記事の要約
- 納め過ぎた相続税は、「更正の請求」をすることで取り戻せる可能性がある
- 未分割のまま申告し、その後に遺産分割が決まった場合は、各種の税額軽減制度を適用し直して、納め過ぎた税金の還付を受けられる
- その場合の手続き期限は、「分割が確定した日の翌日から4カ月以内」
相続税を納めた後に、「もしかして払い過ぎていたかもしれない」と感じていませんか?
納め過ぎた相続税は、「更正の請求」という手続きをすることで取り戻せる可能性があります。
この記事では、更正の請求の概要や該当するケースを見たうえで、具体的な手続きの進め方をお伝えします。
なお、私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するお悩みに無料でお答えしています。何かお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
相続税の「更正の請求」とは?

更正の請求は、税金を多く納め過ぎていたときに、払い過ぎた分を返してもらうための手続きです。
いちど納めた相続税であっても、正しい税額が本来はもっと少なかったことが判明したときは、税務署に請求することで、納め過ぎた税金の還付を受けられます。
補足
具体的に、相続税で更正の請求ができるケースの例としては、次の5つが挙げられます。
以下では、それぞれのケースについて、詳しく見ていきます。
ケース1:「計算ミス」や「財産の評価誤り」があった

「税額計算を間違えていた」あるいは「財産を実際よりも高く評価していた」場合、相続税を多く納めてしまいます。
たとえば、下記に該当する「土地」は、評価額を下げられる場合があります。
- ※1
- 前面の道路が狭いために、家屋の建て替えのときに敷地の一部を後退させなければならないルールのこと
こうした減額補正を反映しないまま申告すると、土地の評価額が高くなって、相続税も過大になります。

このような評価誤りや計算ミスに気が付いたときには、「相続税の申告期限から5年以内」に更正の請求をすることで、納め過ぎた税金が返ってきます。
ケース2:未分割だった財産の分け方が決まった

相続税には、税負担が軽減される制度がいくつかあり、代表的なものとしては次の2つがあります。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が取得した遺産のうち、一定額までは相続税がかからない |
| 小規模宅地等の特例 | 亡くなった方の自宅などの土地について、一定の要件を満たせば評価額を最大80%減額できる |
ただし、上記の2つの制度は、遺産の分け方が決まっていないと使えません。
このため、申告期限までに遺産分割協議がまとまらず、「未分割申告」になった場合には、これらの制度を適用できず、高めの税金を納めることになります。
未分割申告をしたときには、財産の分け方が決まった後、更正の請求をする際に軽減制度を適用し、納め過ぎた税金の還付を受けます。

なお、未分割申告をする際、将来に「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」の適用を受けたいときには「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。
申告期限後3年以内の分割見込書
引用元 国税庁Webサイト
また、更正の請求で「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」を適用したいときには、下記のようにそれぞれ異なる期限が設定されています。
| 制度 | 期限 |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 「分割が確定した日の翌日から4カ月以内」と「申告期限から5年以内」のいずれか遅いほう |
| 小規模宅地等の特例 | 分割が確定した日の翌日から4カ月以内 |
両方を適用したい場合には、「分割が確定した日の翌日から4カ月以内」に、更正の請求の手続きをするようにしましょう。
この「分割が確定した日」の起算点は、分割方法の決まり方によって次のように変わります。
| 分割方法の決まり方 | 起算点 |
|---|---|
| 遺産分割協議 | 協議が成立した日 |
| 遺産分割調停 | 調停が成立した日 |
| 遺産分割審判 | 審判が確定した日 |
| 訴訟上の和解 | 和解が成立した日 |
ケース3:遺留分侵害額の支払いが確定した

一部の法定相続人には、最低限の遺産の取り分として「遺留分」が保障されています。
もし、遺言などで多くの財産を受け取った人がいて、自分の取得額が「遺留分」を下回ったときには「遺留分侵害額請求」ができます。

請求を受けて金銭を支払った人は、遺産の取得額が減って、相続税を納め過ぎていたことになります。
そこで、更正の請求をすることで、納め過ぎた税金の還付を受けられます。

このケースでの更正の請求の期限は、「遺留分侵害額が確定した日の翌日から4カ月以内」です。
ケース4:法定相続人が増えた

相続税の申告をした後に、法定相続人の数が増えることがあります。
その代表的なケースは、「死後認知」です。
死後認知とは?
死後認知があると、法定相続人が1人増えて、下記のような要因から税負担が減り、相続税の納め過ぎになりやすいです。
- 新しい相続人にも遺産を渡すことで、ほかの人の取り分が減る
- 法定相続人が増えることで、相続税の総額を計算するときの税率が下がる
- 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)が増える

こうして、相続税の納め過ぎになった人は、更正の請求をすることで税金の還付を受けられます。
このケースでの手続き期限は、「相続人が変わったことが確定した日の翌日から4カ月以内」です。
ケース5:遺言書が見つかった

相続税の申告をした後になって、遺言書が見つかることがあります。
その遺言書の内容によって、自分の取り分が少なくなれば、相続税を納め過ぎていたことになります。

このときは、更正の請求をすることで、納め過ぎた税金の還付を受けられます。
上記のケースでの更正の請求の期限は、「新たに遺言書が見つかったことを知った日の翌日から4カ月以内」です。
相続税の「更正の請求」の手続き

相続税の更正の請求は、次の5ステップで手続きを進めます。
ここでは、イメージしやすいように、次のモデルケースを使って説明します。

このケースで未分割申告をした際には、「配偶者の税額軽減」も「小規模宅地等の特例」も使えていないことから、納めた税額が高くなっています。
そこで、遺産分割協議が成立した後で、各相続人は「更正の請求」で納め過ぎた税金を取り戻すことになります。
それでは、手続きの流れをステップごとに見ていきましょう。
ステップ1:必要書類を集める

まずは、更正の請求に必要な書類を集めます。
ここでは「当初の申告とは状況が変わったことを示す資料」や「税額の再計算の根拠となる書類」が必要になります。
モデルケースのように、「申告の後に分割方法が決まって、税額の軽減制度を使う」場合に必要となる主な書類は、下記のとおりです。
| 書類 | 概要 |
|---|---|
| 遺産分割協議書の写し | 誰がどの財産を取得したかを確認できる |
| 印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押された印鑑が、実印であることの証明になる |
| 戸籍謄本 | 法定相続人が誰になるかを確認できる |
| 住民票の写し | 小規模宅地等の特例の要件(その土地に居住していること など)を満たしていることを確認できる |
ステップ2:税額を計算する

次に、「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」を適用した、「本来納めるべきだった相続税」を計算します。
まず、今回のケースでは小規模宅地等の特例によって、相続財産の「土地」の評価額が下がります。
計算式
これにより、相続税の課税対象となる財産の合計額が「1億円」から「6,000万円」に減ります。
| 財産 | 特例の適用前 | 特例の適用後 |
|---|---|---|
| 土地 | 5,000万円 | 1,000万円 |
| 建物 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 預貯金 | 4,100万円 | 4,100万円 |
| 葬式費用※1 | ▲100万円 | ▲100万円 |
| 合計 | 1億円 | 6,000万円 |
- ※1
- 葬式費用は、課税対象となる財産から差し引いて、相続税を計算できる
さらに、妻が取得する財産の分には、配偶者の税額軽減が適用されます。
今回のケースでは、法定相続分どおりに遺産を分割したとすると、妻の税額は「0円」になり、家族全体の相続税は「60万円」になる計算です。
未分割申告で納めた税額が「630万円」だったので、払い過ぎた額は「630万円 − 60万円 = 570万円」だとわかりました。
なお、ここでは相続税の細かい計算は省略しましたが、計算方法についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
ステップ3:更正の請求書を作成する

納め過ぎていた税額がわかったら、遺産を取得した人ごとに「更正の請求書」を作成します。
必要な様式は、国税庁のWebサイトに掲載されているので、最新版をダウンロードしましょう。
まず、表紙となる「相続税の更正の請求書」には、下記のように記入します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 提出先・提出日 | ■ 提出先の税務署名と、提出する日付を書く ■ 提出先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署 |
| ② 請求する人の情報 | ■ 請求する人の「住所・氏名・マイナンバー・職業・電話番号」を書く ■ 「納税地」は、基本的に住所と同じになるため、空欄のままでよい |
| ③ 対象の申告 | ■ 更正の請求の対象となる申告の「区分」と「年」を書く ■ 併せて「更正の請求ができる事由が生じたことを知った日」も記入する |
| ④ 添付した書類 | ■ ステップ1で揃えた書類を列挙する ■ 実務では、計算の根拠として「修正申告書」を添付することが一般的なので、併せて用意しておく |
| ⑤ 請求をする理由 | ■ 請求の理由を記入する ■ さらに詳しい経緯を伝えたいときは、「事情の詳細」欄で補足できる |
| ⑥ 金融機関の情報 | ■ 還付金を振り込んでもらう金融機関・支店・口座の種類・番号を書く |
続いて、下記の様式を使って、還付してもらう金額を計算します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 被相続人の情報 | ■ 故人の「住所・氏名・亡くなった年月日・職業」を書く |
| ② 請求する人の税額計算 | ■ 請求する人が取得した「財産の価額」や「支払った葬式費用」、「課税価格」などを書く ■ 併せて、相続税の総額のうち、その人が納める税額を記入する |
| ③ 税額控除・差引税額 | ■ 配偶者の税額軽減などの控除額を書く ■ 控除を差し引いた「本来納めるべき税額」を記入する |
| ④ 還付される金額 | ■ 当初の申告で納めた税額を書く ■ 本来の税額との差額を「還付される税額」として記入する |
| ⑤ 相続税の総額の計算 | ■ 家族全体の課税価格の合計や、法定相続人の数、基礎控除額をもとに、相続税の総額を計算して書く |
以上が、必要な様式の書き方です。
ここで見たのは、モデルケースの「妻」の分の書類だけでしたが、実際に手続きをする際には、「長男・長女」もそれぞれ上記の様式を作成する必要があります。
ステップ4:税務署に書類を提出する

更正の請求書が完成したら、ステップ1で集めた書類を添えて、税務署に提出します。
提出先は、「亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署」です。「請求する人」の住所地ではない点に注意しましょう。
管轄の税務署は、国税庁のWebサイトで確認できます。
提出の方法には、次の3つがあります。
- 税務署の窓口で提出する
- 税務署に郵送する
- e-Tax(電子申告)を利用する
このうち一般的なのは、「窓口」または「郵送」での提出です。
「e-Tax(電子申告)」も利用できますが、専用ソフトのインストールが必要なため、パソコンが苦手な方にはややハードルがあります。
なお、提出の際には、マイナンバーカードの「提示」や「写しの添付」が求められるため、こちらも忘れずに準備しておきましょう。
ステップ5:還付金を受け取る

必要な書類を提出したら、あとは税務署の審査が完了するのを待ちましょう。
審査には、おおむね2〜3カ月ほどかかり、その間に税務署から内容確認の連絡が入ることもあります。
請求が認められると「更正通知書」が届き、続いて「国税還付金振込通知書」が送られてきます。
その後、2週間ほどで指定した口座に還付金が振り込まれて、手続きは完了です。
なお、ここで振り込まれる還付金には「還付加算金」という、利息にあたるお金が上乗せされます。
相続税の「更正の請求」に関するよくある質問

Q1:期限を過ぎたら、もう納め過ぎた税金は取り戻せない?
Q2:更正の請求が認められないことはある?
Q3:相続人が複数いる場合、全員分まとめて手続きできる?
Q4:還付されたお金に税金はかかる?
Q5:小規模宅地等の特例を使う土地を、後から変更できる?
まとめ|納め過ぎた相続税は、期限内なら取り戻せる
今回は、相続税の更正の請求についてお伝えしました。
- 納め過ぎた相続税は、「更正の請求」をすることで取り戻せる可能性がある
- 未分割のまま申告し、その後に遺産分割が決まった場合は、各種の税額軽減制度を適用し直して、納め過ぎた税金の還付を受けられる
- その場合の手続き期限は、「分割が確定した日の翌日から4カ月以内」
私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けております。
何かお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。



