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最終更新日:2026/6/2

胎児にも相続権はある。妊娠中に夫を亡くしたときの手続きの進め方

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

VSG相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、立川、千葉、埼玉、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡などの全国の主要都市61拠点にオフィス展開し、年間3,500件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
YouTube:相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】

記事の要約

  • お腹のなかの赤ちゃんにも、すでに生まれている子と同様の相続権がある
  • 遺産分割協議は胎児が生まれてから行い、相続税の申告も出産のタイミングで進め方が変わる
  • 出産のタイミングによっては、「未分割申告」を活用して期限内に申告を済ませる方法もある

「お腹のなかの子どもにも、相続権はあるの?」

このような疑問をお持ちの方に向けて、この記事では「胎児の相続権」や「出産タイミング別の手続きの進め方」をお伝えします。

なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するお悩みに無料でお答えしています。何かお困りのことがあれば、お一人で抱え込まずに、お気軽にご連絡ください。

胎児にも「相続権」はある

この記事の全体像1

胎児にも、相続権はあります

このことは、民法で下記のように定められています。

民法

(相続に関する胎児の権利能力)
第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

引用元 民法|e-Govポータル

ただし、相続権が確定するのは「赤ちゃんが生まれた瞬間」です。

胎児の段階では、生まれてくることを前提として、相続権が「予約」されているような状態だとイメージしてください。

赤ちゃんが無事に生まれたとき、「故人が亡くなった時点」にさかのぼって相続権が確定します。

胎児がさかのぼって相続人とみなされるイメージ

また、各相続人が取得する財産の割合の目安となる「法定相続分」も、すでに生まれている子どもと同じです。

たとえば、亡くなった方に妻と子どもが2人(うち1人は胎児)いる場合、法定相続分は次のようになります。

妻と子ども2人の法定相続分

なお、死産だった場合には、上記のルールは適用されず、胎児は相続人ではなかったことになります。

胎児が相続人になるときの注意点

この記事の全体像2

胎児が相続人になるときの注意点は、次の2つです。

以下では、それぞれについて詳しく見ていきます。

注意点1:遺産分割協議は胎児の出生後に行う

注意点1

「誰が・どの財産を・どれくらい引き継ぐのか」を話し合う「遺産分割協議」は、胎児が生まれてから行わなければなりません

これは、胎児の相続権は、生まれるまでは確定しないからです。

出生後に行う遺産分割協議で、「母親」と「子ども」がともに相続人になるときには、利益相反の関係になります。

利益相反とは?

利益相反とは、一方の利益を優先すると、もう一方の利益が損なわれる関係のことです。

ここでは、母親の取り分を増やせば子どもの取り分が減り、その逆も同様のため、利益相反となります。

利益相反の関係になっているとき、母親が子どもの代理として協議に参加することは認められていません

そのため、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらい、その人が子どもの代わりに協議に参加することになります。

特別代理人が子どもを代理するイメージ

特別代理人が選任されるまでの期間は、家庭裁判所への申立てから1カ月ほどかかります。

また、選任の申立てをする際には、「遺産の分割案」の提出が必要です。

この分割案は、子どもの取り分が法定相続分を下回る分け方だと、原則として認められません。

注意点2:相続税の申告が期限内に終わらない可能性がある

注意点2

相続税の申告期限は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」です。

しかし、胎児がいる場合、手続きは下記のような流れとなり、通常よりも工程が増えます。

流れ

  1. 出産を待つ
  2. 特別代理人を選任する
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 相続税の申告をする

このため、相続税の申告が期限内に間に合わない可能性が高まります

どうしても期限を超えてしまいそうなときの対応策としては、次の2つがあります。

以下では、それぞれについて詳しく見ていきます。

対応策1:未分割申告を活用する

期限内に相続税の申告ができない場合には、「未分割申告」をするのも一手です。

未分割申告とは、各相続人が法定相続分で財産を取得したものとみなして、相続税を仮計算して申告する方法です。

注意

未分割申告では、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などの税負担を軽くする制度を適用できません。

ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、後で「修正申告」や「更正の請求」をするときに、これらの制度を適用できます。

胎児の出生を待ったことで、遺産分割協議が申告期限内にまとまらないような場合には、いったん未分割申告することを検討しましょう。

その後、遺産分割協議が完了してから、「修正申告」または「更正の請求」をすることで、追加の納税をしたり、納めすぎた税金の還付を受けたりできます。

未分割申告の詳細は、下記の記事でお伝えしているので、必要な方は併せてご覧ください。

対応策2:申告期限の延長を申請する

胎児が生まれてくることを理由に、相続税の申告期限を「胎児が生まれた日の翌日から2カ月以内」まで延長できることもあります

ただし、延長が認められるのは「胎児が生まれることで、すべての相続人の申告義務がなくなる場合」に限られます

つまり、胎児を含めたときの「相続税の基礎控除額」が、「正味の遺産額」を上回るケースでのみ、申告期限の延長が可能ということです。

正味の遺産額とは?

正味の遺産額は、預貯金・不動産などの「プラスの財産」から、借入金などの「マイナスの財産」と「葬儀費用」を差し引いた金額です。

この金額が基礎控除額を超えないときには、相続税の申告は不要となります。

具体的に、次のケースで考えてみましょう。

ケース

  • 夫が亡くなり、「妊娠中の妻」と「子ども1人」が残された
  • 正味の遺産額は「4,500万円

このとき、胎児が無事に生まれれば、基礎控除額は「4,800万円」となり、相続税の申告義務はなくなります。

胎児を含めた基礎控除額の計算例

このように、胎児が生まれることで「すべての相続人の申告義務がなくなる」ケースでは、申告期限の延長を申請できます。

申請の手続きをする際は、下記の様式を「故人の最後の住所地を所轄する税務署」に提出します。

災害による申告、納付等の期限延長申請書

災害による申告、納付等の期限延長申請書

引用元 国税庁Webサイト

具体的な申請書の書き方は、税務署に問い合わせれば教えてもらえます。

該当しそうな方は国税庁のWebサイトで、故人が最後に住んでいた場所を所管する税務署を確認し、連絡してみてください。

出産のタイミングごとの相続税の手続きの流れ

この記事の全体像3

胎児が生まれるタイミングによって、相続税の申告手続きの進め方は変わってきます

ここでは、次の2パターンに分けて、それぞれの手続きの流れを見ていきます。

タイミング 進め方
夫の死亡から3カ月以内に出産 期限内に申告することを目指す
夫の死亡から3〜10カ月の間に出産 「未分割申告」を行い、その後に「修正申告」または「更正の請求」をする

ご自身の状況に当てはまる箇所を中心にご覧ください。

ケース1:死亡から3カ月以内に出産

ケース1

夫が亡くなってから3カ月以内に出産する場合は、相続税の申告期限内に、通常の手続きをすべて終えられる可能性が高いです。

このパターンでは、出産後に「特別代理人の選任 → 遺産分割協議 → 相続税の申告」と順に進めていきます。

スケジュールの目安として、夫が亡くなってから「2カ月後」に出産する場合の例を見てみましょう。

時期 主な作業
死亡〜2カ月 財産調査相続財産の評価
死亡から2カ月 出産
死亡から2〜3カ月 産後の体調回復、出生届の提出
死亡から3〜4カ月 特別代理人の選任
死亡から4〜6カ月 遺産分割協議
死亡から6〜10カ月 相続税の申告

このパターンで大切なのは、出産する前に「財産調査」や「相続財産の評価」など、できることをできる範囲で進めておくことです。

これによって、相続税の申告までのスケジュールに余裕が生まれます。

ただし、実際に手続きを進めてみたものの間に合わなそうなときは、次の「ケース2」と同じように、いったん「未分割申告」をすることも検討しましょう。

ケース2:死亡から3〜10カ月の間に出産

ケース2

出産の時期が夫の死亡から3カ月を超えると、期限までに相続税の申告をすることが難しくなってきます

これは、胎児が生まれるまで「特別代理人の選任」や「遺産分割協議」といった手続きができないためです。

このような場合は、いったん「未分割申告」をするのが一般的です。

スケジュールの目安として、夫が亡くなってから「7カ月後」に出産する場合の例を見てみましょう。

時期 主な作業
死亡〜7カ月 財産調査相続財産の評価
死亡から7カ月 出産
死亡から7〜8カ月 産後の体調回復、出生届の提出
死亡から8〜9カ月 特別代理人の選任
死亡から10カ月 未分割申告
死亡から10〜11カ月 遺産分割協議
死亡から11〜12カ月 修正申告または更正の請求

なお、上記はあくまで目安です。

出産が早まったり、各手続きが順調に進んだりすれば、期限内に通常の申告ができる可能性もあります。

最終的にどのように手続きを進めるのかは、相続専門の税理士と相談しながら決めるのがおすすめです。

胎児の相続に関するよくある質問

まとめ|相続手続きで迷ったら専門家に相談しましょう

今回は、胎児がいるときの「相続権」や「相続手続き」についてお伝えしました。

まとめ

  • お腹のなかの赤ちゃんにも、すでに生まれている子と同様の相続権がある
  • 遺産分割協議は胎児が生まれてから行い、相続税の申告も出産のタイミングで進め方が変わる
  • 出産のタイミングによっては、「未分割申告」を活用して期限内に申告を済ませる方法もある

出産のタイミングによって、相続手続きの進め方は変わってきます。

どのように手続きを進めればよいかわからないときには、専門家を頼るのも一手です。

私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

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