)の金額を記載します(計算方法は「つまずきやすい「登録免許税」の具体的な計算方法」の項目で解説)。
算出された金額分の「収入印紙」を購入し、申請書とは別の白紙(A4用紙)に貼り付けて提出します。
⑧ 不動産の表示
名義変更をする不動産(土地・建物)の情報を記載します。
ここは「登記事項証明書(登記簿謄本)」の内容を一言一句間違えずに正確に転記しなければなりません。
- 土地の場合:所在、地番、地目、地積
- 建物の場合:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
【ケース別】相続登記申請書の書き方・記入例
相続の状況や不動産の種類によって、登記申請書の記載内容は異なります。ここでは代表的な4つのパターンについて解説します。
パターン1:遺産分割協議で1人が相続する場合(最も一般的)
相続人同士の話し合い(遺産分割協議)により、特定の人(1人)が不動産を取得する最もオーソドックスなケースです。
- 登記の目的:所有権移転
- 原因:令和〇年〇月〇日相続(被相続人の死亡日)
- 相続人:不動産を取得する1人の住所・氏名・連絡先を記載
- 書き方のポイント:不動産を単独で所有するため、相続人欄には取得者1名のみの情報を記入します。氏名の横に押印します。

パターン2:法定相続分で複数の相続人が共有する場合
民法で定められた割合(法定相続分)の通りに複数の相続人で共有名義にするケースです。
- 登記の目的:所有権移転
- 原因:令和〇年〇月〇日相続(被相続人の死亡日)
- 相続人:共有する全員の住所・氏名・それぞれの持分を記載
- 書き方のポイント:相続人欄に共有者全員の情報を記載し、各氏名の前に「持分 2分の1」「持分 4分の1」といった所有割合(持分)を明記します。

パターン3:遺言書に基づいて特定の相続人が相続する場合
亡くなった方が遺言書を残しており、その指示通りに特定の方が不動産を相続するケースです。
- 登記の目的:所有権移転
- 原因:令和〇年〇月〇日相続(被相続人の死亡日)
- 相続人:遺言書で指定された相続人の住所・氏名・連絡先を記載
- 書き方のポイント:申請書自体の記載形式はパターン1(1人が取得の場合)と同様です。原因の日付は遺言の効力が発生した日(原則として被相続人の死亡日)を記入します。
パターン4:土地・一戸建てだけでなく「マンション」を相続する場合の注意点
相続する不動産が戸建てや土地ではなく、「分譲マンションの一室(区分所有建物)」であるケースです。
- 登記の目的:所有権移転
- 原因:令和〇年〇月〇日相続(被相続人の死亡日)
- 相続人:不動産を取得する人の住所・氏名
- 書き方のポイント:パターン1〜3と比べて、申請書末尾の「不動産の表示」欄の記載量が多くなります。部屋番号(専有部分)だけでなく、「一棟の建物の表示」や「敷地権の表示(土地の権利)」を登記事項証明書の通りに細かく記入します。

登記申請書を書く前に!手元に準備すべき「添付書類」一覧
登記申請書を作成するには、前提として様々な証明書を手元に集めておく必要があります。以下の書類を事前に準備しましょう。
被相続人(亡くなった方)のすべての戸籍謄本
被相続人が生まれてから亡くなるまでの、連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などが必要です。誰が法定相続人になるかを法務局が確定するために必須の書類です。
- ※
- 事前に法務局で「法定相続情報一覧図」を作成している場合は、この一覧図の写し1枚で代用できます。
相続人全員の戸籍謄本・不動産を取得する人の住民票
相続人が誰なのかを証明する戸籍謄本と、不動産を相続して新しい名義人になる人の住所を証明する住民票が必要です。
遺産分割協議書 + 印鑑証明書(遺産分割の場合)
遺産分割協議で誰が不動産を相続するかを決めた場合は、相続人全員が実印を押印した「遺産分割協議書」と、全員分の「印鑑証明書」が必要です。
固定資産評価証明書(登録免許税の計算に必須)
登記申請書の「課税価格」と「登録免許税」を計算し、記載するために必要です。不動産を管轄する市区町村の役場(都内の場合は都税事務所)で取得します。最新年度(毎年4月1日切り替え)の証明書を取得してください。
つまずきやすい「登録免許税」の具体的な計算方法
登記申請書の作成で最もつまずきやすいのが、「課税価格」と「登録免許税」の計算です。相続登記の場合、税率は「0.4%(1,000分の4)」ですが、端数処理のルールがあるため注意が必要です。
以下のステップで計算します。
ステップ1:固定資産評価額の1,000円未満を切り捨てる(課税価格)
まず、固定資産評価証明書に記載されている対象不動産の「評価額(価格)」を確認します。土地と建物がある場合は合算します。
合算した金額のうち、1,000円未満を切り捨てた金額が、申請書に記載する「課税価格」です。
計算例
1,000円未満(500円)を切り捨て。
課税価格 = 15,234,000円
ステップ2:課税価格に税率(0.4%)をかける
算出した課税価格に、相続登記の税率である0.4%(0.004)を掛けます。
計算例
ステップ3:算出された金額の100円未満を切り捨てる(登録免許税)
ステップ2で出た金額のうち、100円未満を切り捨てた金額が、最終的に納める「登録免許税」の金額となります。
計算例
登録免許税 = 60,900円
この金額を登記申請書の「登録免許税」欄に記載し、同額の収入印紙を購入して納付用紙に貼り付けます。
完成した登記申請書の提出方法(窓口・郵送・オンライン)
登記申請書と添付書類、収入印紙を貼った用紙がすべて揃ったら、左側をホッチキスで留めて製本し※、法務局へ提出します。
提出方法は以下の3つです。
- ※
- 添付書類の原本還付を希望する場合はまとめ方が異なります。
法務局の窓口へ直接持参する
不動産を管轄する法務局の窓口に直接提出する方法です。
窓口では、予約制の登記手続案内で一般的な手続きや必要書類について確認できます。ただし、申請書の事前審査や登記完了の保証を受けられる制度ではない点に注意が必要です。
書留郵便等で法務局へ郵送する
管轄の法務局が遠方にある場合などは、郵送での提出も可能です。
必ず「書留郵便(簡易書留など)」や「レターパックプラス(赤色)」など、追跡可能で対面受け取りができる方法で郵送してください。封筒の表面には「不動産登記申請書在中」と赤字で記載します。
オンライン(登記ねっと)で申請する(やや難易度高め)
国のシステム「登記ねっと」を利用してオンラインで申請することも可能です。
ただし、専用ソフトのインストールや、マイナンバーカードによる電子署名、ICカードリーダーの準備などが必要になるため、普段からパソコン操作に慣れている方以外にはあまり推奨できません。
登記申請書を作成・提出する際のよくあるミスと注意点
最後に、一般の方が自分で申請する際によくやってしまうミスをご紹介します。不備があると法務局からの電話(補正の連絡)に対応したり、窓口へ出向いて訂正印を押したりする手間が発生するため注意しましょう。
フリクション(消えるボールペン)や鉛筆で書いてしまう
登記申請書は公的な書類です。熱で消えるボールペン(フリクション等)や鉛筆で記載されたものは受理されません。必ず黒のボールペンや万年筆で記入、またはパソコンで作成して印刷してください。
法務局の「管轄」を間違えて提出してしまう
登記申請は「不動産の所在地を管轄する法務局」で行う必要があります。自分の住んでいる家の近くの法務局や、亡くなった方の最後の住所地の法務局ではありません。必ず事前にホームページ等で管轄エリアを確認してください。
割印(契印)の押し忘れや押し間違い
登記申請書が複数枚にわたる場合(申請書と収入印紙を貼った用紙など)、ページのつなぎ目に申請書に押したのと同じ印鑑で「契印(割印)」を押す必要があります。
なお、複数人で申請する場合は、申請人のうち1人が契印すれば足ります。
住民票の住所表記とズレがある
登記申請書に記載する住所や氏名は、添付する住民票や印鑑証明書の記載と「完全に一致させること」が推奨されています。
例えば、住民票に「〇〇市△△一丁目1番1号」と記載されている場合、申請書に「〇〇市△△1-1-1」と省略して書くのではなく、できる限り住民票に記載されている通りの表記に合わせるようにしましょう。
まとめ|難しい・時間がないと感じたら専門家への相談がおすすめ
登記申請書の書き方や必要書類、計算方法について解説しました。
時間に余裕があり、平日に役所や法務局へ出向くことができる方であれば、ご自身で相続登記を行うことは十分に可能です。
しかし、以下のような場合は、ご自身で無理をせず専門家(司法書士)へ依頼することをおすすめします。
- 書類を集める時間や、法務局へ行く時間がとれない
- 古い戸籍を遡って集めるのが難しく、途中で挫折してしまった
- 数次相続(相続人が亡くなり、さらに相続が発生している)が起きていて権利関係が複雑
- 相続税の申告も必要になりそう(遺産総額が基礎控除を超えそう)
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