記事の要約
- 分筆は、相続や一部売却のために1筆の土地を登記上で複数に分ける手続き
- 分筆した土地の相続税評価額は、分け方や利用状況によって変動する
- 測量・境界確認から行う場合の目安は、数十万円単位の費用と数カ月の期間がかかる
「親から相続した土地を兄弟で分けたい」「自宅の敷地を残し、一部だけを売却して納税資金を用意したい」。こうした場面で活用されるのが、1筆の土地を登記上で複数に分ける「分筆(ぶんぴつ)」です。
分筆を検討する際は、費用や手続きだけでなく、「誰がどの土地を取得し、分けた後にどう使うのか」まで考えることが大切です。分け方は相続税評価に影響するほか、道路との接し方や敷地面積によっては、予定していた住宅を建てられなくなることもあります。
この記事では、分筆と敷地分割の違い、費用相場、手続きの流れをわかりやすく解説します。あわせて、相続専門の税理士法人の視点から、相続税評価との関係や、遺産の分け方・土地活用を検討する際の注意点も紹介します。
目次
土地の分筆とは?
1筆の土地を登記上で複数に分ける手続き
土地の分筆とは、1筆の土地を登記上で2筆以上に分ける手続きです。登記上、土地は「1筆(いっぴつ)」「2筆(にひつ)」と数えます。相続した土地を兄弟で分けて取得したい場合や、土地の一部だけを売却したい場合などに活用されます。
1筆ごとの土地には、土地を識別するための「地番」が付けられています。分筆すると、分けた土地がそれぞれの地番で区別され、別々の土地として登記されます。なお、見た目の敷地と登記上の筆数は必ずしも一致せず、ひと続きの敷地が複数の筆で構成されていることもあります。
分筆後は、各土地について別々に所有権の登記を行えるようになります。ただし、分筆自体によって所有者が変わるわけではありません。 たとえば、分けた土地の一方を他の人の名義にするには、分筆登記とは別に、所有権移転登記が必要です。
「分筆」と「建築基準法上の敷地分割」の違い
分筆と混同されやすいのが、建築基準法上の「敷地分割」です。分筆が登記上の土地を分ける手続きであるのに対し、敷地分割は、それぞれの建物の敷地として使う範囲を分けることを指します。建築上の敷地と登記上の土地は、同じ範囲にそろえる必要はありません。
たとえば、親の自宅がある敷地の一部に、独立した子どもの住宅を建てる場合です。親と子それぞれの住宅の敷地を区切り、両方が接道条件や建ぺい率などの基準を満たすように計画します。この場合、建築のために敷地を分けても、登記上は1筆のままで対応できます。
一方、子どもの住宅用地だけを子どもの名義にするために所有権移転登記を行う場合は、その部分を分筆する必要があります。建物を建てるための敷地の区分と、名義を分けるための登記上の区分は、別のものとして考えましょう。
分筆が行われる主要なケース
土地の分筆は、相続や売却などの目的に応じて行います。ここでは、どのような場面で分筆が必要になるのか、代表的な3つのケースを具体例とともに紹介します。
① 相続した土地を複数人で分けるため
親から相続した1筆の土地を、兄弟などがそれぞれ別の土地として取得したい場合に、分筆が活用されます。
たとえば、兄弟2人で土地を分ける場合、遺産分割で「東側の土地は兄、西側の土地は弟」のように、誰がどの範囲を取得するかを決めます。その範囲に合わせて土地を2筆に分筆し、それぞれの単独名義にするための所有権の登記を行います。
このように土地を分けて取得すれば、土地全体を兄弟で共有するのではなく、各自が自分の土地を所有できます。それぞれの事情に合わせて、土地の活用や売却を検討しやすくなる点が特徴です。
② 土地の一部を売却・活用するため
所有している土地のうち、手元に残したい部分と売却したい部分を分ける場合にも、分筆が活用されます。たとえば、自宅に必要な敷地を残し、使っていない部分だけを売却して、相続税の納税資金を用意するケースです。
この場合は、売却する部分を分筆したうえで、その土地について買主への所有権移転登記を行います。土地全体を売却するのではなく、一部だけを現金化するために分筆を利用します。
また、融資を受ける際に、土地全体ではなく特定の部分だけを担保にしたい場合にも分筆が必要です。担保にする部分を別の土地として登記することで、その土地だけに抵当権を設定できるようになります。
③ 用途の異なる土地の地目を分けるため
土地の一部を、ほかの部分とは独立した別の用途に変更する場合にも分筆を行います。「地目」とは、宅地・田・畑など、土地の主な用途を表す登記上の区分です。1筆の土地には1つの地目を定めるため、一部だけが別の地目になった場合は、その範囲を分筆して登記を整理します。
たとえば、畑の一部に住宅を建て、残りの部分では引き続き農業を営むケースです。この場合は、住宅の敷地と畑を分筆し、住宅の敷地部分について「宅地」への地目変更登記を行います。これにより、それぞれの土地の実際の利用状況を登記に反映できます。
なお、農地を住宅の敷地などに変える場合は、分筆や地目変更とは別に、原則として事前に農地転用の許可や届出が必要です。
【税理士法人の視点】土地を分筆するメリット・デメリット
土地の分筆を検討する際は、相続税への影響だけでなく、分けた後の使いやすさや、手続きにかかる負担も確認することが大切です。ここでは、相続した土地を分筆する場合の主なメリットとデメリットを解説します。
メリット1:共有名義による将来のトラブルを回避できる
相続した土地を兄弟などで共有すると、土地全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。そのため、共有者のなかに反対する人がいると、希望する売却を進められなくなります。
また、共有者の一人が亡くなると、その持分は相続人に引き継がれます。これにより共有者の人数が増えたり、遠縁の親族が共有者になったりするため、話し合いがさらに難しくなります。
一方、土地を分筆し、兄弟それぞれが取得する土地を単独名義にすれば、各自の判断で活用や売却を検討できます。たとえば、兄は自分の土地を残して使い、弟は自分の土地を売却するなど、それぞれの希望に合わせて判断できます。土地全体の使い方について意見をそろえる必要がなくなるため、共有に伴うトラブルを防ぎやすくなります。
メリット2:遺産の分け方によって相続税評価額を抑えられる場合がある
土地の相続税評価では、面している道路や土地の形状、利用状況などが考慮されます。そのため、遺産分割によって兄弟などが土地を分けて取得する場合、分け方によっては相続税評価額を抑えられることがあります。
ただし、分筆登記をしただけで評価額が下がるわけではありません。通常の宅地として使えない区画を作るなど、著しく不合理な分割をした場合は、分割前の土地全体を1画地として評価します。
また、「デメリット2」で解説するように、土地の分け方によっては、道路との接し方などの基準を満たせず、利用が制限される可能性があります。分筆を検討する際は、まずは相続税に詳しい税理士や土地家屋調査士などに相談することをおすすめします。
デメリット1:測量や登記に費用と時間がかかる
分筆には、土地家屋調査士による測量や境界確認、登記申請などの費用がかかります。必要な作業によって金額は異なりますが、測量から行う場合は、数十万円単位の出費を見込む必要があります。分筆による節税を考えている場合も、税金がどれだけ減るかだけでなく、手続きにかかる費用を含めて判断することが大切です。
また、境界の調査や隣地所有者との調整から行う場合は、完了まで数カ月かかることがあります。隣地の所有者と連絡が取れない、境界について意見が一致しないといった事情があれば、さらに長期化します。
相続税の納税資金を用意するために土地の一部を売却する場合は、分筆だけでなく、買主を探して売却代金を受け取るまでの時間も必要です。売却代金が必要になる時期から逆算し、早めに費用とスケジュールを確認しておきましょう。
デメリット2:分けた土地を独立した建築敷地として使えないことがある
分筆登記ができても、分けた土地のそれぞれに建物を建てられるとは限りません。各区画を住宅などの敷地として使うには、道路との接し方や、地域で定められた敷地面積の最低限度など、建築上の基準を満たす必要があります。
たとえば、土地を道路側と奥側に分けた結果、奥側の区画が道路に接しなくなるケースです。必要な接道条件を満たせなければ、原則として住宅を建てられないため、土地を取得しても予定どおりに活用できなくなります。
また、自宅の敷地の一部を分けて別の住宅用地として使う場合は、新しく建てる住宅だけでなく、既存の自宅への影響にも注意が必要です。自宅の敷地を狭くした結果、建ぺい率・容積率などの基準を満たせなくなると、既存の自宅が違反建築物となる危険性があります。
土地を分ける際は、評価額や面積だけで判断せず、分けた後も各区画で予定している利用ができるかを確認することが大切です。建築や売却を予定している場合は、土地を分ける位置を決める前に、建築士や土地家屋調査士などに相談しましょう。
土地の分筆にかかる費用相場と内訳
土地の分筆には、土地家屋調査士への報酬のほか、登録免許税や資料取得費などがかかります。費用の中心となるのは、測量や境界確認、登記申請などを依頼する土地家屋調査士への報酬です。必要な作業は土地ごとに異なるため、費用の目安と併せて、金額が変わる理由も確認しておきましょう。
土地家屋調査士への報酬(測量・境界確認の費用)
土地家屋調査士には、資料調査や現地測量、隣接地との境界確認、図面の作成、分筆登記の申請など、一連の業務を依頼します。報酬は、これらの作業内容や所要時間などに応じて決まります。
参考として、日本土地家屋調査士会連合会の「土地家屋調査士報酬ガイド(令和7年度版)」では、市街地の264㎡の宅地を2筆に分けるなどの条件を設定した場合の全国平均報酬額は、約48万円(税抜)でした。ただし、これは一定の条件に基づく参考額であり、すべての分筆に当てはまる金額ではありません。
実際の費用は、土地の広さや形状、境界を確認する相手の数などによって変わります。たとえば、隣接する土地が多い場合や、道路・水路との境界を確認するために自治体との立ち会いが必要な場合は、その分の調査・調整費用がかかります。依頼内容によっては、報酬だけで100万円を超える場合もあります。
一方、過去の測量図や境界標を利用でき、改めて行う調査や立ち会いを減らせれば、費用を抑えやすくなります。手元に測量図などがある場合は、依頼時に確認してもらい、必要な作業と見積額を把握しておきましょう。
登録免許税
所有権の登記がある土地を分筆する場合、分筆後の土地1筆につき1,000円の登録免許税がかかります。たとえば、1筆を2筆に分ける場合は2,000円、3筆に分ける場合は3,000円です。分筆登記の登録免許税は、土地の価格や面積ではなく、分筆後の筆数によって決まります。
なお、相続した土地をそれぞれの相続人の名義にする場合などは、分筆登記とは別に、所有権の登記にかかる登録免許税も確認する必要があります。分筆登記の税額だけで、名義変更まで済むわけではありません。
資料取得費などの実費
測量や登記に必要な登記事項証明書、公図、地積測量図などを取得する際にも、手数料がかかります。たとえば、法務局の窓口で書面により請求する場合、登記事項証明書は通常1通600円、地図・図面の証明書は1通500円です。必要な資料の種類や通数によって、合計額が変わります。
このほか、境界標の材料費や交通費、郵送費などがかかる場合もあります。見積もりを確認する際は、報酬額だけでなく、消費税や実費を含めた支払総額と、追加費用が発生する条件まで確認しておくと安心です。
分筆の手続きの流れ
土地の分筆は、土地家屋調査士に調査・測量や登記申請を依頼して進めるのが一般的です。相談する際は、「兄弟で分けて相続したい」「一部を売却したい」などの目的と希望する時期を伝え、必要な作業やスケジュールを確認しましょう。ここでは、依頼後の基本的な流れを紹介します。

1.資料調査・現地測量
まず、土地家屋調査士が公図・地積測量図・登記事項証明書などを調べ、土地の登記内容や、隣接する土地との位置関係を確認します。道路や水路に接している場合は、自治体などが保管する境界に関する資料も調査します。
そのうえで現地を調査・測量し、境界標の有無や、図面と実際の土地の状況に違いがないかを確認します。資料と現地の状況を照らし合わせ、土地の範囲や面積を明らかにしていく作業です。 手元に過去の測量図や境界確認書があれば、あらかじめ土地家屋調査士に渡しておきましょう。
2.隣接する土地との境界を確認する
調査・測量の結果をもとに、隣接する土地との境界を確認します。必要に応じて隣地の所有者や道路・水路の管理者と現地で立ち会い、登記上の土地の区切りである「筆界」の位置を確認し、その内容を境界確認書などにまとめます。
ここで確認するのは、隣地との間にある既存の筆界です。当事者同士の話し合いで、自由に位置を決め直すものではありません。なお、精度の高い測量図などによって筆界を確認できる場合は、改めて立ち会いを行わずに進められることもあります。
3.土地を分ける位置を決める
土地の範囲や面積が明らかになったら、分筆によって新たに設ける区切りの線(分筆線)を決めます。「自宅の敷地を残して一部を売却する」「兄弟がそれぞれ住宅を建てられるように分ける」など、目的に合わせて土地家屋調査士と具体的な位置を検討します。分け方の相談は、調査や測量と並行して進めることもできます。
4.境界標を設置し、地積測量図を作成する
分筆する位置が決まったら、新しい境界を現地で示すために、金属プレートや杭などの境界標を設置します。隣地との既存の境界についても、必要に応じて境界標を設置します。
あわせて、土地家屋調査士が測量結果をもとに、分筆後の土地の形状や面積、境界点の位置などを示す「地積測量図」を作成します。この図面は、分筆登記を申請する際に法務局へ提出する資料です。
5.法務局へ分筆登記を申請する
必要な図面や書類がそろったら、土地家屋調査士が土地を管轄する法務局へ分筆登記を申請します。法務局の審査を経て登記が完了すると、もともと1筆だった土地が、複数の土地として登記されます。
登記完了後は、土地家屋調査士から登記完了証や図面などを受け取り、分筆の手続きを終えます。なお、相続人それぞれの単独名義にするための所有権の登記は、分筆登記とは別に必要です。
期間は数カ月を見込み、相続税の申告期限にも注意する
境界の調査や測量から行う場合は、完了まで数カ月を見込んでおきましょう。必要な資料が整っていれば短くなる一方、隣地所有者の調査や立ち会いの日程調整、境界を巡る話し合いに時間がかかると、手続きも長期化します。具体的な見通しは、依頼時に土地家屋調査士へ確認してください。
相続税の申告・納税期限は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内です。土地の一部を売却して納税資金を用意する場合は、分筆だけでなく、売却代金を受け取るまでの時間も含めて計画を立てましょう。
土地の分筆に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、建物がある土地の分筆や、境界・地番に関する疑問にお答えします。
Q.建物を残したままでも分筆できますか?
ただし、自宅の敷地の一部を分けて別の住宅用地として使う場合などは、既存の自宅についても、残る敷地で建ぺい率・容積率や接道条件などを満たす必要があります。建物を残したまま分筆できるかだけでなく、分筆後の利用計画に問題がないかを、建築士や土地家屋調査士などに確認しましょう。
Q.分筆できない土地はありますか?
Q.分筆した土地の地番はどうなりますか?
まとめ|分筆や遺産分割、土地活用の相談は専門家へ
土地の分筆は、1筆の土地を登記上で複数に分ける手続きです。相続した土地を兄弟で分けて取得したい場合や、自宅の敷地を残して一部だけを売却したい場合などに活用されます。
ただし、分筆登記をしただけで相続税が安くなるわけではありません。遺産の分け方や土地の利用状況などによって評価が変わるため、税額だけを優先せず、分けた後の使いやすさや資産価値も踏まえて検討することが大切です。
分筆を進める際は、「誰がどの土地を取得し、どのように使うのか」を整理したうえで、必要な費用や期間も確認しましょう。土地を分ける位置を決める前に専門家へ相談することが、希望に合った分け方を見つける第一歩です。
VSG相続税理士法人では、相続税の申告や、税負担を踏まえた遺産の分け方についてのご相談に対応しています。グループの土地家屋調査士・司法書士と連携し、測量・分筆登記から相続登記まで、ワンストップでサポートします。
「相続した土地をどう分ければよいかわからない」「分筆した場合の相続税への影響を知りたい」という方は、まずは無料相談をご利用ください。

