記事の要約
- 地積規模の大きな宅地の評価は、三大都市圏で500㎡以上、それ以外の地域で1,000㎡以上といった要件を満たす広い宅地について、規模格差補正率を用いて相続税評価額を引き下げられる制度
- 適用できるかどうかは路線価地域か倍率地域かで確認する条件が変わり、地区区分・市街化調整区域・工業専用地域・指定容積率などの要件をすべて満たす必要がある
- 小規模宅地等の特例と併用でき、過去の相続で適用を見落としていた場合でも、申告期限から原則5年以内であれば更正の請求によって払い過ぎた相続税の還付を受けられる可能性がある
面積の広い土地を相続したとき、相続税評価額を大きく引き下げられる可能性があるのが「地積規模の大きな宅地の評価」です。要件を満たせば評価額を2割前後、場合によってはそれ以上減額できることもありますが、適用の判定には路線価地域か倍率地域かの区別や、地区区分、面積、用途地域など複数の条件が絡み、専門家でも判断に迷うケースがあります。
この記事では、地積規模の大きな宅地の評価について、制度の概要と広大地評価との違い、フローチャートで判定する6つの適用要件、規模格差補正率を使った計算方法とシミュレーション、間違えやすい特殊ケースの取り扱い、過去の申告で適用漏れがあった場合の更正の請求までを、順を追って解説します。
目次
地積規模の大きな宅地の評価とは?
地積規模の大きな宅地の評価とは、一定面積以上の広い宅地について、相続税評価額を減額できる評価方法です。財産評価基本通達20-2に定められており、平成30年1月1日以後に相続、遺贈、贈与によって取得した宅地に適用されます。
対象となる宅地の評価額は、通常の路線価に奥行価格補正率などの各種画地補正率を乗じたうえで、さらに「規模格差補正率」を乗じて計算します。この規模格差補正率が1未満の数値になるため、面積が大きい土地ほど評価額が引き下げられる仕組みです。
なぜ広い土地は評価額が下がる?
広い土地の評価額が下がるのは、その土地を戸建住宅用地として分割、分譲する際に、宅地としてそのまま使えない部分が生じるためです。
広い土地を戸建住宅用地として分割、分譲する場合、土地の形状や周辺道路の状況によっては、敷地内に道路を設ける必要があり、宅地として販売できない「潰れ地」が生じます。また、開発分譲業者は、造成費用に加えて、完売までの期間、売れ残りのリスク、借入金の利息、事業利益を見込んで土地の仕入価格を決めます。
そのため、広い土地は面積に単純比例した価格では取引されにくく、一般的な宅地よりも1㎡当たりの価格が低くなる傾向があります。
こうした広い土地特有の減価を相続税評価に反映させるために設けられているのが、地積規模の大きな宅地の評価です。
旧制度「広大地評価」との違い
地積規模の大きな宅地の評価は、平成29年の通達改正で新設され、それまでの「広大地の評価」に代わる制度として導入されました。広大地の評価は平成30年1月1日以後の相続などについては廃止されています。
広大地の評価は、減額の判定基準が定性的で、「その地域における標準的な宅地に比べて著しく地積が広大か」といった相対的な判断を求められたため、適用の可否をめぐって税務当局と争いになるケースが少なくありませんでした。また、旧制度では、戸建住宅用地として分割するよりも、中高層の集合住宅の敷地として利用することが経済的に合理的な「マンション適地」は対象外とされていました。
これに対して地積規模の大きな宅地の評価は、面積や地区区分といった定量的な要件で判定できるよう明確化され、要件を満たせばマンション適地であっても適用できる場合が出てきました。主な違いは次のとおりです。
| 広大地の評価(旧制度) | 地積規模の大きな宅地の評価 | |
|---|---|---|
| 適用時期 | 平成29年12月31日以前の相続等 | 平成30年1月1日以後の相続等 |
| 判定基準 | 定性的(相対的な判断が必要) | 定量的(面積・地区区分などで判定) |
| 減額の計算 | 広大地補正率 | 規模格差補正率 |
| マンション敷地 | 原則として対象外 | 要件を満たせば適用可 |
【フローチャート付】適用要件を6つのステップで判定
地積規模の大きな宅地の評価を受けられるかどうかは、次のフローチャートの6つのステップで判定できます。まず評価対象地が路線価地域にあるか倍率地域にあるかを確認し、そのうえで地域ごとの条件と共通の条件を要件①から要件⑥まで順に判定していきます。

ここからは、フローチャートで判定する6つの要件を、①から順に見ていきます。
要件① 大規模工場用地ではない(倍率地域のみ)
倍率地域にある土地の場合、その土地が「大規模工場用地」に該当すると、地積規模の大きな宅地の評価は適用できません。
大規模工場用地とは、財産評価基本通達22-2に定められた、一団の工場用地の地積が5万平方メートル以上のものをいいます。
なお、大規模工場用地の除外は、本来は路線価地域と倍率地域の両方に及ぶ除外要件の一つです。ただし路線価地域では、大規模工場用地は大工場地区に区分されるため、次の要件②(普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区であること)の判定で自動的に対象外となります。そのため、この要件を独立して確認する必要があるのは倍率地域の場合となります。
要件② 普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区である(路線価地域のみ)
路線価地域にある土地の場合、その土地が「普通商業・併用住宅地区」または「普通住宅地区」に所在していることが要件です。
路線価図では、地域ごとに地区区分が定められています。ビル街地区、高度商業地区、繁華街地区、中小工場地区、大工場地区に所在する宅地は、地積規模の大きな宅地の評価の対象にはなりません。評価対象地がどの地区区分にあるかは、国税庁の路線価図で確認できます。
要件③ 面積基準(三大都市圏500㎡以上、それ以外1,000㎡以上)を満たしている
地積規模の大きな宅地に該当するには、一定以上の面積が必要です。基準となる面積は、土地が三大都市圏にあるかどうかで異なります。
- 三大都市圏:500㎡以上
- 三大都市圏以外の地域:1,000㎡以上
三大都市圏とは、首都圏、近畿圏、中部圏のうち、法令で定められた区域をいいます。おおまかには次の地域が含まれます。
| 主な対象地域 | |
|---|---|
| 首都圏 | 東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県の一部 |
| 近畿圏 | 京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の一部 |
| 中部圏 | 愛知県、三重県の一部 |
三大都市圏は、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府などの都府県の全域を指すものではありません。首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏開発整備法の都市整備区域として指定された区域に限られます。
同じ市区町村内でも、行政区域の一部だけが三大都市圏に指定されているケースがあります。評価対象地が三大都市圏に含まれるかどうかは、国税庁の「地積規模の大きな宅地の評価の適用要件チェックシート」に添付された都市名の一覧や、各市町村または府県の窓口で確認してください。
要件④ 市街化調整区域ではない
市街化調整区域にある宅地は、原則として地積規模の大きな宅地の評価を適用できません。市街化調整区域は市街化を抑制する区域で、住宅などの建築、開発が制限されているためです。
ただし、市街化調整区域であっても、都市計画法第34条第10号または第11号の規定に基づいて、宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在する宅地については、戸建住宅用地としての分割、分譲が法的に可能なため、要件を満たせば適用できます。
なお、都市計画法第34条第12号の区域については、開発行為ができる場合でも地積規模の大きな宅地には該当しないと判断された裁決例があります(令和6年3月6日裁決)。第10号、第11号と第12号では取り扱いが分かれる点に注意が必要です。
要件⑤ 工業専用地域ではない
用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地は、地積規模の大きな宅地の評価を適用できません。工業専用地域は工場の利便を優先する地域で、原則として住宅を建てられないため、戸建住宅用地としての開発を前提とするこの評価にはなじまないからです。
なお、用途地域の定めがない地域は、工業専用地域に該当しないものとして取り扱われるため、この除外要件には当たりません。
要件⑥ 指定容積率が400%未満(東京23区は300%未満)
指定容積率が400%以上(東京都の特別区においては300%以上)の地域に所在する宅地は、対象外となります。容積率の高い地域は中高層の建物の建築に向いており、戸建住宅用地として分割、分譲することを前提とするこの評価の趣旨に合わないためです。
ここでいう指定容積率とは、都市計画で定められた容積率の上限値です。前面道路の幅員によって決まる基準容積率とは異なる概念のため、判定にあたっては指定容積率を確認します。
なお、実際の判定にあたっては、国税庁が公表している「地積規模の大きな宅地の評価の適用対象の判定のためのフローチャート」を使うと、6つの要件の確認漏れを防げます。三大都市圏に含まれる都市名の一覧もこのチェックシートで確認できます。
評価額の減額率を決める「規模格差補正率」とは?
規模格差補正率とは、地積規模の大きな宅地の評価で評価額を減額するために用いる補正率です。次の算式で計算します。計算結果は、小数点以下第2位未満を切り捨てます。
規模格差補正率
Aは評価対象地の地積です。BとCの数値は、土地が三大都市圏にあるかどうかと、地積の大きさに応じて、次の表のとおり定められています。
| 地積 | B | C |
|---|---|---|
| 500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
| 地積 | B | C |
|---|---|---|
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 100 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 500 |
規模格差補正率は地積が大きいほど小さくなり、その分だけ評価額が引き下げられます。なお、規模格差補正率には宅地の造成にかかる費用は含まれていません。造成が必要な土地については、別途、宅地造成費相当額を考慮します。
【具体例】地積規模の大きな宅地の評価額シミュレーション
ここからは、実際にどのように評価額を計算するのか、計算手順を確認したうえで、2つのケースでシミュレーションします。
【計算方法】評価額の計算手順(路線価地域・倍率地域)
評価額の計算方法は、評価対象地が路線価地域にあるか倍率地域にあるかで異なります。
路線価地域の場合は、次の算式で計算します。
路線価地域の評価額
倍率地域の場合は、次の2つの価額を計算し、いずれか低い価額で評価します。
- その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
- その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を路線価とみなし、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率、規模格差補正率を乗じたうえで、地積を乗じて計算した価額
倍率地域では、固定資産税評価額に倍率を乗じた通常の計算結果よりも、規模格差補正率を反映した2の価額のほうが低くなる場合に、地積規模の大きな宅地の評価による減額の効果が生じます。
シミュレーション①:整形地の場合
まず、奥行や形状が標準的な整形地のケースです。次の条件で計算します。
- 所在:三大都市圏、普通住宅地区
- 路線価:200,000円/㎡
- 地積:800㎡
- 奥行価格補正率:1.00(標準的な奥行のため補正なし)
規模格差補正率は、三大都市圏かつ500㎡以上1,000㎡未満のため、B=0.95、C=25を使います。
計算例
評価額 = 200,000円 × 1.00 × 0.78 × 800㎡ = 124,800,000円
地積規模の大きな宅地の評価を使わない場合の評価額は200,000円 × 800㎡ = 160,000,000円ですので、地積規模の大きな宅地の評価を適用することによって、通常の評価額より35,200,000円低くなります。
シミュレーション②:他の補正(不整形地補正など)と併用できる場合
規模格差補正率は、奥行価格補正率や不整形地補正率といった他の画地補正率と併用できます。ここでは、シミュレーション①と同じ路線価、地積の土地が、奥行も標準的でない不整形地だった場合を計算します。
- 所在:三大都市圏、普通住宅地区
- 路線価:200,000円/㎡
- 地積:800㎡
- 奥行価格補正率:0.97
- 不整形地補正率:0.90
所在と地積はシミュレーション①と同じため、規模格差補正率も同じく0.78になります。
計算例
シミュレーション①の整形地では評価額が124,800,000円でしたので、同じ路線価、地積の土地でも、奥行価格補正と不整形地補正が加わることで、さらに15,849,600円低くなります。補正を一切適用しない場合の評価額200,000円 × 800㎡ = 160,000,000円と比べると、奥行価格補正、不整形地補正、規模格差補正を合わせて51,049,600円の減額となります。
間違えやすい!特殊なケースの適用判定(Q&A形式)
地積規模の大きな宅地の評価は、土地の持ち方や地目によって判定に迷いやすいケースがあります。よくある疑問をQ&A形式で整理します。
Q.マンションの一室を相続した場合も適用できる?
ただし、指定容積率の要件があるため、容積率の高いマンションでは対象外となることも少なくありません。容積率をあわせて確認する必要があります。
なお、令和6年1月1日以後に相続、遺贈または贈与によって取得した一定の居住用分譲マンションについては、地積規模の大きな宅地の評価を含めて敷地全体の自用地としての価額を計算したうえで、敷地権割合と区分所有補正率を用いて、一室に対応する敷地利用権の価額を計算する場合があります。
Q.共有名義で相続した土地の面積はどう判定する?
Q.遺産分割で土地を分けて(分筆して)相続した場合は?
Q.農地や雑種地にも適用できる?
Q.小規模宅地等の特例との併用は可能?
過去の相続で適用漏れも?更正の請求で払い過ぎた相続税が戻る可能性
地積規模の大きな宅地の評価は要件の判定が複雑なため、過去の相続税申告で適用できたはずなのに見落としていた、というケースが起こり得ます。この場合、更正の請求という手続きによって、払い過ぎた相続税の還付を受けられる可能性があります。
地積規模の大きな宅地の評価を見落としていたケース
平成30年1月1日以後に開始した相続で、対象となる土地が地積規模の大きな宅地の要件を満たしていたにもかかわらず、規模格差補正率を適用せず、通常の路線価方式や倍率方式のまま申告していたケースが考えられます。この場合、正しく評価し直すことで評価額が下がり、相続税が減る可能性があります。
土地の評価は専門性が高く、当初の申告を担当した専門家が広い土地特有の減額を反映していなかった例もあります。広い土地を相続して相続税を納めた記憶がある場合は、一度評価を見直してみる価値があります。
更正の請求ができる期間(申告期限から原則5年以内)
更正の請求ができる期間は、原則として相続税の法定申告期限から5年以内です。相続税の法定申告期限は、通常は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内ですので、その申告期限を基準に5年以内かどうかを確認します。この期間を過ぎると、たとえ評価に誤りがあっても還付を受けられなくなります。
適用漏れの可能性に心当たりがある場合は、期限に余裕をもって、早めに相続税に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。
まとめ|判断に迷う場合は早めに税理士に相談しよう
地積規模の大きな宅地の評価は、要件を満たせば相続税評価額を大きく引き下げられる一方で、路線価地域か倍率地域かの区別、地区区分、面積、用途地域、容積率など、確認すべき条件が多く、判定を誤りやすい制度です。特に、市街化調整区域の開発可能区域の取り扱いや、倍率地域での計算方法、他の補正や小規模宅地等の特例との併用など、実務では専門的な判断を要する場面が少なくありません。
適用の可否や評価額に少しでも不安がある場合や、過去の相続で適用漏れがあったかもしれないと感じる場合は、早めに相続税に詳しい税理士へ相談することが、適正な評価と納税につながります。
地積規模の大きな宅地の評価をはじめとする土地の相続税評価は専門性が高く、適用の判断ひとつで納税額が大きく変わる領域です。VSグループでは、相続に精通した税理士が土地の評価と相続税申告を担当し、相続登記は司法書士、相続関係書類の作成や行政手続きは行政書士が対応するなど、相続に関わる手続きをワンストップでサポートしています。
広い土地の評価でお悩みの方や、過去に納めた相続税を見直したい方は、無料相談をご利用ください。土日祝日も対応しており、初めての方でもお気軽にお問い合わせいただけます。

