記事の要約
- 相続の相談先は、「もめごと」「税金」「手続き」など、困っている内容に応じて選ぶことが大切です
- 市区町村・法テラス・税務署・法務局など無料で相談できる窓口がありますが、相談できる内容や対応範囲はそれぞれ異なります
- 相続放棄や相続税申告など期限のある手続きもあるため、何から始めればよいか分からない場合も早めに相談しましょう
「相続の手続きは何から始めればいい?」「弁護士や税理士など、誰に相談すればいいの?」と迷う方は少なくありません。
相続の相談先は、悩みの内容によって異なります。相続人同士でもめているなら弁護士、相続税がかかるか分からないなら税理士、不動産の相続登記なら司法書士が主な相談先です。
まずは、現在の状況に近いものから相談する相手を確認してみましょう。
| 困っていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 相続人同士でもめている・もめそう | 弁護士 |
| 相続税がかかるか分からない | 税理士 |
| 土地・建物の名義を変更したい | 司法書士 |
| 借金がありそう・相続放棄を検討している | 弁護士・司法書士 |
| 遺産分割協議書などの書類を作りたい | 行政書士・司法書士 |
| 相続税の制度や申告方法を確認したい | 税務署 |
| 相続登記の一般的な手続きを確認したい | 法務局 |
| 何から始めればよいか分からない | 相続に詳しい専門家・ワンストップ相談窓口 |
相続には、相続放棄や相続税の申告など、期限が決められた手続きもあります。相談先に迷っている間に期限が迫ることもあるため、すべての資料がそろっていなくても、早めに現在の状況を整理することが大切です。
この記事では、悩み別の相談先や無料で相談できる窓口、弁護士・税理士・司法書士・行政書士の違い、相談を急いだ方がよい期限について分かりやすく解説します。
目次
相続の相談先は悩みの内容によって決まる
相続では、税金・不動産・遺産分割・借金など複数の問題が同時に発生することがあります。複数の問題がある場合は、期限が近い手続きや、すでにトラブルになっている問題を優先して相談するのが基本です。
相続の相談先を選ぶときは、専門家や窓口の一覧から探すよりも、いま何に困っているのかを整理するのが近道です。相続の悩みは、大きく分けると「もめごと」「税金」「手続き」「借金・相続放棄」に分けられます。まずは、次の図でご自身の状況に近いものを確認してみましょう。

複数に当てはまることも珍しくありません。その場合は、期限が近い手続きや、すでにトラブルになっている問題を優先して相談するのが基本です。
ここからは、相談の多い4つのケースについて詳しく見ていきます。
相続人同士でもめている・もめそう
遺産の分け方について相続人同士で意見が合わない場合や、今後トラブルになりそうな場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
たとえば、次のようなケースです。
- 兄弟姉妹で遺産の分け方について意見が合わない
- 一部の相続人が話し合いに応じてくれない
- 一部の相続人が財産の内容を開示してくれない
- 亡くなった人の預貯金が使い込まれていた疑いがある
- 遺言書の内容に納得できない
- 遺留分を請求したい、または請求されている
相続人の一方の代理人として遺産分割について交渉したり、家庭裁判所での調停・審判に代理人として対応したりする場合は、弁護士への相談が適しています。
一方、単に「まだ遺産分割の話し合いが終わっていない」というだけであれば、必ずしもすぐに弁護士へ依頼する必要はありません。
ただし、話し合いが進まない、相続人の一人が強く反対しているなど、当事者だけでは合意が難しそうだと感じた段階で相談しておくと、その後の選択肢や進め方を整理できます。
また、遺産分割でもめていても、相続税の申告期限が延びるわけではありません。相続税がかかる可能性がある場合は、弁護士への相談と並行して税理士にも相談しましょう。
相続税がかかるか分からない
「相続税がかかるのか分からない」という場合は、相続税に詳しい税理士への相談を検討しましょう。
相続税には、次の基礎控除があります。
相続税の基礎控除額
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。
ただし、相続税がかかるかどうかは預貯金の残高だけでは判断できません。
相続税を計算するときは、預貯金だけでなく、土地・建物、株式、投資信託、生命保険金、債務、一定の生前贈与なども確認する必要があります。特に土地は、形状や利用状況などによって相続税評価額が変わることがあります。
そのため、
- 自宅と預金があるが、財産総額が分からない
- 土地がいくらとして評価されるのか分からない
- 基礎控除額を超えるか微妙なところにある
といった段階でも、税理士へ相談して問題ありません。
すべての財産を自分で調べ終わってから相談する必要はなく、「何を確認すれば相続税の申告が必要か判断できるのか」を整理するために相談することもできます。
また、相続税の対象となる財産額が基礎控除額を超えていても、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などによって最終的な税額が0円になる場合があります。ただし、こうした特例を利用するためには相続税申告が必要になるため、「税金が0円なら申告も不要」とは限りません。
なお、税務署でも相続税の制度や申告方法について相談できます。一方、財産評価から申告書の作成、税務代理まで依頼したい場合は税理士へ依頼することになります。
不動産の名義変更が必要
土地や建物を相続した場合は、相続登記が必要です。相続登記を専門家へ依頼する場合は、司法書士が主な相談先になります。
ただし、不動産があるからといって、必ず最初に登記を進めればよいとは限りません。
たとえば、
- 相続税がかかる可能性がある
- 土地や建物が複数ある
- 誰がどの不動産を取得するか決まっていない
- 不動産の分け方によって相続税額が変わる可能性がある
といった場合は、遺産分割や登記を確定する前に税理士にも相談しておくとよいでしょう。
相続税がかかる・かかるか分からないうえに不動産もある場合は、税理士と司法書士の両方が必要になる可能性があると考えておきましょう。
借金がありそう・相続放棄を検討している
亡くなった人に借金がある場合や、財産より借金の方が多い可能性がある場合は、ほかの相続手続きを進める前に、相続放棄について確認しましょう。
相続放棄をすると、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続しないことになります。相続放棄には3カ月という短い期限があるため、借金の有無が分からない場合も早めの確認が必要です。
相続放棄について法律上の判断や債権者への対応が必要な場合は弁護士、家庭裁判所へ提出する申述書などの作成を依頼する場合は司法書士が主な相談先です。
また、相続放棄を検討している段階では、亡くなった人の財産を安易に処分しないよう注意しましょう。たとえば、預貯金を自分のために使ったり、不動産や車を売却したりすると、相続を承認したと判断される可能性があります。
「借金があるかもしれない」「連帯保証人になっていた可能性がある」という場合は、財産を処分する前に弁護士や司法書士へ相談しましょう。
相続について無料で相談できる窓口
「いきなり専門家へ正式に依頼するのは不安」「まずは無料で相談したい」という場合は、市区町村や法テラス、税務署、法務局などの公的な窓口を利用できます。弁護士や税理士などの専門家事務所でも、初回相談を無料としている場合があります。
ただし、無料で相談できる内容や対応範囲は窓口によって異なります。 制度や手続きの一般的な案内を受けるのに適した窓口もあれば、個別の事情を踏まえて専門家に相談できる窓口もあります。
「どこまで相談できるのか」をあらかじめ確認し、自分の目的に合った窓口を利用しましょう。
| 相談先 | 主に相談できること | 主な注意点 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 市区町村 | 死亡後の行政手続き、自治体が実施する専門家相談など | 対応内容や相談会の開催日は自治体によって異なる | 無料 |
| 法テラス | 弁護士・司法書士による法律相談、弁護士・司法書士費用の立替制度 | 無料法律相談には収入・資産などの要件がある | 法律相談は要件を満たせば無料/費用立替は原則返済 |
| 税務署 | 相続税の制度、申告方法、申告要否の考え方など | 申告書の作成代理や税務代理を依頼する窓口ではない | 無料 |
| 法務局 | 相続登記の申請方法、申請書の作成方法、必要書類など | 書類作成や登記申請を代行する窓口ではない | 無料 |
| 弁護士・税理士などの専門家事務所 | 個別事情を踏まえた相談、依頼した場合の対応範囲・費用など | 無料となる時間や相談範囲は事務所によって異なる | 初回無料の場合あり |
市区町村・法テラス
市区町村は、死亡後に必要となる行政手続きを確認するときの窓口です。
自治体によっては「おくやみコーナー」などを設け、死亡に伴って必要になる複数の手続きをまとめて案内しています。また、弁護士・司法書士・税理士などによる無料相談を実施している自治体もあります。相談内容や開催日、予約の要否は自治体によって異なるため、事前にホームページなどで確認しておきましょう。
市区町村の相談は、
- 死亡後にどのような行政手続きが必要なのか知りたい
- まず相続手続きの全体像を知りたい
- 専門家に依頼する前に一般的なことを確認したい
といった場合に利用しやすいでしょう。
一方、市区町村の職員が相続税の申告書を作成したり、相続人の代理人として遺産分割の交渉をしたりするわけではありません。個別の税務・法律・登記について専門的な対応が必要になれば、それぞれ税理士・弁護士・司法書士などへ相談します。
遺産分割や相続放棄など法律上の問題について相談したいものの、弁護士費用などが心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)も選択肢です。
法テラスの民事法律扶助による無料法律相談は、収入と資産が一定の基準以下の方を対象としています。相談時間は原則1回30分で、同じ問題について3回まで利用でき、原則として事前予約が必要です。
また、無料法律相談の結果、弁護士や司法書士への依頼が必要になった場合は、一定の要件を満たせば、弁護士・司法書士費用などを法テラスが立て替える制度もあります。立替制度であるため、原則として後から返済が必要です。
なお、相続税の計算や相続税申告について相談したい場合は、税務署や税理士へ相談しましょう。
税務署・法務局
相続税の制度や申告方法について無料で確認したい場合は、国税局の電話相談センターや税務署を利用できます。
一般的な税務相談は、国税相談専用ダイヤル(0570-00-5901)から電話相談センターへ問い合わせることができます。相続税・贈与税・財産評価についても相談対象となっており、受付時間は8時30分から17時まで(土日祝日、12月29日から1月3日を除く)です。
書類や具体的な事実関係を確認しなければ回答が難しい場合は、所轄税務署で面接相談を受けることもできます。面接相談を希望する場合は事前予約が必要です。
税務署と税理士の違いは、「相談する」のか「業務を依頼する」のかで考えると分かりやすくなります。
税務署では、相続税の制度や申告方法について相談できます。一方、
- 相続財産を整理して相続税申告が必要か確認してほしい
- 土地などの財産評価を含めて相続税申告を依頼したい
- 相続税申告書を作成してほしい
- 税務署とのやり取りを代理してほしい
といった場合は、税理士が相談先です。
不動産の相続登記について無料で確認したい場合は、法務局の登記手続案内を利用できます。
登記手続案内では、自分で登記申請を行いたい人に対し、登記申請書の作成や添付書類の収集方法などについて案内しています。全国の法務局は完全予約制で、利用時間は1回20分以内です。電話・法務局窓口での対面・ウェブ会議のいずれかを選択できます。
一方、登記手続案内は、法務局が申請書を代わりに作成したり、相続登記を代理申請したりする制度ではありません。
- 相続人が多い
- 必要な戸籍を自分で集めるのが難しい
- 何代にもわたって相続登記をしていない
- 自分で申請書を作成するのが難しい
といった場合は、司法書士への依頼を検討しましょう。
弁護士・税理士などの初回無料相談
弁護士・税理士・司法書士などの専門家事務所では、初回相談を無料としている場合があります。
公的な窓口との大きな違いは、自分の家族関係や財産状況などを伝えたうえで、その専門家に正式に依頼した場合の進め方や対応範囲、費用まで確認しやすいことです。
たとえば税理士への相談であれば、
- 相続税がかかる可能性があるか
- どの財産を調べる必要があるか
- 土地の評価が必要か
- 相続税申告を依頼した場合にどこまで対応してもらえるか
- ほかの専門家への相談も必要か
といったことを確認できます。
初回相談では、必要な手続きや期限、正式に依頼した場合の対応範囲・費用などを確認しておくとよいでしょう。無料相談を利用したからといって、必ず正式に依頼する必要はありません。無料となる相談時間や範囲は事務所によって異なるため、予約時に確認しておきましょう。
また、弁護士会・税理士会・司法書士会などが無料相談を実施していることもあります。「特定の事務所へ直接問い合わせるのはまだ抵抗がある」という場合は、こうした専門家団体の相談窓口を調べてみるのも一つの方法です。
弁護士・税理士・司法書士・行政書士の違い
相続では、弁護士・税理士・司法書士・行政書士など複数の専門家が関わります。それぞれ得意とする業務が異なるため、自分が何を相談・依頼したいのかに合わせて選ぶことが大切です。
まずは、それぞれの専門家がどのような役割を担うのか、全体像を確認しておきましょう。

主な違いを整理すると、次のようになります。
| 専門家 | 主に相談・依頼できること | 向いているケース |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割の交渉、遺留分、相続トラブルなど | 相続人同士でもめている、交渉を任せたい |
| 税理士 | 相続税の相談、財産評価、相続税申告など | 相続税がかかる、かかるか分からない |
| 司法書士 | 相続登記、登記に必要な書類の作成、相続放棄の書類作成など | 不動産を相続した、家庭裁判所へ提出する書類を作成したい |
| 行政書士 | 遺産分割協議書などの書類作成、相続人・相続財産の調査など | 争いがなく、書類作成が中心 |
弁護士は遺産分割などの紛争対応、税理士は相続税、司法書士は相続登記、行政書士は紛争・税務・登記を伴わない書類作成などを主に扱います。
特に迷いやすいのが司法書士と行政書士です。不動産の相続登記まで依頼するなら司法書士、登記や税務・紛争対応が不要で、遺産分割協議書などの書類作成が中心なら行政書士と考えると分かりやすいでしょう。
また、一つの相続について複数の専門家が必要になることも珍しくありません。
| 状況 | 主な相談先 |
|---|---|
| 相続税がかかる+不動産がある | 税理士+司法書士 |
| 遺産分割でもめている+相続税がかかる | 弁護士+税理士 |
| 相続税はかからず、不動産の相続登記だけ必要 | 司法書士 |
| 相続放棄を検討している | 弁護士・司法書士 |
| 相続人間で合意済みで、書類作成が中心 | 行政書士・司法書士 |
たとえば、相続税申告と相続登記の両方が必要な場合は、税理士と司法書士を連携させながら進めます。特に、誰がどの不動産を取得するかによって相続税額が変わる可能性がある場合は、遺産分割や登記を確定する前に税理士へ相談しておくと安心です。
「自分の場合は誰に相談すればよいのか分からない」という場合は、相続を多く扱い、必要に応じてほかの士業と連携できる専門家や相談窓口を選ぶ方法もあります。
相続手続きをまとめて任せたい場合は、信託銀行の遺産整理業務も選択肢になります。信託銀行によっては、相続人や相続財産の調査、財産目録の作成、預貯金・有価証券などの名義変更といった相続手続きをまとめてサポートしています。
一方、幅広い手続きを任せられる反面、費用が高額になる場合があります。大手信託銀行では最低手数料を110万円(税込)としている例もあり、相続税申告や相続登記が必要な場合は、税理士・司法書士などへの費用が別途必要になることもあります。
そのため、手続きの一括代行を重視するのか、費用を抑えて必要な業務だけ専門家へ依頼するのかを、対応範囲と総額を比較して検討するとよいでしょう。
相続相談を急いだ方がよいケースと期限
相続には期限が決められている手続きがあります。特に次の期限が近づいている場合は、相談先を長期間比較するよりも、まず必要な手続きを確認することを優先しましょう。

主な期限を整理すると、次のようになります。
| 期限 | 主な手続き | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 3カ月以内 | 相続放棄・限定承認 | 弁護士・司法書士 |
| 4カ月以内 | 準確定申告 | 税理士・税務署 |
| 10カ月以内 | 相続税の申告・納付 | 税理士 |
| 3年以内 | 相続登記 | 司法書士 |
3カ月以内|相続放棄・限定承認
相続放棄や限定承認を検討する場合は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所で手続きを行います。
特に、
- 借金の督促状が届いた
- 亡くなった人が事業をしていた
- 連帯保証人になっていた可能性がある
- 財産と借金のどちらが多いか分からない
といった場合は、早めに財産と債務を確認しましょう。
3カ月以内に調査しても、相続するか放棄するか判断できない場合は、家庭裁判所へ申し立てることで熟慮期間を伸長してもらえる場合があります。
相続放棄は主要な相続手続きの中でも期限が短いため、「借金があるかどうか分からない」という状態そのものを、早めに相談した方がよいサインと考えてください。
4カ月以内|準確定申告
亡くなった人に所得税の確定申告義務があった場合は、相続人などが代わりに「準確定申告」を行います。
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内です。
すべての相続で必要になるわけではありませんが、亡くなった人が事業を営んでいた、不動産所得があったなど、確定申告が必要だった可能性がある場合は確認しておきましょう。
準確定申告と相続税申告の両方が必要になるケースもあります。税理士へ相談する場合は、相続税だけでなく準確定申告の必要性についてもあわせて確認すると、手続きの漏れを防ぎやすくなります。
10カ月以内|相続税の申告・納付
相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に行います。
10カ月と聞くと余裕があるように感じますが、相続税申告までには、次のような作業が必要になることがあります。
- 相続人を確認する
- 財産・債務を調査する
- 土地などを評価する
- 遺産の分け方を話し合う
- 利用できる特例を確認する
- 申告書を作成する
- 納税資金を準備する
土地が複数ある場合や非上場株式が含まれる場合、相続人同士の話し合いが進まない場合などは、特に時間がかかる可能性があります。
また、遺産分割が10カ月以内にまとまらなくても、相続税の申告期限は延長されません。
未分割の財産については、当初の申告では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できません。ただし、相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に遺産分割が成立した場合は、分割が行われた日の翌日から4カ月以内に更正の請求を行うことで、特例を適用できる場合があります。
そのため、
「遺産分割が終わっていないから、相続税申告もしなくてよい」
とは考えないようにしましょう。
話し合いが10カ月以内にまとまらない可能性がある場合こそ、早めに税理士へ相談して申告方法を確認することが重要です。
3年以内|相続登記
不動産を相続した場合は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、その時点で遺産分割が終わっておらず、後から遺産分割によって不動産を取得する人が決まった場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を反映した登記を行う必要があります。
2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象です。2024年4月1日時点ですでに不動産を相続したことを知っていた場合は、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
そのため、
- 親が亡くなってから実家の名義を変えていない
- 祖父母名義の土地が残っている
- 何年も前に相続した土地・建物がある
といった場合も、登記状況を確認しておきましょう。
遺産分割がまとまらず、期限内に通常の相続登記をすることが難しい場合は、相続人申告登記を利用する方法があります。自分が相続人であることなどを法務局へ申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものと扱われる制度です。
ただし、相続人申告登記は、遺産分割の結果に基づいて所有者を変更する通常の相続登記とは異なります。後から遺産分割が成立した場合には、遺産分割の日から3年以内に、その内容に沿った相続登記が別途必要です。
相続相談の前に準備しておきたいもの
相続について相談するときは、家族関係や財産の状況が分かる資料を持っていくと、より具体的な相談がしやすくなります。
ただし、すべての資料をそろえてから相談する必要はありません。
特に相続放棄や相続税申告などの期限が迫っている場合は、資料集めに時間をかけすぎず、現在分かっている範囲で相談しましょう。
最初の相談では、次の5点を準備しておくとスムーズです。
1.家族関係のメモ
亡くなった人との関係や、ほかに誰が相続人になりそうなのかを簡単に整理しておきます。
正式な家系図を作る必要はありません。配偶者、子ども、兄弟姉妹などが分かる手書きのメモでも十分です。
2.財産と借金の概算リスト
分かる範囲で、
- 預貯金
- 土地・建物
- 株式・投資信託
- 生命保険
- 借入金
- その他の財産・債務
を書き出しておきましょう。
金額が正確に分からなくても構いません。
「A銀行に預金がある」「自宅のほかに地方に土地がある」「株を持っていたかもしれない」といった情報でも、次に何を確認すべきかを整理する材料になります。
3.遺言書の有無
遺言書があるかどうかによって、その後の遺産分割や手続きの進め方が変わります。
遺言書を見つけている場合は、相談時に持参しましょう。見つかっていない場合でも、「あるかどうか分からない」と伝えてください。
4.固定資産税の納税通知書
土地や建物がある場合は、固定資産税の納税通知書や課税明細書があると、不動産の所在地や評価額などを確認する手掛かりになります。
登記事項証明書などをすでに取得している場合は、あわせて持参するとよいでしょう。
5.相談で聞きたいことのメモ
相談時間を有効に使うため、
- 相続税はかかるのか
- 相続放棄をした方がよいのか
- いつまでに何をすればよいのか
- ほかの専門家への相談も必要か
- 正式に依頼するといくらかかるのか
など、聞きたいことを書き出しておきましょう。
優先順位の高い質問を3つ程度決めておくと、限られた相談時間でも重要な点を確認しやすくなります。
財産の全体像が分からないときに使える制度
亡くなった人がどこに不動産を持っていたか分からない場合は、2026年2月に始まった所有不動産記録証明制度を利用できます。法務局へ請求すると、亡くなった人が登記名義人となっている不動産を一覧で確認できます。
ただし、検索に使用した氏名・住所と登記記録が一致しない不動産は抽出されない場合があるため、証明書に記載された不動産がすべてとは限りません。
また、戸籍については2024年3月から、本籍地以外の市区町村でも一定の戸籍証明書を取得できる「広域交付」が始まっています。広域交付は、委任状による代理人請求や第三者請求はできないなどの条件があるため、利用前に確認しましょう。
相続に詳しい専門家の選び方と費用
同じ資格を持つ専門家でも、相続案件の経験や得意分野、対応できる業務は異なります。
そのため、相続の相談先は「自宅から近い」「費用が安い」といった条件だけで決めず、自分が抱えている問題を解決できるか、その事務所にどこまで任せられるかを確認して選びましょう。
相続に詳しい専門家を選ぶポイント
専門家を選ぶときは、次の3点を確認するのがおすすめです。
1.自分が依頼したい相続業務の実績があるか
税理士なら相続税申告、弁護士なら遺産分割や遺留分、司法書士なら相続登記など、自分が依頼したい分野の取扱実績を確認しましょう。
年間の相談件数や申告件数などは、専門性を判断する一つの目安になります。ただし、件数の多さだけでなく、相続税申告・遺産分割・相続登記など、自分が依頼したい業務の取扱実績があるかも確認しましょう。
たとえば税理士を探す場合でも、法人税申告を中心に扱う事務所と、相続税申告を多く扱う事務所では経験する業務が異なります。
2.対応範囲と他士業との連携体制
相続では、税務・登記・法律問題など、複数の手続きが同時に必要になることがあります。
そのため、事務所内または提携する他士業を含め、相続手続きのうちどこまで対応してもらえるのかを確認しておきましょう。
たとえば、
- 戸籍の収集
- 相続人の確認
- 財産調査
- 相続税申告
- 金融機関の手続き
- 相続登記
- 遺産分割トラブルへの対応
などです。あわせて、その事務所だけでは対応できない業務について、司法書士や弁護士などほかの専門家と連携できるかも確認しておくとよいでしょう。
たとえば、相続税申告と相続登記の両方が必要な場合は税理士と司法書士、遺産分割でもめていて相続税申告も必要な場合は弁護士と税理士が関わることがあります。
他士業との連携体制があれば、自分で専門家を一から探す負担を減らせます。ただし、連携先への依頼が別契約・別料金になる場合もあるため、どこまでが対応範囲に含まれるのか、追加費用が発生するのかもあわせて確認しましょう。
相談時には、
「この手続きはどこまで対応してもらえますか」
「対応できない業務は、ほかの専門家と連携できますか」
「他士業への依頼は別料金になりますか」
と確認しておくと、依頼後の認識違いを防ぎやすくなります。
3.説明が分かりやすく、注意点も説明してくれるか
相続では専門用語や複雑な制度が多いため、説明の分かりやすさも重要です。
- なぜその手続きが必要なのか
- ほかに選択肢はあるのか
- どのようなメリット・デメリットがあるのか
- どのようなリスクや注意点があるのか
- 今後どのような順番で進めるのか
まで説明してくれるか確認しましょう。
初回相談の段階で、今後の手続きと大まかなスケジュールを示してもらえると、その専門家へ依頼した後のイメージもつかみやすくなります。
すでに専門家へ依頼しているものの、説明や対応方針に疑問がある場合は、別の専門家へ意見を求める方法もあります。
また、実家や相続財産が遠方にある場合でも、必ずしも現地の専門家へ依頼しなければならないわけではありません。オンライン相談や郵送で対応できる事務所もあるため、対応地域や面談方法を確認して選びましょう。
相談料・依頼費用を確認するポイント
専門家への依頼費用は、業務の内容や財産の状況、相続人の人数、案件の複雑さなどによって異なります。
そのため、「税理士なら◯◯万円」「司法書士なら◯◯万円」といった一般的な金額だけで比較するより、自分のケースについて見積もりを取り、その金額でどこまで対応してもらえるのかを確認することが重要です。
事務所によっては、
- 財産額
- 相続人の人数
- 土地の数や評価の難しさ
- 非上場株式の有無
- 申告期限が迫っている場合
などによって追加料金が設定されている場合があります。
見積もりを受け取ったら、少なくとも次の6点を確認しましょう。
- 基本報酬はいくらか
- どこまでの業務が料金に含まれているか
- 追加料金が発生するのはどのような場合か
- 戸籍取得などの実費は含まれているか
- ほかの士業へ依頼する場合は別料金になるか
- 手続き完了後の問い合わせや追加対応に費用がかかるか
相続登記を依頼する場合には、司法書士への報酬とは別に登録免許税などの実費が必要になります。
そのため、複数の見積もりを比較するときは、単純な総額だけでなく、
「その金額で何をしてもらえるのか」
「どのような場合に追加料金が発生するのか」
という条件をそろえて確認しましょう。
費用だけでなく、相続分野の実績、対応範囲、他士業との連携、説明の分かりやすさも含めて、自分が納得して任せられる専門家を選ぶことが大切です。
相続の相談先についてよくある質問
専門家や窓口を選ぶときによくある疑問をまとめました。
Q.財産額が分からなくても税理士に相談できますか?
むしろ、「相続税がかかるか分からない」「土地がいくらとして評価されるのか分からない」という段階で相談しても問題ありません。
固定資産税の納税通知書や通帳など、手元にある資料を持参すれば、そこから確認すべき財産や必要な資料を整理できます。金額が正確に分からなくても構いません。
すべての財産を自分で調べ終わってから相談する必要はなく、何を調べれば相続税の申告が必要か判断できるのかを確認するために相談するという使い方もできます。
Q.税理士と司法書士のどちらに先に相談すべきですか?
Q.無料相談だけ利用しても問題ありませんか?
まとめ|相続税がかかるか分からない場合も早めに相談を
相続の相談先は、困っている内容によって異なります。相続人同士でもめているなら弁護士、相続税がかかる・かかるか分からないなら税理士、不動産の相続登記なら司法書士が主な相談先です。
市区町村や法テラス、税務署、法務局など無料で利用できる窓口もありますが、相談できる内容や対応範囲はそれぞれ異なります。個別の事情を踏まえて手続きを依頼したい場合は、弁護士・税理士・司法書士などの専門家へ相談しましょう。
特に相続税については、財産額がまだ正確に分からない段階でも相談できます。相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。「申告が必要だと分かってから」ではなく、「申告が必要か分からない段階」で確認しておくことが大切です。
VSG相続税理士法人では、相続税がかかるか分からない段階から無料相談を受け付けています。
「財産がいくらあるか整理できていない」「不動産があり、税理士と司法書士のどちらに相談すればよいか分からない」といった場合でも、現在分かっている状況から必要な手続きや確認事項を整理できます。
また、相続では税理士だけでなく、司法書士や弁護士など複数の専門家が必要になる場合があります。VSGでは相続に関わる各士業が連携しているため、相続税申告だけでなく、相続登記や法律上の問題が生じた場合も、必要な専門家を一から探す負担を減らせます。
相続税がかかるか分からない、何から始めればよいか分からないという場合も、まずは現在分かっている財産や相続人の状況からご相談ください。

