後期高齢者医療制度では、上場株式の配当や譲渡益などの金融所得を、確定申告の有無にかかわらず保険料や医療費の窓口負担割合へ反映する制度改正が決まりました。これまで確定申告をしなければ反映されなかった金融所得も把握されるため、人によっては保険料や窓口負担が増える可能性があります。
ただし、2026年7月時点ではまだ新制度は始まっていません。施行日は、2026年6月5日の改正法公布から5年以内に政令で定められる予定です。
この記事では、制度改正の内容、対象となる金融所得、開始時期、負担への影響をわかりやすく解説します。
目次
後期高齢者医療で金融所得が反映される制度改正
2026年5月29日に「健康保険法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月5日に公布されました。これにより、確定申告をしていない金融所得についても、後期高齢者医療保険料や窓口負担割合の判定に反映するための仕組みが設けられます。
現行制度では確定申告の有無で負担が変わる
現在の後期高齢者医療保険料や窓口負担割合は、市区町村が把握する住民税の所得情報をもとに判定されます。上場株式の配当や、源泉徴収ありの特定口座で生じた譲渡益は、確定申告をすれば住民税の所得情報に反映されます。
一方、源泉徴収だけで課税関係を終わらせて確定申告をしない場合、自治体が金融所得を把握できず、保険料や窓口負担割合に反映されていません。つまり、同じ金額の金融所得があっても、確定申告をしたかどうかで医療保険上の負担が変わる状態です。
世代内、世代間の公平の更なる確保による全世代型社会保障の構築の推進
引用元 厚生労働省
改正後は金融機関の情報を活用して判定する
改正後は、金融機関などが税務署へ提出している法定調書の情報を、後期高齢者医療広域連合が利用できる仕組みが整備されます。これにより、対象となる金融所得は、確定申告をしていなくても保険料や窓口負担割合の判定へ反映されるようになります。
金融機関側から情報が提出される仕組みのため、被保険者に新たな申告手続きを求めることは想定されていません。
金融所得の反映はいつから始まる?
制度の開始日は、2026年7月時点では決まっていません。改正法では、公布日である2026年6月5日から5年以内に政令で定める日から施行するとされています。
これは、金融機関から提供される情報を後期高齢者医療の判定に利用するため、国・自治体・金融機関のシステム整備が必要になるためです。厚生労働省は公布後4〜5年程度での反映開始を想定していますが、開始時期は確定していません。今後の政令や厚生労働省の発表を確認する必要があります。
対象になる金融所得と対象外の所得
すべての金融所得や金融資産が対象になるわけではありません。申告不要を選択できる上場株式等の配当・譲渡益などが主な対象となります。
| 反映対象となるもの | 対象外とされているもの |
|---|---|
| 上場株式等の配当金 | NISA口座内の配当・譲渡益 |
| 源泉徴収ありの特定口座で生じた上場株式等の譲渡益 | 預貯金の利子 |
| 特定公社債の利子 | 特定公社債以外の公社債の利子など、源泉分離課税の所得 |
| 公募投資信託の分配金など | 預貯金・株式などの金融資産の保有残高そのもの |
重要なのは、保有している預貯金や株式の金額そのものではなく、配当・利子・譲渡益などの「所得」が判定対象になる点です。たとえば、株式を2,000万円保有しているだけで保険料が上がるわけではありません。その株式から対象となる配当や譲渡益が生じた場合に、所得として反映されます。
金融所得が反映されると何が変わる?
対象となる金融所得が加算されることで、主に次の負担へ影響する可能性があります。
- 後期高齢者医療保険料の所得割額
- 医療機関で支払う窓口負担割合(1割・2割・3割)の判定
ただし、金融所得がある人全員の負担が増えるわけではありません。すでに確定申告をして金融所得が反映されている人は、制度改正後も計算の基礎となる所得が大きく変わらない可能性があります。また、金融所得を加算しても判定基準を超えなければ、窓口負担割合が変わらないケースもあります。
保険料・窓口負担はどのくらい増える?
厚生労働省は、確定申告の有無によって現行制度の負担がどの程度変わるか、次の例を示しています。
世代内、世代間の公平の更なる確保による全世代型社会保障の構築の推進
引用元 厚生労働省
この例では、年金230万円と金融所得50万円がある70代後半の人について、申告の有無で年間保険料に51,050円の差が生じています。
金融所得を新たに申告する手続きは必要?
対象となる金融所得は、金融機関から提供される情報をもとに反映されます。そのため、今回の改正を原因として、被保険者が新たな申告手続きを行うことは想定されていません。
なお、税務上の確定申告の要否については、個別に判断する必要があります。
制度開始までに確認しておきたいこと
保有口座と金融所得の種類を整理する
特定口座、一般口座、NISA口座のどこで運用しているかを確認し、年間の配当・分配金・譲渡益がどの程度あるかを整理しましょう。金融機関から交付される年間取引報告書や配当金の明細が確認に役立ちます。
課税口座の株式はNISA口座へ直接移せない
課税口座で保有している株式や投資信託を、そのままNISA口座へ移すことはできません。NISA口座で保有するには、課税口座の商品を売却し、NISA口座で買い直す必要があります。価格変動や手数料の影響もあるため、保険料だけを理由に売却を判断しないことが大切です。
大きな譲渡益が出る年は負担への影響を確認する
株式や投資信託を売却して大きな利益が出た年は、その所得が翌年度の保険料や窓口負担割合の判定に影響する可能性があります。制度開始後の所得反映時期や具体的な計算方法が公表されたら、売却前に税理士や加入先の後期高齢者医療広域連合へ確認すると安心です。
後期高齢者医療と金融所得に関するよくある質問
Q.NISAの利益も保険料の計算に入りますか?
Q.預貯金の利息は対象になりますか?
Q.すでに配当や譲渡益を確定申告している場合も保険料が上がりますか?
Q.国民健康保険にも同じ制度が導入されますか?
まとめ
後期高齢者医療制度では、上場株式の配当や譲渡益などの金融所得を、確定申告の有無にかかわらず保険料や窓口負担割合へ反映する仕組みが導入されます。
ただし、制度の開始日はまだ確定しておらず、2026年6月5日の公布から5年以内に政令で定められる予定です。また、NISA口座の利益、預貯金の利息、金融資産の保有額そのものは対象外とされています。
金融所得が多い人や、源泉徴収ありの特定口座で申告不要を選択している人は、制度開始後に負担が増える可能性があります。今後の正式な施行日や計算方法を確認しながら、保有口座と年間の金融所得を整理しておきましょう。



