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最終更新日:2026/7/10

マイナンバーカードの口座紐付けが「怖い」と言われる理由と相続への影響

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

VSG行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profilehonma/

記事の要約

  • マイナンバーと口座を紐付けても、預金残高や取引履歴そのものが国に把握されるわけではない
  • 2025年4月の制度拡充により、相続発生時に故人の口座をまとめて照会できる「相続時口座照会」が利用可能に
  • 紐付けは任意の制度であり、紐付けをしなくても相続税申告や遺産分割ができなくなるわけではない

マイナンバーカードと銀行口座の紐付けについて、「預金残高まで国に見られるのではないか」「税金が勝手に引き落とされるのではないか」「カードを落としたら預金を引き出されるのではないか」と不安に感じる方もいます。

結論からいうと、マイナンバーと口座を紐付けても、預金残高や取引履歴そのものが自動的に国へ共有されるわけではありません。また、登録した口座から税金が勝手に引き落とされる制度でもなく、マイナンバーの番号だけで預金を引き出すこともできません。

ただし、「マイナンバーと口座の紐付け」には、公金受取口座登録制度と預貯金口座付番制度という2つの制度があります。この2つを混同すると、不安や誤解が大きくなりやすいため、制度ごとの違いを整理しておくことが大切です。

この記事では、マイナンバーカードの口座紐付けが怖いと言われる理由を実態と照らし合わせながら整理し、2025年4月から利用できるようになった相続時口座照会への影響まで解説します。

マイナンバーと銀行口座の紐付けには2つの制度がある

実は「マイナンバーと口座の紐付け」とひとくちに言っても、目的も仕組みも異なる2つの制度が存在します。この2つを混同したまま情報に触れると、不安がより大きくなりやすいため、まずは違いを整理します。

預貯金口座付番制度

2018年1月に始まった制度で、任意で金融機関にマイナンバーを届け出て、預貯金口座に付番する仕組みです。目的は相続時や災害時に、口座の所在を迅速に確認できるようにすることにあります。

2025年4月1日には根拠法である口座管理法(正式名称:預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律)が拡充され、1つの金融機関で手続きをすれば、複数の金融機関の口座をまとめて付番できるようになりました。

公金受取口座登録制度

給付金や還付金などを受け取るための口座を、あらかじめ国に届け出ておく仕組みです。登録・変更の手続きはマイナポータルのほか、金融機関の窓口、所得税の確定申告(還付申告)、年金請求の際にも行うことができます。

こちらは相続手続きとは直接関係がなく、給付金支給の迅速化が目的です。2025年4月末時点での登録件数は6,388万966件、マイナンバーカード保有者の65.2%にあたります。

預貯金口座付番制度 公金受取口座登録制度
開始・拡充時期 2018年1月開始/2025年4月拡充 2022年開始
手続き窓口 金融機関窓口・マイナポータル マイナポータル・金融機関・所得税の確定申告(還付申告)・年金請求
主な目的 相続時・災害時の口座所在確認 給付金等の迅速な受け取り
紐付けできる口座数 複数金融機関をまとめて付番可能 本人名義1口座のみ
義務化の有無 任意 任意

マイナンバーカードの口座紐付けが怖いと言われる5つの理由

結論から言うと、いずれの制度も、預金残高や入出金の明細そのものが国や自治体に伝わる仕組みにはなっていません

共有される情報は「金融機関名・支店名・口座番号」など、振込や照会に必要な識別情報にとどまります。ここでは代表的な5つの不安について、実態を確認していきます。

残高や取引履歴が国に把握されるのでは

デジタル庁も、マイナンバーの届出をきっかけに金融機関が国に預貯金残高を知らせることはないと明言しています。国が口座情報を確認できるのは、社会保障の資力調査や税務調査など、法令に基づく必要がある場合に限られます。

そもそもこうした調査は、口座とマイナンバーの紐付けの有無にかかわらず、以前から実施されてきたものです。つまり紐付けによって、新たに調べられる情報が増えるわけではありません。

紛失・漏洩でなりすまし出金されるのでは

マイナンバーは12桁の数字の羅列にすぎず、番号だけを知られても、それ単体で口座から出金や送金が行われることはありません。注意が必要なのは、マイナポータルにログインするための4桁の暗証番号まで漏れてしまった場合です。

この場合、公金受取口座の情報を閲覧・変更されるおそれがあるため、マイナンバーカードを紛失した際は速やかに一時利用停止の手続きを行うことが重要です。

誤登録(他人名義の口座が紐付けされる)事例があった

2023年に公金受取口座の誤登録が発覚し、デジタル庁は全5,400万件を対象に総点検を実施しました。2023年6月の公表時点で、他人の口座が誤って登録されていた事例は748件、割合にすると約0.001%にとどまっています。

これとは別に、子どもの口座がないために親名義で登録するなど、意図的に家族名義で登録されていたケースが約13万件(全体の約0.2%)確認されました。原因は主に自治体窓口の共用端末でログアウトしないまま次の人が手続きを行ったことによるもので、その後システム改修が行われています。

将来的に全口座の紐付けが義務化されるのでは

現時点(2026年7月)で、預貯金口座付番制度・公金受取口座登録制度のいずれも義務化はされておらず、あくまで本人の意思に基づく任意の制度です。2025年4月の制度拡充後も、付番するかどうかの判断は預貯金者本人に委ねられています。

紐付けを求められたら断れないのでは

口座開設時や住所変更などの主要な取引の際、金融機関からマイナンバー届出の意向を確認されることがありますが、届出は任意であり、拒否したことを理由に口座開設そのものを断られることはありません。

【相続の視点】口座紐付けが将来の相続手続きに与える影響

ここが今回もっとも知っておいていただきたいポイントです。2025年4月の制度拡充により、「相続時口座照会」という仕組みが新たに使えるようになりました。これは、生前にマイナンバーを届け出て口座を付番していた方が亡くなった場合に、相続人の財産調査の負担を大きく軽減する制度です。

口座紐付けをしておくと、亡くなった際の「名寄せ」(財産調査)が楽になる仕組み

被相続人が生前に預貯金口座付番を済ませていた場合、相続人(包括受遺者を含む)は1つの金融機関の窓口で申請するだけで、預金保険機構を通じて全国の付番済み金融機関に一括で口座の有無を照会できます

照会結果は後日、預金保険機構から相続人宛てに郵送で届き、どの金融機関に故人の口座があるかが一覧でわかります。申請から結果通知までは1カ月程度が目安です。

手数料は1回の申請につき5,060円(税込)で、結果の有無にかかわらず返金はされません。利用できるのは被相続人が亡くなってから10年以内です。

なお、通知される内容は金融機関名・支店名・口座番号などの識別情報にとどまり、残高までは含まれない点には注意が必要です。あくまで「口座の所在」を把握するための制度であり、相続税申告や遺産分割そのものを代替する手続きではありません。

紐付けをしていない場合、相続人はどう財産調査をすることになるか

被相続人が口座を付番していなかった場合、相続人は心当たりのある金融機関に一件ずつ問い合わせて、名寄せと残高証明書の発行を個別に依頼する必要があります。

その際には戸籍謄本一式や印鑑証明書、相続人であることを証明する書類などを金融機関ごとに用意しなければなりません(戸籍謄本一式は法定相続情報証明制度を使えば一部代替できます)。取引先の金融機関に心当たりがない場合は、通帳や郵便物などの手がかりを頼りに調査するほかなく、時間と労力がかかりやすい部分です。

紐付け済みと未紐付けの場合で、相続手続きの手間や期間の比較

紐付け済み(相続時口座照会を利用) 未紐付け(個別照会)
照会先 窓口1金融機関のみ 心当たりのある金融機関ごとに個別訪問
必要書類の準備 窓口1か所分で完結 金融機関の数だけ書類一式を用意
費用 相続時口座照会の手数料5,060円(税込・1回)。残高証明書の発行手数料は別途必要 残高証明書発行手数料が金融機関ごとに発生
所要期間の目安 申請から結果通知まで1カ月程度 金融機関の数だけ窓口対応が発生し長期化しやすい
把握できる範囲 付番済みの口座のみ(未付番の口座は対象外) 心当たりのある金融機関のみ

高齢の親がマイナンバー口座紐付けを怖がっている場合、子世代が確認すべきこと

高齢の親がマイナンバーと銀行口座の紐付けに不安を感じている場合、子世代がまず確認すべきなのは、親が何を「怖い」と感じているのかです。

たとえば、「預金残高を国に見られるのではないか」「マイナンバーカードを落としたら預金を引き出されるのではないか」「いずれ全口座の紐付けが義務化されるのではないか」など、不安の内容によって説明すべきポイントは変わります。

また、親が不安に感じている制度が、公金受取口座登録制度なのか、預貯金口座付番制度なのかも確認しておきましょう。公金受取口座登録制度は、給付金や還付金を受け取るための口座を1つ登録する制度です。一方、預貯金口座付番制度は、相続時や災害時に口座の所在を確認しやすくするための制度です。

子世代としては、制度のメリットだけを強調して説得するのではなく、「残高や取引履歴が自動的に国へ共有される制度ではないこと」「マイナンバーの番号だけで預金を引き出すことはできないこと」「いずれの制度も任意であること」を、落ち着いて説明することが大切です。

特に相続の観点では、預貯金口座付番をしておくことで、将来、相続人が故人の口座を探す負担を軽くできる可能性があります。ただし、本人が強い不安を感じているにもかかわらず、子どもが一方的に手続きを進めるのは避けるべきです。

最終的には、親本人が制度の内容を理解したうえで、紐付けするかどうかを判断することが重要です。判断に迷う場合は、家族だけで決めず、金融機関や相続に詳しい専門家に確認しながら進めると安心です。

口座紐付けをしたくない場合の選択肢

マイナンバーと銀行口座の紐付けは任意の制度であるため、紐付けをしなくても、預金の管理や相続税申告、遺産分割協議そのものができなくなるわけではありません。

ただし、預貯金口座付番制度を利用しない場合は、相続時口座照会を利用できません。そのため、相続が発生した際には、相続人が通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物、スマートフォンの銀行アプリ、確定申告書の控えなどを手がかりに、故人の口座を一つずつ確認する必要があります。

紐付けをしない方針を選ぶ場合は、相続人が困らないように、あらかじめ利用している金融機関の一覧を作成しておくとよいでしょう。金融機関名、支店名、口座の種類、通帳やキャッシュカードの保管場所をメモしておくだけでも、相続発生後の財産調査の負担を減らせます。

紐付けをしないこと自体が、直ちに大きな不利益になるわけではありません。ただし、相続時の財産調査に時間がかかりやすくなるため、紐付けをしない場合は、口座情報の整理や財産目録の作成など、別の方法で家族が確認しやすい状態を整えておくことが大切です。

よくある質問

公金受取口座は、マイナポータルからいつでも変更・削除の手続きが可能です。ただし削除すると、次に給付金を受け取る際に改めて口座情報の登録が必要になる点には注意してください。

一方、預貯金口座付番は、原則として付番完了後の取消しができません。慎重に検討したうえで手続きすることをおすすめします。

まとめ|正しい知識を持てば怖くない!資産や税金の不安は専門家へ

マイナンバーカードと銀行口座の紐付けは、資産や残高そのものが国に把握される制度ではなく、むしろ2025年4月の制度拡充によって、相続発生時の財産調査の負担を軽くする仕組みが整いました

一方で、紐付け済みの口座しか照会できない、残高証明書の取得は別途必要になるなど、制度でカバーできる範囲には限りもあります。ご自身やご家族の相続について、どこまで準備しておけば安心か判断に迷う場合は、税務・登記・相続手続きを一括してサポートできる専門家へご相談ください。

VSG相続税理士法人グループでは、税理士・司法書士・行政書士がワンストップで相続に関するご相談に対応しています。マイナンバーと口座の紐付けが相続手続きにどう影響するかといった疑問も含め、初回のご相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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