記事の要約
- 電話加入権は「死亡時点」の現況で判断し、プランによって有無が異なる
- 令和3年1月1日以後の相続では、自宅の電話加入権は「家庭用財産(家財一式)」として一括評価できる
- 相続後の手続きは、目的別(承継・解約・利用休止など)に選択できるが、注意点もある
被相続人が自宅などで固定電話を契約していた場合、「その電話加入権が相続財産に含まれるのか」「どのように評価して申告すべきか」と、判断に迷うかもしれません。
電話加入権は、原則として相続財産に含まれます。
ただし、令和3年1月1日以後に発生した相続においては、一般家庭で所有していた電話加入権であれば、家具や家電などとともに「家庭用財産」に含めて評価できます。
また、被相続人が固定電話を利用していたからといって、必ず電話加入権を所有していたとは限りません。
「加入電話・ライトプラン」や「ひかり電話」などのサービスは、もとより電話加入権を必要としない契約形態であるためです。
したがって、「被相続人が亡くなった時点で実際に電話加入権を所有していたか」の確認も大切です。
この記事では、「電話加入権の有無を確認する方法」をはじめ、「現在の相続税評価額の考え方」、「相続税申告書への記載方法」、さらには「相続発生後の名義変更・解約手続き」まで順番に解説します。
目次
電話加入権は相続財産に含まれる
電話加入権とは、NTT東日本またはNTT西日本との契約に基づき、加入電話サービスの提供を受ける権利です。
新たに加入電話を契約する際、「施設設置負担金」を支払うことで取得します。
ポイント
施設設置負担金は保証金ではないため、解約してもNTTから返還されるものではありません。
被相続人がこの電話加入権を取得していた場合、家具や家電などの家庭用財産と同様に相続財産に含まれます。
ただし、電話加入権が相続財産にあたるかどうかは、あくまで「被相続人が亡くなった日(相続開始時点)」の状況で判断します。
相続開始後の名義変更日や解約日で判断するわけではない点に、注意が必要です。
| 死亡後の状況 | 相続税上の確認ポイント |
|---|---|
| 電話加入権を解約した | 死亡時点で権利が存在していたかを確認する(存在していれば財産に計上) |
| 相続人へ名義変更した | 死亡時点での名義・権利関係を基に判断する |
| 固定電話機を撤去した | 電話機の撤去と「電話加入権の有無」は分けて考える |
| 電話加入権が利用休止中だった | 実際に使用していなくても、権利が残っていれば対象となる |
たとえば、被相続人が亡くなった2カ月後に相続人が電話加入権を解約したとしても、死亡時点で権利が存在していたのであれば、その時点の評価額を基に相続税の処理を行います。
そのため、死亡後に固定電話を解約・撤去した場合であっても、死亡時点で電話加入権が存在していたのであれば、解約したことだけを理由に相続財産から外すことはできません。
被相続人が電話加入権を持っているかの確認方法
電話加入権に関する手続きで最初に行うべきことが、「被相続人が本当に電話加入権を所有していたかの確認」です。
現在の固定電話サービスには、電話加入権を伴うものと伴わないものがあるため、まずは契約プランの種類から見極めましょう。
| 契約プラン | 電話加入権の有無 | 相続財産としての扱い |
|---|---|---|
| 加入電話(従来型の固定電話) | あり | 相続財産に含める |
| INSネット64 / INSネット1500 | あり | 相続財産に含める |
| 加入電話・ライトプラン | なし | 相続財産に含めない |
| INSネット64・ライト | なし | 相続財産に含めない |
| ひかり電話(光回線電話) | なし | 相続財産に含めない |
このうち、施設設置負担金を支払って契約した「加入電話」や「INSネット」のみ電話加入権が存在し、相続財産への計上が必要となります。
一方、「ライトプラン」や「ひかり電話」などは負担金が不要なサービスであるため、財産としての電話加入権は存在しません。
ポイント
被相続人が過去にアナログ加入電話を利用しており、現在は「ひかり電話」へ切り替えている場合など、以前の電話加入権が「利用休止」の状態でNTTに残っているケースがあります。
この場合、現在その権利を電話回線に使用していなくても、権利自体が有効に存続していれば相続財産に含める必要があります。
被相続人がどのプランで契約しているのか不明な場合は、以下の方法で確認できます。
- 請求書、通帳、契約書等を手がかりにして調査する
- 分からない場合はNTTへ契約内容を確認する
ここからは、上記の確認方法について、詳しく解説していきます。
請求書・通帳・契約書等を手がかりにして調査する
電話加入権に関する書類が見つからない場合は、被相続人が保管していた「請求書」、「預金通帳」、「契約書類」などを確認し、契約の存在や手掛かりを探します。
| 確認する書類・遺品 | 主に確認する内容・ポイント |
|---|---|
| 電話料金の請求書・利用明細 | 契約者名、電話番号、契約サービス名(「加入電話」等の記載)、回線数 |
| 預金通帳・Web口座の取引履歴 | NTT東日本・NTT西日本・NTTファイナンスなどからの毎月の引き落とし |
| クレジットカードの利用明細 | 通信事業者への定期的な支払い履歴 |
| 電話サービスの契約書 | 加入電話、ライトプラン、ひかり電話などの契約区分 |
| 利用休止に関する書類(休止票) | 休止中の電話加入権の番号、休止日、契約者名 |
| 固定電話機・FAX | 自宅用とは別に設置されている電話機や専用番号の有無 |
まずは、被相続人の自宅に届いている電話料金の請求書や利用明細を探します。
請求書が見つからない場合は、「預金通帳」や「インターネットバンキングの取引履歴」等を遡り、NTT東日本・NTT西日本・NTTファイナンス等からの引き落としがないかを確認しましょう。
引き落としが続いていれば、現在も何らかの固定電話契約が存続している証拠になります。
「複数回線」を契約しているケースに注意
被相続人が個人事業主や経営者であった場合などは、複数回線を契約している可能性に注意が必要です。
たとえば、「店舗・事務所の代表電話」や「FAX専用回線」として別々の番号を所有している場合、電話加入権も回線数分(複数)存在することがあります。
請求書の通数や引き落とし金額・口数にも注意を払い、権利の漏れがないよう確認しましょう。
分からない場合はNTTへ契約内容を確認する
手元の書類だけでは「電話加入権の有無」や「契約プラン」を特定できない場合は、電話回線の設置地域を管轄する「NTT東日本」または「NTT西日本」の窓口へ、直接問い合わせて確認します。
問い合わせ窓口
■局番なしの「116」
※携帯電話からの発信では利用できません。
■NTT西日本「0800-2000116」
■NTT東日本「0120-116000」
【受付時間】
午前9時~午後5時 ※土日・年末年始(12月29日~1月3日)を除く
| 確認が必要なケース | NTTへ照会・確認する具体的な内容 |
|---|---|
| ひかり電話を利用している | 以前のアナログ加入電話の権利が「解約」か「利用休止」のどちらになっているか |
| 利用休止に関する書類がある | 休止期間(原則5年・最長10年)が失効しておらず、権利が現在も有効に残存しているか |
| 被相続人名義のまま長期間使っている | 現在の正確な契約名義とサービス区分(電話加入権を伴うプランか) |
| 電話番号は分かるが契約書がない | 契約プランが「加入電話」か、負担金不要の「ライトプラン」か |
| 固定電話をすでに解約・撤去している | 被相続人の死亡日(相続開始時点)において、電話加入権が存在していたか |
| 複数の電話番号が見つかった | 判明しているすべての回線ごとの契約プラン・名義・加入権の有無 |
NTTに問い合わせをする際は、「名義人の相続人からの照会」だと伝えやすくするため、事前に以下の情報を手元に整理しておくとスムーズです。
- 被相続人の氏名、固定電話の電話番号、設置場所の住所、死亡日
- 問い合わせる相続人の情報(氏名・連絡先・故人との続柄)
- 手元に残っている請求書や「利用休止のお知らせ」などの関連書類
なお、電話での問い合わせ後、正式な名義変更や証明書の発行手続きへ進む場合は、被相続人の戸籍謄本など必要書類の提出が求められます。
具体的な必要書類は、契約内容や相続人との関係によって異なるため、窓口の最新案内に従って準備を進めてください。
電話加入権の相続税評価
相続税の申告が必要な場合、電話加入権も相続財産に含めて評価します。
このとき、令和3年1月1日以後に相続した電話加入権については、被相続人が自宅で使用していたものであれば、家具や家電などとともに「家庭用財産(家財一式)」に含めて一括評価できます。
家庭用財産(家財一式)とは
被相続人が自宅で使用していた家具・家電・衣類などの一般動産の総称です。
一つひとつ個別に評価するのは現実的でないため、1個または1組の評価額が5万円以下のものは、「家財一式」としての一括評価が認められています。
電話加入権も、この「家財一式」の中に含めることができます。
申告の際は、自宅の家財全体の規模に応じて「家財一式 〇〇万円」と総額を計上し、その中に電話加入権の価値も含まれているものとして扱います。
そして、算出した家庭用財産の金額は、相続税申告書第11表の付表4「相続税がかかる財産の明細書(事業(農業)用財産・家庭用財産・その他の財産用 )」へ記載します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| 1財産の細目 | ■ 「項番」に通し番号を記入する ■ 細目コード欄に「61」、細目欄に「家庭用財産」と記入する |
| 2財産の情報 | ■財産の名称欄に「家具等一式」などと記入する ■ 所在場所欄に被相続人の自宅住所などを記入し、評価額(〇〇万円)を記入する |
| 3財産を取得する人 | ■ 第11表本表で割り振った相続人の番号(例:「1」など)を記入する ■ 「取得財産の価額」欄に、取得した家庭用財産の評価額を記入する |
電話加入権を相続した後の手続き
相続税上の処理を確認した後は、固定電話を今後どのように扱うかに応じて、NTTで手続きを進めます。
| 手続きの名称 | 主な内容と特徴 |
|---|---|
| 承継 | 被相続人名義から相続人名義へ変更する |
| 譲渡 | 相続人以外の第三者へ権利を譲り渡す |
| 解約 | 契約を終了し、電話加入権と電話番号を消滅させる |
| 利用休止 | 月額料金を止め、権利をNTTに預ける(最長10年間) |
| 一時中断 | 月額料金を払い続けながら、電話番号と回線を維持する |
相続後の状況や「電話番号を残す必要があるか」「月額料金を支払い続けるか」などの目的に合わせて、適切な手続きを選択しましょう。
ここからは、「承継」「譲渡」「解約」「利用休止」「一時中断」のそれぞれの手続きについて、解説していきます。
相続放棄を検討している場合の注意点
「被相続人に借金がある」などの理由から相続放棄を検討している場合、名義変更や解約などの手続きが、相続放棄の可否に影響することがあります。
電話加入権は、財産的価値のある「相続財産」にあたります。
相続財産の全部または一部を処分すると、「相続を単純承認した」とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があるためです。
固定電話を使い続ける場合は「承継」または「譲渡」手続きを行う
被相続人の固定電話を相続(遺贈)後も引き続き利用する場合、誰が引き継ぐかによって名義変更の手続きが「承継」と「譲渡」に分かれます。
| 種類 | 主なケース | 手数料(税込) |
|---|---|---|
| 承継 | 契約者の死亡に伴い、相続人が権利を引き継ぐ名義変更 | 無料 |
| 譲渡 | 第三者への権利移転など、「承継」に該当しない名義変更 | 1回線・1利用権につき880円 |
契約者の死亡に伴い、相続人が電話加入権や電話契約を引き継ぐ名義変更を「承継」といいます。
被相続人名義の固定電話を相続人が引き続き使用する場合は、NTT東日本またはNTT西日本へ「承継」を申し込みます。
一方、遺言によって相続人以外の第三者が電話加入権を取得する場合などは、承継ではなく「譲渡」として扱われ、手数料が発生します。
どちらの手続きも「web申し込み」または「書面郵送」で行うほか、以下の書類を準備しなければなりません。
| 準備するもの | 具体的な書類例 |
|---|---|
| 新契約者の本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
| 「被相続人との相続関係」を確認できる書類 ※新契約者の続柄が「配偶者、子、孫、親、兄弟姉妹、甥姪、祖父母」以外の場合に必要 |
検認を済ませた「遺言書」など |
なお、「譲渡」の場合は上記のように、「被相続人との相続関係を確認できる」書類として、検認済の「遺言書」が追加で必要です。
口座変更と名義変更の違いに注意
電話料金の引き落とし口座を相続人名義へ変更しただけでは、電話回線の契約名義まで変更されたことにはなりません。
契約名義が故人のままになっていると、将来の回線変更や解約手続きで支障が出る可能性があるため、あわせて名義変更手続きを完了させることが重要です。
また、「ひかり電話」や「フレッツ光」を利用している場合は、電話加入権とは別に、光回線や関連プロバイダ等の契約変更手続きが必要になる場合があります。
使わない場合は解約・利用休止・一時中断を比較する
固定電話を今後使用しない場合、「解約」「利用休止」「一時中断」という3つの選択肢があります。
将来的に再び加入電話を利用する可能性や、「現在の電話番号を残したいかどうか」に応じて、それぞれの選択肢を比較しましょう。
| 手続き | 電話加入権の扱い | 電話番号の扱い | 月額料金(基本料) |
|---|---|---|---|
| 解約 | 消滅する | 使えなくなる | 解約後は不要 |
| 利用休止 | 一定期間預ける | 再開時に変更 | 休止中は不要 |
| 一時中断 | 契約を維持する | 同一住所なら原則維持 | 中断中も必要 |
ここからは、「解約」「利用休止」「一時中断」それぞれの概要と注意点について、詳しく解説していきます。
「解約」
「解約」は、被相続人名義の固定電話の契約を終了させ、電話加入権そのものを消滅させる手続きです。
解約を選択する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- メリット
- 手続き完了後は毎月の基本料金(回線使用料)の支払いが不要になるほか、解約にあたって解約手数料や違約金は発生しません。
- デメリット
- 一度解約すると電話加入権が消滅するため、再び同じ電話番号を利用することはできません。
また、契約時に支払った「施設設置負担金」が返還されることもありません。
解約手続きは「web」または「電話」で申し込みを行い、「承継(譲渡)」と同じ必要書類を提出して進めます。
| 準備するもの | 書類例 |
|---|---|
| 「被相続人の死亡」を確認できる書類 | 戸籍謄本、除籍謄本、死亡診断書(写し)など |
| 手続きを行う人の本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカードなど |
| 被相続人との相続関係を確認できる書類 ※手続きを行う人の続柄が「配偶者、子、孫、親、兄弟姉妹、甥姪、祖父母」以外の場合に必要 |
検認を済ませた「遺言書」など |
「利用休止」
「利用休止」は、電話の利用を一時的に止め、電話加入権のみをNTTに預ける手続きです。
利用休止期間は原則5年間であり、契約者側から申し出がない場合はさらに5年間自動延長され、最大で「10年間」休止状態が維持されます。
ただし、休止工事日(または前回の更新日)から10年が経過する前に、再度「利用休止の更新」または「利用再開」の申し出を行わないと、電話加入権は自動的に解約扱いとなります。
利用休止を選択する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- 休止している期間中は、毎月の回線使用料を支払う必要がない
- 再びNTTのアナログ固定電話が必要になった場合、施設設置負担金を改めて支払わずに済む
- 電話番号が変わる
- 利用を再開する際、以前と同じ電話番号を引き継ぐことはできません。
- 工事費がかかる
- 回線を取り外す(休止する)時と、再開する時にそれぞれ工事費が発生します。
なお、利用休止を行うには、あらかじめ「被相続人から相続人(受遺者)への承継(譲渡)手続き」を完了させなければなりません。
承継(譲渡)手続きを済ませた後、webの専用フォームまたは「116番」から利用休止を申し込みます。
「一時中断」
「一時中断」は、同じ住所で元の電話番号をそのまま再利用する予定がある場合、一時的に回線を止める手続きです。
一時中断を選択する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- 再開時に元の電話番号をそのまま使い続けることができる
- 利用休止のような「5年・10年の期限」がない
- 中断中も基本料金がかかる
- 電話が通じない状態であっても、毎月の回線使用料を支払い続けなければなりません。
- 工事費がかかる
- 利用休止と同じく、中断時と再開時にそれぞれ工事費がかかります。
また、一時中断を申し込む場合も、事前に「被相続人から相続人(受遺者)への承継(譲渡)手続き」を完了させなければなりません。
承継(譲渡)手続きを済ませた後、webの専用フォームまたは「116番」から一時中断を申し込みます。
電話加入権の相続に関する疑問は専門家にご相談を
電話加入権は相続財産に含まれるため、まずは「被相続人が亡くなった時点で権利を保有していたか」を正しく確認する必要があります。
確認の結果、電話加入権の保有が判明し、被相続人が自宅で使用していたものであれば、家具や家電などの家庭用財産(家財一式)に含めて一括評価することが可能です。
ただし、「評価方法や記載手順で迷ってしまう」「申告後に計上漏れが判明した」といった場合は、自己判断で処理せず、相続専門の税理士へ相談することをおすすめします。
VSG相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて、平日夜21時まで、土日祝も無料相談を受け付けております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

