記事の要約
- 手続き・権利ごとに「時効(期限)」は全く異なる
- 時効成立を待つ「逃げ切り」は現実的ではない
- 遺産分割協議に時効はないが「放置リスク」が大きい
「相続の手続きには時効があると聞いたけれど、うちは大丈夫だろうか」
大切な方を亡くされて間もない中、このような不安を抱えるご遺族は少なくありません。
相続に関する手続きには、それぞれ個別の「時効」や「申請期限」が設けられています。
手続きの種類によって「いつからカウントが始まるか(起算日)」や「何年で時効が成立するか」が大きく異なる点に注意が必要です。
この記事では、相続に関する主な時効・期限を一覧表でお伝えしたうえで、それぞれの詳しい内容や注意点について解説していきます。
また、法律上の時効には、一定期間権利を行使しないことで権利が消滅する「消滅時効」と、他人の財産を一定期間占有することで所有権を得る「取得時効」があります。
この記事では、主に「消滅時効」や法律上の「申請期限・除斥期間」についてお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
相続手続きに関する主な時効・期限の一覧表
相続に関連する主な手続きの時効・期限は、以下の一覧表のとおりです。

| 手続き・権利 | 起算日(カウントが始まる日) | 時効・期限 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 自己のために相続の開始があったことを知った日 | 3カ月 |
| 準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日 | 4カ月 |
| 相続税の申告・納付 | 相続開始を知った日の翌日 | 10カ月 |
| 遺留分侵害額請求権 | 相続開始および侵害を知ったとき/相続開始時 | 1年/10年 |
| 相続登記 | 自己のために相続が開始したことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日 | 3年 |
| 相続税(税務署の課税権) | 法定申告期限の翌日 | 5年(悪質な不正:7年) |
| 相続税の更正の請求 | 法定申告期限の翌日 | 5年 |
| 贈与税(税務署の課税権) | 法定申告期限の翌日 | 6年(悪質な不正:7年) |
| 被相続人が有していた債権※ | 権利を行使できることを知ったとき/権利を行使できるとき | 5年/10年のいずれか早いほう |
| 被相続人の借金 | 債権者が権利を行使できることを知ったとき/権利を行使できるとき | 5年/10年のいずれか早いほう |
| 相続回復請求権 | 相続権の侵害を知ったとき/相続開始時 | 5年/20年 |
| 遺産分割協議 | - | 時効なし |
- ※
- 2020年4月1日より前に発生した債権については、改正前の時効制度が適用される場合があります。
一覧で比較すると、短いものでは「3カ月」、長いものでは「20年」と、手続きによって大きな差があることが分かります。
特に「相続放棄」や「準確定申告」のように期限が短い手続きは、遺品整理や葬儀に追われているうちに期間を迎えてしまうため、最優先での確認が必要です。
(1)準確定申告の時効・期限(4カ月)
準確定申告とは、被相続人(亡くなった人)に代わって、相続人が行う所得税の確定申告・納付手続きのことです。
通常の確定申告は翌年の2月16日から3月15日までに行いますが、準確定申告の期限は「相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内」と定められています。
被相続人に、事業所得や不動産所得、2,000万円を超える給与収入があった場合などは、準確定申告が必要になります。
なお、期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税などの税務ペナルティが発生するおそれがあるためご注意ください。
(2)遺留分侵害額請求権の時効(1年・10年)
遺留分とは、配偶者や子どもなど兄弟姉妹以外の法定相続人に保障されている「最低限の遺産取得割合」です。
遺言や生前贈与によって、遺留分を下回る遺産しか受け取れなかった相続人は、遺産を多く受け取った相手に対して金銭での補てんを求めることができます(遺留分侵害額請求権)。
遺留分侵害額請求の時効は、「相続の開始」および「遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと」を知った日から1年です。
相続開始や遺留分侵害の事実を知らなかった場合でも、相続開始の時から10年が経過すると、権利は自動的に消滅します。
遺留分侵害額の時効を止めるには、内容証明郵便で意思表示をして6カ月の完成猶予を得るか、その間に裁判手続きを行う必要があります。
家庭裁判所へ調停を申し立てただけでは意思表示にならないため、通知が必要である点に注意しましょう。
(3)相続税納付の時効(5年・7年)
相続税の課税権にも、原則として相続税の申告期限の翌日から5年の時効(除斥期間)があります。
ただし、財産を意図的に隠すなど不正行為(偽りその他不正行為)があったと認められた場合、時効は7年に延長されます。
時効のカウントは、相続税の法定申告期限の翌日から始まります。
通常は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月を経過した日の翌日です。

「時効まで逃げ切る」のが現実的でない理由
相続税の時効が成立すれば、税務署は課税できなくなりますが、税務署は金融機関の口座履歴や不動産登記情報などを通じて財産を把握することができます。
したがって、時効が成立する前に「相続税についてのお尋ね」の送付や税務調査が行われ、加算税や延滞税といった追徴課税が課される可能性があります。
時効を狙って、納税を放置することは大きなリスクを伴います。
(4)相続税の更正の請求の期限(5年)
更正の請求とは、相続税を本来よりも多く納め過ぎてしまった場合に、税務署に対して過払い分の還付(返金)を求める手続きです。
特に土地の評価額算出はとても複雑であるため、不適切な評価や特例・控除の適用漏れにより、税金を納めすぎているケースは少なくありません。
更正の請求ができる期限は、原則として相続税の申告期限から5年以内です。
ただし、申告後に遺産分割協議が成立した場合や、納税後に相続人に対する遺贈に係る遺言書が発見された場合などの事情が生じた場合は、その事実を知った日の翌日から4カ月以内に請求を行うことができます。
ご自身で申告をされた方や、相続専門ではない税理士に依頼した方は、還付を受けられる可能性もありますので、相続に強い税理士へのご相談をおすすめします。
(5)贈与税納付の時効(6年・7年)
生前贈与を受けた場合の贈与税にも、贈与税の申告期限の翌日から6年の時効(除斥期間)が定められています。
なお、偽りその他不正の行為があった場合は、7年に延長されます。
【注意】名義預金と生前贈与加算
被相続人(例:親)が子どもや孫の名義で口座を作り、お金を貯めていた場合、子ども自身がその口座の存在を知らなかったり、管理・使用していなかったりすると「名義預金」とみなされる可能性があります。
名義預金は「贈与そのものが成立していない」と判断されるため、「贈与税の時効」という概念自体が適用されません。
口座内のお金は、被相続人の財産として相続税の課税対象となります。
また、暦年課税による生前贈与の加算対象期間は、2024年1月1日以降の贈与から段階的に7年へ延長されています。
(6)債権の消滅時効(5年・10年)
被相続人が第三者にお金を貸していた場合、「貸付金を返してもらう権利(債権)」も、相続財産のひとつとして相続人に引き継がれます。
債権の消滅時効は、権利を行使できると知った時から5年、もしくは権利を行使できる時から10年のいずれか早いほうです。
時効を迎えたあとに、債務者(お金を借りていた人)から「時効の援用(時効成立の主張)」をされると、借金や未払金を返してもらえる権利がなくなってしまいます。
ただし、債務者の承認や、裁判の確定判決・和解による権利確定があると、時効の進行はリセット(更新)されます。
(7)借金(債務)の消滅時効(5年・10年)
借金や未払金など、被相続人が第三者から「借りていたお金(債務)」にも、時効があります。
債務などのマイナスの財産も相続の対象ですが、債権者が権利を行使できると知ったときから5年、もしくは権利を行使できるときから10年のいずれか早いほうが経過すると、返済義務を免れられる可能性があります。
ただし、時効期間が過ぎても、借金は自動的に消えるわけではありません。
相続人が債権者に対して、「時効が成立したため返済しません」と時効の援用をすることで、返済義務を免れることができます。
反対に、時効成立後であっても、相続人がうっかり借金の一部を返済したり、「必ず払います」と伝えたりする(債務の承認)と、時効の主張ができなくなってしまうことがあります。
債権者からの督促があった場合でも、時効期間について確認のうえ、慎重に対処する必要があります。
また、相続人が複数いる場合、被相続人の借金は法定相続分に応じて各相続人に引き継がれます。
相続人のひとりが時効を援用しても、その効果は基本的にその人の相続分にしか及びません。
ほかの相続人は個別に時効の援用手続きを行う必要があります。
(8)相続回復請求権の時効(5年・20年)
相続回復請求権とは、本来相続人ではない人(表見相続人)が財産を不当に占有・処分している場合に、本当の相続人(真正相続人)が財産の返還を求めることができる権利です。
相続回復請求権の時効は、相続権を侵害された事実を知ったときから5年、もしくは相続開始のときから20年のいずれか早いほうです。
遺産分割協議に時効はあるのか?
相続財産の分け方を相続人全員で話し合う「遺産分割協議」には、法律上の時効や期限は定められていません。
理論上は、相続開始から何年、何十年が経過していても、相続人全員の合意があれば協議を行うことができます。
早めの遺産分割協議が必要な4つの理由
時効がないからといって、遺産分割協議を後回しにしてよいわけではありません。
以下の理由のとおり、遺産分割協議は早めに進めておくべきでしょう。

①相続税の節税特例が使えなくなるおそれがある
相続税の申告・納付期限までに協議がまとまっておらず未分割申告をする場合は、原則として「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった節税制度を使えず、一時的に高額な税金を納めざるを得ないことがあります。
当初申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付するなどしたうえで、後日、分割が成立した時点で更正の請求を行うことはできますが、手続きの手間がかかってしまいます。
②相続登記の義務に違反するリスクがある
2024年4月からスタートした「相続登記の義務化」に伴い、不動産を取得したことを知ってから3年以内に登記申請を行わなければならなくなりました。
遺産分割がまとまらなくても、相続人申告登記や法定相続分による登記で当初の義務を履行できますが、その後に遺産分割が成立した場合は、成立日から3年以内に改めて登記が必要です。
③数次相続が発生し、関係者が複雑化する
協議をしないまま放置すると、本来の相続人が亡くなり、その配偶者や子どもが新たな相続人として加わる「数次相続」が発生します。
顔を合わせたことがない親族が協議に加わるなど、関係者が増えるほど協議がまとまりにくくなります。
④相続開始から10年経過で「特別受益・寄与分」が主張できなくなる
2023年4月1日より、相続開始から10年が経過すると「特別受益(生前贈与などの考慮)」や「寄与分(介護や家業手伝いなどの貢献度)」を主張して遺産取得割合を調整することができなくなります(古い相続については「改正法施行から5年」の猶予あり)。
相続人全員が合意すれば特別受益・寄与分を考慮した分割は可能ですが、原則は法定相続分での分割になるため、注意が必要です。
時効・期限が過ぎてしまった場合の対処法
万が一、時効や期限を過ぎてしまった場合でも、事情によっては救済措置や対処方法が残っているケースがあります。
たとえば相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った日」から3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
ただし、相続人が被相続人に相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合には、相続財産の存在を認識した時などから3カ月を起算すると判断されることがあります。
個別事情によって判断が異なるため、期限を過ぎている場合は早めに弁護士へ相談しましょう。
また、相続税の申告漏れがある場合、放置するほど延滞税などの負担が膨らみます。
税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告・期限後申告を行うことで、ペナルティを軽減することが可能です。
期限が過ぎてしまったと気づいた時点で、すぐに相続税に強い税理士へ相談し、財産の状況をあらためて確認することをおすすめします。
まとめ:相続の時効は手続きごとに異なる
今回は、相続に関する時効・期限についてお伝えしました。
- 1. 相続手続きごとの時効・期限を正確に把握する
- 相続放棄や準確定申告など、期限が短い手続きもあるため、期限は必ず確認しましょう。
- 2. 相続税や贈与税納付の時効狙いはハイリスク
- 「逃げ切り」を狙って放置しても、税務署から確認や税務調査を受け、加算税・延滞税が課される可能性があります。
- 3. 遺産分割協議は時効がなくても早めに進める
- 協議をしないままだと節税制度が使えない、相続登記の義務違反など、時間の経過とともにデメリットが増えていきます。
私たちVSG相続税理士法人は、これまでに19,000件を超える相続税申告を行ってまいりました。
また税理士のほか、司法書士・行政書士・弁護士が連携するワンストップ体制のもと、全国の拠点でお客様のサポートにあたっております。
当社には元国税調査官も在籍しており、税務署の着眼点を踏まえたうえで、状況に応じた最適な対処法をご提案いたします。
初回のご相談は無料で承っております。
「自分の場合はどの期限が当てはまる?」「申告期限が迫っていて不安」など、何かお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。


