記事の要約
- 車の贈与では、車を「もらった側」に贈与税がかかることがある
- 車を含めた「その年の贈与財産の合計」が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も必要ない
- 税負担を抑えるには、「価値が落ちるまで待つ」か「110万円以下の資金援助をする」のが有効
「子どもに車を買ってあげたい」「自分が乗っている車を知人に譲りたい」
そう考えたときに気になるのが、「贈与税がかかるのではないか?」ということだと思います。
結論からお伝えすると、車の贈与では「もらった側」に贈与税がかかることがあります。
実際に課税されるかどうかは、次の3つのポイントで判断できます。
- 車の名義を変更するか?
- 車を含めた「その年の贈与財産の合計」が110万円を超えるか?
- その車は「生活に必要」といえるか?
このうち、特に重要なのがポイントの2つ目です。
贈与税には「年間110万円」の基礎控除があるため、車の価値がこの範囲に収まっていれば、ほかに贈与がない限り、贈与税はかかりません。
反対に、110万円を超える価値がある車を渡すときには、税負担が生じます。
そこで有効なのが、「車の値落ちを待ってから渡す」「車ではなく購入資金を110万円以内で援助する」という2つの方法です。
この記事では、「車と贈与税の関係」をわかりやすくお伝えします。
なお、私たちVSG相続税理士法人では、贈与や生前対策に関するお悩みに無料でお答えしています。何かお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
【判定フロー】車をもらうと贈与税がかかる?

車をもらったとき、状況によっては「贈与税」がかかります。
そもそも贈与税は、「財産をもらった人」に課される税金です。
たとえば、父親が子どもに車を渡したとき、贈与税がかかる可能性があるのは「子ども」のほうです。

「車の贈与で贈与税がかかるかどうか」は、次のフローチャートで判定できます。

それでは、質問を1つずつ見ていきましょう。
質問1:車の名義を変更する?

そもそも「贈与」が成立するのは、車を渡して「名義」も相手に変更したときです。
裏を返せば、「親の名義のままにしている車を、子どもがときどき借りて乗る」といったケースは、贈与にはあたらず、贈与税もかかりません。
ただし、名義を移さないまま所有者が亡くなると、車は「相続財産」として相続税の対象になります。
質問2:現在の車の価値は、110万円を超える?

名義を変更して車を渡す場合、次に確認すべきなのは「現在の車の価値」です。
贈与税には、「年間110万円」の基礎控除があります。
このため、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も必要ありません。

ここで判定に使うのは、「購入したときの価格」ではなく「贈与するときの時価」です。
たとえば、新車で300万円だった車でも、贈与時の査定額が100万円であれば、判定には「100万円」のほうを用います。
ただし、贈与税がかかるかどうかは「車単体」ではなく、「その年に受けたすべての贈与の合計」で判定します。
たとえば、査定額100万円の車をもらった年に、現金20万円ももらっていた場合、合計は120万円となり、基礎控除を超えた10万円が課税の対象です。

質問3:その車は「生活に必要」といえる?

贈与した車が「生活に必要なもの」であれば、贈与税がかからない可能性があります。
相続税法では、夫婦や親子などの「扶養義務者」の間で、生活費に充てるために贈与された財産のうち「通常必要と認められるもの」には、贈与税を課さないと定められています。
相続税法
(贈与税の非課税財産)
第21条の3 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
1 法人からの贈与により取得した財産及び公益信託から給付を受けた財産
2 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの引用元 相続税法|e-Govポータル
このことから、たとえば「公共交通機関がない地域に住んでいて、通勤や通院に車が欠かせない」といった事情があれば、非課税になる余地があります。
ただし、非課税になる財産には「通常必要と認められるもの」という条件があることから、下記のようなケースでは対象になりにくいです。
- 高級車やスポーツカーなど、趣味性の高い車
- すでに移動手段があるのに、追加でもらった車
- レジャーや趣味のために使う車 など
「車が非課税になるかどうか」は、あくまで個別の事情をもとに判断されるため、ご自身で安易に「非課税になるはず」と結論を出すのは危険です。
非課税になりそうな事情があるときは、必ず税理士に確認しましょう。
車をもらったときの贈与税はいくら?

車をもらったときにかかる贈与税の金額は、次の2ステップで確認できます。
それぞれの工程を詳しく見ていきましょう。
ステップ1:車の評価額を調べる
贈与税を算出するにあたっては、まず計算のもとになる「車の評価額(= 時価)」を確認します。
実務でよく使われるのは、次の2つの方法です。
- 「同じ車種・年式・走行距離」の中古車の買取相場をインターネットで調べる
- 買取業者やディーラーで査定を受ける
査定を受けた場合、業者から受け取る「査定書」は、贈与税を申告するときの「金額の根拠」になります。必ず手元に残しておいてください。
ポイント
特に、査定額が110万円前後になったときは、複数の業者に依頼して相場を確認しておきましょう。
1社の金額だけで「110万円以下だから申告は不要」と判断してしまうと、あとから時価を否認され、ペナルティが科されるおそれがあります。
ステップ2:税額を計算する
車の時価がわかったら、下記の計算式で贈与税を算出します。
計算式
贈与税の税率は「誰からもらったか」によって、次の2種類に分かれます。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 特例税率 | ■ 18歳以上※1の人が、直系尊属(父母や祖父母)から贈与された財産に適用される ■ 一般税率よりも税負担が軽い |
| 一般税率 | ■ 特例税率に当てはまらない贈与(夫婦間・兄弟姉妹間・知人からの贈与など)に適用される |
- ※1
- 年齢は「贈与を受けた年の1月1日時点」で判定する
どちらの税率が適用されるか確認できたら、国税庁のWebサイトで公表されている「速算表」を使って、税額を計算しましょう。
たとえば、父親が成人した子どもに車を贈与した場合、適用されるのは「特例税率」です。
車の査定額が「330万円」で、その年にほかの贈与はなかったとすると、下表の「400万円以下」の区分を参照することになります。
▼特例税率を適用する場合の速算表
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | ‐ |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
上記を踏まえて、次の計算から、贈与税の金額は「23万円」だとわかりました。
計算式
なお、具体的な贈与税の申告方法については、下記の記事でお伝えしているので、併せてご覧ください。
税負担を抑えて車を渡す方法

ここからは、「税負担を抑えて車を渡す方法」として、次の2つをお伝えします。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
方法1:値落ちを待ってから贈与する

車は、購入してから時間が経つほど「評価額」が落ちていきます。
そこで、車を購入後、しばらくは「ときどき貸して乗せている」状態にして、値落ちを待ってから名義変更をすることで、税負担を抑えられます。
時間経過によって税負担が軽くなっていくイメージは、次のとおりです。
| 経過年数 | 査定額の目安 | 贈与税額 |
|---|---|---|
| 新車 | 330万円 | 23万円 |
| 3年後 | 160万円 | 5万円 |
| 5年後 | 110万円 | 0円 |
上記のケースでは、車を購入してから5年待つことで、贈与税の負担なしで渡すことが可能です。
なお、値落ちを待っている間に名義人が亡くなった場合、車は「相続財産」として相続税の対象になります。
このとき、車は「遺産分割」の対象になるため、確実に特定の人へ渡したければ、遺言書にその旨を書いておくことをおすすめします。
遺言書については、下記の記事で詳しくお伝えしているので、併せてご覧ください。
方法2:車ではなく「購入資金」を贈与する

車自体ではなく、「購入資金」の贈与であれば、年間110万円の基礎控除の範囲内に収めることで、贈与税の負担なしで援助できます。
たとえば、200万円の車を購入する子どもに「110万円」だけ援助したケースでは、その年にほかの贈与がなければ贈与税はかかりません。
また、車の購入資金は「両親から別々に」贈与することで、年間220万円まで非課税で渡すことも可能です。
これは、贈与税の課税方式には下記の2つがあり、そのどちらにも「年間110万円」の基礎控除が用意されていることが関係しています。
| 課税方式 | 概要 |
|---|---|
| 暦年課税 | ■ (必要な場合は)毎年、「贈与税」の申告・納税をする ■ 何も手続きをしないと、自動的にこの課税方式になる |
| 相続時精算課税 | ■ 基本的には、贈与したときは税金を払わず、贈与した人が亡くなったときに、まとめて「相続税」として精算する ■ 60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子どもや孫への贈与でのみ使える ■ 選択するためには、はじめて適用する年に税務署で手続きをする必要がある |
この課税方式は「贈与する人ごと」に選べます。
そのため、下記のように父親と母親で別の課税方式を選び、それぞれ110万円ずつ渡すことで、子どもは合計220万円を受け取っても贈与税はかかりません。

ただし、相続時精算課税は、いちど選択すると後から暦年課税に戻せなくなります。
生前贈与の進め方によっては、暦年課税を選んだほうが税金面で有利なケースもあるため、選択する前に税理士へ相談することをおすすめします。
車の贈与税に関するよくある質問
Q1:車の贈与を申告しないと、どうなる?
Q2:親や知り合いから車を「安く買った」ときは?
Q3:夫婦間で車を渡すときも、贈与税はかかる?
Q4:子どもの車のローンを親が返済してあげたら?
まとめ|車の贈与税は「渡し方」で大きく変わる
今回は、車の贈与税についてお伝えしました。
- 車の贈与では、車を「もらった側」に贈与税がかかることがある
- 車を含めた「その年の贈与財産の合計」が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も必要ない
- 税負担を抑えるには、「価値が落ちるまで待つ」か「110万円以下の資金援助をする」のが有効
私たちVSG相続税理士法人では、贈与や生前対策に関するご相談を無料で受け付けております。
「車を渡したいが、どの方法が一番よいかわからない」という方も、ぜひお気軽にご連絡ください。

